Thinking of you

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父から「外人部隊」の息子へ

2005-03-04 23:26:31 | 
何気なく手に取った、本のタイトルである。
最初は、フィクションなのか、ノンフィクションなのかの判断もつかなかった。何故読み始めたのかといえば、それが他の国の話ではなく、日本の、そしてノンフィクションだと分かったからである。
これは、本当の話だった。それも10年も前の話ではなく、外人部隊に入隊したのは、私と同世代の青年の話なのだ。
親にも教師にも受けがよく、明朗活発品行方正の彼が、突然国立大学卒業間近に誰にも内緒でフランスの外人部隊に入隊希望をだしたのだ。
フランスから
「お父さん、フランス外人部隊に入隊します。
 契約は五年間です。
 申し訳ありません。どうしても言えませんでした」
と、短い手紙を出して。
淡々とした、事実のみを語る文章には何の感情も伺えない。特に何があったわけでもない。
言うなれば、いまどきの若者が目指した場所が外人部隊という、異質ではあったものの、彼自身にとっては実はどこかの国の語学留学でも良かったのだ。
外人部隊に居た五年間の、父親との往復書簡を中心に補足事項がちりばめられているだけの流れに、何故か涙がにじむ箇所が幾つもあった。
子は、親の背中を見て育つのだろう。だが、親もまた、その親の背中を見て育つ。
そうして、実は背中では語れないものも多いのではないかと思わせる話だった。だが、日本の、特に父親は正面から子供と相対するのは不得意だ。
若いときにしか見えないこともあり(けれど、多くは年を取ると忘れてしまい)、年を取ってしか分からないこともある。
五年の任期が終わり、彼は帰国した。
彼が父親の年になった時に、どう思うのか聞いてみたい。そしてまた、10年以上も前から日本の閉塞感に耐え切れない若者が続出日本という国を愁いてしまいそうだ。

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