所属クラブのニュースにも書きましたが、11月21日までの期間に、総務省が「高速電力線搬送通信と無線利用との共存条件案に係る意見の募集」(所謂パブリックコメントの募集)を行っています。
このPLCに関しては、星雲賞受賞SF作家である野尻抱介さんが、ご自身のサイトで美しい言葉で反対を表明されていますので、下記に引用させて頂きます。
また、所属クラブのメーリングリストに、私が投稿した文章を下記に掲載します。
追記:JARL(社団法人日本アマチュア無線連盟)のサイトでも、このパブリックコメントの件が掲載されていますが、反対とも賛成とも書かれていませんね(パブリックコメントを送りましょうとすら書かれていません)。また、「PLCについて」の記事によると、電波適正利用推進員協議会事務局に対して、この件についての問い合わせをした所、「コメントを出す立場には無い」と言う(絵に描いたような)木で鼻をくくった回答が帰って来たそうです(この電波適正利用推進員には、多数のアマチュア無線家が任命されています)。なんだかもう、にんともかんとも(苦笑)
このPLCに関しては、星雲賞受賞SF作家である野尻抱介さんが、ご自身のサイトで美しい言葉で反対を表明されていますので、下記に引用させて頂きます。
これは単なる趣味や学術研究にとどまらない、より深い意味を持つ社会問題と考えています。
私たちは電磁波を通して自然界を観てきました。かすかな星の光。惑星や銀河の放つ電波のささやき――そして人為的な放送電波にも、気象や電離層、ひいては太陽活動のありさまが反映されています。
PLCは、波長の長短を除外して考えれば、夜空から星を奪う光害と同じものです。光害やデジタルノイズの氾濫を許すのは、自然に対する感受性の鈍磨です。こうしたノイズが過去20年にどれほど空を汚したか、天文学者や無線家、BCLの意見は一致しており、現状維持でよいなどということは断じてありません。
空から届くかすかな電磁波に目をこらし、耳を澄ませることで得られる感動は、かつてなら誰でも味わえました。その感動を忘れなかった人々が、天文学や電子工学の礎を築いたのです。目先の利益や利便性ばかりを考え、この感動を子供たちから奪うことが、大人である私たちに許されるでしょうか。これ以上負の遺産をのこさないために、私はPLCに反対します。
また、所属クラブのメーリングリストに、私が投稿した文章を下記に掲載します。
今日のミーティングでも話題にしましたが、表記の通り、総務省がPLCに関する(多分最後の)パブリックコメントを募集しています。
このパブリックコメントの結果、反対意見が少ないと言う評価になった場合、PLCは実用化へ向かって暴走する事になります。
現在のPLCは、以前言われていた屋外の電灯線にインターネットのデータを流すと言う事ではなく(これは、漏洩電波を基準値内に収める事が事実上不可能なため、メーカー側が断念したようです)、家庭内の家電をお互いに接続するための、CE-PLCに変わっていますが、いずれにせよ家庭内電気配線は、平衡/不平衡変換が何度も繰り返されていますので、インピーダンスマッチングがまったく取れていない状態の(しかもシールドがまったくされていない)電線にRF信号が流されると言う、大変異常な規格である事には変わりはありません。
また、現行の電波法では、無線局ではないPLCは、無線局からの電波の影響を受けても苦情を申し立てる事は出来ませんが(逆に無線局に対して妨害を与える事は認められていません)、実質的にPLCを使用している家庭にアマチュア局が妨害を与えた場合は、法的にではなく、地域社会的な問題を生じさせる可能性が極めて高いと思われます。
さらに、外来電波によってPLCに接続されている家電が誤動作した場合(これは、アマチュア無線の電波だけではなく、違法な高出力無線機を搭載しているトラックからの電波で起こる可能性が大です)、致命的な結果を招く恐れも充分にあります。
#例えば、エアコンの誤動作による乳幼児の死亡事故や、暖房装置の誤作動による火災など、枚挙に暇がありません。
短波帯の電波を利用している我々アマチュア無線家は、このような異常な規格を商売のためだけに「意地でも実装」しようとしている、各メーカー(の担当部署)に対して、断固として反対意見を表明するべきではないかと考えています。
なお、PLCが現在まで事実上凍結されていたのは、前回総務省が募集したパブリックコメントの反対意見が、総務省の判断に大きな影響を与えたためですので、今回の最終防衛ラインでPLCに止めを刺す事も充分可能だと思われます。
是非、11月21日の締切までに、総務省に対して意見を送って下さい。
ラジオ日経の意見書(必ずご覧になって下さい)
