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三浦俊彦@goo@anthropicworld

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トラウマ系24

2008-04-23 03:59:47 | モンスター映画
 ■白い巨塔(2003~04)■ 田宮版は放映当時断片的に観た記憶がうっすらあるものの、唐沢版は初めて観た。すげー面白いじゃないですか! やっぱドラマ作りって進化するもんだなあと。しかしあえてドラマファンが注目しないだろう周辺から攻めると、加古隆ってほんと天才ですね。NHKスペシャル「映像の世紀」のときすでに感じてたけど、こういうヒューマンな盛り上がり音楽作らせたらこの人の右に出る者はないんじゃないか。加古ってジャズっぽい現代音楽のイメージが強かったんで、ほんとこの音楽には感動したですよ。でドラマのほうに行くと、いくらなんでもやりすぎっしょ、的デフォルメな部分は散見されるものの――患者の前で教授が助教授怒鳴りつけたり、癌告知受けた患者が取り乱して医師に当たり散らしたり、露骨なカルテ改竄とか――リアリティ高レベルだと思いました。総回診の場面は医局一同階段駆け上がってエレベーター前で教授を恭しく迎えるってあーた、ほんとにあんなんだったら世界認識改めなきゃ、てくらいのリアリティです。大成功ですよ、このドラマ。とくに東と財前の関係はこの唐沢版が一番しみじみ描かれていたような。財前が東の最後の総回診を避けるためにオペを急いで、それが第2部の誤診裁判の原因になるってあたり、それとラストで財前が東元教授の執刀を希望するあたり、泣けるじゃないですか~。末期は田宮版より時間かかってて、財前の無念感がセリフにも直接表われていて、明らかに改善されてましたね。財前と里見の関係も、難しい膵臓癌の患者をなんとか手術したいあまり東教授を敵に回す危険を冒してしまう財前のプロ意識vs保身出世欲のスレスレ感だの、教授選で協力してくんない里見への当てつけに患者を盾にとる姑息な態度をさすがに反省して手術途中からオペ室へ入ってゆく財前の描写だの、互いに才能を称え合う有様の濃厚さだの、ウムウム、進化してます進化してます、脚本のテクニックが。大学を去った里見を引っ張ろうとする財前の口調も、表面上は裁判関係の駆け引きに見えて実は本心っぽいという、敵であり友であるふたりのデリケートな関係がしっかり描かれてます。財前に子どもがいないのも唐沢版のポイントでした。遺された財前父娘の虚しさが強調されまくりですから。柳原と看護婦の関係がスタートライン以前の恋愛関係なのも好感持てました。田宮版より全般娯楽的というかミステリー的というか、誇張ぎみな感じは拭えないものの――末期の病床で鵜飼学長にニヤリと笑みを浮かばせるなんぞの演出はちょっとやりすぎだったでしょう――人間関係をとにかく複雑化してくれた凝った作りには、はい、私ってば大いに興奮し満足いたしました。
 ■白い巨塔(1978~79)■ 唐沢版観た後に改めてこれを観直したんだけど――初見の記憶はほとんどないので初見と同じ――、こっちのほうがさらに良いじゃないですか! つうか、たしかに「古い」って感じはするわけですよ、唐沢版に比べて。しかし財前と里見の身長差は田宮版のほうが自然だなあってことにこっち観て改めて気づきましたし、やっぱ余計な視聴者サービス抜きの一見地味なリアリズムに徹しきれたぶん、全般こっちに軍配挙げます。唐沢版は岳父に焚きつけられて踊らされちゃった感が強いんだけど、こっちは田宮の迫真的演技のせいか財前自ら野望ギラギラって温感たっぷりで。センター長より学術会議会員選挙のほうが医局の脱線ぶりが強調されて広がりあったせいもあるかな。あと断然勝ってるのは東教授。中村伸郎って役者さんさすがですね~って感じ。言葉と独特のうめき声と鼻息を同時に発しながらのプチ頑固な表情ったらまったくもってハイパー適任。あっちの石坂浩二も十分よかったけど、キレて植木鉢を蹴りまくるシーンなんかサイコスレスレの熱演だったけど、正直適役度が違ったかな。あと佐枝子が弁護士事務所でたまたま働いてたって唐沢版の設定ねえ、あっちだけ観てるぶんにはエンタメ的にうまくできてるって印象だったけど、やっぱこっち観てからだと不自然に感じちゃうのね。佐枝子は外からあれこれ要らぬ介入するからこそ里見への思慕の暗示が生きるわけで。ただ田宮版、アラも目立つのね。後半の佐枝子&里見に関わるシーンで、やたら俗っぽいロマンス系の音楽が入りまくるのには閉口。てわけで音楽じゃ唐沢版に完敗。あと第一審判決後にストーリーが俄然たるんでしまったのはどうしたことか。あの婆さん(っても60代って設定ですな)のエピソードは要らんでしょう。里見が良心的な名医であることの証明のためだけにあんな長々とやる必要はない。何度も山ん中まで往復ってのクドい。無理に引き延ばした感が強いな、超名作ドラマなのに惜しいよ。里見関係であと2つ言うなら、兄貴の存在はまったくもって不要。あとから思えば、物語で全然重要な役割を果たしてない人なんだから。暑ッ苦しいというかわざとらしい兄弟愛の確認みたいな上滑り激励シーンを何度も見せられるのはウンザリしました。町医者が大切なのはモーわかったからあっち逝けって感じ。あと里見の助手がプチ里見的に正義感満々、いっしょに大学辞めてドサ回りのお供ってのも……、あの助手は当然、里見への賛否両方に揺れる唐沢版の彼のほうが柳原との関係上も影が濃くてずっと共感できたです。関口弁護士にしても、悪徳弁護士寸前の多重人格的唐沢版のほうがこっちのただ正義感一筋、より却って好感持てたなあ。あと紅会の描写がほとんどないのが不満なんですがね。これは唐沢版を先に観ちゃったからであって田宮版の欠点とは言えないかもですが。それとちょっと気になったのは、民事裁判の証人になったくらいで人生が狂うと思い込んでるのはどうしてかなあ、あの元婦長夫婦。ムラマツキャップに陰険な飴鞭戦法かけられたせいで逆に被告側についた旦那の一本気は心理学的に面白かったけどね。あとさっきも言ったけど臨終の床に財前の子どもが2人もいたのは興醒め。もっと淋しく死んでいくんでないとアンチヒーローとは言えないでしょ。あとはそうそう、これを言わにゃ始まらないって最重要の比較項目だけど、島田陽子と矢田亜希子は甲乙付けがたし、黒木瞳と太地喜和子では太地かな、てのがワタシ的好みです。ともに人物そのものってより役柄としてですけどね。ペアの比較では、矢田・黒木より島田・太地のほうが対照度が高くて当たりでした(いや、ほんとは財前夫人とケイ子のペアを比較するべきか? 妻と愛人が接してしまった唐沢版はちょいエンタメに深入りしすぎだったかな)。しかし役柄的には俗っぽいメロディに妨げられて大損した島田陽子でしたが、発声時の表情が抜群っすね! 右頬にやたら出来まくるエクボがほんとにもう、たまりませんよ!
