近くの映画館で「すべてうまくいきますように」(2021年/フランス・ベルギー/フランソワ・オゾン)を観た。フランソワ・オゾン監督というので観たくなった。脚本家エマニュエル・ベルネイムによる小説を原作とする。この脚本家は女性で2017年に亡くなっている。オゾン監督が以前、この原作を映画化しないかと言われたがその時はまだ自分にも身近な問題でないので断ったが、最近、自からもそのような問題を考えるようになったので、映画化したと言っていた。
ストーリーは、ある日、85才の父親が脳卒中で倒れ入院し、体が思うようにならなくなる、娘2人たちが看護するが、医者からは再発の可能性もあると言われる、別居している母親もかけつけるがなぜか冷たい態度、看病していくうちに父親は「もうやりたいことが何もできない、終わらせてほしい」と娘のエマニュエルに言う。安楽死を調べてみるとスイスでできることがわかり連絡をとって話を聞き、その方向で進めることになるが・・・・
この映画のウェブサイトを見たらオゾン監督のインタビュー動画があったので見たら、「このような状況に遭遇したとき、どう考えるか、どうするか、観客に考えてもらいたい、どれが良いとは言っていない、自分もどうしたらよいかわからない」と言っていた。このような観点から映画を作ってくれる監督は大歓迎だ。
監督の言うように、この映画を観れば誰しも自分が同じ状況になったらどう対応するか考えるであろう、最近ではゴダールの安楽死が報道されて驚いたばかりだ。自分は、次のように感じた。
それは、この父親が入院後、しばらく寝たきりになり発作を起こして看病をしている娘をあわてせさせたりするが、しばらくすると自分でベッド横の椅子に座ることができたり、娘たちとレストランで食事をしたり、孫の音楽の演奏会に出席したりしていることだ。これをみた日本の年寄りは誰でも「これなら生きていけるのではないか、なぜこんなに回復しているのに死にたいと思うのか」と感ずるのではないか。この父親は事業で成功した金持ち、母親も彫刻家で生活に困っていない、娘たちも中流以上の生活をしている、よって、安楽死は金持ちにしかできない特権とも考えられるが、映画の中でスイスの安楽死させる会社の責任者が費用は1万ドルくらいだと行っていたように思うから、そんなに高額ではない、普通の家庭の人でもできる気もする。ただ、ここでオゾンが問題提起しているのは安楽死と言うより尊厳死と言うべきものかもしれない。言い方によってだいぶニュアンスが異なる。
エマニュエルをやったソフィー・マルソーは知らない女優だったが良い味を出している。彼女の映画をもっと観てみようか。フランソワ・オゾンと組んた映画も多いらしい。また、シャーロット・ランブリングは好きな女優だったが、結構年取ったというかそのようにメイクしているのだろうが、「スイミング・プール」に出たいた頃がちょうど今のソフィー・マルソーくらいの年齢だったのだろう。良い女優だ。
映画の中で、この家族はクラシック音楽に深く関係している一家で、ブラームスなどの曲が何曲か流れていた。その中で自分はシューベルトの幻想曲ハ短調D940がなんとも言えないもの悲しい雰囲気で好きだがAmazonで検索しても全くCDが無いのはどういうわけだろう。
観て損のない映画だと思う。
ソフィー・マルソー(エマニュエル、娘、姉)(57、仏)
アンドレ・デュソリエ(アンドレ、父親)(76、仏)
ジェラルディーヌ・ペラス(パスカル、娘、妹)(52、仏)
シャーロット・ランプリング(クロード、母親)(77、英)
エリック・カラヴァカ(セルジュ、夫)(57、仏)