20歳を目前にして石川遼はこう語っていた。
「20歳になるからといって、特別な感情はないんです。初優勝してからプロに転向し、4年目のシーズンを迎えた。どの年も激動の1年ばかりで、ここまであっという間の出来事でした。(20歳になっても)この日々を繰り返すだけです」
確かに20歳の誕生日を境に何かが劇的に変わることはない。それでも20歳になることは誰にとっても人生における最初の大きな節目だ。15歳245日でツアー初優勝を飾って以降、ゴルフの花道を歩んできた石川にとって、ホスト大会であるANAオープンは、10代を締めくくる格好の舞台だった。そして、賞金ランク1位とはいえ、今シーズン未勝利の石川としては、「優勝」という結果で20歳の船出を飾りたかったに違いない。
しかし、通算4オーバー99位でまさかの予選落ち。「寂しい誕生日になりました……」と、大会3日目(9月17日)の誕生日をギャラリーから祝福されることなく、失意の表情で札幌GC輪厚コースをあとにした。
ANAオープンでの石川は初日からドライバーが大乱調で、ティーショットを右に左に大きく曲げていた。急遽シャフトの硬さを変更して臨んだ2日目も、相変わらずフェアウェーをキープできず、10番では木の枝にボールを引っかけるなど、復調の気配なくラウンドを終えた。
「スイングがしっくりこなくって……。水曜日まではそうじゃなかったのに、試合となると狙ったところに行かなくなった。それがゴルフだと思う」
上位争いを演じたフジサンケイクラシックから一転、期待されたANAオープンでは予選落ち。今季の石川はとにかく波がある。予選ラウンドで18オーバーと大叩きした日本ツアー選手権のあと、海外メジャーの全米オープンでは予選を通過して昨年以上の結果を残したり、7オーバー122位で予選落ちしたサン・クロレラクラシックの翌週には、WGC(世界ゴルフ選手権)第3戦のブリヂストン招待で優勝争いに絡んだり(最終成績は4位)と、いいときと悪いときの落差がきわめて激しい。
原因のひとつは、今季何度となく行なっているスイング改造の影響だろう。新たなスイングが自分のモノにならないうちに、また別のスイングにチャレンジする。ひたむきな向上心がそうさせるのだろうが、少しでも歯車が狂うと目も当てられないほどの大叩きをしてしまっているのも事実だ。
ただそれも、すべてはワンランク上のゴルフを目指しているからこそ。世界で勝つために試行錯誤を繰り返しているこの時間が、必ず実を結ぶ日は来るはずだ。石川自身、優勝から遠ざかっていることに少なからず焦りを感じながらも、手応えは得ている。
「プロになってから、これほど長い期間(昨年11月の三井住友VISA太平洋マスターズ以来)勝てていないというのは初めて。でも、優勝争いに加わり続けることで、勝てる日は必ず来ると思うし、優勝するための準備は整っています。それは、一週ごとに近づいている。技術的にも、向上しているという確信を持てています。1、2年前よりもいつでも勝てるという状況にあるはずです」
9月22日からは、再びホストプロを務めるパナソニックオープンが開催され、シーズンクライマックスに向かってビッグトーナメントが続いていく。
「10代で積み重ねてきたものを、20代で発揮したい。20歳になってこれからの1年は(人生の)ターニングポイントになる予感がします。もっともっとスケールの大きなプレイをしたいですし、世界のプレイヤーに追いつき、追い越していきたい」
10代の最後に、大いに悩み、もがいてきた石川だが、それは彼にとって避けることのできない”大人への階段”だったはずだ。真価が発揮されるのは、20歳となったこれからだろう。その先には、小学校の卒業文集で書いた「20歳でマスターズ優勝」というはるかなる夢が待っている。
(webスポルティーバ )
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