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コンビニオーナー 密着24時 ― 昼夜逆転 客数激減 深夜営業やめたい

2019-06-25 | 全国・各地域のニュース

 

 

 コンビニエンスストアの象徴「24時間営業」が揺らいでいます。深夜、客数の減少。深刻な人手不足―。人件費のかからないオーナー自らが店に立つことも珍しくありません。東京近郊で数年間、1人夜勤をするオーナーAさんに密着しました


 「人が集まらないので夜勤を1人でやっています。休みは持病の薬を取りに医者に行くときぐらいですかね。可能であれば夜間は店を閉めたいです」―。Aさんはこりごりといった表情で話します。

 Aさんの店では6月のある平日、午前0~3時台の来店客数は12人でした。0時台は6人、1時台は2人、2時台は3人、3時台は1人でした。その前日は午前0~3時台で13人。2~3時台で2人とほぼ、変わりません。平日の正午台平均80人と比べて大きな違いです。東京23区の郊外に立地する店舗でも、深夜は閑古鳥が鳴いていました。

 「毎日、こんなもんですよ」と渋い表情のAさん。深夜はほとんどのお客さんが車で来ます。徒歩での来店はありません。周りは静けさに包まれ店舗の明かりだけが、深夜の闇のなかに浮かびあがります。時折、スピードを出した車が通るくらいです。

 Aさんの勤務時間は午後9時~午前6時まで。午前7時に家に着き入浴、お酒を飲み、午前10時に寝ます。夜7時半ごろ起床。「昼夜逆転。仕事のことが気になって、毎日1回は眠れなくなって起きます。病院に行くとき以外、勤務を崩せないですからね」

共産党緊急提言「待たれていた」

 日本共産党は6月7日に「コンビニ・フランチャイズ法の制定を求める緊急提言」を発表しました。
 提言は
 ▽営業時間・日数の強制を禁止
 ▽人件費の上昇などに応じたロイヤルティー(上納金)見直し
 ―など6項目です。
  Aさんは「『提言』は素晴らしい。待たれていたものです。コンビニ・フランチャイズ法を作っておかないと、結局は力の
 弱いものが負けることになる」と語ります。

“24時間営業必要がない” 人件費 経営圧迫

加盟店がすべてを負担

赤字でも本部に上納金

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(写真)深夜にもかかわらず、ぎっしり並べられた、おにぎり(記事とは関係ありません)

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(写真)1本抜くと後ろから次が流れてくる缶飲料水

 6月のある平日の午前2時。お客さんの来店を知らせるチャイムが鳴り、レジに滑り込むAさん。笑顔で「いらっしゃいませ」―。仕事中のタクシーの運転手が新聞、漫画、炭酸水。20代男性が、水とパンとガムを買いました。

 深夜の仕事は多種多様です。接客、搬入、検品、品出し、廃棄チェック(鮮度が過ぎた商品の廃棄を登録)、発注、レジ閉め…。品物は3000~4000種類。飲料水の補充に冷蔵庫に入ると、レジでお客さんの対応ができなくなります。

求人費用130万円

 人手不足に手をこまねいていたわけではありません。「リクナビ」など求人広告媒体に毎月、広告を出すこと50回近く。総額130万円を費やしました。1回の掲載が4万5千円にもなる時も。

 「電話で連絡があっても結局、面接には来ない。『夜勤』にはだれも来ない」とうんざり顔のAさん。これまで応募があったのは女性1人、60代後半の男性1人、外国人2人。いずれも条件などが合わず採用に至りませんでした。Aさんは「広告費の総額が130万円になっていたのには驚いた。多少高くても反響が期待できるところを選んでいます」と深刻な表情です。

 大手コンビニ、セブン―イレブン・ジャパンが「あいてて良かった!」のキャッチコピーで「24時間営業」を始めたのは、1975年。深夜も早朝も時間を気にせず買い物ができる利便性は、コンビニの象徴でした。その成功モデルが揺らいでいるのです。

 深夜、客数は激減する一方、24時間、店を開かなければいけないつらさ―。加盟店は本部と不公正なフランチャイズ(FC)契約で縛られています。本部は加盟店からロイヤルティー(上納金)を徴収。人件費は全て加盟店のオーナーが負担しています。コストが膨らみ、加盟店が赤字でも、おにぎり1個でも売れれば、本部のロイヤルティーが増える仕組みです。

 全国のコンビニエンスストアは約5万8千店。業界全体の売上高は成長しても、1店舗あたりの売上高が伸び悩むなか人件費の上昇が直撃しています。

 例えば、夜勤人件費を計算すると…。時給1200円の8時間で9600円。2人体制で1万9200円。30日で57万6千円。

 Aさんは「夜勤が2人体制だとおおむね60万円ほど人件費がかかる。24時間営業をやめればその分、利益が上がる。みんな苦しめられずにすむ」と強調します。

法律ないと続く

 今年2月、東大阪市のセブンオーナーが営業時間の短縮を強行。多額の違約金を請求され問題が表面化しました。経産省が是正を求め、公正取引委員会も調査へ動きます。

 最大手セブンの永松文彦社長は「営業時間の短縮はFC加盟店のオーナーに委ねる」と発言。Aさんは「24時間営業はやる必要がない。でもなくなるとは思わない」といい、こう続けます。「24時間をやめたら株主の利益が減る。それは本部にとってまずいことになる。コンビニ・フランチャイズ法のような法律で縛らないと結局、24時間営業が続くことになる」

 Aさんがそう話していた矢先、店舗にはパンが納品され、Aさんは朝売りの準備のため、おにぎりやサンドイッチを並べに急ぎました。深夜から朝へ―。コンビニの時間は忙しく流れだしました。


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