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『文武講習館規則』 文武講習館(1885.4)

2018年09月17日 | 清国・民国留日学生 1 教育、松本亀次郎

   

 文武講習館規則

 文武講習館設立主趣

 斯文斯武偏廃ス可カラサルハ古今先脩ノ常ニ戒ムル所ナリ況ンヤ方今万国ト並立スルノ時ニ於テヲヤ上下ヲ問ハス貴賤ヲ論セス曰ニ切シ月ニ●シ以テ養ハサルヲ得サル也然ルニ世人多クハ文ヲ以テ脩メサル可カラサルヲ知リ武ノ以テ講セサル可カラサルヲ知ル者蓋シ鮮少也夫レ文ハ以テ綱常倫理事宜誠真ヲ明ラカニシ武ハ以テ之ヲ保護操履スル所以ノ者也故ニ文有テ武無ケレハ義理ヲ踏ミ以テ其分見ヲ達スルコトヲ得ス武有テ文無ケレハ悖逆妄行以テ自ラ弊滅ヲ取ルニ過サルノミ其レ周ノ衰フルヤ優柔ニシテ文弱ニ弊シ講武以テ自ヲ強フスルノ術無キヲ以テシ秦ノ滅スルヤ修文以テ自ラ尽スノ道無ケレハ也其殷鑑タルヤ昭々トシテ明カナリ此レ文武ハ一欠ク可カラサル所以ナリ然リト雖モ若シ天下挙テ徳義誠真ヲ守リ毫髪モ之ニ背ク者無ケレハ武ハ修ムルニ足ラサルナリ兵ハ備フルニ足ラサルナリ然リト雖モ是到底希フ可カラサルノ事真理ヲ論シ正道ヲ弁スルモ其理ニ服セサレハ已ムコトヲ得ス終ニ武ヲ以テ服スル止マルノミ況ンヤ外侮ノ測ル可カラサルヲヤ彼ノ張儀ノ弁有リト雖モ相如ノ武威無クンハ安ンソ秦王ヲシテ缶ヲ撃タシメ又璧ヲ全フスルヲ得ンヤ高氏ノ●智アリト雖モ正成ノ武毅無クンハ千窟ノ急ヲ防クコト能ハス然リ而シテ能クニ公ノ武術アラハ秦国ノ大北條ノ衆到ルト雖モ敢テ恐ルヽニ足ラサルナリ然ラハ則義勇ハ養ハサル可カラス軍法戦術ハ学ハザル可カラス蓋シ法術ニ通スレハ力ヲ用ヰルコト小ニシテ功ヲ為スコト大ナリ否ラサレハ徒労危殆ニシテ力ヲ用ユルコト大ニシテ功ヲ為スコト小ナリ然ルニ今ヤ我国ニ於テ軍法戦術ト云フ曰ク目下軍隊ニ於テ修ムル所ノ操練是也抑モ国ニ常備ノ兵アリト雖モ此ヲ以テ安トスルハ固ヨリ不可也其レ常備兵ノ兵ハ僅ニ一時ノ変急ヲ防クニ充ツル而已焉ンソ外寇強●ヲ防禦スルニ足ランヤ其レ然リ然ラハ則チ常備ノ勢力之ヲ防ク能ハサレハ則チ其任ニ当ル者ハ国家諸君ナリ其任ニ当ルノ人若シ其法術ヲ知ラサレハ将タ何ヲ以テカ此国ヲ泰山ノ安ニ措ンヤ其危キヤ必セリ●是国ヲ愛スルノ人深ク憂フル所ナリ伏テ以為ラク無事平和ノ時ニ於テ文武相須テ共ニ講習シ以テ不虞ニ備ヘンコト諸君ノ必ラス欲スル所ナラン故ニ本館ハ諸君ノ欲ルル所ニ従テ専ラ徳義ヲ修メ知識ヲ磨キ其余暇軍法戦術ヲ研究センカ為メ其一ニハ独逸学漢学及ヒ数学ヲ設ケ其ニニハ歩兵操練又傍ラ本邦固有ノ剣法柔術ヲ設ケ以テ各其道ヲ教授養成シ一ハ以テ身体ヲ強健ニシ一ハ以テ異日国家ノ緩急ニ供スルニ足ラン特ニ銃槍試合ノ如キハ当時ノ戦闘ニ必要ナルコト已ニ諸君ノ了知スル所ナリ故ニ学業ノ余暇武道ヲ修メシムルト雖モ各生ノ目的ニ従ヒ左ノ館則中各科ヲ専修セシメ以テ国家●分ヲ助ケント欲ス果シテ斯ノ方法ニ依リ文武兼完ノ俊傑此ヨリ輩出シテ国家ノ大器タルヲ得ハ独リ本館ノ欣慶而已ナランヤ

