映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、没後30年を迎える20世紀現代アーティストの一人、バスキアの生涯を10代から描いたドキュメンタリー「バスキア、10代最後のとき」です。
アンディー・ウォーホルの見いだされ27歳で急逝したニューヨークを中心に活躍した若き天才画家バスキア。最近では、ZOZOの前澤社長がバスキアの作品を落札したことで、その名が広く知れ渡ったように思います。1978年から1980年代にかけて生まれたヒップホップなどのストリートカルチャーの中で、絵画の世界では、キース・ヘリングと共に有名であったバスキア。その芸術活動は絵画の世界にとどまらず、オブジェやファッション、音楽などを明らかにする本格的なドキュメンタリー作品です。
ジム・ジャームッシュや彼の恋人でありコレクターでもあったアレクシス・シドラーに、ファッションデザイナーのパトリシア・フィールドなどのインタビューと当時のNYの社会状況やアートシーンを根底から覆すストリートカルチャーなどを背景に、バスキアの多彩な才能と存在感を際立たせる映像手法は見事でした。
黒人アーティストとして成功をおさめた一面もありますが、当時のヒップホップカルチャーのひとつであるグラフィティーの枠を超えた存在として、人種を超え認められたのもバスキア以外にないし、彼の中には黒人としてのアイデンティティは感じない。そのことは、この作品から十分読み取れることができます。
9月21日から森アーツセンターギャラリーで「バスキア展メイド・イン・ジャパン」が開催されます。本作と共にバスキアのアートの世界にふれてみてはどうでしょうか。