弁当日記

ADACHIの行動記録です。 
青年海外協力隊で2006年4月からバングラデシュに2年間住んでました。

バングラデシュのニュース(2019/07/26)◆ロヒンギャ難民について

2019年07月26日 | バングラデシュのニュース
◆イベント情報◆
〇第30回講演会のお知らせ
 「1990年代生まれの若者たち-バングラデシュの社会変動を背負って-」(7/30)
 http://www.japan-bangladesh.org/info/20190730_event30

■見出し(2019年7月26日) No2019-33
〇世界各地で異常気象 北極圏、高温と乾燥 米やバングラは洪水被害
〇世界最大のマングローブ林は住民を見放したのか
 インドとバングラデシュの沿岸部の島や村が水没。原因は気候変動と違法伐採
〇豪雨災害の死者122人=ネパール、インド、バングラデシュ
〇動画:南アジア各地でモンスーンによる豪雨被害、死者少なくとも180人 被災地
の映像
〇難民キャンプ襲った洪水、ロヒンギャが一層の窮状に バングラデシュ
〇ロヒンギャ危機/バングラデシュ モンスーンによる豪雨、難民キャンプ直撃 土
砂災害や洪水、すでに3万8,000人に影響
〇長谷部誠が難民キャンプを訪問。 ロヒンギャの子どもたちに勇気を与えた
〇ロヒンギャ流出から来月2年 ASEAN、ロヒンギャ問題「役割強化」で一致
も遠い解決
〇米、ミャンマー軍総司令官らに入国禁止措置 ロヒンギャ「浄化」に関与
〇ロヒンギャ居住地、政府がネット遮断 100万人に影響
〇米、ミャンマー軍高官に制裁 ロヒンギャ迫害で
〇ロヒンギャ難民キャンプがモンスーン被害、10人死亡 住居約5000戸が破壊される
〇緑豆でバングラデシュ農家支援 ユーグレナ、ロヒンギャ難民も

■世界各地で異常気象 北極圏、高温と乾燥 米やバングラは洪水被害
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201907/CK2019071302000284.h
tml
 (東京新聞 2019年7月13日)


 世界気象機関(WMO)は十二日、六月以降、ロシア・シベリアなどの北極圏で
記録的高温となり山火事が多発、一方で米国やバングラデシュでは洪水となるなど
世界各地で異常気象が相次いでいると発表した。欧州やインドなども熱波に襲われ
ており、WMOは「地球温暖化による高温や降水パターンの変化が、山火事増加や
夏の長期化をもたらしている」と分析している。
 日本でも毎年のように豪雨被害が起きており、引き続き警戒が必要だ。
 WMOによると、地中海から北極圏まで異例の高温と乾燥状態となっており、シ
ベリアでは六月の平均気温が一九八一年から二〇一〇年の平均より約一〇度高かっ
た。米アラスカ州でも観測史上、二番目に暑い六月となり、七月四日には三二度を
記録した。フランス南部でも六月二十八日、同国本土の観測史上最高となる四五・
九度に達した。
 高温の影響もあり、北極圏では六月初めから大規模な山火事が百件以上発生。六
月だけで五千万トンの二酸化炭素(CO2)を排出、スウェーデンの年間排出量と
ほぼ同じとなった。北半球では五~十月の山火事はよくあるが、これほどの高緯度
で発生し規模の大きな山火事は異例だとしている。
 一方、米国では春ごろから全国的に降水量が多く、中西部や南部などが洪水被害
に見舞われ死者も出た。バングラデシュでは今月上旬からモンスーンによる大雨で
洪水となり、ミャンマーから逃れてきたイスラム教徒少数民族ロヒンギャの難民キ
ャンプも被災した。



■世界最大のマングローブ林は住民を見放したのか
 インドとバングラデシュの沿岸部の島や村が水没。原因は気候変動と違法伐採
 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/070200387/
 (ナショナルジオグラフィック 2019年7月4日)

 バングラデシュと、隣接するインドの西ベンガル州の一帯は平坦で、ヒマラヤ山
脈からの雪解け水を運ぶ川が網の目のように入り組んでいる。サイクロンが頻繁に
襲来し、時に数千人規模の犠牲者を出すこともあるが、それでも沿岸部の村や集落
には常に頼りにしてきた自然の防波堤があった。インドとバングラデシュの国境を
またいで広がる世界最大のマングローブ林、シュンドルボン(スンダルバンス)だ

 面積が1万平方キロを超すこの湿地は、洪水に強いマングローブが密生し、高潮の
影響を和らげ、最悪のサイクロンですら寄せつけない。村の住民にとって、このマ
ングローブ林は蜂蜜の一大産地であり、豊かな漁場でもある。
 だが長年、人間と自然から過酷な仕打ちを受けてきた結果、マングローブ林も力
が尽きつつあるようだ。違法伐採の横行によって、マングローブ林の縁辺部で木々
がまばらになり、水中の塩分濃度の上昇で、「シュンドルボン」の名前の由来とな
ったアオイ科のシュンドリをはじめ、嵐を食い止めてくれる貴重な樹木が数多く枯
れている。
 塩水化の原因は陸と海の両方にある。インド領内の河川の上流にいくつもダムが
建設されたためにシュンドルボンに流入する淡水の量が減少し、さらに、気候変動
による海水面の上昇で、マングローブ林に流れ込む海水が増えたのだ。最悪の場合
、今世紀中に海水面が約1.8メートル上昇し、バングラデシュだけで、シュンドルボ
ンのマングローブ林が2000平方キロ以上も縮小するおそれがある。
 「今後、シュンドルボン周辺の住民はさまざまな損失を被るでしょう」と、イン
ドのジャダプール大学で准教授を務めるトゥヒン・ゴッシュは語る。ゴッシュによ
れば、マングローブ林から遠く離れたインドのコルカタやバングラデシュの首都ダ
ッカのような都市ですら、「サイクロンや高潮の被害を受ける可能性が極めて高く
なる」という。

