時は少し戻り、まだホンギュ一行がこちらに来る前。
ジンソプはただ隠れていただけではなかった。
やむを得ず、警察に電話しているのだ。
プルルル、とコール音が聴こえる。
ジョ・ハンは手を合わせながら、ずっと何かをぶつぶつ言っている。
「あの、もしもし、警察ですか?」「ジンソプ君どうしたの?」「シーッ」
「今セモ川にいるんですけど・・」 ソワソワ・・
「はい、そうです。橋があって・・集団での喧嘩がちょっと・・いや僕らじゃなくて・・。
・・ってかちょっと静かにしてくれよ!ミエの友達くんよ!」
いまいち集中できない状況で、ジンソプは必死に説明した。
しかし電話先の警察はどこか懐疑的なようだ。
「いや違います、イタズラ電話じゃないです!
そのまま、電話は切られてしまった。
ジンソプが嘆きの叫びを上げるのと同時に、サッとミエが立ち上がる。
「どうした?早く伏せて!隠れて!」
「えっ!だけど・・!」「なに言ってんだよ!」
男前なミエの提案だが、やはり不安要素が多すぎる。
けれどミエはやる気だった。
「全員知られるよりはマシでしょ?てか誰と喧嘩するかも知らないのに」
「いや、それなら僕が・・!」
「ぼ・・僕が・・」
ジョ・ハンは咄嗟に声を上げたものの、やはり怖さが先に立ち俯いてしまった。
ミエはサムズアップをしながら、みんなにウインクする。
「えっマジで行くの?!」「ミエ!」
ジョ・ハンはミエを止めることも、一緒に行くことも出来なかった。
「あのバカ・・!」「どうすればいい?!とりあえず様子見るしかないのかな」
ミエは見る間に橋脚の下まで走って行って、そこで上の様子を伺っていた。
そして、高句麗中の制服を来た男子が橋を渡り始めたのだった。
ジョ・ハンはただ祈ることしか出来なかった。
ドキドキと胸の鼓動が激しい・・・。
<ドキンとしたらピッタンコ>
そして時は現在に戻る。
橋脚の下から、ミエが大声で「おさるーーーーーっ!!」と叫んだ。
「なんだ?!誰だ?!誰が猿を探してる?!」
そしてようやく、
ミエはホンギュの視界に入ることが出来たのだった。
「こっちこっち」
わけがわからないホンギュ。
なぜここにファン・ミエが?
ファン・ミエ?
周りの奴らはミエの存在に気づいていなかった。
橋の下にいるミエは、必死のジェスチャーをホンギュに送る。
あっち!あっちは!
だめ!だめ!
しかしホンギュにはいまいち伝わらない・・・。
「・・はぁ?」
すると隣の奴が、ホンギュの視線の先を追った。
「なんだ?あっちに何がある・・」
ホンギュは咄嗟にそいつにラリアットをかます。
ガッ!!
「あ?なにが?あっちで小学生がふざけてたけど?俺視力2.0だからよ。
気にする必要ねーし、もう行こうぜ」
「なんだよ、先に騒いだのはどっち・・」「ウッセーよ!早く行けって!」
そう言ってホンギュは奴らの気を逸らす。
なぜファン・ミエがここにいるのか分からないが、巻き込むわけにはいかないからだ。
するとその進路の先に、こちらに向かって歩いてくる高校生の姿が見えた。
奴の呼んだヨンミン先輩たちである。
まぁいいか、お前はじき捕まる
奴のそんな思惑など知らないホンギュは、ミエがいる場所とは反対方向へ奴を押しながら、
チラッと橋脚の下を見てみた。そろそろ逃げた頃だろうか?
しかしそこには!
マ ジ か よ
[嘘だろ・・]
事態はどんどん複雑になる。
ホンギュはいくら考えても、ミエがここにいる意味が分からないのだった・・・。
第九十三話①でした。
ミエ!かっこいい!アルマゲドンのよう・・
女の子の方が落ち着いてるのがリアルですねw
第九十三話②に続きます