 ■白い巨塔(映画版,1966)■ ドラマ版観たあとだとどうしても物足りないなあ。とうてい唐沢版ドラマにも田宮版ドラマにも及ばない出来でしかないのだが、だからこそ両ドラマより良い部分を挙げてみましょう。まず、時間が短い分、なりふりかまわぬ岳父・医師会陣営の選挙工作が戯画っぽくなる寸前でとどまっている点、決選投票での日和見の野坂教授のスタンスが短くもリアルに描けている点(とくに演技なんだか本心なんだか今津教授に食ってかかるあたりね)、今津が「おとなしい菊川なら……」と思惑を吐露するあたりの細かい演出、船尾教授の証言が複雑に曲がりくねって財前個人への批判と被告側支持の基調とをうまく融合させている点、そしてなにより、教授選と医療ミスとが同時進行で因果関係持ちながら展開する流れ(海外出張の準備で患者診れませんでしたってのと教授選挙気になって患者どころじゃありませんでしたってのじゃ罪の重さ全然違うからね)はこの映画版がピカ一ですな(それらすべてそざかし単に原作に忠実?なだけにせよ)。しかし裁判パートは、医学論議から対患者論議へとシフトする契機を明示した唐沢版が一番良かったのかなって印象をこの映画観て抱きました。映画版は万事あっさり流しすぎ。なんつっても柳原の葛藤の描写が端折られているところは致命的だし、東夫人の出番が極小なのも不満。大河内教授が金を突っ返すさい思い切り札束を蹴っ飛ばしたところはよかったんだが「なんとか賞受賞の学者をなんと思っとる」みたいな権威を振りかざすセリフはいただけなかったです。孤高の大河内教授のイメージと違うんで。原作通りだったらしょうがないけどね。あと大河内教授や佐枝子があからさまに「財前は嫌いだ」的セリフを口にするのもどうかな。ここの佐枝子は、島田陽子や矢田亜希子に比べて発声がどうしようもなく古臭い感じで(戦前の女優か?て感じ)里見と話す場面もとってつけた感じで。五郎の母ちゃんも後半でもっかい出てくれてもよかったんではないかなと。ま、たった150分に詰め込もうとしたらこんなもんが精一杯でしょうかね。
 ■医龍■ 『白い巨塔』が面白かったんで全巻買って観始めましたが、第1話で停止。それ以上観る気起きません。人物すべてカッコつけすぎというか。マンガとしてはいいんでしょうけどね……、でも第1話だけで判断するのは早計ですか。もし続き観る気になりましたら改めて評価レポートしますので。

ムシ系8

2008-04-02 15:35:00 | モンスター映画
 ■新・死霊のしたたり■ おっきいゴキブリにもうちょっと活躍してほしかったんだがな。出番少なすぎ。あとヒロインがゴキブリ女になりそうなシーン、一部始終しっかり映してくんないと中途半端すぎて。幼虫の動き、両手くねくねの蠢き表現もよかったけど、あのチビ禿は一種のフリークスなのかな? もっと重度の身障者使ってくれたほうがハッキリしててよかったと思うが。なんかラリラリ状態になってくとこが曖昧でそれがかえって旨み出してたかもしんないけど、場面というかロケが変わりすぎて、緩んでしまった感じだよね。て具合に注文多いのは心底これ、なかなか素晴らしいモンスターホラーだと私感じたからで。地味ながら傑作だと思いました。てかディテールどっきり尽くしでマクロ構造渋く押さえて。累計時間では決して見せ場多くないけどしっかり多彩で。こういう正攻法の映画ってやっぱいっぱい観ときたいですね。なお、この業界の通例として断るまでもありませんが本作は『死霊のしたたり』シリーズとは無関係です。便乗タイトルなんぞ本来不要の十分オリジナルな作品なのに……。
 ■アイス・スパイダー■ 『スパイダー・パニック』のクモ数減らしてもうちょいうわべ生真面目に作ってみました、て感じでしょうか。パワーじゃだいぶ負けてるけど、観てすぐメモっとかなかったんで細部忘れたけど、なかなか面白レベルだったことは確かです。スキーヤーにジャンプおんぶで襲いかかるクモたちのお茶目さというかメカニックぶりというか、やっぱモンスター映画ってこうでなきゃな。普通のバイオハザードものというか生物兵器漏洩モノというかプラスαはなんもなしの凡作っちゃ凡作でしたが、無難に基準クリアしてくれました。プラスαっていえば元スキーのチャンピオンかなんかがパニックに乗じて復活してゆくスポ根系がちょっと入ってたっけか。別に要らなかったけど。あと、ラストの退治の仕方に「?」な印象抱いた記憶があるんですが、何だっけな。たしか、もはや隠蔽しようもない段階になってるのにこの期に及んで隠しつづけようと画策する軍関係者の振る舞いが「おいおいそりゃ無理でしょう……」的苦笑を誘ってしまったような。たしか首謀者がクモに襲われて自業自得、な終わり方だったっけ。ともあれクモたちの動きに素朴に楽しめた私としてはヨシとしますが、ありきたりなXファイル設定に固執して(どう工夫してもろくな設定にゃならんのだから)ナイスなモンスター色に染みを付けるような真似は控えてほしかったなあ。
