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『象は忘れない』 アガサ・クリスティー (早川ミステリー文庫)
Q.「象は忘れない」と聞いて何を思い浮かべますか?
A.ペットの象が犯人にかみついた
A.象の置物が凶器だった
A.実は象が犯人だった
アガサの最晩年期の作品です。
いつ頃からか知りませんが(おそらく『ホロー荘の殺人』あたりからだと思いますが)、アガサは純粋な意味での殺人事件を扱わなくなったと思います。
純粋な意味での…というのは、
殺人→調査→真相
という事件です。
例えば、殺人なのかどうなのか分からない事件とか。
真相が先にあり、それを証拠づけるための調査とか。
調査の過程で殺人が判明するとか。
晩年期から彼女はそういう殺人事件を扱い始めた気がするのですよ。
ぶっちゃけて言うとですね、彼女の黄金期と言われる1930年代から1940年代の作品は毎日読んでも飽きないのですよ。
もっとアガサを、もっと、もっと。
という気分になるのです。
が、1950年代ごろから毎日アガサは本気でしんどくなります。
推理小説というより文学を読んでいる気分になります。
殺人事件もかなり単純で、調査もアリバイ崩しやトリックの解明より、なぜ殺人が起こったのか?という疑問に集中されていっている気がします。
特に今回、アガサが後期に開発した「過去の事件」です。
一応、お題は「誰が殺した」ですが、結局「なぜ殺した」に話は移っていくのですよ。
そして、「なぜ殺した?」という疑問の答えに迫れば迫るほど、名探偵の悲しい宿命に思い至ってしまうのです。
探偵は必ず真相を暴き、それを読者に提示しなければならない。
メタ・ミステリーならともかく、探偵の暴いた真相は物語の中では読者ではなく登場人物に明かされます。
しかし、推理小説のお約束上、探偵も、登場人物もそれを拒否することはできないのです。
探偵の胸一つでおさめておいた方がいい事実でも。
ところで最初の質問ですが、
A.イギリスの古いことわざ
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