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四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

無添加エゾバフンウニがまだ入ってきています。利尻礼文のウニ漁は通常6/15〜8/15ですが少し延長しているようです。

魛 たちうお

2016-10-30 17:35:00 | わたしの魚(ウォ)キペディア 第1回~第

わたしの魚(ウォ)キペディア 第18回 たちうお

033

タチウオ、食べたことがありませんでした。
初めて食べたのが十年前。
“太刀魚のソテー(グリル?忘れました)カレー風味”
でした。ホテルのランチだったと思います。
報告がてら主人に話すと、
「カレー味?ふぅん‥。え、四センチ!そりゃデカいわ!!」
と驚いていました。
お皿にのって出てきたタチウオはちょっとしたハンバーガーくらいの大きさで厚みが四~五センチくらいだったでしょうか。
「パンはおかわり自由ですので」
と言って戻っていくホテルの方を見ながら友人と沈黙したのを憶えています。

店を始めてからタチウオを置くようになって、まずお刺身で食べられることに驚きました。
それから数年が経ち、気が付けば塩焼きにすることが多くなりました。
「お刺身で食べられるけど、やっぱ塩焼きがうまいっしょ」
と主人は言います。
初めて食べた十年前よりさらに遡ったあたり、寿司屋の板前さんと結婚したという事実が職場内に流れた頃のことです。
「野上さん、タチウオって関東のスーパーで売ってないんですか?」
と後輩の女性から質問が来ました。板前と結婚=魚詳しい という図式なのでしょうか。ぜんぜん答えられませんでした。幼少期を九州で過ごしたというその女性はがっくりとしながら
「どうしても‥無性に‥あの、タチウオの塩焼きが食べたーい!ってなるんです‥」
とお話してくれました。

焼き上がりそうなタチウオを見るとふとそのことを思い出します。


鯥むつ 鰰はたはた

2016-10-28 23:35:00 | わたしの魚(ウォ)キペディア 第1回~第

わたしの魚(ウォ)キペディア 第38回 むつ008

のどぐろを仕入れてきた日はムツにまつわる会話になることが多く。
それはのどぐろがアカムツという名前だからだと思うのです。
「のどぐろってさぁ…アカムツだよね?」
「うん」
「赤いけど、のどが黒いから“のどぐろ”?」
「そう」
私はいつものように食物事典の『魚・ムツ』のページを調べます。
「アカムツって、ムツ科じゃないです」
「何科?」
主人は訊きました。
「スズキ科です」
私はさらにパソコンで『アカムツ』を調べました。
「ムツとクロムツはムツ科ですが、アカムツはスズキ科もしくはホタルジャコ科という説もあります」
「なんじゃそりゃ」
「いずれにしてもアカムツはムツ科じゃないです」
「ムツといえば‥オレの子供のころはクロムツだったんだよ。ま、今もあるしたまに仕入れるけどね」
「へー」
「親父がクロムツ仕入れてたのは覚えてる。アカムツは・・あったかもしれないけどたぶん関東近県のものだったね」
「日本海側じゃなくて?」
「千葉とかかなぁ。最近じゃない?のどぐろっていって北陸や山陰からバンバン入って来るようになったの」
「わたし、ムツにまったく馴染みがなくて‥全然わかんない」
「こんなにアカムツはもてはやされてなかったよ」
「そうなんだ。私の中ではさ、クロムツかどうかわかんないけど、煮付けってイメージがあるんだよね。居酒屋さんのランチ定食のメニューで“ムツの煮付け”っていう文字が‥」
「もしクロムツの煮付けだったら相当大サービスだよ」
「え、そーなの」
「高級魚だから」
「マジで?あ~、じゃー‥ちがうわ。750円とか850円だったもん、生卵まで付いて」
「もしかして銀ムツじゃない?」
「あ‥」
「でしょ、今でいうメロかな」
「あ~たしかに脂がのってたもんな~、でもおいしかったな~。あのさ、クロムツじゃない普通の、ただの“ムツ”は食べたことある?」
「‥自覚しては、ないね、たぶん」
「私もー」