 ■トルネード・インセクト■ このCGにブツブツ不満垂れてるやつぁ誰ですか? 十分じゃないですか。ほんと目が肥えすぎるってのも困りもんだぜ。いや、率直なところこのビジュアル、全然悪くない出来だよね? 人体は貫通するわアップだとグレムリン的に獰猛かつお茶目なイナゴたちながら知能を感じさせない見てくれに徹してるし。ちゃんと遊園地じゃ絶叫マシンの人々にどんどんブツカってったし。貫通する場所もちゃんと首筋とかだし。しかしラスト近くのねぇ。牛さんたちのいるあそこは何だ、あれって囮かなんかだっけ、忘れちゃったけど、あの牛の群れにブワーッと襲いかかるところ、牛がぶすぶす穴だらけにグチャグチャミンチになってシーンが当然あるべきところ、なぜに省略されるのよ。省略するくらいなら牛なんか配置してくれないほうがよかったよなあ。群れにたかられてるはずの牛たち平然と立ったままだし。あそこまで頑張っといてどうしてシラケさせるかなぁ。とにかくB級モンスター映画たるもの、予算の限界を感じさせないような範囲でうまくやりくりするのも実力のうちなんだからさ。しかしまあそれ以外は、イナゴの死骸散らばる路上もそれらしくパニック映画してましたし。微妙にX-ファイル的な流れは無理せず力まず総合点で堂々合格だと思いました。
 ■ブリザード・エッジ■ 冒頭近くの飛行機のCGがヤバいのでよっぽどそこで止めようかと思ったンだけど、それより前のオープニング、山荘の地下室で兄さんが襲われる作りがホラーとしてなかなかの問だったのでガマンして見続けました。山荘に閉じこめられた男女の間の無駄きわまる罵りあいやセックスなんぞにガマンにガマンを重ねながら見ていくと、地下からボコボコ物音がしてなんだなんだと探りに行く面々(単数だったり複数だったり)のシーン、今出るか今出るかのドキドキ感は侮れませんでした。霊とかじゃなくてこういう物理的モンスターのひっそり潜みパターンって、結構効きますな。散らばってる骨もブキミこの上ないし。「鳥か……? いや人間だ……ガクガクブルブル……」てたまらんでしょあの薄暗い地下で。ついに仲間が見えない何かにズタズタにされちゃった遺体のズダブクロ造形もぶっ飛んでたし。すぐアップにしたりしない出し惜しみも好感持てたし。しかし案の定、モンスターが現われてからがいけませんや。人間サイドとモンスターサイドが交互無関係、CG浮きまくり、つうか実写とアニメの重ね貼りですか。モンスターったら大小あんだけ居るんだから狭い地下室でたった3人が一方だけ向いてグチャグチャくっちゃべってんじゃないってんです、緊迫感はセリフだけじゃないっしょ、姿勢で表現しなきゃ。クライマックス(笑)も至近距離の危険なモンスター群そっちのけでオネーチャン2人向かい合って逃げろ逃げないの押し問答。いい加減にしてください。切迫感出したいのはわかるけどいつのまに窓が埋もれるまで雪が積もってたのって感じで、そうそう、重ね貼りっていえばとくにラストでくっきりと雪山と人物合成まる見えなんだけど、ロケ確保する資金もなかったのかなあ。雪も全部CG(てか手描きアニメ?)だったし、じゃ雪上車でぐるぐる回ってたのは近所の公園とかですか? ま、いいでしょ、モンスターと死骸の造形だけで元は取れた感十分でしたから。お化け屋敷ホラー仕立てもうまくいってたことは事実だし。粘液サービス付きで。しかしこれ、ムシ系に分類してよかったのかなあ。ティム・バートン系の骸骨犬みたいなお茶目な格好、明らかにムシじゃないけど卵とか幼獣とかはムシそのものだったんでムシ系にしときましょ。ヘボCGと模型の使い分けが初々しくてよかったです。結局よかったんだかズッこけたんだか、こんだけはっきりパッチワーク模様の作品も珍しいですな。
 ■巨大毒蟲の館■ ムシオタクのメガネ女子大生がもっと出っ張るとよかったのですが。いろんなムシ登場とあって途中まで私わくわくでした。でもなあ……。クモにカブトにクワガタにサソリに……、総登場はいいんだがそれぞれの個性が生かされてないでしょう。ただ次々現われては女子どもキャーキャーキャーキャーてんじゃ……、虫どうしのバトルもほしかったし、ラスボスっぽい巨大カマキリとのサシの勝負シーンもこういうシーンなきゃダメだよね的な義務感で作ってるみたいな、いかんせんただの女子大生だからあっさり袈裟斬りで中断だし、なんかこう、弾けかたが足りなかったなあ。シーンというシーン、単発なのよなあ。屋外プールあたりではホラーっぽくおとなしめに押さえてたのって後半ぶっ飛ばすゼンマイ巻いてるんだろなと期待してたんだからさ。こんだけバカ女に悲鳴あげさせながら単調な流れは逆の意味で驚くべきか。サソリに胸ブッ刺されて絶命、って何通り出てきたっけか。ま、冒頭のCGの痛さを見れば期待なんぞハナからできなかったはずですが、そこがムシヲタの悲しいサガというか、やっぱムシ系は懲りずに最後の10秒まで期待しまくっちまうんですよ……。
