ミエは思わず耳を疑った。
まるで知らない男子から、あからさまに悪口を言われたのだ。
<悪党退治>
はっ
ミエはキム・チョルの手前一瞬恥ずかしさを感じたが、瞬時に男子に言い返した。
「なんなのあんた?!誰?!突然・・」
「は?何見てんの?クソチビが」
その男子は謝るどころか居丈高な態度でそう言った。
ミエの怒りが爆発する。
「はぁ?!」
「あんた何・・・?!」「しーっ、やめな」
「やめなって!あの人ちょっと危ないから」
食ってかかろうとするミエを、ユンヒたちが必死に止めた。
男子はうざったそうにミエらを睨む。
「は?うるっせ・・」
しかしこの男子以上に強い視線を送っている男がいた。
ミエの後方にいるキム・チョルである。
ビクッ
チョルの厳しい目つきに男子はたじろいだ。
少々動揺しながらチョルに言う。
「なんだよ、何睨んでんだよ。お前のことは何も言ってねーだろ。何で見んだよ」
チョルは視線を外さない。握った拳に力がこもっていく・・。
「関係ねーだろ?」
その時だった。
「先生っ!!」
「ここです!先生っ!」
ミエたちが大きな声でそう言ったので、男子たちはバラバラと退散する。
「あっち行け!」
「先生本当にくるかな?」「知らん!」
ミエたちは先生の姿は確認してないが、とりあえずそう叫べば男子たちがいなくなると踏んだようだ。
女子たちはフンフンと肩で息をする。
「あーっムカつく!」「あいつ三組のシンだよね?」「職員室行く!?」
「キム・チョルの横に立ってると絡まれるわ!」
誰かが言ったその言葉で、チョルはピタッと止まった。
ミエの心にも引っかかり、思わずキム・チョルの方を見る。
「行こ!」「あんなやつ気にすんな!」
けれどもう、そこにチョルはいなかったのだった。
「もう着替えよ」「気にすんなー!」
<ふつふつ>
授業が始まっても、チョルは先ほどのことでまだ胸の中が燻っていた。
「うーわなんだあいつ。小学生か?」「くそチッセー」
「キム・チョルの横に立ってると絡まれるわ」
何もしていないのに絡まれるしんどさと、何もしてないのに疎まれる虚しさと・・。
「今下線引いた部分は全部テストに出るぞー」
ミエはとにかく授業に集中することにした。
先ほどの嫌な気持ちは、いまだ胸の中に燻っている・・。
第四十四話③でした。
ああ〜〜チョルは何もしてないのに・・むしろ助けてあげたのに・・
この「何もしてないのに絡まれる」みたいなシチュエーションがこの作品の肝のような気がしますね。
今回のミエちゃんも然り、これまでのチョルも然り・・。
読者としてはもどかしいなぁ・・
第四十四話④に続きます
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