             文武講習館

     文武講習館教則

 第一條 本館ハ独逸学漢学数学及歩兵操練ヲ教授シ且ツ左ノ予備科ヲ設ケ文武両全ノ良士ヲ養成スル所トス
 第二條 独逸学科ハ変則正則ノニ科ニ分チ正則ヲ四年変則ヲ二年半トシ正則ハ八級変則ヲ五級ニ分ツ
 第三條 陸軍士官学校並ニ教導団且ツ東京大学及ヒ予備門志願者ハ左ノ年月ヲ以テ入学試験ニ応スル科目ヲ教授ス
 第四條 士官学校予備科ノ卒業ハ一ヶ年半トシ之ヲ三級ニ分ツ教導団予備科卒業ハ六ヶ月東京大学及ヒ予備門予科ノ卒業ハ本館独逸学科生ニ準ス
 第五條 学年ハ九月一日ニ始マリ翌年七月丗一日ン終ル各学年ヲ分チテ二期トス即チ一期ヲ一級トシ九月一日ニ始マリ翌年二月十五日ニ終リ第二期二月十六日ニ始マリ七月三十一日ニ終ル
 第七條 本館独逸学科ニ入学ヲ許ス者ハ左ノ試験ニ合格スルヲ要ス但小学校卒業證書ヲ所持スル者並ニ判任官以上ノ者ハ別ニ入学試験ヲ為サス
          試験科目
        一漢学 十八史略  日本外史
        一作文 漢文若シクハ仮名交リ文
          但シ既ニ独逸学ヲ修メタル者ハ別ニ試験ノ上学級ヲ定ム可シ

 第七條 本館独逸学科生各期ニ於テ脩業ス可キ課程ハ左ノ如シ

       正則
  八級  一 綴字 一 読法 一 訳読 一 習字        一 算術 一 漢学
  七級  一 読法 一 訳読 一 書取 一 文法 一 暗誦筆記 一 算術 一 漢学
  六級  一 訳読 一 書取 一 文章学 一 会話 一 地理学総論ヨリ亜細亜 一 作文 一 算術 一 漢学
  五級  一 訳読 一 書取 一 文章学 一 作文 一 地理学(終り迄) 一 歴史(万国史太古) 一 代数学 一 漢学
  四級  一 訳読 一 作文 一 歴史(万国史中古近世) 一 物理学(音響光線学) 一 代数学    一 漢学
  三級  一 訳読 一 地文学 一 歴史(万国史最近世) 一 物理学(音響光線学) 一 幾何学 一 漢学
  二級  一 修辞 一 独逸史 一 羅甸文法 一 哲学 一 訳読 一 論理学 一 物理学(磁気熱空中現象) 一 幾何学 一 漢学
  一級  一 詩文章 一 独逸史 一 羅甸文法 一 哲学 一 論理学 一 翻訳 一 化学(無機有機) 一 漢学
       変則
  五級  一 綴字 一 訳読 一 文法
  四級  一 訳読 一 文法
  三級  一 訳読 一 翻訳
  二級  一 訳読 一 翻訳
  一級  一 訳読 一 翻訳 一 地理 一 経済

 第八條  各級ノ終リニ大試験ヲ行ヒ及第者ニハ昇級證ヲ付与ス各卒業ノ終リニ卒業試験ヲ行ヒ及第者ニハ卒業證書ヲ付与ス

 第九條  本館独逸学科ニ入学スル者ハ左ノ束脩及授業料ヲ納ム可シ
   一  束脩  金壹円
   一  授業料一ヶ月金壹円

         ○陸軍士官学校予備科

 第十條  本館ニ於テ該科ノ教授ヲ請ヒ入学セントスル者ハ左ノ試験ニ合格スルヲ要ス
      但シ不合格者ハ該科ノ試験ニ合格スルニ至ル迄教導団予備科ニ入学ヲ許スコトアリ
           試験科目
        一 漢学  日本外史  十八史略等略ホ解シ得ル者
        一 数学  四則雑問  分数加減乗除
 第十一條 該科各級授業科目ハ左ノ如シ
       三級
 一 漢学  十八史略  日本外史  孟子講義
 一 作文  尺牘  記事  片仮名文
 一 数学  立法迄
       二級
 一 漢学  七書  八大家文  日本政記  論語講義
 一 作文  論説文  但漢文或ハ片仮名文
 一 代数  二次方程式迄
       一級
 一 漢学  七書  中庸   大学講義  策府輪講
 一 作文  論文
 一 幾何学 平面立体迄
 第十二條 本館ニ於テ該科志願ニシテ入学スル者ハ左ノ束脩及授業料ヲ納ム可シ但シ独逸学ヲ兼脩スル者ハ該科ノ束脩及授業料ヲ納ム可シ
   一  束脩     金五拾銭
   一  授業料一ヶ月 金五拾銭

         ○陸軍教導団予科

 第十三條 該科志願ニシテ入学スル者ハ左ノ試験ニ合格スルヲ要ス
          試験科目
   一  片仮名文ヲ読得ル者
   一  数学  加減乗除
 第十四條 該科脩業科目ハ左ノ如シ
   一  漢学  十八史略  日本外史  輿地誌略
   一  数学  立法迄
 第十五條 陸軍教導団予備科卒業生ニシテ士官学校予備科志願ノ者ハ試験ノ上之ヲ許ス
      該団予備科ノ束脩及授業料ハ上ニ準ス
 第十六條 各科各生トモ毎月末試験ヲ行ヒ最優等ナル者ニハ臨時昇級セシムルコトアリ且士官学校予備科一級生ニハ屢々該校試験科目ノ方法ヲ以テ即座試験ヲ行フ者トス 
           