 ■スタッグ■ ほんと学芸会なZ級映画だなあ。専門ガイドが必要なほどの場所じゃねえでしょうに。どう見たって近所の裏山の地下道ってとこでしょ。子どもが普段着で後ついて来れる道ですよ? 穴の内外行ったり来たりの繰り返しはとてもじゃないけどパニック映画じゃなくただのかくれんぼでした。とくにハゲは一人でさっさとエメラルド探しに逝けって。だいたいあのハゲ一人に何みんなびびってたわけ? ストーリーの都合上かな? ブス娘はキャーキャーいつもおんなじ姿勢で悲鳴あげてばっかで不愉快きわまりないし、あ~あ、クワガタムシモンスターってんで期待したんだけどな、ただクワガタをおっきくすんじゃなくてちょっとでも造形に凝ってくれてたら『ブリザード・エッジ』なみの値が付いたものを。

トラウマ系23

2008-03-31 01:20:46 | モンスター映画
 ■怨み屋本舗スペシャルⅠ 家族の闇 モンスター・ファミリー■ すいません。怨み屋の水着姿に萌えまして。映像特典はたいてい無視する習慣の私、今回にかぎってはプールシーンのメイキングを見てしまいました。カツラが扱いにくそうなのが和やかで映画制作って楽しそうだなぁと。で、話自体はとりたてて長所なし。崩れもせず弾けもせず。本編と同じ刑事どうしの裂け目で締めくくるっておんなじパターンはちょっと安易すぎでしょう。DVD用のエンディング別バージョンもとくに代わり映えせずだし。てゆうか『特捜戦隊デカレンジャー THE MOVIE フルブラスト・アクション』と『魔法戦隊マジレンジャー VS デカレンジャー』とりあえず注文しちゃいました。怨み屋の女優さんが出てるってことで。『怨み屋本舗』本編観たのは1年以上前だったんですが、あんときもいい感じだな……とは思ってましたが今さらながらファンになりそうでして。すいません。
 ■エルミタージュ幻想■ 素直に面白かったわ。ワンショットって気持ちいいもんやなあと。作為がなくてすがすがしい。ま、見てる間それなりに退屈だったりはしますが、「ああ、ちゃんとしたもの観たなあ……」という充実感はあり。退屈なのに観賞後スッキリ、って何なんでしょうね。実のところ浅めの一発アイディアものだけど、ロケの力に9割頼った寄生映画だけど、ま、充実感は味わえましたということで。まあ細かいとこもいろいろ、少女たちがわざとらしく笑いながらヒラヒラ踊ってったあの動きを延々と追ってほしかった気がしますけどね、客たちの帰り道をじっと追い続けるくらいなら。いや、でもやっぱりあのゾロゾロがいいのか、歴史感じさせて。
 ■評決■ なんか案外普通の展開のまま終わっちゃったかな。ほんと平坦に。「コピーは証拠にならない」ってとこ、もっと論理的な議論が聞きたかったね。あれ、コピーを証拠にしてるわけじゃないんだよね。証言が証拠になってるんだよね。あるいは、コピーをとっておくほどに受付嬢が当時反発していたって事実がれっきとした証拠なのであってね。裁判長の判断メチャクチャじゃん。って論理的に文句言ってもしょうがないか。シチュエーション出来上がってるわりにロジックボロボロだったんで、いや面白いにゃ違いないんで続編作ってほしい映画だな。
 ■RED SHADOW 赤影■ オープニングからの馬鹿馬鹿しいギャグの連発がそのまま続くんだとばかり思ってたよ。全然笑えないつまらんギャグで、だけどこれでもかとしつこく小出しにされるもんだからつい笑っちまってたよ。いい流れだったよ。そしたらなんだい、途中からギャグも消えて(せめて麻生久美子の退場に合わせたくらいまで持続させろよ)、平凡きわまりないフェイク時代劇に萎んじゃったと。後半は麻生網タイツ見られなくなった代償のポイント一切なしときたし、ラストのサシの勝負もアクション度ゼロのたわいない決着の付き方だし、何でわざとのようにこんなつまらな系映画にしちゃったかな~と。(くどいけど麻生網タイツは怨み屋のワンピース水着に迫る萌え度でした……)
 ■ミュート・ウィットネス■ プロレスみたいな映画だねえ。つまりこう、追う側と追われる側が示し合わせて協力していかないと絶対不可能な展開。最後のフロッピーディスクも、死に神は持ってかないでくれたし、ま、こういうのもありかと。観てる最中はのめり込めるんで。
 ■「超」怖い話 TV完全版 episode(1)~(3)■ なんとも……とりとめのない展開で、困っちゃったな……。始めのほう、トンデモシュール系かな~とわくわくしたンだけど、うむ、コビトの別人格がいい味出してね、しかしコビト出過ぎて慣れちゃってからは他にどんな影が差そうが「ふーん」って感じになっちゃってさ。後半はやたら「掛け軸、掛け軸」ってわけだけど、だいたい掛け軸の首斬りってテーマがドラマの流れと関係ないもんでチグハグなんですわ。おっさんのレザーフェイス化がなんか唐突だったなぁ。
 ■π■ 期待してたんですが、全然でした。数学が実質的に絡んでくるのかと思ってたんだけど、ヤッパ映画にゃ無理だったか。見かけ倒しのクズ映画ですね。