いつか日本のどこかを旅して、偶然入った定食屋さんで“ムツの煮付け”に出会うことが夢になりました。


わたしの魚(ウォ)キペディア 第36回 はたはた



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しょっつるが魚醤だというのは知っていましたが、ハタハタからつくられるというのはニュースで知りました。
たしか2003年頃だったと思います。
しばらく続いていたハタハタの禁漁が緩められ、しょっつる用に漁がおこなわれた(うろ覚えなので間違っていたらすみません)というような内容だったので、しょっつるはハタハタが原料なんだなぁと解った次第です。
'90年代、激しく減少していたハタハタの漁獲量復活のため数年間にわたり全面禁漁にしたという情報をテレビ・新聞などで見聞きしていましたので、これはもう一生食べられない魚かもしれない‥と半ば諦めていました。
ところが数年前、主人がハタハタの醤油干しを仕入れてきました。
「うっそ、ハタハタ?これが、ハタハタ?」
私はハタハタが私の視線によって少し温まるんじゃないかというくらい見つめました。
飴色のしっとりとした表面の皮はなめらかそうで、シシャモの何倍かの大きさでした。
苦笑しながら主人が「一本小さめのがあるから試食してみる?」と言うので、ガクガクと首を縦に振りました。
焼いている間ずっとサラマンダーにへばりつき、上火とハタハタを見比べて待ちました。
「はいお待ち、ハタハタの醤油干しの炙り」
ひとくち食べて唸りました。
純粋な味。
できれば獲れた場所で獲れたところの空気を吸いながらその土地の酒と一緒に食したい。水と空と一緒に。
そんなことを一気に喋りました。
すると主人は
「んー。そうかもしれないけど、うちって全国からいろんなものを仕入れてるじゃない?東京で食べてもらうのをお願いするしか、ないんだよねー」
と、困惑気味に微笑んでいました。



鯨くじら<前編> 鯢くじら<後編>

2016-10-27 23:35:00 | わたしの魚(ウォ)キペディア 第1回~第

わたしの魚(ウォ)キペディア 第16回025 くじら〈前編〉
クジラといえば給食で出たクジラの竜田揚げです。
アルマイトのお皿に二つか三つ、その横に付け合わせがいつも春雨サラダだったような記憶があります。
鶏の唐揚げかな‥と思って齧ってみると、お肉が真っ黒で噛んでいるうちに醤油の味が滲み出てきて、けっこうおいしいなーと思って食べていました。「これは何でしょーう?」
開店して数年経った頃、築地から帰ってきた主人がビニール袋の口を縛ったものを得意そうに掲げました。
手のひらにずしっとくるくらいの赤黒い塊でした。
「うわ、ドリップ‥?」その赤黒い塊は赤い液体に浸されていました。
「お!それかなりのヒント。ジャブジャブな感じがミソしょうゆ味の素」
こういう言い回しをする時の主人はテンションが高く‥ということは、なかなか手に入らないものが思いがけずゲットできたということで。
「うーん、肉みたいに見えるんだけど、牛肉とか仕入れないもんね。何か大きいものの一部、マグロの‥血合いとか?」
「ブッブー。マグロだったら吸水ペーパーでぐるぐる巻いて水分取り除くし。しかもマグロの血合いだけ仕入れるって、あんまないっしょ」
「あ、そうかー」
「ギブ?」
「‥いや。だったら、わかんないけど、クジラ?」
「正解っ。正規のルートでちゃんと出回ってる証明書付き。近海のミンクでメスだって。たまたま網に掛かっちゃって迅速に流通したみたい。赤身はドリップに入れとくほうが品質を保てるのよ」
「ふーん」
「あれ、あんまり嬉しくないの」
「いやそういうわけじゃないけど、生のお刺身っていうの?食べたことないからさー」
「あそ?」
「給食の時のクジラの竜田揚げでしょー、あとなんか居酒屋さんで上司が頼んだクジラベーコンがほとんど手を付けずに温まっちゃってべろ~んってなっちゃってるやつとかさー。“お前ら食っちゃえ”とか言われて端っこなんかもう空調当たっちゃってカッピカピに乾燥してんのに下っ端だから無理矢理食べさせられたりさー、そんなのしかないんだよ」

