前編より続く
さて、映画メイキングである。ったくこの仕事ほど辛いものはない。今からグチを並べます。
「映画」
映像業界に身を置く者にとってこの言葉ほど神々しい響きがある単語はない。なにせ1本あたりにかかる費用がハンパじゃない。映画製作はバクチにも例えられるくらいだ。映画監督とは映像クリエイターにとって永遠の憧れの肩書きなのだ。僕も映画やってみたいなあ、とは思うけどそこまで狂おしいほど映画というメディアを使って伝えたいことってないんだよなあ。。。
とにかく。
「映画」とはいたくプライドを刺激する単語だ。これが何を意味するかというと映画制作者にとって僕のようなVPディレクターははるか下の最下層の存在なのだ。ということはどういうことか。映画のメイキングなんか作ってるヤツは映画に巣食ってる寄生虫みたいな扱いを受けるのだ。←こんなことを書くと「いやそんなことはない。一緒に映画を作ってる仲間じゃないか」と映画関係者から反論されるかも知れないが、それこそそんなことはない。映画本編制作スタッフのメイキング班に対する偏見はヒドイ。ヒド過ぎる。フィルムとビデオの差よりヒドイ。彼らにとってメイキング班ほど邪魔で邪魔で仕方がない存在はないのだ。(ココかなり愚痴入ってます…)
状況を説明しよう。
1シーンを撮るとき何度も何度もリハーサルをする。監督と撮影監督(※カメラマンのこと)の打ち合わせ。役者への演技指導。役者同士の確認。照明さんの長い長いセッティング。カメリハ……そして緊張の「ハイ本番んん!!」の掛け声が助監督からかかる。あちこちから「ホンバンいきまーす!」のエコー。監督の声「用ぉ意ぃ!」。ぐわーーーっと緊張がピークに達する。「スタート!!!!」(※)
この一連のすさまじい緊張の間、メイキング班はあちこちチョロチョロ動き回りながら撮らなきゃいけないのだ。この情けなさと「オレって邪魔だろーなー」という加害者意識といったら耐え難いものがある。さすがに本番のときはたいてい撮らないが、本番でも回さなきゃいけない局面だってある(※回すとはカメラを回す=撮影の意味)。監督にも助監督にも撮影部にも照明さんにも邪魔者扱いだ。メイキング班のことを気遣ってくれるのは撮影現場にはあまり来ないプロデューサーと映画会社の宣伝部の人だけ。
役者にも嫌われる。有名俳優と知り合いになれる!なんて軽々しく思ってはいけない。メイキング班は役者に徹底的に嫌われるのだ。例えば準備の時、陰で一所懸命役作りをしている役者の姿って、視聴者としては見たいと思いませんか?だから撮ります。撮らなきゃダメなんです。だけど役者はそんな大切なときにカメラを向けてくるあなたのことをどう思うだろう?
ちなみに僕は某演技派大物女優に○玉縮みあがるくらい怒鳴られたことがある。リハのときに目線に入ったという理由だ。通常はもちろん細心の注意を払う。でもそのシーンはわりと狭い部屋での撮影で、目線の先には他にも照明さんやらスタッフがウジャウジャいた。だからあまり気にしなかった。ところがその女優さんにとって、彼らスタッフとメイキング班のカメラでは気分が違うのだ。「映画本体のカメラ以外に別のカメラで撮られてると思うと気が散る、メイキングを撮らなきゃいけない理由は分かるがせめて邪魔しないでくれ」と。いやほんとすみません… これは僕の失態だった。それ以来何があっても絶対に目線に入らないようにしている。
他にも瑣末なことだが、前回書いたように映画の撮影は一月くらいかかるからその期間スケジュールを空けなければならないのも辛い。また、撮影素材は60分テープ50本以上になることはザラだ。それを10分程度にまとめるのだ。考えただけで気が遠くなる。
メイキング班とは映画の現場ではこんな存在だ。それでも映画のメイキングをしたいですか?ぜひご参考にしてください。…僕はもういいかな。
※掛け声は監督によって違うがだいたいコレがスタンダード。掛け声を観察するだけでおもしろい。テレビと映画は全く違うし。ちなみにテレビは「5秒前!4、3…」。
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3RD EYEさんのブログは勉強になります(笑)
僕はDVD特典のメイキングが好きで必ず見ます。
凝った作りのメイキングを見ると得した気分になりますね。
ハリウッド映画とかだと、また少し扱いが違うのではないかと思ったり。
日本の映画業界は特殊ですからねえ・・
メイキング面白いですよね。自分が作ったものが面白かったかどうかは分からんのですが。。特典映像は、基本的にはナレは入れずにインタビューのみで構成するから特殊なつくりになりますし、、、