春さんのレアトラ、ニセトラ、レアイージーリスニング三昧

レアなサントラやニセトラ、そしてイージーリスニングをご紹介するブログです✨

Love Sounds Style / CINEMA EDITION

2019-06-23 22:00:32 | 日記
今は亡きジャズの名サックス奏者で、ニセトラの父ともいえる尾田悟氏の突然のカミングアウトで、そこそこ知られる存在となったニセトラ。晩年はニセトラの生演奏のライヴをされていた。
ニセトラの仕事は殆んどがキングレコード。そのキングレコードがこんなCDをリリースしていた。題してLove Sounds Style/CINEMA EDITION
主に1960~70年代にかけて制作された国内録音によるイージーリスニング・アルバムより選曲・構成した作品集で、今回はキングレコードに残された膨大なカタログの中から、カテゴリーごとに構成した5タイトルのひとつである。
1960~70年代はこうしたインストゥルメンタルやイージーリスニング・ヴォーカルの企画盤が定期的に制作されており、そこでは映画音楽や海外のポピュラーヒットの数々が洒脱なアレンジを用いてカバーされていた。ところが、そのあまりに膨大なタイトル数から、再編するのが困難で、さらに極めて匿名性の高いアーティスト表記などから、これらが顧みられる機会はなかなか訪れなかった。このシリーズの楽曲の大半が初CD化となるものである。当時の情報収集は大変なもので、現在のように輸入盤なんてなかった。それで国内録音盤を作るより方法がなかった。「オリジナル・サウンドトラック盤」と銘打っていながらも、実際は国内録音となるサントラ盤の存在である。サントラ・ファンの間ではお馴染みの"ニセトラ"という呼称があるが、これ即ちオリジナル・サウンドトラックに似せた7という意味の"似せトラ"、あるいはオリジナルにあらずという意味での"偽トラ"、
両方の意味が含まれている。今を遡ること2006年2月4日の毎日新聞に『女と男のいる舗道』などの主題曲が"日本製"だったという記事が掲載された。以下は該当記事の抜粋。ジャズ・サックス奏者、尾田悟さん(78)が「そろそろ封印を解く」と主題歌誕生の事情を明かすとともに、「幻のスクリーンテーマ集」と題してコンサートを開く。尾田さんが手掛けた作品はほかに『春のめざめ』『太陽は傷だらけ』『トプカピ』などヒット映画ぞろい。「合わせて20本は下らない」という。どの映画も62年から66年あたりの欧州作品ばかりだ。スイング派の人気者だった尾田さんは当時、流行のモダンジャズになじめず、歌謡曲や民謡をジャズ化し、売れっ子になっていた。「ある時、レコード会社から映画の主題曲を作ってくれ、と言われた。試写室で公開前の映画を観ると、主題曲がついていない。オリジナル版についている音楽は、短い主題が繰り返されたり、音響効果程度のもの。その中からモチーフを抜き出して、編曲や加筆し、一曲の形にする。それがサントラ盤として発売され、公開時にはタイトルバックで流れた」と回顧する。『殺しの免許証』など「テーマがなく全体が自作」という曲もあるほどだ。(中略)当時を知る元社員によると「オリジナル版の作者には、サントラ使用の著作見料を払ってある。尾田さんの曲は、日本では映画に使われているのでサントラ盤というのもウソではない」と苦笑する。封印を解くことに関して尾田さんは「かなりの曲が映画ファンの記憶に残っている。白状しておかないと誤解が歴史になる。」と音楽家の責任を語る(後略)ミシェル・ルグランは『女と男のいる舗道』のサントラ盤を聴いて、それはサントラ盤ではないと証言している。ともあれ、こうしてニセトラが作られる背景に、我々の想像以上の苦労があったわけである。このアルバムには、主に尾田悟氏の手掛けた作品と、ジャズ・ピアニスト、萩原秀樹氏の作品が収録されている。萩原秀樹氏の変名は、ご存知の通りモーリス・ローランだが、氏は植木等の『スーダラ節』の作者、萩原哲晶氏の実弟であるが、尾田悟氏の作品が「サントラ盤」なのに対し、萩原秀樹氏の作品はカバー曲である。面白いアルバムも出たものだ。

