コロナ感染者にこう対応
最新「コロナ肺炎診療記」 医療現場では感染者にこう対応している(松崎 道幸)
最新「コロナ肺炎診療記」 医療現場では感染者にこう対応している(松崎 道幸)
医師1人、看護師2人程度の小クリニックなら、患者さん1人の診断で1~2週間の閉院となるだろう。
私の場合も、いつもなら毎週、150名の外来診療、20名の在宅診療、40名の特別養護老人ホーム往診を担当していたのだが、それをまるまる他の医師に委ねることになった。ただでさえ医師不足のクリニックだったのに、現場に重い負荷がかかってしまったのである。
スタッフからは「早く帰ってきて発熱外来をやってください」との声が届いたが、自宅待機の身ではどうしようもなかった。
もちろん、勤務時間中ずっとN95マスク(微細粒子もブロックできる高性能マスク)をつけ続けるなら、コロナウイルス感染の方を診療しても、自宅待機とはならないだろう。だが、このマスクは呼吸抵抗が大きいので、15分以上続けて装着すると、苦しくなってとても耐えられるものではない。
2月25日から、クリニックでは発熱と呼吸器症状を訴える患者さんを、他の患者さんと別の動線で診療する体制を整えた。
北海道大学の研究チームは、今回のコロナウイルスが感染してから発病するまでの潜伏期間について「最短2日、最長14日、平均5日」と報告している。濃厚接触の場合、14日間の自宅待機はやむを得ないのかもしれない。
「PCR」よりも「CT」が役に立っていた
現在、欧米、中国、日本において新型コロナウイルスは、ウイルス核酸増幅検査(以下、PCR検査)によって判定されている。だが、その感度について全面的に信頼できるか、というとそうでもない。
湖北省の医療機関におけるPCR検査で、最終的にCOVID-19感染症と確定診断された症例のうち、初診時にPCR検査とCT検査の両方がなされた症例では、98%の患者にCTで間質性肺炎像がみられたが、PCRの陽性率は71%にすぎなかった。
コロナ肺炎を疑う症例においては、PCR陰性でもCT検査が陽性なら、COVID-19感染症の可能性が高いことに留意すべきであろう。だから私も、疑わしい患者さんの肺CTを撮ったのである。
ウイルス核酸検査の感度はなぜ、CTより劣っていたのか?
現時点では、以下の4つの理由が考えられる。
PCR検査の手法自体が未完成である
PCR検査の標準化が遅れているため、感度が一定でない
患者のウイルス量が少ない
検体の採取法に問題がある
インフルエンザウイルスやノロウイルスにおいても、
結果的に感染者だと判明した人たちの半数近くが、
迅速検査結果では陰性であった。