al baritono

アマチュア声楽家の独り言 ~ 歌ときどき仕事(笑)

夕鶴記念館

2012年04月16日 | 声楽
ネットで夕鶴に付いて調べ、スコアを読み、CDを聴き、自分の「夕鶴ノート(惣どノート)」を作る日々です。

昨日は伊豆市(旧天城湯ヶ島町)の「夕鶴記念館」に行ってきました。木下順二先生のゆかりの地、という触れ込みですが先生は東京生まれ、父親の実家が福岡ということで「どこがゆかりやねん!」と思ったら、天城湯ヶ島の白壁荘という旅館の主と交流が深かったとか(w

前日の土曜日に確認のために天城温泉会館(ここに併設されている)を調べたら、何と2009年に閉館というニュースが。あれ?ダメじゃん(汗;
念の為に市役所に電話してみるも当直で分からず、失礼をも顧みずに白壁荘に電話してみた。流石に客商売ですね、丁寧に対応して下さって、会館は閉鎖されたものの記念館は入場できるはずとのこと。近くまで来てお困りの際は遠慮無くお立ち寄り下さいとまで(^^

意を強くして、せっかくだから新東名で沼津まで。いやあ開通翌日の日曜日とあって混んでることったら。PAも軒並み満車。特に駿河湾沼津SAは3KM手前から左車線が渋滞です(笑)

アップダウンも少なく、カーブも大きく、まだ傷んでいないスムーズな路面を快適にドライブ。山の中でトンネルも多く景色を楽しむ道じゃないなあ。単調だし退屈しそう・・とか、眠くなりそうだなあ・・とかブツブツ言いながら(w

途中の寄り道や昼飯ネタはおいといて(爆)

さて、お目当ての「夕鶴記念館」

閉館され今やバス停になってしまった天城温泉会館に併殺された六角堂が記念館になっています。この温泉会館は日帰り温泉(宿泊も可能だったみたい)で公共施設として立てられたけれど維持費が嵩んで赤字続きでとうとう閉鎖されたようです。夕鶴記念館と共に天城ホールという小劇場もあって、なかなかの施設。広い駐車場もガラガラで却って閑散としていました。



記念館は受付1名(笑) 「見れますか?」「はいどうぞ」
コピー機で印刷しカットした薄っぺらな入場券。
「只今ビデオの上映の準備をしますから暫くお待ち下さい」
うすら寒い無人のシアター・・何だか夕鶴が可哀想(汗;

でも、15分という短いビデオでその大半は戯曲夕鶴の誕生のいきさつやあらすじでしたが、山本安英の演じる舞台のスチル写真が何枚か紹介され、その舞台のイメージ・・与ひょう・惣ど・運ず・子供たちとの絡みが具体的なイメージとして捉えることが出来ました。場面場面での舞台での立ち位置と動き・・。

2Fには数々の資料。最も参考になったのは実際の舞台(演劇)で使用されたセットの実物展示です。



オペラでもほぼこれと同じ物が使われるはずですから。ここで「与ひょう」が寝てるんだな。「惣ど」はここで鶴の羽を見つけて、この縁側に腰掛けて、その時「運ず」はここで・・とか。

展示物の中で心を打ったものの一つがコレです。




ガラス越しで見えにくいかも知れませんが山本安栄さんの直筆の色紙です。

 鶴は
  あなたの中にも
   きっと棲んでいる


経済至上主義の今日、人としてあるべき純なものへの憧れや人間回帰への期待が滲んでいます。

純で聖なる「つう」、邪悪で強欲な「惣ど」、物欲の手下となって動かされる「運ず」、その狭間で誘惑に負けてしまう「与ひょう」・・その誰もが自分の心の中に棲んでいる様な気がしてなりません。

幕が上がると同時に聞こえる子供たちの純真な声、そして終幕にも聞こえる子供たちの声に救われると同時に、子供たちの本来人間が持っている純なる心が、知らず知らずに汚れていくことに、孫の姿を映して見てしまいます。子供たちを汚しているのは大人なんだ・・と。

しかし一方で、子供たちだけでは、純な心だけでは生きていけない社会。致し方なく汚れていく私たちも、どこかで「つう」や子供たちのような純な心を失わずに居たいもの。

観終わった後、そんな気持ちでホールを後にしてもらうために、今自分はどんな「惣ど」を演じるべきか!