クラブのニュースの該当記事(参考になるリンクを掲載しています)
総務省パブリックコメントのサイト
パブリックコメントの出し方は、上記の総務省のサイトで説明されています(もちろんインターネット経由で出せます)。
追記:JARL(社団法人日本アマチュア無線連盟)のサイトでも、このパブリックコメントの件が掲載されていますが、反対とも賛成とも書かれていませんね(パブリックコメントを送りましょうとすら書かれていません)。また、「PLCについて」の記事によると、電波適正利用推進員協議会事務局に対して、この件についての問い合わせをした所、「コメントを出す立場には無い」と言う(絵に描いたような)木で鼻をくくった回答が帰って来たそうです(この電波適正利用推進員には、多数のアマチュア無線家が任命されています)。なんだかもう、にんともかんとも(苦笑)
>分りにくい通信設定が容易になるわけではない
全くその通りですし、もしPLCで容易になるのであれば、問題がもっと少ない無線LANを使えば、もっと容易になるのではと言う事ですよね(笑)
>がごちゃごちゃですね^^;)。
欧米でのBPLがアクセス系なのに対し、日本のPLCは(メーカーが諦めたので)宅内系になっていると言う事が、充分一般に理解されていないからじゃないかと。
#実は、私もこの件を真面目に調べだしてから、「なんだ、宅内だけになってるんだ」と思ったクチですから(苦笑)
>必ずしも全く役に立たないとは言えないと思います。
確かに家電どうしの接続では「役に立たない」とは言えませんね。イーサネットの代わりにPLCを使って携帯電話と通信できるサーバーもどきとHDDレコーダーやエアコンを接続すればそれなりに用途はありそうです。しかし、これも「機器間の接続が用意になるのであって、実際、知識の無い人には分りにくい通信設定が容易になるわけではない」ですよね(笑)。
しかし、今回のPLCの問題については、宅内利用やら「情報弱者」対策やらの話題がごちゃごちゃですね^^;)。
>個々人で反対の声明を上げて行くしか方法はありません。
その通りだと思います。
なお、本店はともかく各支店ではPLCに何とか反対して行こうと言う動きがあります。ただ、組織としては本店が容認している事を支店が反対する訳には行きませんので、色々と姑息な手段を使わざるを得ないのですが(苦笑)
>全く役に立たない
今回のパブリックコメントは、アクセス系ではなく宅内のCE-PLCですので、インターネット経由で外部から家電を制御すると言うコンセプトにおいては確かにそうですね。
ただ、家電同士を接続する用途では、インターネットへの接続は必須ではないので、必ずしも全く役に立たないとは言えないと思います。
それと、PLCは、家庭内での映像伝送(例えば、コンセントに繋ぐだけで映像が映るテレビとか)方面でも、メーカーが期待している技術ですので、「役に立たない」としてしまうのは、ちょっとマズいかも知れません。
「PLCに関する、某ちゃんねるにおける不穏な噂」に7J3AOZさんが書かれていたこととも関連しますが、この様な自体になるまでJARLは一体何をしていたのだろうと思います。
また、短波帯を使用しているのはアマチュア無線だけではないにもかかわらず、ノッチフィルターで一件落着された日には下手をすれば日本のアマチュア無線家すべてに汚名が着せられるということを認識していないとしか思えません。このまま態度を不明瞭にしている状態では、JARLはあてにできませんね。とにかく、個々人で反対の声明を上げて行くしか方法はありません。
ところで、JH3YKV's Amateur Radio NewsのPLC関連リンクで、「PLCはADSLまたは光ファイバーが整備されていなければ全く役に立たない」と書かれているblogを読みましたが、この記事とPLC-JのWebPageに掲載されているPLCの概念イラストを見ると、「う、全くそのとおり…」と今更ながら気が付きました^^;)。
>稚拙な意見でなんだが気恥しい限りです^^;)。
いえいえ、私の意見はもっと稚拙ですから(笑)
ただ、今回のパブリックコメントには、色々な分野から多角的に反対する事が望ましいので(例えば、「アマチュア無線が出来なくなるから反対」と言う1行だけでは、「アマチュア無線のバンドにはノッチフィルターを入れるので大丈夫」の一言で、意見がキャンセルされてしまいます)、buchiさんのご意見は大変貴重な物だと思っています。
>学術よりの立場で書きました。
全く仰るとおりですね。役人は権威に大変弱いですから(苦笑)、専門の学者のみなさんの意見は、大変重視されるのではないかと思います。
>電波を使うことは地球を体感することだということですよね。