 ■池袋ウエストゲートパーク スープの回■ またかよ……。本編に比べると池袋のあちこちを「ああ、あそこだな」ってわからせる撮影してくれたとこに進歩が見られるが、しかしまたかよ、身ぐるみ剥ぐって言ったってねえ、ボッタクリバー、ほんとにパンツ一丁にひん剥いて舗道に蹴り出すかあ? コメディの文法そう律儀になぞられても……、慣用句を文字通り実行すればギャグになる、って確信犯というには古すぎる手でしょうが。『ウィッシュマスター』のモチーフならまだしも。しかもまた理由もなく路上で市民に拳銃向けてるし。巡査から昇格した刑事さんよお。もうそういうマンガ以前的演出はいいから。で、父親登場? そういう普通の人情展開も勘弁してよ……んでなに、ラーメンの達人、途中でどこ行っちゃったのかな? 思いつきの設定どんどん忘れられてるし。ラーメン対決は飛び入りの拒食症のねーチャンが審判、ってあーた、それで双方納得かい? 学芸会じゃないんだから、不動産がかかってんだよ? ストーリー全然真面目に作ってる気配がないのは困りましたねぇ。ラストもまさか本心でギャグのつもりかなあ、行き先わかんないまま知人総出の見送りかよ。落とすためだけのああいう作りって……しかも骨が仕込みだったあ? だいたい本編と同様の暑っ苦しい自傷趣味の熱血安ドラマやられても白けるのってば。ポイント押さえて完結にやってくれりゃまだしもダラダラダラダラ……。クライマックス(笑)間延びしすぎ。骨折音を使った芸術、って唯一ましなアイディアが台無しよ、もったいない。本編のエピソードを繰り返したりギャグをなぞったりする「内輪ウケネタ」でちんたら繋いだ底辺作品ですな。あ~あ、テレビドラマのロクデモ無さを代表させる典型例としてくらいは使えるかね。あ、でも骨折芸術は芸術論の授業なんかで使わせていただきますので(もちろん出典明言のうえ)。その点感謝です。

トラウマ系22

2008-03-20 03:55:10 | モンスター映画
■電車男 もう一つの最終回スペシャル 電車男VSギター男!!■ 本編観たあとすぐ観てしまいましたよ、このスペシャル編も。本編と同じシーンがしつッこく繰り返される中に興味津々の外伝パートが散りばめられるとあっては、時間無駄とは思いながらも早送りなしで律儀に観とおしてしまいましてね。毒男スレには表明されない住人たちの顛末がそれぞれあるんだろうなあとうすうす匂わせていたそのサンプルを同時進行で明示してもらえたんでスッキリしましたわ。奥行きを確認させてくれたというかね。しかしよりによってコリアンパブの女にダマされた(と思しき)オッサンが外伝のメインだとはねぇ。カネもらって直後にドロンじゃ、いくらなんでも純愛路線は無理でッショー、強引だなぁ。てあたりに半分目をつぶれば、うむ、けっこう満足度高かったですよ。ギター男があいつってのは「狭いサークルでやりくりする」ドラマ固有の御都合主義もいいとこだけど、ま、ユウコ(あの女優、『最後の弁護人』で阿部寛とのコンビが山田奈緒子レベルに迫るものがあったんで(途中から元不良少年がメンバーに加わって薄まっちゃったけど)ここでももっと出番あれば嬉しかったんだけどな)が結局金目当てを脱却したのかどうかが微妙なあたり(脱却説濃厚に仕立てすぎたきらいはあったけど)普通に奥行き深くなっていく気配で、しかしあれだな、このドラマが予想通り俺的モロウケた理由は、同じ昔話蒸し返して我ながらあれだけど、やっぱ俺がほぼ同じことしてたからだよな、電車男と同い年くらいンときに。尾行、ラブレター推敲、呼び出し等々ありのままを自己分析風に同人誌にブッ書いて友人らに配っていたものなあ……。あの時代に電子掲示板があったら俺、絶対時々刻々レポして常駐者に助言もらうくらいのことしてただろうからな。実際、親友の一人は頼みもしないのに俺に代わって彼女宅のまわりをうろつくという任務を勝手にやってくれやがったし、男女問わずいろいろリアルタイム&回顧モードでアドバイス&感想を寄せてくれたしなぁ。応援してんだか妨害してんだか、俺の周囲が異様に興味抱いて見守ってくれたものでした。今思うと、ほとんど成果を出せずギャラリーに申し訳ないことしましたわ。俺に電車男の半分ほどの勇気があればもうちょいここでも話せる面白い展開になったものを。財産になったものを。ってまあいろいろ猛省させられたこのドラマ、そしてスペシャル編、しかしおいおい、ラスト温泉かよ。混浴かよ。行き過ぎでしょう。もっと手前でとどまってほしかったなあ。過去の俺のレベルとかけ離れすぎてしまって……の反面最後までお互い敬語なのは評価できましたわ。敬語だけどエルメスのは全くよそよそしくないのが不思議。こないだ『エジソンの母』の打ち上げでリアル美咲とちょっと話してみたらエルメスとも鮎川規子とも別次元のキャピ感というか「なるほど……」って思いました。どうやってもこの人「冷たい美人」になりえないわけがフワッとわかったというか。ってここで本編のほうに話戻させてもらうけど、コメディ仕立て要員にすぎないことは先刻承知とはいえ桜井って男の存在がつくづく邪魔だったねぇ。婚約者騙ったり偽電話かけたり勝手に着信拒否にしたりのあれって、当然すぐバレるんだし、だからこそ本筋からはいつも無視されて空回りして頭越しに辻褄合わせられまくってるわけで、そのスペース使ってネット住人の生態描いてくれたほうが当然レベルアップできたわけで(あ、しかしそういや桜井も住人の一人ってか)、とにかくやっぱ居ないほうがよかったですね、桜井。
