志位委員長が記者会見
日本共産党の志位和夫委員長は1日、国会内で記者会見し、菅義偉首相が日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人の任命を拒否したのは、「学問の自由を脅かす極めて重大な事態」だと指摘し、「野党共闘を大いに強め、違憲、違法の任命拒否を撤回させるべく全力をあげたい」と表明しました。
志位氏は、同会議が推薦した候補が任命されなかった例は過去になく、任命を拒否された6氏のうち小澤隆一東京慈恵会医科大学教授ら3氏が連名の声明で「学問の自由を脅かす」「日本学術会議の存在意義の否定につながる」と抗議し撤回を強く求めていることに言及。「そもそも日本学術会議は、約87万人の日本の科学者を内外に代表する国の機関であり、1949年の発足以来、日本学術会議法3条に基づいて『独立して……職務を行う』と定め、高度な独立性が大原則として繰り返し確認されてきた」と強調。同年の同会議発会式に吉田茂首相(当時)が寄せた祝辞でも、「日本学術会議は勿論(もちろん)国の機関ではありますが、その使命達成のためには、時々の政治的便宜のための制肘(せいちゅう)を受けることのないよう、高度の自主性が与えられておる」と言明していたことや、1983年に会員の公選制から推薦制に変えた法改定のさいの国会答弁でも、丹羽兵助総理府総務長官(当時)が、「ただ形だけの推薦制であって、学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」「決して決して(吉田)総理の言われた方針が変わったり、政府が干渉したり中傷したり、そういうものではない」と答弁(同年11月24日、参院文教委員会)した事実も明らかにしました。
そのうえで志位氏は、「これらにてらしても、今回の任命拒否はまさに日本学術会議法に反し、憲法23条の『学問の自由』を脅かす違憲、違法の行為だといわなければならない」と厳しく批判。「この違憲、違法の任命拒否の態度をただちに撤回することを強く求める」と重ねて表明しました。
監督権書いていない
志位委員長は1日の記者会見で、加藤勝信官房長官が同日の記者会見で、「首相の所轄で、人事等を通じて一定の監督権を行使することは法律上可能」だなどと発言したことに言及し、「日本学術会議法には監督権なんてどこにも書いていない。監督権を行使するなど、日本学術会議のまさに否定にほかならず、その存立を脅かし、学問の自由を否定するとんでもない居直りだ」と批判。「まさにファッショ的なやり方であり、菅政権が官邸の強権によって科学者、日本学術会議まで意のままにしようというところに乗りだしてきたのを許すわけにいきません。大問題として追及していく」と重ねて表明しました。
首相が6人任命拒否
学術会議総会 新旧会長“大変重大”
日本学術会議は1日、東京都内で総会を開き、山極寿一前会長(京都大学前総長)が、同会議が推薦した新会員のうち6人が菅義偉首相により任命を拒否されたことを明らかにしました。山極氏は退任のあいさつで「日本学術会議法第7条で『推薦に基づき』とあるのは重い規定。任命拒否は日本学術会議の歴史になかったことで重大だ。大変残念だ」と述べ、菅首相に説明を求めていると報告しました。
6人の名前は公表されませんでしたが、赤旗紙の取材に、小澤隆一東京慈恵会医科大学(憲法学)、岡田正則早稲田大学(行政法学)、松宮孝明立命館大学(刑事法学)、加藤陽子東京大学(歴史学)、芦名定道京都大学(キリスト教学)、宇野重規東京大学(政治学)の6人の教授が任命を拒否されたことを明らかにしています。多くが安保法制や共謀罪、沖縄の新基地建設などに反対を表明しています。
山極氏は任命拒否の理由を示すよう菅首相あてに文書を提出したものの、現時点まで説明はないと報告。「日本学術会議は内閣府と密接な関係を持つが、命令を聞く組織ではない。科学者が業績を精査して推薦したのだから、説明もなく任命しないことは重大な問題だ」と強調し、新しい会長らが、この問題を議論し、今後対応するよう求めました。
日本学術会議の会員は210人で任期は6年。3年ごとに半数が改選されます。同会議は今回の改選にあたり、105人の推薦者を8月31日に内閣府に提出しましたが、総会直前の9月28日夜に、任命しない理由を言わずに6人を推薦名簿から外してきました。
総会で新会長に選出されたノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章東京大学教授は、総会後の会見で「重要な問題なので、しっかり対処していきたい。学問の自由、学術会議の中立性にもかかわることだと思っている」と話しました。
小澤、岡田、松宮の3氏は連名で、任命拒否の撤回に向け総力であたることを求める要請書を日本学術会議会長あてに提出し、出席した会員に配りました。(関連記事)
赤旗紙の取材に総会出席の会員からは、この問題への疑問や批判が出ました。新会員になった吉岡洋京都大学特定教授(美学・芸術学)は、「学問にも口を出すという菅政権による宣言だ」と批判。「こんな介入がまかり通れば、学者が萎縮する」(関西の国立大学教授)、「学術会議の目的は政策の提言で議論の場。これは科学者に議論させないということだ」(学術団体役員)などの声も聞かれました。
― しんぶん赤旗より ―