![]() | オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アガサ クリスティー早川書房このアイテムの詳細を見る |
『オリエント急行殺人事件』アガサ・クリスティ (新潮社)
いずれ真鍋博版に画像を差し替えます。
何が悔しいかって、早川書房から出た新しいクリスティ文庫は真鍋博さんのイラストではないことです。
まぁ、新しい方がミステリーという感じではありますが……。
ということで、真鍋氏のイラストの表紙の本を手に入れればその画像を載せたいと思います。
ただ、訳としては私は早川より新潮の方が好きです。
早川の訳はものすごく読みやすいのだけど、誤訳まではいかなくてもちょっと意訳しすぎて作者の意図から外れてるんじゃないかなぁと思う部分があるのだ。
新潮にもそれがないかと言えばそうでもなく、最も原語に近い訳をしているのは創元推理かもしれない。(ただし文章はものすごくかたい)
ただ、新潮はポワロを「ポワロ」と訳しているのが好きなのだ。
早川は「ポアロ」。
どっちでもいいと言えばどっちでもよく、「不実な美女か貞淑な醜女か」という本によれば、もうこれは訳者と読者の気持ち次第と思わなくもない。
推理小説は論理パズルだ。訳は厳密じゃないとその意図が狂ってしまう。
……という人は創元推理を
たとえ推理小説でも小説には違いない。訳は作者の意図を反映したものを。
……という人は新潮を
翻訳本はどうしたって原語に忠実には訳せないのだから、読みやすいものを。
……という人は早川を
買えばいいと思う。
さて、うだうだと内容に関係ない話をしたのは、この「オリエント急行殺人事件」が知らない人はモグリというぐらい有名な推理小説だからである。
この小説の犯人を知らないミステリーファンがいるだろうか。(反語)
もし、本当に知らないというものすごく幸運な方がいれば、今すぐ上記のAmazonをクリックしてこの本を手に入れてほしい。
そしてすぐさま読んでほしい。
どんな解説本も、紹介記事も、他の推理小説も読む前に。
何の予備知識も入ってくる前に。
この推理小説に限っては、犯人を知らないということこそが最大の幸福なのである。
ただ、知っているからといってガックリくることもないと思う。
名著というものはたとえそれが推理小説でも何度も読むに値するものだからだ。
かくゆう私も、「知らない」という幸福な時代は過ぎ去ってしまったけど、十分に楽しめた。
いや、楽しめただけでなく、何度も読み直してさえいる。
犯人の言動の裏を読んでみたり、精緻に出来上がっているトリックに唸ってみたり。
そして犯人の心理に思いをはせてみたり。
私は、アガサの真髄はトリックがすべて明かされた後だと思っている。
あの人間のあの言動はこういう意味があったのか。
じゃあ、あれは…
という具合についつい最初のページを繰って再度読み直してしまうのだ。
それがアガサの小説の素晴らしさだと思う。
ネタバレされていても読む意味がある本。
もう、それは推理小説じゃないのじゃないだろうか。
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