わたしの魚(ウォ)キペディア 第17回 くじら〈後編〉 


「そうなんだ。じゃ、これは何だか分かる?」
ガス台に目を向けると鍋の中には煮込んだ肉のようなものが横たわっていました。
スープは少し濁っていて脂身のかたまりにへばりついた肉はこれぞ肉、という色をしていました。
「わわ、マンモスの肉‥なわけないか。これもクジラ?」
「ベーコンです」
「え!私の知っているベーコンはふちが赤いものですが」
「売ってるやつは着色してるから。ちょっと食べてみる?」主人はまな板を取り出し端のほうを切り落としながら
「厳密に言うとこれは塩ゆでで更に薫製にするとベーコンなんだ」
と言いました。
脂身と肉のわずかなかけらを口に含むと濃い塩味、そして数回噛むと旨味がじわっときました。
臭みのようなものがまったく無く拍子抜けするくらいでした。
「塩、どう?」
「けっこう効いてるね。でも辛子付けたら丁度いいんじゃない、わかんないけど」
「仲買さんが試行錯誤して“これだ!”って出した、ゆで汁の塩分濃度を教えてもらったんだ」
「すごいね。そんな機密事項みたいなの、いいの?」
「オレも“そんなの教えてもらっちゃっていいんですか?”って訊いたんだけど“いや、むしろやってみて感想聞かせて”って」
さっきの赤い塊の生肉のお刺身の方も少しだけ生姜醤油で試食させてもらい、これまで食べたことのあるクジラを頭の中で整理してみました。
給食の竜田揚げ、居酒屋さんのベーコン、今日のお刺身、塩ゆで。
もうひとつ『クジラのたれ』を食べたことがありました。
千葉・房総の名産品で、味付けされたクジラ肉を半干しにしたものです。
尾の身、はりはり鍋は未経験で、食べてみたいなぁ‥と、ちょっと憧れています。



蛤はまぐり 前編 後編

2016-10-25 23:35:00 | わたしの魚(ウォ)キペディア 第1回~第

わたしの魚(ウォ)キペディア 第42回 はまぐり <前編>013
まだデパートの駅弁大会のようなものがない時代、知っている駅弁といえば『だるま弁当』『峠の釜めし』そして地元・千葉の『やきはま弁当』でした。
『だるま弁当』と『峠の釜めし』は容器が再利用できるので覚えていました。
だるま弁当は食べ終わった後、貯金箱にしていました。
最初は面白がって口のところからお小遣いを入れていたのですが、やっぱりお金が必要だな‥と思うとお弁当容器ですからパカッと蓋が開いて簡単に取り出せてしまうわけです。
セロテープやガムテープでぐるぐる巻きにしてみたところでどうしてもお金が必要な時は耐えきれなくて剥がしてお金を取り出しまたテープを貼って‥の繰り返し。
まったく貯金になっていませんでした。
そんなことをしているうちに中学生になり、ガムテープ跡残るこの赤いだるま弁当の空容器は、フェルトと刺繍糸のハンパを入れておくいわば家庭科の裁縫箱のサブ的存在へと変わっていきました。
『峠の釜めし』の焼物の器はズシッとくる質感に惹かれ「お人形遊び用にするから」と言って親からもらいました。
リカちゃんのお風呂にしてみたのですが入浴というより釜茹でで、どうしても釜茹でからのストーリー展開ができず、やはり親に返した‥という思い出があります。
そして『やきはま弁当』。
味のシンプルさで覚えていました。これでもかと入っている串刺しの焼きハマグリと白いご飯(と記憶している)の組み合わせは強烈でした。
よく焼いたハマグリを濃い醤油のタレに浸けてご飯にのっけてあるお弁当です。
ハマグリは硬くてしょっぺぇーんです。でも、ご飯と合うのです。
串刺しのハマグリはやや小さめで、それを歯でぐいっと外しご飯をひとくち。
噛んでいるうちにハマグリの旨味としょっぱい醤油味とご飯が合わさっていい感じになるのです。
これぞ千葉の味、ハマグリバンザイ!
そんなふうに思っていました。 

