三浦俊彦@goo@anthropicworld

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オトイアワセ:
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トラウマ系17

2005-12-25 14:50:26 | モンスター映画
 ■鬼が来た!■ 日中戦争末期が舞台とくれば、どーせあっち系の臭気プンプンなんでしょみたいな先入観持ってたんだけどなかなかどうして。中国映画の日本軍とくればやっぱ徹底的に悪なんだが、コミカルな悪になってますね。小恥かしい悪。生還したら罵られぶん殴られるというのは、特攻隊なんかには実際あったようだし。台詞中、靖国神社がしっかりバックアップに効いとりますわ、よしよし。一から全部フィクションなんだろうけど、現実の中国戦線の滅茶苦茶さがほんとよくわかる(気になる)映画ですよ。大本営そのものが「目的が定かでない現状では……」と常に認めていた〈なにやってんだか戦争〉ですからなあ。それに比べてたった一人の日本兵を監禁したままいつまでも殺せずに会合に会合を重ねる村人たちがリアルです。通訳君の立場が微妙なのも、つうかあいつがいっしょに拉致されてきてるところが訳わかんなくてシュールなんだな。一体「私」ってどの筋なんだと。処分に呪術的な意味を持ち込んで展開を複雑にした可愛いめの奥さん、つうか未亡人は結局どうなったのか描かれずじまいなぶん、旦那、つうか主人公格のあの男の末路が悲しすぎるやな。あそこで無理な襲撃試みるくらいならさっさと殺しときゃよかったに、的感慨を催させてくれる。しかし祝宴の修羅場化と玉音放送が重なってたのは解せんな。ヤケクソの八つ当たりってことだったのか。突如殺戮に転ずるあたりは嫌な予感的中の逆カタルシスというか、怒濤のわびしさともいうべき頂点に首斬りと。そのもったいぶった人民裁判場面、中国軍指揮官の恰好付けがほんと笑えちまう。後ろに控える連合軍将校の間抜け面もキマってる。武装解除された日本軍部隊のアホな虚勢を憮然とすんなり認めちまうあたりの呼吸もね。実際あんなだったんだろうなあ、敵味方にかかわらず軍人どうしのカッコつけあいで民間人が刃にさらされるわけね。この映画の批判対象は日本よりむしろ国府軍だったのかも。でラスト、いきなりカラーかよ。理屈わかんないけどとりあえず凄え効果よ。最も死ぬべき花屋が生き延びて結局首斬り役でしたか。首筋を這う虫をピン、ピンと爪弾くところだけに躊躇いをミニマル集約して、表情も動作も淡々とやり遂げさせたのは喝采。下手なヒューマンドラマで締めくくりゃしないところが堂々芸術でした。
 ■オープン・ウォーター■ ふうぅーん……。予定されてた事件以外は何も起こらないんですね。トッピングも伏線もなしと。ま、いいんじゃないでしょうか、簡素で、それだけメインエベントが際立つことになって。実話とかいってどこがどう実話なのか、人数チェックはちゃんと客一人一人に名簿記入させろよ、的なツッコミはおいといて、海面や水平線上の空のシーンを色違いで各種試してくれたビジュアルセンスは満足ゆくものでしたし。取り残されてしばらくして案の定、女が泣き始めて、あ~あ、やっぱ女が泣いて男が慰めるのかよ、でそのあとは案の定男が一人でキレてんのかよ、で定石通り罪のなすりあいかよ、ってウンザリしかけたけど、踏みとどまってくれました。淡々とやってくれました。漂流そのものへ向きなおってくれました。よかった。男が脚かっさらわれるあたりは大騒ぎした反面、女はやけにあっさり地味にたっぷん沈んでっちゃったんで、なおさら好感持てましたや。実際あんなもんだろうしね、サメも観客に見せるために襲ってんじゃないんだし。てわけでこういう広々とした密室モノもたまにはいいですなあ。サメがメインじゃないだけに並みのサメモンスターモノなんぞより贅沢感ありで。あ、トッピングなしの簡素な傑作みたいにさっき評価したけど、まさかほら、ホテルでの最後の一夜、ヤラずに翌日死んじゃったのは悲しすぎですよう、だからラスト漂いつつアイラビュー連発してたんですよう、なあんて伏線じゃないでしょうな。まさかな。しかしアメリカ映画だからそーゆー俗っぺ~さもしげ路線もつい疑っちゃうよ。
 ■ビョークの「ネズの木」■ まあ、子ども相手に大人が本気になってるとこが怖いっちゃ怖いです。結局殺しちゃったもの。ああいう殺し方とはな。挑発殺? 指を切り取って出汁に使ったってのなにか意味あるんかな? 意味ありげってだけで十分なのかね。魔女とかなんとか、背景が結局リアルなのかバーチャルなのか不明ってあたりがまた……、全体おとなしい進行と荒野の風景ばっかなので怖さ倍増という考えもありかとは推察するものの、うーん……、肝心の妹がもうちょい活躍してくれればなんとかなかったんだけどいかんせん皆さん動き少なすぎて、お姉ちゃんの抑えた怖さだけが単調に目立ってむしろ浮いちゃって、結局どうも乗れない作品だったかな。荒涼感だけは鮮明に残ってるけど。