 シュンドルボンが国を築き、そして滅ぼす
 2018年2月、バングラデシュの東ダンマリ村の西を流れるチュナール川の流れをせ
き止めていた堤防の一部が、過去1年間で3度目の決壊を起こし、16軒の人家が水没
した。その年の乾期のコメの収穫量は激減し、1ヘクタール当たり0.5トンを下回る
場所も多く、食料価格が高騰した。多くの農作地では塩害で野菜がさっぱり育たな
くなった。
 4月に入ると、数十世帯が故郷に見切りをつけ、首都ダッカへ引っ越していった。
世界銀行の推計では、シュンドルボンの周辺住民の大半をはじめ、気候変動による
被害が原因で都市へ移住するバングラデシュ人の数は、2050年には1300万人を超え
るとみられている。
 災害が相次ぐなか、マングローブが築いたこの土地は気候変動に振り回されるこ
とになると考える住民もいる。「この国はシュンドルボンが築きました」とバング
ラデシュ南西部の東ダンマリ村に住むブル・ハルダルは語る。「ひょっとしたら、
この国を滅ぼすのもシュンドルボンかもしれません」。マングローブ林の行方に、
国全体の命運がかかっているということだ。

 ※ナショナル ジオグラフィック7月号「崩れゆく緑の防波堤」では、インドとバ
ングラデシュの沿岸部に広がるマングローブ林が海面上昇と違法伐採によって縮小
し、島や村が水没しつつある現状をレポートします。



■豪雨災害の死者122人=ネパール、インド、バングラデシュ
 https://www.jiji.com/jc/article?k=2019071600872&g=int
 (時事通信 2019年07月16日)

 ネパール、インド、バングラデシュで続く雨期の豪雨により、広範囲で洪水や地
滑りなどが多発し、死者は16日までに少なくとも122人に達した。地域によっ
ては今後数日間、強い雨が降る見通しで、被害はさらに拡大する恐れがある。
 ネパールでは、警察当局によると全土で少なくとも78人が死亡、30人が行方
不明に。地元記者は「地滑りで多くの道路が寸断されている」と語り、救助の遅れ
を訴えた。12日朝までの24時間に200ミリ超の降雨を記録した南部シマラな
どで雨は小康状態となったものの、当局は引き続き警戒を呼び掛けている。



■動画:南アジア各地でモンスーンによる豪雨被害、死者少なくとも180人 被災地
の映像
 https://www.afpbb.com/articles/-/3235592?cx_part=search
 (AFP通信 2019年07月17日)

 南アジア各地でモンスーンによる豪雨が洪水や土砂崩れを引き起こし、家屋を流
された住民が高台に避難を余儀なくされるなど、数百万人に影響が及んでいる。当
局によると、16日までに少なくとも180人の死亡が確認された。
 世界人口の5分の1が暮らす南アジアの貧困地域において、6月から9月まで続くモ
ンスーンはかんがい農業や地下水の供給に欠かせないものだ。しかし今年のモンス
ーンはインド、ネパール、バングラデシュ、カシミール(Kashmir)地方のパキスタ
ン実効支配地域に大きな被害をもたらしている。
 中心部から離れた低平地では住民、住宅、ボートなどが流された。国際赤十字・
赤新月社連盟(IFRC)のハビエル・カステジャノス(Xavier
Castellanos)氏は、悪化する被害状況について「水位が上昇して集落全体が孤立し
、住民が飢えたり病気になるリスクが高まっている」と指摘した。
 インドのムンバイでは、豪雨のあと住宅密集地で建物が倒壊し、これまでに10人
が死亡した。地元災害当局者は、「救助活動はがれきに埋もれた最後の1人が救助さ
れるまで続く予定だ。10人以上がまだがれきの下敷きになっている」と述べた。
 全国ではおよそ50人が死亡。北東部アッサム(Assam)州と、ネパールとの国境に
接する東部ビハール(Bihar)州では大洪水の被害が深刻化している。
 数百もの川が交差するデルタ地帯にあり洪水被害を受けやすいバングラデシュの
洪水予報・警報センター(Flood Forecasting and
Warning Centre)は、国土のおよそ3分の1が水に浸かったと発表。ブラフマプトラ
(Brahmaputra)川など少なくとも14の主要河川で堤防が決壊し、水位が危険な水準
に上昇し、数万人が孤立している。バングラデシュではこれまでに34人が死亡した

 ネパールでは水が引き始めているが、これまでに少なくとも78人の死亡が確認さ
れ、1万6000世帯が避難した。
 カシミール地方のパキスタン実効支配地域では、鉄砲水で23人が死亡し家屋120戸
が損壊した。
 国連(UN)は15日、今回のモンスーンによる災害に対応している被災各国に協力
する用意があると明らかにした。
 映像前半は、冠水したバングラデシュの北部クリグラム(Kurigram)県と南東部
バンドルボン(Bandarban)県。後半は、洪水で家屋の損壊被害に見舞われたカシミ
ール地方のニーラム渓谷(Neelum
Valley)。15、16日に撮影。(c)AFP



■難民キャンプ襲った洪水、ロヒンギャが一層の窮状に バングラデシュ
 https://www.cnn.co.jp/world/35139842.html
 (CNN 2019年7月12日)