■電車男DX 最後の聖戦■ は? なんやこりゃ? 電車男の続編だよな、これ。間違いないよな。ぽかーん……、て次第で、オバカモードにも方向性ってものがある、原作とは無縁みたいなんで仕方ないっすか、て問題じゃない。自力と他力の境界を抹消してオカルトに走った時点で恋愛は無意味化というかそもそもそれ以前のレベルで、えーと具体的には、運命のブラックパールとやらを探しにタヒチで陣釜と別れて単独行動開始のあたりでDVD停めてそれっきりですわ。時間的にはたぶん真ん中くらいかなあ。ツヅキ観る気なし。電車男ヲタの俺がこんなってことで、このドラマのヒドサは伝わりましたでしょうか。御参考までに。
■電車男(映画版)■ 中谷美紀のエルメスってなんかこう……、わりと純粋無垢&天然に見えた伊東美咲エルメスに比べると中谷エルメスって、がっついてる感じがしちゃうのね。やっぱTVドラマ版と比べてずっと展開が速いせいかなあ。「少なくとも私にはモテモテですよ」ってセリフがあんなに早く出てきたんじゃぁ……、って改めて考えてみるに、あのセリフの時点で伊東エルメスも中谷エルメスも告白しちゃってんだよね。電車男がそのあと勝手に絶望したり焦燥したりしてるのがむしろシュールなのね。わけわからんのよね。てか、エルメスって最初っから(初デート以前から)電車男に惚れちゃってるわけでさ。それが電車男自身にゃわかってない設定らしいのだが、外部からはミエミエってのがかなり興味を削いだというか、スリル不足のもとだったかな。電車男にゃ客観的試練が与えられてほしかった。しかしああ都合よく秋葉原で会えないでしょいくらなんでも。キスシーンに持ってくラブストーリールールではあの展開決定事項だったんだろうけど。広いエリアで都合よく会うと言ったらTVドラマ版でもビッグサイトに当選券(だっけ、なんだっけあれ。コミケのあれ)届けに行ったエルメスがヲタ全開の電車男らを見つけるシーン。あそこ、よかったねぇ。オタクは根っからオタクだという。ホッとしたね。恋愛なんぞに負けるなオタク魂、てなもん。あのシーンに比べてエルメスにモテるためにフィギュアをごっそり捨てようとするシーンは胸が痛んだなぁ。俺はオタクにはなれんが○○○○オのコレクションを理想的彼女のために捨てにゃならんとしたら迷わず恋愛を捨てるぞ俺は。進化論的本能のために本能的文化を捨てるなんてありえんですよ。ってTVドラマ版の回顧がらみはさておき、映画版……、TVドラマ版があまりに不釣り合いカップルだったんで、コメディ仕立てとは別にエルメスが格下男からかって遊んでる説もあながち捨てきれないわけだが、こっちは結構釣り合ってるんですごくシリアスドラマに感じちゃいまして。実際シリアスのつもりで作られてるみたいだし。スレ住人の中では家庭内別居夫婦(かな?)がやや気になりはしたもののいまいちみなさん存在感薄かったですな。アそうだ、エンドロールの後のあれ観て初めて気づいたんだけど(あの設定ならあそこも泉谷しげる使うべきだったんじゃないの、大杉漣じゃなくて……)、そっか~、TVドラマ版で颯爽と腕関節キメて電車内事態収拾したリーマン、映画版の電車男だったのかよ~~と。警察にも呼ばれてなかったとこ見るとさっさと現場から立ち去ったようで、どうも消えたい理由でもあったんかな? と気にはなっていたのだが……そうかぁ、ここではこんな泣き虫の冴えない電車男だった彼が、次のサイクルでは第二代電車男の誕生にあんなカッコよく立ち合って……、とまあ良さげな輪廻転生モチーフでなかなかですけど、だったら二代目、『電車男DX 最後の聖戦』で映画の広告見上げたとき「俺あんなカッコよくないのに……」じゃなくて「あのリーマン……」てちょっとは気づいちまえよ。で頑張って三代目誕生に立ち合ってこいよ。あんなつまんねー南国トホホドタバタに志持ってかれるくらいなら。

トラウマ系21

2008-03-13 04:28:07 | モンスター映画
 ■怨み屋本舗■ 面白かったな! ほぼ妥協なし。深夜ドラマだけのことはある。情報屋にオタク青年に刑事コンビに、脇役がキマってるのもポイント。殺され屋使ったり依頼理由が怨みじゃないことがわかった時点で断ったり、汚いところと信念貫いてるところが共存しててなかなかのもん。ただヒロインの怨み屋がだねえ……。美人だからどのカット見ても気分いいけど、もっと愛嬌というか、いやちょっとだけでいいんだけど、コミカルなとこあってもよかったんじゃないかと。ちょっとカッコつけすぎててねぇ。しかし警察側の動きの不自然さが致命的だったな。こんなオモロイドラマなのにほんとブチコワしてくれたよ。もはや揉み消しようのない不祥事だってのにあれはないでしょうあれは。スターリン政府じゃないんだから。それにちなんでラストだよなあ。ことさらに「えっ? やっぱり?」って期待半分驚き半分の効果狙ったんだろうけど、今までのに比べてはっきり逆恨みでしょう、あれは。ほんと、全体に旨いドラマだっただけにああいう疵は痛いのだわ。あれ式の持ってきかたする余裕あったら(逆に残り少なくなって急いだのかもしんないけど)、ストーカーデブスをもっと追っかけてほしかったよ。凄腕ホストがあいつにだきゃ全然歯が立たなかったり(っていいギャグだったよ)、あのデブス周辺がやけにデフォルメ系リアルだったもんだからね。ま、とにかく文句は多いにせよいろんな怨みが入れ替わり立ち替わり描かれてすっきり楽しめましたっと。こういうドラマならあと倍は観たかった的腹八分目満足でした。
