ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

新国立劇場で歌劇「ホフマン物語」を観る

2023年03月23日 | オペラ・バレエ

新国立劇場で歌劇「ホフマン物語」を観た。今日の席はC席7,315円、4階中央3列目だ。舞台は全部欠けずに見えた。祭日でもあるので客層は幅広い年代にわたっていたが90%くらの埋まり具合だった(2階、3階は結構空席が目立った、但し、4階は全部埋まっていた)。

新国立劇場のホームページのホフマン物語のところに芸術監督の大野和士による50分近い動画解説があり、予習でそれを見た。オッフェンバックがどういう人物なのか説明し、そして村上敏明、安井陽子、木下美穂子、小林由佳の4人の歌手と一緒に大野のピアノ伴奏でいくつかの歌を歌い解説をしてくれる。これはよかった、このようなサービスは是非今後もやってほしい。

大野の解説によれば、オフェンバックはドイツで1819年で1880年に61才で死亡、同じ時期に生まれたのがベルディーとワーグナー、この時期はドイツはドイツの、フランスはフランスの国民の気質に合った音楽を書く時代だった。この作品はドイツの非常に幻想的でイマジネーションの豊富な作品だが、彼の第2の故郷のフランスの表現方法を使った洒落たはかない音楽に仕上げた。

そして彼には胸に秘めた思いがあった、彼はブッフ・パリジャン座(滑稽劇をやる小劇場)で作品を発表していたが、やがて1ランク上のオペラ・コミック座でも演奏され名声を博した。彼の願いはオペラ座で大編成のオーケストラで立派なオペラ作品を演奏されることだったが叶わなかった。ホフマン物語は彼の残した遺稿である。仕上げ段階で彼はなくなった、よって、いろんなバージョンがある。

オペラのあらすじだが、新国立劇場のサイトにでているものと大野の解説を適宜組み合わせて書いてみると

【第1幕(プロローグ)】歌劇場の隣の酒場で、歌姫ステッラを待つホフマンは友人のニクラウス達に、三つの失恋物語を語り始める。ここでホフマンは「クラインザックの歌」を歌う。

【第2幕】オランピアは科学者スパランツァーニが人形師コッペリウスに作らせた娘(動く人形)、ホフマンはすっかり夢中になり愛を告白、ワルツを踊ったあげくコッペリウスに壊されてしまう。ホフマンはこの時初めて、彼女が人形だったことを知る。ここでオランピアは「クマシデ並木の鳥たちから」を歌う。

【第3幕】楽器職人クレスペルの娘アントニア。母譲りの歌の才能があるが胸を病み父親から歌うことを禁じられていた。しかし、医者ミラクルが亡き母親の亡霊を呼び寄せ、アントニアが歌うよう誘惑し、歌い続けるアントニアはついに死んでしまった。ここでアントニアは「雉鳩は逃げた」を歌い、ホフマンとの二重唱「ああ、信じてました」を歌う

【第4幕】ヴェネツィアの娼婦ジュリエッタ。彼女は魔術師ダペルトゥットからホフマンを誘惑して影を盗めと命じられていた。賭けですべてを失ったホフマンは魂と命と影をジュリエッタに渡してしまう。恋敵シュレーミルと決闘して勝利するが、当のジュリエッタは下僕と駆け落ちする。

【第5幕(エピローグ)】酒場。数奇な愛の遍歴を語り終えたホフマンの元に歌姫ステッラが現れるが、彼女の崇拝者である上院議員リンドルフと腕を組んで立ち去る。酔いつぶれたホフマンは詩の女神ミューズの幻影を見る。