バングラデシュ・コックスバザール(CNN)
バングラデシュ南東部がモンスーンの豪雨に見舞われ、ミャンマーから避難してき
たロヒンギャ難民のキャンプで大規模な洪水の被害が出ている。
竹と防水シートでできた小屋に6人で暮らしていた一家は、近くの学校に避難した
が、この洪水で所持品のほとんどを失った。
「私たちの所持品は(全部)奪われた」「だから真っ暗闇で暮らさなければならな
い。照明と充電器もなくなった」と妻は肩を落とす。
冷蔵庫やコンロは大雨で壊れ、調理もできなくなった。「子どもたちに食べさせる
ものがない。洪水で外へ出られないので、子どもたちが水を飲むこともできない」
と夫は言う。
子どもたちは大規模な洪水に見舞われる以前から具合が悪く、栄養も不十分だった
。妻は「子どもたちが熱を出して苦しんでいるのに、私たちには薬がない」と訴え
ている。
一家が住むコックスバザールの難民キャンプには、ミャンマーの少数派イスラム教
徒ロヒンギャの約100万人が身を寄せている。ほとんどは、2017年に起きた
ミャンマー軍との衝突を逃れてここへたどり着いた。
コックスバザールを襲ったモンスーンの洪水は、難民たちを一層の窮状へと追い込
んでいる。
キャンプの周辺で起きた土砂崩れのために、仮設の住宅数百棟が倒壊。約4000
世帯が被災して、多くは避難所に移動した。
ユニセフによると、男の子2人が洪水のために溺れて死亡、ほかにも子ども数人が
負傷した。
支援団体によれば、キャンプで暮らす約6万人の子どもたちは、数百カ所の学習拠
点が閉鎖されたために学校へ行くことができなくなった。道路や医療拠点、支援物
資の配送拠点にも被害が出ている。
支援団体は難民支援活動や、水が原因となる疾患の拡大防止に力を入れている。
バングラデシュの外務相高官は、「国連と連携した不測の事態に対する備えは万全
」だったと強調し、ハシナ首相は常にロヒンギャに特別の配慮をしていると言い添
えた。
潘基文(パンギムン)前国連事務総長は首都ダッカで地球変動に関する会議に出席
した後、10日にヘリコプターで上空から難民キャプの被害状況を視察した。
当面、今回の洪水に伴う最悪の事態は過ぎ去ったものの、来週には再び大雨が予想
されており、モンスーンの季節は10月まで続く。



■ロヒンギャ危機/バングラデシュ モンスーンによる豪雨、難民キャンプ直撃 土
砂災害や洪水、すでに3万8,000人に影響
 https://www.unicef.or.jp/news/2019/0099.html
 (unicef 2019年7月8日)


サイクロン「ファニ」の被害を受けた自宅で座り込む男の子。(2019年5月撮影)
何日間も続いたモンスーンの豪雨による洪水、土砂災害や強風が難民キャンプを直
撃し、数千人が避難を余儀なくされ、何千件もの仮設住居が損壊し、悲惨なことに
女性1人と幼い男の子が命を落としました。
巨大な難民キャンプの一部では、先週の3日間だけで、6月または7月の平均月間降雨
量に相当する500ミリ以上の降雨を記録しました。脆弱な難民キャンプで活動するユ
ニセフなどの人道支援団体は、今後数日間さらなる降雨が予想されることから、警
戒を高めています。
2017年8月に難民の大量流入が始まってから2度目のモンスーンの季節を迎えたバン
グラデシュには、約100万人のロヒンギャ難民が暮らしています。
人道支援団体はこの数週間に数十カ所で小規模の土砂災害を確認しています。また
、ロヒンギャ難民の人道支援にあたる国連機関およびNGO団体の部門間調整グループ
(ISCG)によると、4月中旬から、3万8,000人以上が土砂災害、嵐、および洪水の影
響を受け、そのうち4,400人が避難生活を余儀なくされています。

バングラデュ事務所からの報告
コックスバザールの低地にある難民キャンプと受け入れコミュニティは、この4日間
の豪雨により土砂災害と広範囲における洪水に見舞われています。特にロヒンギャ
難民キャンプの状況は悪く、3,000以上の家族が影響を受け、その多くが高台の避難
所に移っています。
難民キャンプ内での洪水と土砂災害のために、500以上の学習センターが一部損壊し
ています。これらの学習センターが修復あるいは再建されるまで、5万人近くの子ど
もたちの教育が中断されることになります。給水所数カ所ならびにトイレ520個が損
壊し、1万500人の水と衛生サービスが中断され、下痢性疾患の危険が生じています

ユニセフは緊急時に備えて、モンスーン季節の始めから、パートナー団体と協力し
て、緊急支援物資を事前に手配しています。この備蓄により、今回の長引く降雨に
よる影響に対して、迅速に対応することが可能になっています。
私たちは現在、長引く雨の影響を受ける何千人の子どもたちとその家族を守ること
を重点的におこなっています。ユニセフは、子どもたちと家族に基本的な人道支援
物資の配布を開始し、水と衛生施設ならびに学習センターの修復・再建を開始しま
した。しかし、学習センターを再開し子どもたちが教室に戻れるようになるために
は、まだ多くの活動が必要です。影響を受けるすべての子どもたちに支援を届ける
ためには、皆様の支援が必要です。



■長谷部誠が難民キャンプを訪問。 ロヒンギャの子どもたちに勇気を与えた
 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190715-00865120-sportiva-socc

 群馬県館林市に水野守という高校1年生がいる。サッカーを小学3年生で始めた
少年のポジションはボランチで、学校の部活動でもプレーしていたが、一昨年11月
に自分でチームを立ち上げた。
 チームの名前は、FCサラマット。一風変わったこのワードは、アラビア語で「平
和への願い」を意味する。守は日本で生まれ育った在日ロヒンギャ民族の二世で、
すでに日本国籍を取得しているが、スハイルというロヒンギャの名前も持つ。
 チーム名の由来はまさに今、祖国ミャンマーで起きていることに対する祈りの気
持ちからつけた。メンバーの数は16人、そのうち14人がロヒンギャ民族で構成され
ている。館林は日本における唯一にして最大のロヒンギャコミュニティがあり、現
在、約200名の人々が暮らしている。
 ロヒンギャ。それは2017年2月に国連の調査団が「世界で最も迫害されている民
族」と報告書を上げたミャンマーのラカイン州に暮らすイスラム教徒のことである

