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アーティゾン美術館「ブランクーシ 本質を象(かたど)る」を観る

2024年06月14日 | 美術

アーティゾン美術館で開催中の展覧会「ブランクーシ 本質を象(かたど)る」を観てきた、オンラインチケット事前購入で1,800円。

先日テレビの「新 美の巨人たち」で小田急ロマンスカーの特集をやっていて、先代のロマンスカーVSEの設計を担当した人が、その造形の参考にしたのが開催中のこの展覧会で展示されているブランクーシの「空間の鳥」という作品だと紹介していたので興味を持った(本投稿の一番下の写真2枚)

 

コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)は知らない芸術家だったが、20世紀彫刻を代表する作家である。その彫刻作品を主体とする大規模な展覧会は、これまで日本の美術館で開催されておらず、本展が初めての機会だそうだ

展覧会のwebページの説明では、「ブランクーシはルーマニア生まれ、ブカレスト国立美術学校に学んだ後、1904年にパリに出て、ロダンのアトリエの助手となるが短期間で離れ、独自に創作に取り組み始める。同時期に発見されたアフリカ彫刻などの非西欧圏の芸術に通じる、野性的な造形を特徴とするとともに、素材への鋭い感性に裏打ちされた洗練されたフォルムを追求。同時代および後続世代の芸術家に多大な影響を及ぼしたことで知られる」と紹介している。

ロダンのもとを短期間(1か月)で離れたのは、「生物は大きな木の影の下では成長しない」という理屈だった。「寄らば大樹の陰」という日本人と正反対なのが面白い。

展示されている作品数は90点くらいでありちょうどいい量だ、写真撮影はOKなので、特に印象に残った作品を紹介したい(カッコ内は、作品番号、作品名、制作年、保有者)

01形成期

1904年にパリに出て、国立美術学校に学び始めた時期の作《プライド》は、モデルの顔立ちの明瞭な表現に、アカデミックな様式が顕著にうかがえる


(1、プライド、1905、光ミュージアム)

02直彫り

ロダン工房で働くようになるが、その期間は続かず、石の塊からフォルムを彫り出す直彫りの技法で作品を制作するようになる


(4、接吻、1907-10、アーティゾン美術館)

03フォルム

「眠り」の状態を通じて、重力から解放された、水平に置かれた頭部像を創出し、《眠れるミューズ》にみられるように、表面に外形の特徴をとどめつつ、その内部に思念や夢想の観念を想起させる卵形の頭部は、抽象性を高めていく。1910年代の彼の創作は、頭部をモティーフとする、観念とフォルムとの関係の追求に牽引される


(12、眠れるミューズⅡ、1923、個人蔵)


(18、レダ、1926、ブランクーシ・エステート)

04交流

パリに出て間もない時期に造形への関心を共有したモディリアーニ、イサムノグチなど、時々で他の芸術家との間で関係を結んでいく


(82、若い農夫、1918、モディリアーニ、頭の形が何となく上の2枚の写真と似ている)

05アトリエ
06カメラ

07鳥

ルーマニア伝承の民話を出発点とする鳥の主題は、自由と上昇の観念と関わるもの。そこに航空機への関心が結びつき、1920年-30年代にかけて発展を遂げる。《空間の鳥》のフォルムは、まさに空間を切り裂くようで、天空を志向する飛翔の運動自体に焦点が当てられている


(13、雄鶏、1924、豊田市美術館)


(19、空間の鳥、1926、横浜美術館、これがロマンスカーVSEのデザインに応用された)

さて、今回の展覧会を観て気付いた点を若干書きたい

  • 展示作品には展示作品の番号のみが示されており、その他の作品情報は紙の作品リストかQRコードでダウンロードした作品リストを見て確認する方法を採用している。慣れてないせいもあり、使い勝手が悪かった、なぜなら、紙の作品リストの文字が細かくて見えにくいからだ、そのためオンライン作品リストを見ると、今度は書き込みができない、新しい試みをやるのは良いと思うが、アンケートで来場者の感想を聞いてもらいたい
  • 作品リストを観るときに感じるのは、展覧会場が暗いということだ、もう少し明るくできないものか、これでは紙に書いてある細かい文字は余計に見づらい
  • 写真撮影は一部禁止されているもの以外はOKだったのは評価できる、やはり民間グローバル企業系列の美術館だけのことはある、交渉力があるのでしょう

楽しめました