 ■電車男(TVドラマ)■ 告白しる!告白しる!ってみんな催促合唱すんのはいいけど、もうお互い告白したも同然な流れになって久しいってのにまだ改めて告白せにゃならんとはな……恋愛道ってそんな厳密な規則あるんすか? まあ俺も告白したこと何度かあるにゃあるけど、あそこまで自然に付き合えるようになった相手にゃわざわざ告白したことってねえよなあ……。毒男スレは恋愛界に疎いオタクヒキコモリの吹き溜まりゆえみな四角四面に考えすぎてるって設定ってだけ? いやいやマジかも、だってエルメスもラストで「ちゃんと気持ちを聞かせてください」って迫ってたものなァ。ちゃんともなにもおめー言わなくたって事実上付き合ってるだろーが俺ら、な態度じゃダメ? となると俺の過去の恋愛の半分は失格だったなぁ。道理でうまくいかんかったわけだ。とか反省促すドラマでした。中高年オヤジ向けの電車男純愛マニュアルなる便乗本も出たってのも頷けますわ。しかし肝心のエルメスってさあ……、ちょうど『エジソンの母』にかかわったもんで、伊東美咲が全然イメージ違うといわれてた2年半前のこのドラマ気になっててこのたびようやくチョイ観てみたわけだが、ふむふむ、しかし対照的ってより、エジ母で「面白くない女」設定だった美咲、エルメスじゃもっと面白くない女を演ってるじゃないですかあ~~。こっちじゃその判定基準設定が欠けてるもんでエルメスひたすらいい女ってことになってるけど。面白基準で最も解せんかったのは毒男スレの存在を知ったときのエルメスの反応だよな、スレッドちゃんと読みもしないで絶交ってそういうのあり? ほんとに好きだったらあれはないと思うよ。せっつかれないと掲示板読む好奇心のカケラも持ち合わせない徹底的につまらん超平凡OLなのに、そのエルメスにあそこまでこだわる電車男の純愛って? 単に外見に惹かれてるだけっしょ? そのくせ「男はみかけじゃない」ってアピールされても説得力ねえべなぁ、スレの住人どもはそれで力もらったとか言ってたようだけど。みかけで女選んだみかけじゃない男、ってパラドクスのギャグで売ってるドラマなわけもなさそうだし。でもまあ、面白かったですワ。相手が来るかどうかわからんのに待ち続けるって精神力勝負は、俺も十代末のあの頃やってたものなァ……、俺の場合連日の通いで、4日目に彼女やっと来てくれましてねぇ……、今思えばあれで大成功だったんだけど、そのあとがいまいち詰めが甘く……、昨年27年ぶりの高校同窓会ってやつがありましてね、会場で彼女見かけたんですが声かけませんでした。だって立食で大勢ざわついてる中でついでみたいに話しかけるような軽いエピソードじゃなかったんすよね、彼女とのあれは。彼女も親友らと固まってて分け入る隙なかったのに加えて。てわけで、一生もう彼女と会うこともないんだろうなぁぁ……って我が唯一の純愛系トラウマの蒸し返しがつい4ヶ月前にありましたもんで、ディスプレイ前で「ああもう……」って電車男の浮き沈みが共感できちゃいましたよぉう。とはいえ冷静に批評する目は失っちゃいませんよ。最終盤になって、スレのカウントダウンでやけにくどくど引き延ばしているかと思ったら(もうかったるくて早送りしちゃおうかと思ったよ)、あれラストの「陣釜美鈴被害者の会」オチを際立たせるための手法だった? ってまさかねえ。終盤、ほんと単調すぎたよ。じっくり泣かせてるって本気で思ってたとしたら制作陣、甘いなあ。てなんだかんだ言いましたけど、アキバ系が渋谷訪問を極度に怖れる様子の描写とか、小ネタでたっぷり笑かしてもらいました。電車男がひたすら卑屈であれじゃオタクって以前に人間性で女にゃ縁ねえっしょ的感想もまあほどほどにシュールなコメディ設定として成功してると見なしまして、2ちゃんにもそこそこ共感持ってる私としちゃかなり楽しめたドラマです。で、くどいけどエルメスの口調で言っときたいのは→これ←ですので。
 ■破線のマリス■ 確かにこれはなあ……、スリリングなんだが、やり過ぎというか。そもそも謎が解かれないまま男が転落死ってとこがいいような悪いような、あの男ってもともと職場で嫌われ者だったわけだよね、そうしてみるとどうなってもかまわなかったような。むしろ職場のお役所に問題アリみたいね。ヤラセのメカニズムというか現場の責任系統をもっと描いてくれたほうがよかったかな。しかし相変わらずこのテのサスペンスってみんな玄関にカギかけてないねえ。そうでないとああやって忍び込みのやりっこができなくなるもんね、盛り上がらんものね。で、なに、ラストのあれって、オチのつもりか? あの子ども何歳だっけ、とにかくあの子が盗撮してたっていうの? ちょい無理筋なんでないの……?
