神林長平の「敵は海賊」シリーズの最新作「敵は海賊・短篇版」を読了しました。
この短篇集は2009年に出たもので、1981年にSFマガジンに掲載されたこのシリーズの最初のお話「敵は海賊」(「狐と踊れ」に収録)を始めとして、ある女海賊を描いた(海賊課が出てこない)お話「我が名はジュティ、文句あるか」、匋冥の良心である白猫クラーラと匋冥との出会いのお話「匋冥の神」(このお話は「敵は海賊・海賊の敵」の後日談にもなっている)、そして「戦闘妖精・雪風」と「敵は海賊・海賊版」の星雲賞ダブル受賞を記念した短編「被書空間」が収録されています。
「敵は海賊」は初出の時に読んでいたのですが、あらためて読み返すとアプロがかなりハードボイルド(と言うか凶悪(笑))で、最新作では、やはりずいぶん丸くなったなぁと。「我が名はジュティ、文句あるか」は、このシリーズとしてはかなり異色な作品で「母親と娘の関係性」を描いています(心理学的なお話と言っていいのかも)。「匋冥の神」はクラーラとの出会いを描いた作品なんですが...いや、クラーラって本編中で匋冥から分離された話があったような...。「被書空間」は初出で読んでいましたが、両シリーズのファンで未読の方にはオススメです。
なお、作者あとがきも必読です。