わたしの魚(ウォ)キペディア 第43回 はまぐり <後編> 004

「ヤキハマ用。鹿島灘のはデカいよ。身は軟らかいし美味いしほれぼれするよ」
主人は嬉しそうに仕入れてきた五つのハマグリをまな板に並べ、「貝殻の模様がぜんぶ違う」と言いながら遊ぶように眺めました。
そのハマグリは貝殻からして大きくて、大人の手でも片手で二ついっぺんに持つとこぼれ落ちそうなくらいでした。
私は「ふーん‥」と言いながら少しおもしろくありませんでした。千葉のハマグリならともかく、茨城のハマグリをベタ褒めするなんて。鹿島のハマグリはそんなにいいものなのだろうか‥と純粋に思いました。
夜、さっそく焼きハマグリのご注文が入りました。
「ヒガシマルとお酒持ってきて」
と主人から指示があり、奥から日本酒と淡口醤油の一升瓶を抱えて戻ると、ハマグリの蝶番(ちょうつがい)らしき部分を出刃包丁で切り落としているところでした。
お客様は
「何でそこ、切るの?」
と尋ねました。
すると主人は火の点いた網にゴロッとハマグリをのせてから言いました。
「ご存じかもしれませんけど、蝶番が利いた状態のまま網にのせて焼くと、熱くなった下の貝殻と貝柱がまず先に離れてパカッて開いちゃうんですね。で、上に身がくっついたまま美味しいハマグリの汁がですね‥‥」
「あー、全部こぼれちゃうんだ!バーベキューでやったことある」
「そうなんですよ。もったいないんですよ」
「なるほど。でもさ、蝶番がバカになってるから熱してもそれ、パカッ!って開かないよね?どうするの」
強火で焼かれているハマグリは網の上で小刻みに揺れ始め、閉じた貝のふちから汁が溢れ出し、五徳でジュウッと蒸発していきました。
「本来ならばもうパカッと開く段階なんで、こうして自分でこじ開けます。自分は鮮度のいい極上のものを選んで仕入れますからこのやり方をしますが、これだと死んじゃってる貝か自ら開く反応のある活きた貝なのかの見極めができませんのであまりおすすめはしません」
主人は右手に金箸、左手にレンチのような鍋つかみを持って上の貝殻を外し、ハマグリの身に手早く日本酒と淡口を注ぐと、ガス台の火がお酒に反応して炎が上がりました。
「焼き過ぎると硬くなるので、このくらいでおろします」
貝殻の余熱で汁がまだ沸騰しているところにあるハマグリの身を一旦まな板の上に取り出し、柳刃でぷつりぷつりと食べやすい大きさに切り分け、また貝殻に戻しました。まな板に残った汁をサラシで拭いながら、
「切らない方がせっかくの汁は減らないんですけどね」
と言うとお客様は
「いや、細かく切ってもらった方がいい。海の家なんかでまるごと一個食べるのもいいけど、俺は何回かに分けてゆっくり味わいたい」
と仰いました。