・・・って、受かってもいないのにねえ(汗;

無謀な挑戦

2012年04月11日 | 声楽
昨夜のレッスンで、結局のところオーディションに挑戦することに(汗;

いつものように先ずは発声から。もう師匠はバスと決めつけているらしくFisまでしか出しません(笑) ヴェルディ・バリトンのアリアに未練のある僕は何とかGまでコントロール出来るようになりたいと思っているんですがお構いなし。まあ、師匠には刃向かえませんから・・。

あっと言う間に声が出来、久々のコンコーネです。29番が2月中旬に一度さらってそれっ切りでしたが簡単にパス。

師匠は、「さて・・」と、やおら夕鶴のスコアを持ち出して・・え?って感じ。

いきなり、歌ってみようか・・ってんで・・

したら・・

いいじゃなぁ~い?鈴木さんにピッタリよね。

って、あなた、どこまで人を持ち上げるのが上手いんですか(爆)

ってことで、先ずは崩さずに譜面通りに歌う練習。しっかり譜面を叩き込んでから崩しに入ります。歌うところ、喋るところ等々。

「惣ど」は若い声よりも多少年期の入った声のほうが向いてるから、ひょっとしてイケちゃったりして・・なんて冗談交じりに(笑)

たっぷり歌って、帰りに伊藤京子さんのCDを借りてきました。帰路の車中で聴いてみましたが、何と声の可憐なこと。「つう」の純真さ、可愛らしさ、そして悲しみが心に染み込むようで。amazonで購入したCDの鮫島さんも実力者ですが、伊藤先生にはとても敵いませんね。

そいうえば、昨今のオペラ歌手、特にソプラノは近代ベルカントが主流で、肉食系のソプラノ。塊感のある肉感的な強い声ばかりです。久し振りに、透明感のある透き通るような綺麗な声を聴いて・・何だか気持ちがいい。

youtubeで探してみてもコレ位しかありませんでしたが貼り付けておきます。



伊藤先生も、今年の2月でもう御歳85歳!2009年の国文祭オペラの時にお会いした時でさえも随分小さくなられていて・・

このオーディションで聴いてもらうのが最後かもしれないと思うので、合否を離れて最高の自分を先生に聴いてもらいたいと・・

無謀な悩み(笑)

2012年04月10日 | 声楽
来年の県民オペラ「夕鶴」のソリストオーディションを受けないか?と師匠から話があったことを書きましたが・・その後師匠に連絡したら「ホントにやってみる?」と言われました(笑)

どうやらその場の勢いだったらしい(汗;

とは言うものの、ちゃんとスコアとCDは用意してくれてあったようで、まんざら勢いだけではなさそうです。「アメリカ留学から帰ってきた芸大出のバスバリトンが受けるだろうから無理だと思うけど受けるだけでもイイわよね。先生方に知ってもらえるだけでも・・。その内に何か声が掛かるかも知れないしね。」と。

まあ、まかり間違って受かっても、オペラ未経験(ソリストとして)、ましてや県民オペラという大舞台、さらに出演者はソリスト4人と児童合唱団だけ、さらにさらに・・「惣ど」はストーリーを引っ張る主要な役柄なので、それを演じるなんてねえ・・(滝汗;

でも、CDを何度も聴き、スコア(台本)を読むに連れ「やってみたい!」という気持ちだけは増幅する。困ったもんです。

譜読みをし音取をし、歌ってみる。難しい。字幕の無い日本語による公演なのでテキストを明確に観客に届けなくてはならない。語り口調で音程が取りにくい上に、CDの中村邦夫さんは語感を優先して微妙に音程を変えて歌っています。例えば同じ音高が続く場合に言葉の持つピッチ、例えば「立った」と言う時に始めの「た」を「った」よりも多少ピッチを上げて歌ってるんですね。

何度も聴き、何度も歌っている内に、何となく舞台の情景が想像できて歌に気が入ってきます。今までイタリアオペラのアリアを歌っていた時とは別の感覚です。その時の表情や仕草まで分かるような・・

そうなると俄然ファイトが湧いてくるんですが・・

気持ちと現実のギャップが大きいだけに・・嗚呼!(滝汗;;;;

夕鶴

2012年04月05日 | 声楽
師匠から次の指令が出ました。

県民オペラのソリスト公募があるからオーディションを受けなさい。

( ̄□ ̄;!!

