Thinking of you

旅行記や映画の感想など日々の暮らしを徒然なるままに残しておきます

ジョコンダ婦人の肖像

2005-03-26 23:42:12 | 
最近「ダ・ヴィンチコード」という本が出版されてから、面白いようにレオナルド・ダヴィンチの特集がテレビでも雑誌でも取り上げられている。
私は、読みたいと思いながらも今だ手を出せずにいる「ダ・ヴィンチコード」である。
私が、レオナルド・ダ・ヴィンチの名前に触れたのは小学校の図書館だ。
「ジョコンダ婦人の肖像」という、児童文学家の読み物は天才といわれている彼を、人間として描いているところが好きだった。とはいえ、筋などはすっかり忘れてしまっているのだが。
モナリザと呼ばれている絵画が、ジョコンダという商人の依頼で彼の妻を描いたものだということは知っていた。

続けざまに、二本のテレビ番組の特集を見た。
一本はモナリザの絵はレオナルドの自画像だといい、もう一本はマグダラのマリアの絵だとしている。単純な私などは、どちらを見てもそうだったのかと納得してしまっているのだが。そう言えば、その前にも何らかの特集があって、モナリザは完璧な左右対称(だったかな)で、人が美しいと感じる全てを持っている。そういう実験的な意味合いを持ってレオナルドが書いたという説もあったな。

レオナルドが秘密結社に所属していたことは、少しでも彼を知っている人間なら承知しているし、母の愛を知らずに育ち母の愛情に飢えていたというのも、そのせいで彼が当時ではタブーとされていた同性愛者だったのではないかと言われていることも広く知られている。
勿論、その存在はともかくとして、モナリザの絵が二枚あることもかなり知られていることなのだ。
もっとも、一枚は依頼人に渡し、もう一枚をレオナルドが持っていたとも言われていたが。
ジョコンダ婦人に母の面影を見たからだという説もあったな。

今、世界中でレオナルドの思考を探ろうとしている。本の出版だけでなく、その前から研究機関は数多くあったはずだ。
いろんなところで、いろんなことを語られている彼。
だが、きっと答えなど出ないのだろうとテレビ番組を見終わって思った。
いちいち最もな説に頷きつつも、一人の凡人のその思考すら他人が理解できない現代において、天才といわれた彼を果たして理解することなど可能なのであろうか?
足跡は追うことができる。こう考えたのでは?と推測することも出来る。
けれど、他人が他人(それが天才であろうと、凡人であろうと)の全てを知りうることなど不可能に近い。彼が何を考え何を思い、何に惑いながら生きていたかなんてきっと永遠に謎なのだ。
ああ、きっとレオナルド・ダ・ヴィンチの技術は絵画は、その全ての足跡は何時の日か人類は解き明かすことが出来るのかもしれない。
けれど、彼の感情は、喜びも悩みも彼でない私は解き明かせないのだ。
そう考えると、あらゆる不可思議の中で唯一絶対に解き明かせないのが人の心の中なのかもしれないと思う。……そして、そうであって欲しいと願わずにはいられない。

父から「外人部隊」の息子へ

2005-03-04 23:26:31 | 
何気なく手に取った、本のタイトルである。
最初は、フィクションなのか、ノンフィクションなのかの判断もつかなかった。何故読み始めたのかといえば、それが他の国の話ではなく、日本の、そしてノンフィクションだと分かったからである。
これは、本当の話だった。それも10年も前の話ではなく、外人部隊に入隊したのは、私と同世代の青年の話なのだ。
親にも教師にも受けがよく、明朗活発品行方正の彼が、突然国立大学卒業間近に誰にも内緒でフランスの外人部隊に入隊希望をだしたのだ。
フランスから
「お父さん、フランス外人部隊に入隊します。
 契約は五年間です。
 申し訳ありません。どうしても言えませんでした」
と、短い手紙を出して。
淡々とした、事実のみを語る文章には何の感情も伺えない。特に何があったわけでもない。
言うなれば、いまどきの若者が目指した場所が外人部隊という、異質ではあったものの、彼自身にとっては実はどこかの国の語学留学でも良かったのだ。
外人部隊に居た五年間の、父親との往復書簡を中心に補足事項がちりばめられているだけの流れに、何故か涙がにじむ箇所が幾つもあった。
子は、親の背中を見て育つのだろう。だが、親もまた、その親の背中を見て育つ。
そうして、実は背中では語れないものも多いのではないかと思わせる話だった。だが、日本の、特に父親は正面から子供と相対するのは不得意だ。
若いときにしか見えないこともあり(けれど、多くは年を取ると忘れてしまい)、年を取ってしか分からないこともある。
五年の任期が終わり、彼は帰国した。
彼が父親の年になった時に、どう思うのか聞いてみたい。そしてまた、10年以上も前から日本の閉塞感に耐え切れない若者が続出日本という国を愁いてしまいそうだ。