 その迫害と差別は、1962年にネ・ウィン将軍が起こした軍事クーデターから続い
ていたが、ビルマ(当時)政府が1982年に制定した「ビルマ市民権法」によって、
決定的なものとされた。
 同法はミャンマー国内で定住する135の民族を国民と定義するも、その中からロヒ
ンギャを排除。国籍を剥奪してバングラデシュからの違法移民としてしまったので
ある。
 民族浄化にお墨付きを与えるような法律によってその存在を否定されたロヒンギ
ャは、これより現在に至るまで、まさに「合法的」に迫害され続けている。約400万
人と言われる総人口の内、およそ300万人が国外へ脱出している。父祖の土地に住み
ながら無国籍者にされ、難民として追われるという世界でも稀有な例である。
 日本にも命がけで逃れて来たロヒンギャの人々がいるが、その人々がたどり着き
定住したのが、館林市である。現在は、行政もムスリム(イスラム教徒)であるロ
ヒンギャの子どもたちのために中学校にお祈りの部屋を作り、給食にはハラルフー
ドを加えようとする動きさえ見せている。ラマダン(断食期間)のときには、教員
も「疲れたら早退してもいいよ」と声掛けをしたりしている。
 外国人居住者に向けての避難訓練なども含めて、こういった館林市市役所の取り
組みは評価されているが、これに至るまでのロヒンギャの人々の努力も見逃せない


 守よりもほぼひと回り、12歳年上の長谷川留理華(ロヒンギャ名:ルインティダ
)というロヒンギャの女性がいる。留理華が2001年に両親と共に館林に来た頃は、
日本語がわからないこともあり、中学校では壮絶なイジメにあった。昼食の弁当ひ
とつ取ってみても文化的な背景から、毎日がカレー食である彼女に対して「だから
あいつは肌の色が違うんだ」等の残酷な言葉が浴びせられた。
 留理華の年齢は、突然無国籍にされてしまった世代である。ミャンマーにいた12
歳のとき、国民カードをもらいに行った役所で『ここはお前たちカラー(ロヒンギ
ャに対する侮蔑語)が来るところではない』と怒鳴られて追い出された記憶がある
。祖父母も両親も取得できていた身分を保証する国民カードが1989年に回収されて
、それ以降、ロヒンギャの子息には発給されなくなってしまったのである。
 留理華は、祖国での迫害、そして新天地として来た日本での偏見と差別に遭い、
心が折れそうになったが、屈することなく、日本の高校を卒業し、現在は日本国籍
を取得して通訳として活動している。
 館林に来たロヒンギャ難民の一世の人々は(留理華は二世であるが)、イスラム
教徒に対する偏見を払しょくするように活動を展開し、積極的に地域活動にも参加
していった。そして、在日ビルマ・ロヒンギャ協会を立ち上げると、後から頼って
来るニューカマーの同胞にも「ここで生きていくのならば、法律を絶対に守れ」と
コンプライアンスを説いた。結果、町の人々の大きな信頼をかち得ていった。
 守の父親、水野保世(ロヒンギャ名アウンティン)もまた一世として、血のにじ
むような努力を重ねて日本で生活していく信用と基盤を築いて来た。「私は日本国
籍を取ったのだから、日本のために働く、そして税金を納める。でも、ロヒンギャ
であることをひと時も忘れない」と言うのが口癖だった。
 守は大好きなサッカーをしていく中で、アイデンティティについて目覚めていっ
た。日本の学校へ通いながら、家庭ではミャンマー語とロヒンギャ語を父親から熱
心に学んだ。父は、「我々はロヒンギャであると同時にミャンマー国民でもあった
のだから、この二つの言葉を忘れてはいけない」と常に言っていた。
 そんな守たちのコミュニティを震撼させる事件が、2017年8月26日に勃発した。
ラカイン州でミャンマー国軍と仏教系右派団体によるロヒンギャに対する軍事掃討
作戦が始まったのである。

 丸腰に近い民間人に対する迫害は凄惨を極めた。ロヒンギャの人々は、家を焼か
れ、殺害され、ラカイン州を追われて隣国バングラデシュへの脱出を余儀なくされ
た。その数は2年間で約76万人。
 深刻なのは、女性に対するミャンマー軍人による組織的レイプが盛んに報告され
ていることだ。筆者は、クトゥパロンの難民キャンプで性被害に遭った女性たちを
取材した。レイプされた時間や場所は異なるが、手口はマニュアルがあるかのよう
にすべて統一されていた。昨年にノーベル平和賞を受賞したコンゴのデニ・ムクウ
ェゲ医師が言う、軍による「性的テロリズム」である。
 性的テロリズムは、精神的に人々を追い込んで恐怖心を植えつける。通常兵器と
違って予算も関わらない上に女性自身が背負い込むプライバシーの問題もあり、事
実を不可視の状態に追いやる極めて非人道的な戦争犯罪である。
 この性被害にあったロヒンギャの女性たちに対する調査とメンタルケアを続けて
いるチッタゴン在住のラツィアという女性弁護士によると、国連NGOなどが把握して
いる性被害者の数は、クトゥパロンキャンプだけで約4000人に及ぶと言う。

