さて、昼休み。
ここで少し事件が起こる。
元気よく走るミエと友人たち。
楽しくてつい、目を瞑ってダッシュしてしまった。
すると。
ガッ
出会い頭に、チョルがミエの足を踏んでしまったのだ。
「ぎゃっ!!いっった!!」
思い切り叫んだミエの声に、チョルは若干パニックになってしまった。
なんとかしなければ、と咄嗟に体が動く。
バッ
ブラーン・・
皆が固まる中、ミエの手足だけがブラブラと風に揺れる・・。
「おい、大丈夫・・」
チョルがそう聞こうとミエの顔を見ると、凄い表情をしていた。
そこで初めて、チョルはしまった、と思ったのだった。
「うわああああああっ!!!」
<バカじゃないの?>
昼休みが終わった教室は、ヒソヒソ話が至る所で行われていた。
「おい、大魔王がやられたらしいぞ」「えっマジ?相手生きてる?」
「マジらしいよ。突然大魔王のアゴめがけて・・」
チラチラ、と皆の視線が”大魔王”のアゴに注がれる。
確かにアゴが赤くなっていた。
皆の注目の的、大魔王のアゴ・・。
その爪痕を残したのは隣にいる小さな女子だと、誰が思おうか・・。
し・・知らん知らん知らん
ミエ自身も、そう思っていたw
もちろん狙ってやったのではない。羞恥心でワケが分からなくなって、咄嗟に頭突きをしていたのだ。
これではいかん、とミエはノートを広げて筆談を試みようとした。
するとシャーペンが手からするりと抜け、床に落ちてしまった。
「あっ」
違うのを使おう、とペンケースを見てみたものの、
そこにはサインペン一本しか入っていなかった。
「あああ・・」
・・背に腹は変えられない。チョルに頼もう。
ミエはチョルの机をトントンと叩いた。
気づかない。
今度は足でチョルの机の脚を叩く。
気づかない・・。
とうとうミエは肘でチョルの肘を小突いた。
これならさすがにチョルも気づく。
「ちょっと・・」
「あんたの足の近くにシャーペンが・・」「え?あぁ・・」
チョルは足を伸ばして、ミエの方に軽く蹴ってやろうとした。
けれどチョルはサッカーの名手だった。
教室の壁に向かってシャーペンシュートを決めてしまった・・。
シューッコロコロコロ!!
チョルがミエの顔を見ると、凄い表情をしていた。本日二回目・・。
「何なの?マジふざけてんの?私今日あのシャーペン以外使えるペンがないのに!」
「チョルとミエは本〜当に仲がいいな?」
第五十五話②でした!
ミエをぶら下げた(?)のもシャーペンを蹴りすぎちゃうのも、
チョルが自分の力加減を自覚出来てない象徴ですね〜〜
自分の力がわからなくて、持て余して、それで他人も巻き込んじゃう、みたいな思春期を感じます
第五十五話③に続きます
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