 ■ナイチンゲーロ■ またこの建物ですか……。それはまあいいとして、いや、これ観始めたとき、「お、タイトルに似合わずやけにスタイリッシュな映像だぞ?」と身を乗り出したものですわ。実際、映像と音響のベタではあるが心地よい凝りまくりかたは最後まで変わらず、光と影の使い方も模範的で、ビジュアル的にゃすっかり惚れちまいましたし(カメラの動きが素人臭いというか、カメラマンの動きが見えてしまう気配で興醒めだったとはいえ)、BGM無しという反俗で通したためオルガンが引き立ちましたし。しかし脚本がどーもいただけませんでしたな。どうしてすぐ霊って仮説に飛びついちゃいましたかね。女子どもの些細なことできゃーきゃーパニくる悲鳴合戦もウザイ。たかが窓ガラスにへばりついてる普通のカエルで悲鳴あげんでください。ただでさえ「裏切った」だのなんだの、たかが職業選択の自由の行使を責め合う展開が暑苦しいところへ、あのキャアキャアなので。どうせなら暴露合戦をもっと徹底してやってくれてたら突き抜けたけどね。そして例のごときあのオチですかい。きっとこの映画を最初に観ていれば「おお!」ってとこだけど、もう他でさんざんヤラレまくってるからなぁ。脚本と演出のマズサそして演技の不自然さすべてが正当化されてしまうこのオチ、はっきり言ってトホホホ……てなもんだったかな。しかしまあ、視覚的には大合格点だったので後味すこぶるヨロシ。女の子らのルックスも合わせて。膝に人面疽できちゃった子が私は一番好みかな。人面疽の笑いにしろ黒い血のスライムにしろ仰向け吐血にしろ、グロ系のディテールもよし。トホホオチのあとに予想通り霊が出てきたのは、まあ予想通りだけに意外とホッとしたり。
 ■大停電の夜に■ これ一応SFなんだよね。つうかファンタジー? エイリアンほんとに居たっぽいし。そういった暗示はヨシとして、どうしてこう臆面もないベタさ加減で敷き詰めにゃならんかね。いくらなんでも生き別れの母子体面で抱き合って感激しろってあたりからして無理だから。クニで待ってる恋人の話とかね。不倫の別れとかね。余命3ヶ月とか。俗っぽさを徹底したパロディに抜けてりゃまだしもだったけど。あと「そういう言い方をするのよせよ」って決まり文句を連発するのよせよ。離婚寸前の夫婦の会話ってそういう言い方ばっかかよ。愛人と女房の両方に同じセリフ言ってるとこがなかなか切ないでしょ的気取りも空回り。俳優のせいじゃなくて脚本が悪いには違いないけど、役者がアホに見えてきましたわ。こういうオムニバスなら『大失恋』のほうがよかったっけな。まあこれも、トヨエツのジャズバーにまさか一同総集合なんて馬鹿はやらんよな、と心配してたらまあまあ適度なメンツだけ集めてお茶濁してたけど、むしろ全員集合やらかしてナンセンスにもってったほうがそれなりの味が出てたかも。病院ですでに「オヨヨ、鉢合わせかな……」的ハラハラ感をはぐらかすのやってたわけでね、ジャズバーでは身も蓋もなくバーッとズッコケまくってもよかったと思うよ。そういや、モデルと中学生のコンビは孤立してたね。他のチームと絡んでなかったな。もしかして病院は一緒だった?
 ■THE有頂天ホテル■ この映画を面白がるやつってどういうレベルなのかね。単にいろんな芸人が大挙出演してるってんで釣られてるだけ、と自覚してればまだ救われそうだが。まあこの手法だったら『大停電の夜に』や『大失恋』のほうが10倍マシだったっけ、無理して笑い取ろうとリキんでなかったぶん。ホテルの面々、おめーらプロのホテルマンかよってほど客そっちのけで羽目ハズしてるし。ちった仕事に専念せいやアホが。客室係が客のもん勝手に身につけてんじゃねっつの。夢を追い続けろだの自分らしくだの陳腐なお説教しつこく言い続けてりゃ〈感動〉してもらえると思ってんのかね。あ~安易。定番の鬱陶しい入れ替わりものだのバレルに決まってる見栄っ張りのウソだの(あのマイク持った「挨拶」って何なの? アホ? あとで本人が本気で落ち込んでるボケ描写の上塗りだし)、コメディってジャンルを勘違いしてるんじゃないかねえ、この監督。
 ■無防備都市■ なんか、正直かなりつまんなかったです。第二次大戦大好きの俺が言うんだからほんとにつまんないです。こういう名画って、「面白かった」って言わにゃあかんですか? 戦争中にこれだけのもの撮りましたかー、イタリアはん、ドイツのせいで難儀なことでしたなあ、つったって映画の良さとは別ものだし。レジスタンスの人物たちがただ捕まって、最後神父も銃殺されておしまい、って、素直すぎだよね。ま、リアリズムなんで仕方ないでしょうけどね、こちらが始めから持ってるイタリア戦線のイメージを全然壊してもくれなければ補強してもくれなければ。子どもらにもうちょっと照明当ててくれてたらもっと観れたんだけど。ま、こんなモンですか、往年の名画って。ま、名画だけあってディテールはどのシーンも高レベルでしたが、あの有名なトラック後追い銃殺シーンは確かに迫力でしたが、全体メッセージがもうちょい、つうか全然足りんかったのね。名作に辛い採点で我ながら残念。いずれ再観賞します。
 ■英国式庭園殺人事件■ おーいちょっとこれ、つっまらねーっすなー。端的につまらない。どうしようもなく退屈だな。刺激もないし、評判の映像美も大したことない。これを褒めるやつって、そーとー無理してないか。アート好きの俺が言うんだからほんとにつまんないです。これは駄作だ。監督の自己満足なんてもんじゃない。これで満足できる自己ってのは感性が疑われる。気取ってるだけだろがほんともう。旦那の留守中に奥方に頼まれて画家が広大な屋敷を12枚スケッチする、とくりゃ何だろ何だろ、どんな面白いこと起きるんだろ、実験的な芸術映画なんだろーナー、そりゃ期待しますって。それが何これ? 何も起こらんじゃん。殺人事件は起きたらしいけど、じ、地味~~ったら地味~~……。見せ場ちっとは作りなせいよ。立像になりすました男が妙なナンセンス風味を自然発酵させててそれだけが「うふふ……」ものだったけど、なんかほんと、後継ぎ問題系の陰謀っぽいのがいろいろ絡んでるってことなんだろうけど、手際が悪すぎる。ほんと、もうちょっとフツーに面白くする工夫せいよ。期待が大きすぎただけだよ、などとは言わせません!