 「なぜミャンマー国軍は性的テロを行なうのか?」という問いに対してラツィア
は「過去1978年にもラカイン州を襲った民族掃討作戦(=ナーガミン作戦)があっ
たが、そのときにも性被害に遭った女性たちは土地に戻って来なかった。性暴力は
異民族を追い出す上で大きな効果があったのです」それでミャンマー軍は味をしめ
たと言われている。
 ビジネスで成功した守の父は私財を投げうって、バングラデシュの難民キャンプ
の地に子どもたちへのための学校を建てている。難民の約半数の30万人が未成年な
のだ。
 教育は生きていく術としてだけではなく、憎悪の連鎖を断ち切るためにも重要だ
との考えが父にはあった。暴力を否定し、ミャンマー政府を憎むのではなく、いつ
かミャンマー国籍を再取得して帰国するために学校の必須科目はミャンマー語だ。
そんな父の姿を見た中学生の守が館林でサラマットFCを作ったのは、日本国籍者と
しての義務を果たしながら、ロヒンギャとして生きていこうという決意の表れでも
ある。

 周囲の仲間に声をかけると、レイハットミライのように日本の大学に通いながら
、趣旨に賛同して参加してくれた先輩も現れた。レイハットミライは、ジュニアユ
ース時代は全国大会にも出場し、高い評価を得た選手だったが、勉学の道を選んで
サッカーは途中で辞めていたのだ。
 守のサラマットFCは群馬県リーグに登録している。しかし、まだ公式戦には出場
ができていない。それにはロヒンギャの人々の法的地位が異なっているという理由
もある。守のように日本国籍取得者もいれば、人道配慮による特別許可、永住者、
また難民申請中で仮放免という選手もいる。
 仮放免は、日本の入管行政の理不尽さがすべて詰まったような制度だ。日本で生
まれ育ち、何の罪も犯していないのに、就労が禁じられ、日本語しか話せないのに
いきなりの収容や強制送還の恐怖に晒されるのだ。自由に県外に移動することもで
きないので、サッカーの盛んな埼玉のチームとの県外試合もままならない。

 「やっぱり残念ですね。仮放免の人は働くことも禁止されているから、せめてサ
ッカーだけでも一緒にできればと思ったんですが、なかなかまだ試合もできなくて
」(守)
 誰も好きで祖国を離れるわけではない。難民は言うまでもなく被害者である。い
わんや政治亡命した先で生まれた10代の少年にいったいどんな罪があるというのか

 ミャンマーに対する最大の投資国である日本政府は、ロヒンギャの問題について
は極めて冷淡な態度を取ってきた。ロヒンギャという民族は存在しないとするミャ
ンマー政府に対する忖度ゆえに、外務省のホームページにはその民族名はなく、「
ラカイン州のイスラム教徒」と呼称されているだけである。
 ちょうど守がチームを作った2017年11月に開かれた国連総会では、ミャンマー政
府のロヒンギャに対する軍事行動の停止を求める非難決議が出され、欧米、中東国
を中心とした135カ国の賛成により採択されたが、ミャンマー政府の後ろ盾である中
国は反対、そして日本政府もまたこの採決を棄権したのである。館林のロヒンギャ
コミュニティの人々の落胆は、痛々しいほどであった。
 守にとっては、自らのルーツであるラカイン州から入って来るニュースは耳を覆
いたくなるものばかりだ。その上、アイデンティティの否定さえ重なり、サッカー
の試合もうまく組めない。16歳の少年にとっては酷い日常が続いていた。

 しかし、6月、守にとって、飛びあがりたくなるような朗報が飛び込んで来た。
日本代表の元キャプテン長谷部誠がユニセフの親善大使としてバングラデシュの難
民キャンプを訪問してくれたのだ。
 長谷部は6月5日にクトゥパロンキャンプを訪れると雨の中、泥だらけになりな
がら、ロヒンギャの子どもたちと一緒にボールを蹴った。同行した泉裕泰駐バング
ラデシュ日本大使は、その様子をこんなふうに伝えて来た。

 「長谷部親善大使は、大変誠実なナイスガイでした。『ロヒンギャ問題』の本質
をよく理解して下さっていましたし、その場で覚えた現地語で話しかけたりして、
すぐに溶け込んでいました。雨の中、泥まみれのグラウンドで子どもたちとサッカ
ーをしている姿は本当に画になりました」

 そして、長谷部自身はこんな言葉を発信している。
 「今回初めてバングラデシュに足を運ぶことができ、バングラデシュの方の人間
的な温かさに非常に感銘を受けました。今回ロヒンギャ難民のキャンプに足を運ば
せていただき、世界最大の難民キャンプのスケールに驚いたとともに、今後解決し
なくてはならない多くの課題、問題を目の当たりにしました。本問題をバングラデ
シュとミャンマーだけの問題だと思わずに、世界中の人々が本問題をしっかりと直
視し、サポートしていくこと、そして何よりロヒンギャ難民の方々が将来に対して
、未来に対して、少しでもしっかりとしたビジョンを描けるように、僕自身として
微力ながらもサポートし、今後も支援活動を継続していきたいと強く思います」
 2月には、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジェリーもUNHCR大使として同じロ
ヒンギャ難民キャンプを訪ねてくれてはいたが、守にとっては長谷部が、自分たち
の民族の名を出してくれたことが、何よりもうれしかった。
 「僕は本当に日本代表が大好きなんですよ。応援してるし、ロシアW杯のコロン
ビア戦は大迫(勇也)選手と香川(真司)選手のゴールに興奮しました。何と言う
か、長谷部選手の言葉で力が湧いて来ました。ないものにされていた僕らの存在を
しっかりと見てくれている」
 サッカー選手が政治の枠を超えて、人道支援の分野でできることは多々ある。し
かし、踏み込んで動く日本人選手は決して多くはない。長谷部のアクションは、バ
ングラデシュのキャンプだけではなく、日本のロヒンギャたちをどれだけ勇気づけ
たことか。難民の二世の子どもたちもサッカーをプレーする場所があれば、その存
在は認められ、そして友人もできる。
 ロシアW杯でいったいどれだけ多くのヨーロッパの難民二世、三世の選手が活躍
したことか。ベルギーにロメロ・ルカク(マンU)やアドナン・ヤヌザイ(レアル
・ソシエダ)、フランスにキリアン・エムバペ(PSG)、スイスにグラニト・ジャカ
(アーセナル)とジェルダン・シャチリ(リヴァプール)の存在がなければ、いっ
たいどんなチームになっていたであろう。スウェーデンは出場しなかったが、言う
までもなくズラタン・イブラヒモビッチ(LAギャラクシー)はマルメで育ったボス
ニア難民二世だ。サッカーの分野に限らず、難民を受け入れることは負担を増やす
ことではなく、逆に英知と豊かさをもたらすのだ。
 県下でも有数の進学校に通う守の夢は、サッカーをやりながら、医者になること
だ。「長谷部選手に夢に向かう気持ちをもらいましたよ」
 7月下旬、サラマットFCは同じくミャンマーの少数民族である在日のシン族、カ
チン族のチームと対戦することが決まった。未来の日本代表がそこにいるかもしれ
ない。日本におけるミャンマー少数民族ダービー。応援に行こうと思う。