『殺しの免許証』
『女と男のいる舗道』
https://youtu.be/JNiJ-L70PB4



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8 コメント

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Unknown (ボルナ)
2019-06-24 05:20:32
そもそも本国でサントラ自体が制作されなかったのか、あっても輸入されなかったかは作品によるのでしょうが、日本で作ればそれなりに売れていたことからするに、商売としては妙な話ですね。
「サントラ使用の著作権料を払ってある」というのは随分良心的ですが、本国からクレームが来なかった理由は判りました(笑) まさか「サントラを製作した場合の収益やら制作費やらを本国で計算したら、日本から著作権料だけもらった方が割がいいと判明したから、あえて作らなかった」なんてことはなかったと思うのですが(笑)

話からすると日本では「映画には主題曲や豊富な音楽が必要」という考えがあって、外国ではそうではなかったとも聞こえます。これについては一概に向こうが先進的とも言えないでしょう。

「断片的なモチーフを集めて1曲にする苦労」というのは思い当たる作品が複数あります。それだけに、「既にしっかり音楽がある場合でも、日本公開版限定で新たに曲を付ける」というケースは今もって謎なのですが。

個人的にちょっと笑ったのはミシェル・ルグランの証言です。そりゃ彼は単に事実を言っただけなのでしょうけど、アレがルグランの作風と全く違う(くさしているわけではありません)のは聞けばすぐ分かるので、「そりゃそう言うだろうさ」と思ってしまいます(笑)
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Unknown (862831)
2019-06-24 12:06:57
ボルナさま。映画に音楽を付けるというのは、我々が考えている以上に大変な作業なのが、尾田悟氏を初め、関係者の話でよくわかりますね。まあ、仰る通り日本ほど欧米では、映画に音楽を付けることに比重を置いてなかったのかも知れないですね。断片的な効果音や短いフレーズを加筆し、ひとつの楽曲に仕上げる。音楽家ならではできることかも知れないですね。『女と男のいる舗道』の音楽は、実際にミシェル・ルグランのペンによるものですが、このロジェ・フランス楽団は演奏ほどアレンジも軽くて、しかも曲は映画の中で流れて、わずか40秒もしないうちに切れてしまいます。だから、ルグラン作ではあるものの、この演奏はサントラではない、と証言したそうです。改めてニセトラの存在が大切で重要だと、知らされますね。
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Unknown (862831)
2019-06-24 13:15:36
ボルナさま。案外、映画音楽のルーツはニセトラなのかも知れませんね。
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Unknown (貴日)
2019-06-27 21:09:43
そんな事情があったんですね。ニセトラと言っても日本版では映画に使ったということですよね^_^
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Unknown (こめへん)
2019-06-27 22:08:50
「殺しの免許証」は、このズンドコ感がじつに癖になるw
そして「男と女のいる舗道」うーんこれはどう聴いてもルグランサウンドではないですねw日本のお洒落なサラリーマンとBGの恋愛映画の曲にも聞こえたり。
この「Love Sounds Style/CINEMA EDITION」というCD、買いたくなりますね。
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Unknown (862831)
2019-06-28 09:31:26
こめへんさま。ニセトラに特化したアルバム、それもニセトラと初めから記して出たアルバムは、これが初めてですね。イージーリスニングのシリーズとして発売されていますよ。音もリマスターしていいですし、何よりも一曲一曲の詳細が詳しく書かれています。『リオの嵐』ムービートーンズの演奏も、ここではステレオ録音です。これはオススメのアルバムですね。
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Unknown (862831)
2019-06-28 09:35:54
貴日さま。特にヨーロッパ系の映画は音楽が付けてない場合が多く、それを穴埋めするために外国人名で日本人作曲家が、たくさんの「名曲」を書いていた訳です。多くはジャズやグループサウンズの作編曲家が手がけていますよ。
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Unknown (862831)
2019-06-29 18:05:41
貴日さま。結局、トーキーの時代になっても、欧州の方では、まだ映画音楽が定着していなかったのでしょうね。
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