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『九尾の猫』エラリー・クイーン

2009年01月14日 | 推理小説
九尾の猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-18)
エラリイ・クイーン
早川書房

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『九尾の猫』エラリー・クイーン (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 『ローマ帽子の謎』でエラリー・クイーンにはまった者からすると、待ってましたと言いたくなるようなニューヨーク市警が主人公の話です。
 ただし話の内容は、『ローマ帽子の謎』とは全然違います。エラリーの位置付けからして全く違います。しかし私としては、ヘスとかピゴットとかお馴染みの刑事達の名前が聞けて最後までにやにやしまくりでした。
 うん、やっぱり、超越的存在である探偵が活躍する話より、警察の地道な組織力で解決する話の方が好きだ。
 推理マシーンから苦悩する人間へとエラリーの変遷はファンなら誰でも口をそろえていうことですが、私はそれより作者の見事なまでのニューヨーク描写の方に舌を巻きました。これは「火星人が来た」ではないですが最後のフィクションとしての名前の描写がないと、ちょっとした類似事件で本当にニューヨークがパニックになりそうです。それぐらい真に迫っていました。
 日本でも昔、連続幼女誘拐殺人事件が起こり、ニューヨークと同じようにパニックに陥りました。普通誘拐とは身代金を要求するために行うもので、力点も犯人逮捕とか捜査とかではなく誘拐された被害者の身柄の安全におかれます。まさか殺害するために誘拐するとは!! と日本中が震撼した事件です。確かちょっとした社会現象にもなったと思います。
 あの時はオタク=犯罪者予備軍というイメージを植え付けるぐらい強烈な事件だったのですが、今やそのオタク文化が日本文化を浸食する時代が来るとは、当時の知識人は露とも思わなかったでしょうね。
 これと同じように目的が見えない犯行というのは怖いものなのですよ。理由を聞けば(それがどんなに異常でも)なるほどと納得できるのですけどね。
 結末に関しては、ウィーンまで行く必要あったんかいなと思っちゃいますけどね。電話の答えで十分でしょう。そもそも、あそこまで見事な消去法を過去の作品で披露したエラリーがこんなニアミスをするかいなという疑問もあるにはあります。
 あと、ここまでの連続殺人に発展した理由にしては動機はちょっと弱いんじゃないかなとも思います。


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