■ロヒンギャ流出から来月2年 ASEAN、ロヒンギャ問題「役割強化」で一致
も遠い解決
 https://www.sankei.com/world/news/190701/wor1907010024-n1.html
 (産経新聞 2019年7月1日)

 ミャンマーからイスラム教徒少数民族ロヒンギャが隣国バングラデシュに大量に
流出し、来月で2年となる。帰還への見通しが立たない中、先月23日に開かれた
東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議ではASEANが解決に向けて行動す
ることが再確認された。ただ、来年に選挙を控えるミャンマーは帰還に消極的なこ
ともあり、早期の解決は困難な状況だ。
 「果たす役割について、目に見える形で強化することを再確認した」
 ASEANは首脳会議後の議長声明で、ロヒンギャ問題への関与の強化を明言し
た。だが「役割」の詳細には踏み込まず、加盟国ミャンマーへの配慮をにじませた

 国連によると、ミャンマー西部ラカイン州で治安部隊とロヒンギャの武装集団が
衝突した2017年8月以降、約74万人が難民となり、バングラデシュ南東部コ
ックスバザールに逃れた。両国は昨年11月の帰還開始で合意したが、帰還後の安
全を懸念した難民に希望者がいなかったことで中止され、現在に至る。
 ミャンマーは来年に総選挙を控え、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相率
いる与党国民民主連盟(NLD)は多数派仏教徒の支持を取り付けたい局面だ。ロ
ヒンギャの帰還を急げば、一部仏教徒の支持離れは免れない。
 こうした中、6月11日にはロヒンギャ65人が乗った船がタイ南部ラウィ島に
漂着。ミャンマーからマレーシアへ向かう途中、エンジンが故障のために動けなく
なったもようだ。3月と4月にもマレーシア沿岸にロヒンギャが乗った船が漂着し
た。15年にもロヒンギャが海上から東南アジア諸国に向かった事案が問題化した
が、バングラデシュ側の国境警備が強化されたことなどで再度増加傾向にあるもよ
うだ。

 ASEAN諸国には自国に難民が押し寄せることについて懸念があるが、加盟国
ミャンマーへの配慮から、ミャンマーとバングラデシュに自助努力を促す姿勢に変
化はなさそうだ。内政不干渉が原則のASEANが議長声明で関与強化を明言した
ことを評価する声もあるが、どれだけ実効性を伴った「役割」を果たせるかは不透
明だ。



■米、ミャンマー軍総司令官らに入国禁止措置 ロヒンギャ「浄化」に関与
 https://www.afpbb.com/articles/-/3235484?cx_part=search
 (AFP通信 20189年7月17日)

 マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は16日、ミャンマー国軍のミン・ア
ウン・フライン(Min Aung
Hlaing)総司令官ら幹部4人に米国への入国禁止措置を取ったと発表した。同国のイ
スラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)に対する「民族浄化」に関与したことを
理由としている。米側はミャンマーに対し、残虐な軍事行動への説明を求めている

 ポンペオ長官は声明で、ミン・アウン・フライン総司令官らが2年前、約74万人の
ロヒンギャが隣国バングラデシュに逃れる原因となった暴力に関与した「信頼でき
る証拠」があると指摘。「米国はこの発表により、ビルマ(ミャンマーの旧国名)
軍最高指導部に対して公式な措置を取る、最初の政府になる」と述べた。
 同長官は「われわれは、人権侵害と虐待の責任の所在についてビルマ政府が何ら
説明をしていないことや、ビルマ軍が同国内で人権侵害と虐待をしているとの報道
が続いていることを依然として懸念している」と表明。ミャンマーが5月、ロヒンギ
ャの村人を殺害して有罪判決を受けた兵士7人の釈放を命じたことと、ロヒンギャ弾
圧に関する取材を行っていたロイター通信(Reuters)の記者2人が500日余り収監さ
れたことを対比し、怒りを示した。
 国連(UN)の調査官らはロヒンギャをめぐる暴力について、ミャンマー軍幹部ら
を「ジェノサイド(集団殺害)」で訴追する要件を満たしているとの判断を示して
おり、国際刑事裁判所(ICC)の予審部門がすでに捜査に着手している。
 仏教徒が多数を占めるミャンマーは、ほとんどがイスラム教徒のロヒンギャの市
民権や基本的権利を認めることを拒否。ロヒンギャを「ベンガル人」と呼び、バン
グラデシュからの不法移民であるとの主張を暗に示している。



■ロヒンギャ居住地、政府がネット遮断 100万人に影響
 https://www.asahi.com/articles/ASM7255HSM72UHBI024.html?iref=pc_ss_date
 (朝日新聞 2019年7月4日)