果たして日本の役人(及びPLC-Jの連中)が、この辺の情緒を理解するかどうかは難しい所かも(苦笑)
私のblogのPLC反対に関するコメントにJH3YKV's Amateur Radio Newsでリンクを張って頂いたようですが、まったくアマチュア無線やBCLサイドの意見でないし、稚拙な意見でなんだが気恥しい限りです^^;)。
意見を述べるに当って、どういう立場で反対意見を述べるかについて結構考えました。私はアマチュア無線家(ある定義では違うようですが…しつこい(笑))でBCLも好きな人間なのですが、いずれの立場もあまりに趣味性が強く逼迫性に欠けるのではないか?と考えた末に、学術よりの立場で書きました。普段役人相手に仕事をしていると、こういった思考になってしまうのがいやなところなんですが…。
でも、実際に力強い意見は野尻抱介さんが書かれていたように、電波を使うことは地球を体感することだということですよね。
>長谷川JARL関西地方本部長(JA3HXJ)にお聞きしようと思っています。
直接お話はまだお聞きしておりませんが、こちらで独自に入手した情報では、PLCに関してJARL会長の原昌三氏の見解は、下記の通りだと言う事です。
「アマチュアバンドに対する影響が減衰するノッチフィルターが実装されていれば、JARLとしてはPLCの実装は容認する」
#なお、これは私が独自に入手した情報である、公式情報ではありませんのでご注意ください。ただ、今回の見解はJARL電磁環境委員会の意見を全く反映していない可能性が高い事を、委員会のみなさんの名誉のために申し添えて置きます。
>本来なら一番先頭になって反対キャンペーンを行って行く団体だと思うのですが。
現在のJARL執行部は、残念ながら長谷川さんのご期待に沿う形での動きが出来る団体では無いと言うのが、私の正直な感想です。
この現在の状況は、執行部のほとんどが高年齢化しており、アマチュア無線の未来に関して、何のビジョンも持っていない事に起因しているのではないかと考えています。
>オブザーバー、参考人としても参加することは出来ませんでした。
その事は知りませんでしたが、もしBCL関係のみなさんが、JARL本店に対して要望を出したのであれば、充分考えられる事ですね。現在のJARL本店を支配している空気は「事無かれ主義」ですので(苦笑)
>ユーロ方式のHAMバンドへのノッチで事を済ますのではないかと心配しています。
そもそも、JARL執行部の老人は、PLCの何が問題であるのかを全く理解していないと思われます。従って、政治、経済絡みの圧力が個人的にかかれば、ころっと相手側陣営に寝返りかねないなと思っています(例えば、JARLの会長はPLC推進側の某企業OBです)。
そもそも、「ノッチフォルター」を理解しているかどうかも怪しいので、「あ、そのフィルターさえ入れれば大丈夫なんだね。よっしゃよっしゃ」と考えているのではないかと思えてなりません(苦笑)
#但し、芳野さんを始めとする電磁環境委員会のみなさんががんばっておられるのは側聞しております。現在のJARLをかろうじて支えているのは、こう言う仕事を現場でしているみなさんです。
>蛇足ですが野尻さんはNDXCメンバーです。
それは承知しておりました。いつか野尻さんとお空でお会いしたいと願っております(もっとも、私は電信が苦手ですので、電話に出て頂かないと厳しいのですが(笑))。
#余談ですが、本日JARL本店で理事会が開催されているはずなのですが、今回のパブリックコメントに関する話題が会議の席で出たかどうかを、長谷川JARL関西地方本部長(JA3HXJ)にお聞きしようと思っています。出ていなかったとしたら、この件に関して本店は全く当てにならないと判断せざるを得ませんね。
NDXCの長谷川と申します。
JARLの動きが3年前とは大きく異なっているような気がしてなりません。
本来なら一番先頭になって反対キャンペーンを行って行く団体だと思うのですが。
3年前の公聴会にはBCL/DXerも参加できましたが、今回の研究会には一番障害の影響を受けると思われるBCL/DXerはオブザーバー、参考人としても参加することは出来ませんでした。
先日も日本アマチュア無線連盟電磁環境委員会委員長 芳野 赳夫氏の名前でEメールを受け取りましたが「アマチュア無線、短波放送、電波天文などの短波利用者にとっては未だ大いに不満な値であり、アマチュアとしては更に各バンドに対し35dBのノッチを入れてもらうことを最後の委員会で強く主張します。」と言うことで反PLCの立場ですが最後はユーロ方式のHAMバンドへのノッチで事を済ますのではないかと心配しています。
蛇足ですが野尻さんはNDXCメンバーです。