観劇した感想などを記してみよう

  • フィリップ・アルローの演出は非常によかった、色彩がカラフルで特に1幕、2幕がよかった、3幕目は先日観たハンブルグ国立歌劇場の演出の方が派手でカラフルだったが、アルローの演出も悪くはないと思う
  • 未完成の作品なのでいろんな完成版があるとの解説であるが、ハンブルグ国立歌劇場の時はケイ&ケック版であったが今日の版は少なくともそれではなかった、どの版かはホームページには書いてないように思う
  • ケイ&ケック版でないと思ったのは5幕目の終わり方が著しく異なるからだ(ネタバレ注意)、今日の終幕ではホフマンが最後にピストルで自死して終わるのだ、あまりの違いに驚いた
  • ハンブルグの時はホフマンの3人の恋人とステッラが同一女優が兼ねていたが今日は全部別の歌手だった、そして終幕ではこの4人含め全員が勢揃いして「人は愛で大きくなり、涙でいっそう成長する」と歌い上げるところはハンブルグ版よりもいっそう見応えがあり盛り上がった(モーツアルトのフィガロやドンジョバンニのフィナーレと同じようなイメージの終わり方で、楽しめた)
  • 歌手で一番よかったのはオランピアの安井陽子だ、機械人形をうまく表現していたし、何よりも歌唱力があり声量が豊かであった、彼女の「クマシデ並木の鳥たちから」への拍手が一番大きく、一番長く続いた、また、第3幕で召使いのフランツが主人のクレスペルから「誰もこの家に入れるな」と命じられた後に歌うアリア「朝から晩まで四つん這いになって」が好きだ、青地英幸がうまく歌って大きな拍手を受けていた

今日は5月のオペラのリゴレットのチケットを買って帰った。私はいつも劇場に行ったときに次月以降のチケットを買って帰るようにしている(ネットで買うこともするが、システム利用料等で500円くらいとられるので劇場に来たとき買えればそれが一番いいと思っている)。

【指 揮】マルコ・レトーニャ(スロヴェニア)
【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー(仏)
【衣 裳】アンドレア・ウーマン
【振 付】上田 遙
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】須藤清香
【管弦楽】東京交響楽団

【詩人、ホフマン】レオナルド・カパルボ
【友人、ニクラウス/音楽の神・芸術の神、ミューズ】小林由佳(メゾ・ソプラノ)
【オランピア】安井陽子(ソプラノ)
【アントニア】木下美穂子(ソプラノ)
【ジュリエッタ】大隅智佳子(ソプラノ)
【リンドルフ/人形師コッペリウス/医者ミラクル博士/魔術師ダペルトゥット】エギルス・シリンス
【アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ】青地英幸
【ルーテル/楽器職人クレスペル】伊藤貴之
【ヘルマン】安東玄人
【ナタナエル】村上敏明
【科学者、スパランツァー二、第2幕】晴 雅彦
【恋敵シュレーミル、第4幕】須藤慎吾
【アントニアの母の声/ステッラ】谷口睦美


「アンヌ・ケフェレック ピアノ・リサイタル」を聴く

2023年03月23日 | クラシック音楽

BS放送で「アンヌ・ケフェレック ピアノ・リサイタル」を録画して聴いた。場所は王子ホール、2022年6月。

アンヌ・ケフェレックはパリ生まれのピアニスト、父は有名な作家アンリ・ケフェレック、弟ヤン・ケフェレックは作家、その妻のブリジット・ゲンゲラーはピアニストだ。5才でピアノを始め、1968年にミュンヘン国際音楽コンクールで優勝、それ以来国際舞台で活躍している。今年75才だ。ピアノソロ、室内楽の演奏で有名。

テレビで見た姿は痩せ型で白髪、上品なご婦人という感じて、やさしような人だな、と言う印象を持った。

演目は

ピアノ・ソナタ 変ロ長調D960から第1楽章、第4楽章(シューベルト)
ピアノ・ソナタ 第32番ハ短調(ベートーベン)

アンヌ・ケフェレックは、この2曲とも作曲家が死ぬ前に書いた最後のピアノ・ソナタであり、2人の作曲家がたどり着いた「音楽の旅路」を自分も共に歩いて行きたいと強く思ったと、インタビューで語っている。

シューベルトは好きな作曲家で、D960も好きな曲だ、全部の楽章が聴けなくて残段だ、ベートーベンももちろん好きな作曲家だが、彼の最後の3つのピアノ・ソナタはどうも好きになれない、と言うかよく理解できない。この3つのピアノ・ソナタをたたえる人は多いし、その理由を読んで理解できるが、曲として純粋に聴いたとき、自分の身にしみこむように入ってい来ないのだ。こればかりは仕方ないが突然その良さがわかることもあるので聞き続けたい。