 ミャンマー政府が、「国軍への攻撃を続ける武装勢力の通信手段を絶つ」との理
由で、西部ラカイン州などの一部で携帯電話のネットワークを遮断し続けている。
市民約100万人が影響を受けている。
 米国務省報道官は「遺憾に思う」との声明を発表。国際人権団体アムネスティ・
インターナショナルは「緊急時などに情報を得られず、人権に深刻な影響がある」
と批判している。
 ミャンマー政府関係者によると6月21日ごろからラカイン州、チン州の9地区
で遮断を開始。これらの地域では、国軍と衝突を続ける少数民族武装勢力「アラカ
ン軍」(AA)が、今年初めから警察施設などへの攻撃を激化。先月は国際赤十字
のトラックも襲われた。AAが携帯を連絡手段にしていることから、通信会社にネ
ットワーク遮断を命じたという。通話できるがネット通信はできない。
 ラカイン州は、バングラデシュで難民になっているイスラム教徒ロヒンギャの元
々の居住地で、問題が長引けば難民帰還にも影響が出そうだ。(



■米、ミャンマー軍高官に制裁 ロヒンギャ迫害で
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47419290X10C19A7EAF000/
 (日本経済新聞 2019年7月17日)

 米国務省は16日、ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍最高司令官ら4人の軍
高官をイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害に関わったとして制裁対象に指
定したと発表した。家族を含めて米国への入国を禁止する。
 ポンペオ国務長官は声明でミャンマー国軍を「国全体で人権侵害や虐待を続けて
いる」と指弾。同時に「ミャンマー政府が人権侵害に関与した人物に責任を負わせ
る行動をとってこなかったことを懸念する」と表明し、同政府の対応にも批判の矛
先を向けた。
 2018年9月に国連人権理事会がまとめた報告書は、フライン司令官らを国際法廷に
訴追すべき容疑者だとして名指しで非難していた。



■ロヒンギャ難民キャンプがモンスーン被害、10人死亡 住居約5000戸が破壊される
 https://www.afpbb.com/articles/-/3235187
 (AFP通信 2019年7月15日 )

 100万人近くのイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)が収容されているバン
グラデシュ南東部の難民キャンプがモンスーンの被害に遭い、少なくとも10人が死
亡、多くの住居が破壊された。当局が14日、明らかにした。
 バングラデシュ気象局によると、ミャンマー軍の弾圧から逃れたロヒンギャ難民
が生活しているバングラデシュ南東部のコックスバザール(Cox's
Bazar)では、今月2日からの雨量が585ミリに達した。
 国際移住機関(IOM)の報道官は、難民キャンプで発生した土砂崩れにより、7月
前半の2週間だけで、防水シートと竹でできた小屋4889戸が破壊されたと説明。この
キャンプでは、丘の斜面に難民たちの小屋が多く建てられているという。
 国連(UN)によると、この難民キャンプでは4月以降、200回以上の土砂崩れが報
告されており、少なくとも10人が死亡し、5万人近くが被害を受けた。また、先週だ
けでも未成年のロヒンギャ難民2人が死亡し、約6000人が豪雨によって住居を失った

 さらに、750か所以上の学習センターが被害を受け、5か所が激しく損壊したこと
で、子ども約6万人の教育が中断したという。
 難民らは雨で物流や日常生活に影響が出ていると話す。その一人はAFPに対し、泥
水の中を歩いて食糧配給センターに行くのは大変だと訴え、「豪雨と突風で生活は
悲惨な状態になった」と嘆いた。
 また難民らは、飲料水の不足や、トイレが水浸しになったことで病気の流行が助
長され、健康上の危機が迫っていると訴えた。



■緑豆でバングラデシュ農家支援 ユーグレナ、ロヒンギャ難民も
 https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2019-07-19_2133437/
 (共同通信 2019年7月19日)

 身近な野菜、モヤシの原料である緑豆。この栽培事業である「緑豆プロジェクト
」を通じ、ミドリムシの健康食品などを扱う(株)ユーグレナが、バングラデシュ
農家の生活向上を支援している。同社で社会的課題と収益の両立を目指すソーシャ
ルビジネスを展開している佐竹右行執行役員(63)に、取り組みについて聞いた。
(編集部)

 ―緑豆プロジェクトを始めるきっかけは。
 「大学卒業後、野村証券に約20年間勤務後、独立して、いくつかの会社経営に携
わりました。今から約10年前に『雪国まいたけ』でお世話になっていたとき、その
会社がモヤシの事業をやっていたことが緑豆とのそもそもの出合いです。そこでの
ビジネスを引き継ぐ形で、ユーグレナに移りました」

 ―モヤシ生産の現状は。
 「モヤシの原料である、緑豆の供給は以前から不安定な状態でした。国内で食べ
るモヤシの大半は日本製だと思っている方が多いかもしれませんが、約9割の緑豆
は中国製なのです。輸入した豆を1週間から10日間、日本国内で発芽させモヤシに
しています」

 ―モヤシの値段は安い。
 「ほとんどのモヤシは事実上中国産ということになります。もし中国が緑豆の輸
出をストップしたら、日本でモヤシがほぼ食べられなくなります。多くのモヤシは
スーパーなどで、1袋30円前後で売られ、家計にやさしい野菜です。ただ、緑豆価
格は、約15年前の2004年が1トン約7万円でしたが、現在は25万円ぐらいにな
っているのです」

 ―原料の緑豆の価格が上がっている。
 「そうです。原料価格が大幅にアップしているものの、モヤシの販売価格は大き
く変わっていません。そんな環境下で、国内のモヤシメーカーはこの10年間で4割
ぐらい廃業している。もし緑豆の輸入がストップすれば、家計にやさしいモヤシが
高級品になるかもしれません」

