ミエは図書館の二階で、居なくなったキム・チョルを探しているところだった。
どこ〜?!
どこ行った〜?!
しかしそこにはチョルは居ない。
自販機の前で、大きなクモのせいで棒立ちになっているからである。
来るな・・
来るな・・!来るなーーっ!!
「高句麗中、百済中の奴らもいるぜ。挨拶するか?
そうキム・チョルが願っていることなど露知らず、向かいの男は話し続けていた。
「この中坊が!また俺一人で喋ってんじゃねーかよ!」
痺れを切らせた男は思わず声を荒げてキム・チョルの肩を掴んだが、
次の瞬間我に返った。
「いや、これは・・」
スッ・・
男がよく見ると、キム・チョルはどこか様子がおかしかった。
青ざめた顔で、だらだらと汗を流している。
ジュースを持った手が細かく震えていた。
男はさすがにその異変に気がついたようだ。
「あ?どーしたんお前?」
「どっかいてーのか?ちょい見してみろよ」
そう男は言うも、チョルはクモが脚の裏側に回ったので気が気じゃない。
目を逸らしたまま、小さく「触るな」と言った。
男は先ほど友人達が口にしていた言葉を思い出す。
「あいつマジでぼっちなんだろ?」「図体ばっかデカくて・・」
あぁ・・?
実はそれは真実で、実際キム・チョルはそんなに大した奴じゃないのかもしれないと男は思う。
<ハズレ>
思わず男の口元がニヤけた。
「おい」
「お前大丈夫か?ちょっと俺の目ぇ見ろよ」
「人を無視しやがってよぉ。
あん時俺がどんなにこっ恥ずかしかったか分かるか?」
キム・チョルが「止め・・」と口にしようとした時、
クモがカサカサとその長い脚で上って来た。チョルはヒイイと白目を剥く。
ここが正念場だった。
[キム・チョルはおかしくなりそうだったが]
「おい、返事しろって!」
[それでも尚]
「おい、答えてみろよ。
[こいつの前で絶対に大騒ぎはしたくなかった]
「おい、ダチがあっちいるから一緒に行こーぜ」
「頼むから消えてくれ・・」
チョルは男に向かって小さくそう言ったが、男は聞こえなかったようだった。
ふと、チョルの手にあるジュースに目を留める。
「つーかなんで缶二つ持ってんだ?」
「お前も誰かと一緒に来たのか?」
そう言って男が周りを見回した時、
チョルを翻弄していた全てのものが吹っ飛んだ。
ガンッ!!!
コロコロ・・
その突然の出来事に、男は思わず青ざめる。
「驚・・!」
「気になるか?」
「どうやって勝ったか直接教えてやろうか?」
「いやいやいや!俺はただ・・」
「消えろよこの野郎。俺に話しかけんじゃねぇ。殺すぞ」
「分かった!分かったって!」
「行けばいーんだろ!?」
男はそう言い残して、そのまま走り去って行った。
チョルの身体がブルブルと震える。
クモがついている方の脚を必死で動かした。
胸中も決して穏やかではない。
「くそっ!くそーっ!」
「チョル」
その時、後ろからあの子の声がした。
ファン・ミエはこちらを向きながら、何かを言いかけて口を開ける。
キム・チョルの頬に、冷や汗が一筋伝った。
この子には、見られたくはなかったのに———・・。
第三十五話②でした。
最後のミエちゃん
カバンの紐を両手でギュッと掴んでいますね。
ちょっと緊張した時や、意を決した時など、カバンの紐を握る癖があるみたいです。
そんなミエの様子をチョルは読み取ったのか・・?!
ハラハラしますね〜〜
第三十五話③に続きます
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