実は数日前にオペラコンクール事務局から書類が来ていました。これです。
http://www.suac.ac.jp/opera/2012/03/4.html

なんと團伊玖磨の「夕鶴」です。



募集は「運ず(バリトン)」と「惣ど(バス)」。当然バスの「惣ど」です。何となく気には止めていましたが、受験するなんて思ってもいませんでした。

で、早速ネットであらすじや登場人物の役柄、youtube動画、識者の解説などを読み漁ると・・。なんと「惣ど」はかなり重要な役割ではないですか。ある意味で主役の「与ひょう」以上に。

ドラマの構成上は、純なる者の「つう」と邪悪な「惣ど」との鬩ぎ合いが軸になっています。それが「与ひょう」の中に葛藤を生み、とうとう邪悪な心が勝ってしまい悲劇となる・・と言った構図ですね。

そんな意味で。このドラマを進めているのは「惣ど」。幸福だった「つう」と「与ひょう」が「惣ど」の出現により人生が狂っていく。

昨日CDが届きました。同時に注文したヴォーカルスコアは未だ届きませんがCDジャケットに台本が掲載されていたのでそれを追いながらCDを聴きました。



うわあ!ほとんどレチタティーヴォと言っても過言でないような(滝汗;
しかも日本語上演なので字幕はありませんから言葉を明瞭に歌わないといけません。

無理だぁ!!!!

まあ、師匠曰く、芸大出の留学帰りが受けるでしょうから受からないとは思うけど・・・でもここまで来たら挑戦してみましょう。

そう言われると燃えちゃう僕ですけど(爆)

今日・・・スコアが届きます・・・

演奏会終了、次のステップに

2012年04月02日 | 声楽
お陰さまで昨日(4月1日)の演奏会が無事に終了いたしました。ご来場下さった皆様には深く感謝申し上げます。

コンサートとは言え、総勢22名が25曲。オペラのアリアは短いものもありますが長いものでは10分を越えるものも。15時の開演から17時30分と2時間半に渡る長時間お付き合いいただきまして誠に有難う御座いました。

ヴェルディとプッチーニの名アリアの数々・・とうたいながらも、男声は私を含めて2人しかおらず、曲目に偏りが有ってお目当ての曲をお聴かせできなかったやも知れませんがお赦しください。特のヴェルディは男声の名曲が多いので出演する側からも、もう少し男声が居たらなあ・・と残念に思っていますが、この世界は男が極めて少ないものですから・・(汗;

さて、私は第2部の終盤の「ドン・カルロ」からフィリッポ2世の「一人寂しく眠ろう」を歌わせて頂きました。写真を取るのをすっかり忘れたので掲載できなくて残念でしたが、焦げ茶のマントを纏い口髭を蓄えてそれらしい出で立ちでフィリッポを演じました。ヴェルディのアリアは、特にこのフィリッポのアリアは心の奥底を抉るような心情的な歌で強い表現力が要求されます。ただ上手に歌う・・のではなく、歌劇の一場面のように演技も含めて歌手であると同時に役者でもある、という面にも踏み込んでみました。幸いなことに、この歌は独り寝室で悩み苦しんで眠れぬ一夜を過ごす場面ですから、与えられた8分間、一人芝居をさせていただきました。

お陰さまで終演後には師匠から一定の評価をいただき、オペラのソリストオーディション・・と言う新たな高いハードルを課せられました。審査が6月という差し迫った日程で課題曲2曲を仕上げるという、しかもライバルは芸大出&留学帰りの若手のバスバリと勝ち目のない挑戦ですが、「若い者に負けてられるか!」と老いの一徹!(爆)

がんばっぺし!