『ミッシング ~森に消えたジョナ』 アレックス・シアラー/作 金原瑞人/訳
またまた アレックス・シアラー・金原瑞人さんの作品です。
『13ヶ月と13週と13日と満月の夜』(*) も 『チョコレート・アンダーグラウンド』(*) も 彼の作品の
中から特に優れたものを選んで読んだかのように、印象に残る2冊でした。
この『ミッシング』については 様々な題材を手がけるシアラー作品ならではというべきか、これまで
読んだ3冊とはまた趣が異なり、個人的にすごく好きな本になりました。
ある日の登校途中、突然消えたジョナ。
ジョーが止めるのも聞かず、消防車を追い続け そのまま消息を絶ってしまったのです。
親友のジョナを失ったジョーの喪失感は計り知れなく大きなもので、ジョナの居ない世界で 誰もが
自分の道を未来へ向かって歩み始めることに嫌悪を感じるほど。
ジョーは、決して心を許せる友達を作りませんでした。なぜなら、そこはジョナの場所だから。
もう見つからないのかもしれない・・・もしかしたら もう生きていないのかもしれない・・・周囲の人た
ちがどう思おうとも、ジョーはジョナの生存を信じ、待ちつづけます。
そして、待つだけでなく、同様に消えることでしか消えたジョナを見つけることはできないと感じるよう
になり、導かれるほうへ進むこととなります。
この物語は、ジョナの事件の核心に迫り、まるでサスペンスのような展開ののち終わりを迎えます。
たくさんのレビューを読むと、その辺りを「さすがシアラー!」と述べているものも多いのですが、
私は前半の、ジョナが消えてしまうシーンや、ジョナを失ったジョーの心の移ろいを現したシーンが
とても印象的で共感を覚えました。
消えたものに近づくには同じように消えるしかない、すべてを失うことを覚悟して・・・という感覚。
いずれにしても、決してアンハッピーには終わらないシアラー作品は、読み心地がよいのです。
この本のあとがきに 金原さんがあさのあつこさんの言葉を引用されていました。
とても納得できる、いいお話だと思います。 その個所を そのまま記します。
これは一般書でもそうかもしれませんが、私は児童書においてただ一つタブーがあるとしたら、そ
れは性的表現とか、殺人などといったことではなく、絶望だろうなと思うのです。人生ってこんなも
のだとか、死んで終わりだとか、破滅して終わりだとか、それだけは語りたくない。ありきたりな希
望ではなくて、ほんとうにささやかであっても、やはり若い方たちがこれから生きて行く価値のある
未来があるんじゃないかみたいなことを語りたい。(「読書のいずみ」全国大学生活協同組合連合会)