 ―気軽に食べられない。
 「多くの日本人は、モヤシのそのような現状を詳しく知らないと思います。緑豆
を中国だけではなく、どこかほかの国でも作ることができればいいのでは、と考え
ました。その国は世界でもっとも貧しい国といわれていたバングラデシュでした」
 「その国の中核をなしている農家に緑豆を作ってもらえれば、その人たちの収入
が増えますし、日本にとっても安定的な食料供給が維持できるわけです。まさにウ
ィンウィン(相互利益)の関係だと考えました」

 ―現地での協力者は。
 「私たちの思いを、当時のグラミン財団におられ、バングラデシュの経済学者で
ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏に話したところ『すばらしいソーシャ
ルビジネスだ。合弁会社を設立しよう』ということになりました。その合弁企業が
私の名刺にあるグラミンユーグレナです(前身はグラミン雪国まいたけ)」

 ―契約農家の数は。
 「緑豆を作ってもらっているバングラデシュの契約農家は2018年度が約8千
人、19年度は1万人の見通しです。当初は100人くらいから始まった事業でした
が、年々増えています。18年度は約5千ヘクタールで約1600トンの収穫をし、
日本にもその一部を輸出しました。スーパーなどで売っているモヤシの袋で、約7
00万食相当になります。栽培の場所はバングラデシュの南部にある、ミャンマー
との国境沿いの町、コックスバザールなどです」

 ―農家の理解はあったのか。
 「バングラデシュでの緑豆の栽培ですが、毎年2月に種をまき4月末から5月に
収穫します。約65日で収穫できます。四季はなく、雨期と乾期の2シーズンで、雨
期にコメを、乾期には、換金作物として野菜、豆などを作っています」
 「農家たちは乾期の作物で、作付けが一番良さそうで、もうかりそうなものを選
びます。私たちは緑豆の作り方をよく知っており、現地で農民集会を開いて、こう
いう作り方をしてこうすれば、こういう値段で買い取ることを保証するなど、しっ
かりと説明します。そうすると、『やっぱり緑豆が一番利益が出る』と契約農家は
理解してくれるのです」

 ―農家たちは集まったのか。
 「集会でわれわれが説明した当初は、農家たちから『うそをつけ、俺たちはだま
されてばかりだった』との反応ばかりでした。100人集まっても5人ぐらいしか
契約農家にならなかった。1カ月、半年とかかって100人の契約農家を集めるの
に必死でした。しかし、今では口コミで広がり集会に1万人が集まります。1人当
たりの収入を200ドルも増やしているからです。今はお断りするのが大変になっ
ています」

 ―苦労するところは。
 「契約する農民が1万人規模と一口にいいましたが、1万人にどうやって栽培方
法を教えるのか、1万人分の緑豆を持って来たら、どこで緑豆を管理して、銀行口
座も持たない人たちにどうお金を渡すのか。そういう問題を一つ一つ解決していま
す。冷蔵庫、トラックもないですし、道路は舗装されていない。そういう現場で、
課題解決する仕組みをつくりあげるところがとても苦労しました」

 ―長年の取り組みが実を結んだ。
 「ウィンウィンの関係を目指し、10年間の知見、経験を積みました。一方、当社
は栄養食品の会社ですから、ポリシーとして以前から、バングラデシュで、ユーグ
レナ入りのクッキーを金・土曜の休日を除いて毎日1万人の子どもたちに無償で配
布しています。ミャンマーからの約100万人の難民がバングラデシュに越境して
くる『ロヒンギャ問題』が起こった2017年にわれわれは、このクッキーの栄養
を増量して20万人分お届けしました」
 「そのときは、当社社長の出雲充も現地入りしました。そして後日、これまでの
活動を知った、日本の外務省や国連から、ロヒンギャ難民への支援で、何かできな
いだろうかとお話がありました」

 ―それで国連と事業提携を。
 「今年2月、国連機関の世界食糧計画(WFP)と当社が緑豆プロジェクトで、
事業連携の覚書を締結しました。これは日本企業としては初めてのことです。10
0万人の難民がミャンマーから流れ込んで来ており、ロヒンギャ難民の食料支援の
ための事業です」

 ―具体的には。
 「WFPとの提携で、約5億5千万円のプロジェクト費用のうち、今回は約2億
2千万円の活動資金を受領します。これで緑豆の栽培技術移転などいろいろな費用
に充てます。同時に、WFPがロヒンギャ難民の情報をカードに登録し、難民が地
域の小売店から食材を購入することができるシステムを構築し、彼らがそのカード
を活用し、農家たちが作った緑豆を買うという仕組みをつくりました」

 ―なぜそこまで熱心に。
 「冗談ですけど、バングラデシュに行ったら恐ろしい伝染病があるから気をつけ
なさいと言われました。致死に至る病気が四つあって、ジカ熱、デング熱、マラリ
ア、そして、ユヌス熱だと。そして、先ほど登場しました『ムハマド・ユヌス熱』
にかかったら一番、深刻なことになるといわれました(笑)。私はユヌス熱にずう
っとかかっているのでしょう。それほど、魅力的な人物です」

 ―今後の目標は。
 「社内で私の代わりにできる人が増えたら、バングラデシュ以外の途上国でも、
緑豆プロジェクトを進めたい。これは私だけではなく、ユーグレナ創業者で社長の
出雲も同じ思いを持っています。当社はそもそも、ユーグレナ(ミドリムシ)に秘
められた無限の可能性を信じ、世界に栄養を届けたい、そんなことを目指している
会社ですから」

 さたけ・ゆうこう 1955年京都市生まれ。早稲田大卒業後、野村証券などを
経て、2014年にユーグレナ入社。グラミンユーグレナの共同代表を兼任。
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