         ○東京大学及予備門予備科

 第十七條 該予科志願ニシテ入学スル者ハ本館独逸学生ニ準ス但シ東京大学ハ独逸学正則一級迄予備門ハ五級迄トス

         ○歩兵操練科

          歩兵操練科ノ趣旨

 夫レ本館ニ於テ歩兵操練ヲ設クル所以ハ已ニ述ヘタルカ如ク専ラ国家ノ保護ヲ計ル者ナリ然レモ之ヲ各自身上ニ計ルモ亦利安鮮少ナラス其一ニヲ挙クレハ先身体ヲ強健ニシ精神ヲ鋭敏ニシ而シテ若シ国家ノ義務ニ当リ兵役ニ徴サレタル時預テ其業ニ通シタル者ハ大ニ苦労ヲ免レリ且能其業ニ熟達シタル者ハ入隊後若干日ヲ経テ修業兵ニ選抜セラルヽコトアリ将タ現役若干月ニシテ帰休ヲ命セラルヽコトアリ是本館歩兵操練ヲ設クル所以ナリ而シテ其教師ハ陸軍下士中最老練ナル者ヲ以テ其任ニ充ツ而シテ其演習ハ操練已ニ限ラス各種ノ兵学中ヨリ抜出シ応急応変其他肝要ナル兵法ヲ講義スベシ尚詳悉ノ條々ハ左ノ規則中ニ掲ク茲ニタ大意ヲ挙クル而已

 第十八條 本館ハ学業ノ外毎日一時間以内歩兵操練ヲ演習セシムト雖モ該科ノミ志願ノ者モ之ヲ教授ス卒業期限ハ一ヶ年トシ全課ヲ三級ニ分チ一級ヲ四ヶ月トス課程ハ左ノ如シ
       三級
 一 銃ヲ携ヘス又ハ銃ヲ携ヘ行フ柔軟体操
 一 銃槍試合之法
 一 生兵学第一部銃ヲ携ヘスシテ行フ
       二級
 一 生兵学 第二部
 一 銃ヲ携ヘ第一部ノ演習ヲ行ハシム
 一 散兵学
 一 銃槍試合之法
       一級
 一 銃槍試合之法
 一 小隊演習
 一 百及二百ヤルド迄ノ距離ニテ射的演習

 第十九條 卒業期限ハ一ヶ年ト定ムレトモ毎月一度検査ヲ為シ優劣ヲ定メ昇級セシムルコトアリ而シテ全ク卒業ノ者ニハ卒業証書ヲ付与ス可シ但卒業大試験ノ節ニハ陸軍将校ノ検定ヲ請フ者トス
 第二十條 演習中不都合ノ者ハ其軽重ニ依リ左ノ方法ヲ以テ懲罰ス可シ
   一  直立不動又ハ留置
 第二十一條 操練演習ニ用ユル被服及靴等ハ館中ノ外決シテ他所ヘ持チ行ク可カラス
 第二十ニ條 武器ハ総テ演習始メ若干分時前ニハ武器係リヨリ之ヲ受取リ破損等有ル時ハ直ニ其係リヘ届出可シ
 第二十三條 演習中破損紛失等有アル時ハ総テ本人ノ弁償タル可シ
 第二十四條 事故アリテ演習ニ出頭スルコトヲ得サル者ハ保証人カ又ハ父兄ヨリ届出可シ
 第二十五條 当科ノミ志願ノ者ハ左ノ金額ヲ納ム可シ
   一 束脩    金三拾銭
   一 授業料一ヶ月金ニ拾銭
 第二十六條 既ニ志願ヲ許シ脩業中ノ者ト雖モ思想悪シキ者ト認ムル時ハ退館セシムコト有ル可シ

         ○漢学科

第二十七條 漢学ノミ志願ノ者ハ左ノ束脩及授業料ヲ納ム可シ     
   一 束脩    金五拾銭
   一 授業料一ヶ月金五拾銭 

         ○数学科

 第二十八條 数学ノミ志願ノ者ハ左ノ束脩及授業料ヲ納ム可シ     
   一 束脩    金三拾銭
   一 授業料一ヶ月金三拾銭

 第二十九條 束脩ハ入学ノ時保証状ト共ニ差出シ又授業料ハ毎月十日迄ニ納ム可シ最モ授業料ハ一日ノ教授ヲ受ケタル者ト雖モ其全月分ヲ納ムベシ十六日以後ニ入学スル者ハ其月限リ授業料ノ半額ヲ納ムベシ又数科ヲ兼修スル者ハ最高額ノ一科ノミヲ納ム可シ
 第十八條 前諸條ノ事件ハ附則ノ定ムル所ニ従フ
    
          附則

         第一章  入学
         第二章
 
         ○独逸学特別教授課

          生徒心得          
         
             東京麹町区三番町二十九番地
 明治十八年四月改          
                     文武講習館     



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