「うわああ!」「そっち行くぞ!」
3年12組に、突然Gが現れた。
授業中にかかわらず、教室内はパニックである。
「きゃあああっ!」「うわああ!」
するとそこで、遂にファン・ミエが躍り出た!
捕まえる!
(先生は「みんな静かに」と言うが、これが静かにしていられるだろうか)
ミエはGに照準を合わせると、一気に仕留めにかかった。
G目掛けて足を振り下ろす!
グチャッ
「およ?」
・・結論を言うと、始末には成功した。
成功したのだが・・。
「うぇぇぇ!」「ぎゃあああ!」「うわあああ!」
[3−12は大騒ぎであった]
・・それもそのはずだ。
Gを踏もうと足を振り下ろした勢いで上靴が飛んで行き、
ミエは靴下でGを潰してしまったのだから・・。
<G-Shock >
「うわあああ!どうすんだよ!」「ウエェッ」
「ありゃ上履き飛んでった・・」
ミエは念押しにGを踏んだ足をグリグリと動かした後、
スッと上に上げてみた。
「あー!足あげないでぇぇ!」「ぎゃあああ」
「静かに!もうやっつけたから!騒がないで!」
皆の大騒ぎはおさまらない。
一人の男子がミエに向かってこう言った。
「きったねーー!」
「何よ!捕まえたのに・・」
みんなのためにGをやっつけたのに、そんなことを言われては心外だ。
振り返って言葉を続けようとした時、隣の席の人が目に入る。
大きな体を縮めたその姿を目にして、ミエは再び6年前の夏を思い出す。
<怖かった>
田舎の夏、と言ったらもうGは風物詩みたいなものだろう。
しかし・・。
「ぎゃああああ!!」
6年前のキム・チョルが、大声を上げて逃げ惑う。
ミエは怖がるチョルの元へと駆けつけ、威勢よくこう言った。
「私が捕まえるよ!」「うわあああっ!ヒィィ!」
「このぉぉぉ!死ねぇぇぇ!」「あっ・・やめろよっ!!」
素手でGをやつけるミエに、チョルは顔面蒼白である。
そんな彼らの様子を見ていた祖父母とスンジョンが、笑っていた。
「小さいのに上手に捕まえるねぇ」「うちのチョルは足が多い虫ってだけで大声出すんだから」
「私が捕まえたからね!チョル!」
そう言って、満面の笑みで潰されたGを見せるミエ。
チョルの血の気が引いていく・・。
うわあああああああ
「一緒に行こうよ〜!一緒にいこ!!」
・・という背景があっての、このチョルの冷たさだ。
ミエが追いかけても追いかけても、チョルはスタスタと歩いて行ってしまう。
「私も一緒に行く〜!」
「ミエちゃんと仲良くしろって言っただろ!」
「うっ」
そうして父親にゲンコツを喰らったことを、
チョルもまた思い出していた。
ハッ、と我に返る。
「あーそっか、あんたゴキブリ・・」
ミエからそう言われ、チョルは改めて自分が縮こまっていたことに気づいた。
周りと見回すと、
クラスメートがこちらを見ている。
チョルはすぐにバッと体を起こした。
「さ、もう一度集中集中!ファン・ミエは軽く洗って来なさい!」
「ハイ・・」
「ファン・ミエ 、かっちょいー!」
友からそう言われ、ミエは得意気な顔をしてもう一度チョルの方を振り返った。
私が捕まえたんだよ!
フイッ
しかしチョルはミエから顔を背けると、「話しかけんなオーラ」を出して黙り込んだ。
話しかけんな 話しかけんな 話しかけんな 話しかけんな
「はい、黒板注目ー」
そして再び授業は再開し、ミエは足を洗いに外へ出た。
ミエの胸中はこんな思いでいっぱいだ。
<私が捕まえたのに>
モヤモヤとした気持ちを抱えながら、ミエは運動場側の手洗い場まで歩いて行く・・。
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第十話①でした
ミ・・ミエちゃん・・マジか・・
足で潰すとか凄すぎますね・・。小さい頃は素手だったし、全然怖くないんだろうなぁ。。
うちにも退治に来て欲しいです・・(切実)
今回第十話の扉絵はこちらです
中学生らしいカットですね
微笑ましいです
第十話②に続きます
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