羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

うしおととら 3

2015-12-12 22:07:55 | 日記
「わからない、ですか?」「わからなくはない、けど」白髪の男の質問に、上手く答えられない真由子。「ただ」「ただ? なんだっ?」「ごめんなさい、私には」「どうせお前にも、わからんのだろう?」老人は一瞬で真由子の隣に来ていた。「まて、ナドカよ」「そんな脳ミソは、いらんわなぁ」白髪の男の制止を聞かず、蛭舌を伸ばすナドカ。驚き、恐れる真由子。ここで天井が電撃で破られ、真由子姿のとらが帯電して飛び込んできた。「え? 私?!」「ほら行くぞ!」「その声、とらちゃんっ!」真由子が喜んでいると、ナドカの隣から無数の金属片の様なモノが高速で飛来し、とらを襲った。
とらを見るナドカ。「なんだお前? 我々の邪魔をしおって」人間変化が少しずつ削られ元の姿に戻るとら。「そうか、タユラよ、私の判断が早過ぎたのだな」自分の回りを漂う金属片に話すナドカ。「その娘は、我々の問いに答えかけていたようだった」タユラの金属片は集まり、白髪の男の形になった。「娘よ! 答えるのだ、先の質問にっ!」「うるせぇ! コイツはワシが喰おうと思ってたんだ。手ぇ出すんじゃねぇ!」怒鳴るとら。「何百年、我々は同じ質問を人間にしてきたろうか」タユラは語り出した。
タユラとナドカは刑場の土の下にいた。二人の上で、多くの人間が未練と後悔、恨みと憎悪を抱いて死んでいったが、中には微笑みを浮かべ、悔いなく満足そうに死んでゆく者達もいた。「人間は不思議だ。人間は死に臨んで、ああも色々な形があるのだ? 姿形を人に似せても、わからないのだ。だから」「人間に直接聞いてみる気になったのかよ」「邪魔はしないでもらおうか?」「死んでもらうぞ?」タユラに続けたナドカの言葉に腹を立てたとらはタユラとナドカに電撃を放ち「雑魚どもがッ!!」二人を爪で殴り付けた。壁を突き破って吹っ飛ばされるタユラとナドカ。
     4に続く 

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