ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

歌劇「ばらの騎士」をテレビで観た

2024年06月12日 | オペラ・バレエ

びわ湖ホール公演、歌劇「ばらの騎士」(原題:Der Rosenkavalier)をテレビで観た。

作曲:リヒャルト・シュトラウス
初演:1911年1月26日、ドレスデン宮廷歌劇場
台本:フーゴ・フォン・ホーフマンスタール
演出:中村 敬一

<出演>

ウェルデンベルク侯爵夫人:森谷 真理
オックス男爵(夫人の従兄):妻屋 秀和
オクタヴィアン(夫人の愛人青年貴族、薔薇の騎士):八木 寿子(ひさこ)
ファーニナル(俄か成金の貴族):青山 貴
ゾフィー(ファーニナルの一人娘):石橋 栄実(えみ)
合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル
児童合唱:大津児童合唱団
管弦楽:京都市交響楽団
指揮:阪 哲朗

収録:2024年3月2日滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール

「ばらの騎士」を観るのは昨年METライブビューイングでリーゼ・ダーヴィドセンが元帥夫人をやった公演以来だ(その時のブログはこちら)、私の好きなオペラの一つ、私の愛聴盤は宇野功芳先生推薦のカラヤン指揮、フィルハーモニア管弦楽団、エリザベート・シュワルツコップ元帥夫人の1956年盤である。これを自室で読書しているときにBGMとしてかけていると、実に素晴らしい音楽だと感じる。

びわ湖ホールは1998年開館、ロビーからは琵琶湖を一望できるいいロケーション、歴代の芸術監督として若杉弘、沼尻竜典、そして2023年からは阪哲朗が就任。今まで数々のオペラを上演してきたという。確かにホールのwebページを見るとほぼ毎日、公演やイベントがある。今月下旬には阪指揮による「フィガロの結婚」の公演もあるようだ。

このびわ湖ホールで音楽的基盤となっているのが、びわ湖ホール声楽アンサンブルだ、オーディションで選ばれた若者たちが一定の公演に出て訓練して巣立っていく、アンサンブルが核になり、できない部分はゲストを呼ぶという方針で運営しているそうだ

今回の「ばらの騎士」は阪が就任後最初の大規模オペラ公演となった、ウィーンなどで活躍した阪にとって思い出の深いオペラだろう、阪哲朗は京都市出身、ドイツの劇場で音楽監督を務めるなどのキャリアを積んできた。現在、びわ湖のある大津市在中

演出の中村敬一は開館時からびわ湖ホールにかかわってきた、今回の「ばらの騎士」ではウィーンというテーマを前面に出した演出をした、作品が持っている誰もがイメージする原風景を大事にしている、それを舞台で再現する、と述べているが、こういうスタンスは好きだ、あまりに前衛的な、全然時代が違う現在に置き換えるような演出はあまり好きではない

阪はサロメやエレクトラなど音楽が無調化し、どんどんわかりにくくなってきたときに、モーツアルトを意識して作曲したのが「ばらの騎士」ではないか、と述べている。それは元帥夫人とオクタヴィアンとの朝食の場面でメヌエットのようなところが出てくるし、オックスがファーニナルの家を訪問した時に演奏されるワルツなどだ、観客を飽きさせない工夫だ、ただ、それ以外の部分はひたすらしゃべっていてアリアが一つもないのが特徴、本当にオペラと言っていいのか、モーツアルトのレティタティーボのパロディではないか、しかし美しいオペラだ、と述べている。

確かに公演時間は全部で3時間以上あり、冗長な感じがするのでBGMで聴いているときは良いが、公演を観に行ったときは退屈気味になるでしょう、そこは私も改善する必要があると思う。オペラも3時間が限度でしょう

さて、この公演を観た感想を少し述べてみたい

  • 阪の指揮は大変良かった、彼の指揮は東京芸術劇場での「こうもり」の公演で初めて聴いたが抑揚の聴いたいい指揮だったが、今回もよかった
  • 中村の演出も彼が語る通りのオーソドックスなもので、このオペラに抱くイメージ通りの舞台設定であったと言える、奇をてらわないこういう演出が好きだ
  • 主演の森谷真理はこの演目の元帥夫人やフィガロの伯爵夫人、先日の「こうもり」のロザリンデなど、中年のよろめく貴族のご婦人を演じさせたら右に出るものがいない存在だろう。
  • オックスの妻屋秀和も役柄ピッタリの配役だと思った、いやらしさが十分出ていた、ただ、カツラはつけないといけないのか、つけてない「ばらの騎士」の演出もあると思うが
  • オクタヴィアンの八木 寿子もよかった、第1幕では元帥夫人と並ぶとちょっと身長が高くて体格も良いので元帥夫人と堂々と渡り合うようなイメージも持ったが、第2幕でゾフィーと会う場面では男性として十分な存在感を感じて、これで良いと思った。原作では17才という設定だからまだ中学生くらいの少年というイメージであるべき、という思い込みはある
  • ゾフィー役の石橋栄実も大活躍だった、親の言いなりにならない気丈な娘役をうまく演じていた
  • ファーニナルの青山貴もその役柄にピッタリはまっていたと思った。俄か貴族の成金で娘の縁談と家の繁栄を同じこととして考える当時の社会常識を体現するような存在感を存分に出していた、ただ、そのような社会常識が愛のための結婚という現代の価値に代わる過渡期だったため、最後はオックスとの婚約破談を認めるところもうまく表情に出して演じていたと思う

楽しめました

なお、初演のドレスデン州立歌劇場(ゼンパー・オーパー、Semperoper)は旅行で訪問したことがある、数年前、チェコのプラハから急行電車で2時間かけてドレスデンに日帰り観光に行った時だ、時間的にオペラ公演は観られなかったが、劇場内を見学するツアーに参加した、なおドレスデンは旧東ドイツである

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