肉厚のハマグリはおいしそうでした。

負けたわけではないけれど
鹿島のハマグリって相当いいものなんだ
と思いました。



鮃ひらめ 鱚きす

2016-10-24 23:35:00 | わたしの魚(ウォ)キペディア 第1回~第
わたしの魚(ウォ)キペディア 第30回 ひらめ

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おしながきを書き始めて早い段階でおっ?と思ったのがソゲという言葉でした。
私は主人に訊ねました。
「ソゲって何ですか?」
主人は言いました。
「ヒラメの小さいのです」
「平仮名ですか、片仮名ですか」
私が訊くと
「‥どっちでも、いいんじゃない」
と返事がきました。
カウンター越し、いつもどおり主人は良い姿勢のまま大根のかつらむきをしています。
ボールペンで ソ ゲ と書いてみると、リ ゲ みたいに読めました。
「リゲってなんだろうね」
「ソゲだよ」
「はい」
リゲは消し、平仮名で縦に そ げ と書きました。
「そ、げ、げ、そ。あ、イカの下足みたい。これってヒラメだけど下足っぽいとか?」
「まったく違うから」
「はい」
青森・ソゲと書いてまた訊ねました。
「何でソゲっていうの?」
「何でだろうね‥わかんないけどこの大きさはソゲっていうね」
「ふーん。小さいのはみんなソゲ?」
「うーん、まぁ仕入れてくるこのサイズはソゲだけどね」
「どこらへんがソゲと呼ぶかヒラメと呼ぶかの境目?」
「‥1kg前後かなぁ」
ソゲと、いま聞いた仕入れてきたものリストをどの順番に並べようかとメモを見ながら考えていると、主人が話しかけてきました。
「ヒラメの稚魚ってまっすぐ泳ぐって知ってた?」
「砂地に寝てないの?」
「最初っから寝てないよ。ふつうに泳ぐよ」
「アジやイワシみたいに?」
「そう」
「‥目は?」
「左右に付いてる」
「アジやイワシみたいに?」
「そう」
「‥いつああいう感じになるの?」
「徐々に、大きくなるにつれ片方に寄ってきて、体もだんだん倒れていく、と」
「マジで?」
「うん」
「ごめん‥信じられないんだけど」
「なんだったらネットで調べてみれば?」
日頃ネット情報は参考にする程度にとどめているけれど、今は即刻確かめるために使いたい。
「うわぁっほんとだ!右目が真ん中を越えて左目に近寄ってくるって」
「でしょ?」
「すす、すごい‥」

いつ頃からかわからないけれどそのことを知っていた、という主人もすごいと思いました。


わたしの魚(ウォ)キペディア 第47回 きす014


長崎から泳いでいる状態でキスが入ったことがありました。調べたら2009年8月21日でした。
キスは釣ったらすぐにあがってしまうくらい生かしておくのが難しい魚だそうで、築地市場内でも「初めて見た」という仲卸人の方(仲買さん)や飲食店の方がそのキスの周りに集まってきてとても賑やかだった、と主人は当時を振り返って言っていました。

2009・8/21のおしながき

〔2009年〕築地でも珍しい、活けのキスが登場です。競り場でも四袋しかなかったうちのひとつがこれだそうです。当店でも初入荷です。主人がこの袋を提げて他のお店に行ったら、「おい、見てみろよ、活けのキスだよ!!」といろんな人に声を掛けられたそうです。鮎を生かしておくより  キスの方が難しいとされているのだとか。実際何尾かは泳いでいますが、やはりいくつかはあがっています。ご注文をいただいたら活けのものからさばきます。


この日、夜六時を回って辛うじて活けの状態だったのはたった一尾だけでした。駆け付けてくださったのに間に合わなかった皆様、申し訳ございませんでした!

キスは江戸前の寿司ダネとして、だいぶ昔からあったようです。明治初期のにぎりずしを表す絵『両国與兵衛・明治初期のにぎりずし』に白魚や小鯛、鯵、赤貝、いかの印籠詰め、などと並んでキスもラインナップされていました。主人はその絵を見てキスは酢〆だったと推測しました。皮が引いていない付いたままの状態だったからです。

それから百年以上の時が経ち、流通がよくなって鮮度のいい魚が手に入るようになりました。全国から選り抜きの魚が、毎日築地に集まってきます。キスはおもに愛知や江戸前からが多いです。

当時は酢〆だけだったかもしれませんが今は生キスもおすすめです。にぎりでお出しするとき、塩を軽く振りスダチを数滴垂らします。

私はこのにぎりは主人のすしの特徴を表す代表的なもののひとつだと思っています。

淡いけれどもはっきりと印象に残る、という驚きがありました。