羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

うしおととら 4

2015-12-12 22:07:45 | 日記
「やったぁ! とらちゃん、ありがとうっ!」「おいっ?!」抱き付く真由子を厄介がるとらだったが、真由子を抱え数階程度下階に降りた。この辺りの階層は薄暗く人気が無かった。真由子が手の甲に少し怪我をしているのに気付いたとら。「もったいねぇ! 血の一滴だって溢すんじゃねーよっ」とらはベロンと舌を伸ばして真由子の傷を舐めた。「えーっ?!」美味に驚くとら。「優しいんだね」「はぁっ?! 何勘違いしてんだ?」うんざりするとら。
「見て見て! 綺麗ぇ」展示されていたウェディングドレスに見とれる真由子。「どう、似合う?」真由子は更衣室でウェディングを着てみた。(ほうっ、こりゃいい、包み紙を替えたらハンバッカもこんな風に旨そうに見えるんかねぇ)とらはドレスアップしたハンバーガーを思い浮かべ、ニヤリとした。「これ着て、潮君のお嫁さんになりたいなぁ」「なりゃいいだろう」(どうせ二人とも喰っちまうんだ)舌舐めずりするとら。「ううん、いいんだ。私はいいんだ」真由子は代わりにとらと結婚式の真似事をしようとし始めた。迷惑がるとら。
「本当にバカだなぁ! お前は別の女に遠慮して、自分が貧乏クジ引いてもいいってのかよぉ?! ケッ、そういやいたよ、長い年月の中、おめぇみたいな偽善者がなぁっ! てめぇが死んじまうのに好んで貧乏クジ引く奴らがっ。それも嬉しげによっ! ワシはそんな奴らを見る度、気持ち悪くなったし、人間っつうのはなんて愚か者なんだと思ったぜ。クソ潮もっ、勿論おめぇもだ、女ッ!」とらの言葉を聞いていた真由子は一言呟いた。「泥なんて、なんだい」「ああっ?」「昔、私の家の近くに沼があったの」風に飛ばされ、買ってもらったばかりの帽子を沼に生えた草の上に落としてしまった子供の真由子。
そこへ子供の潮がのしのし歩いて来て、泥だらけになりながら帽子を取り、真由子に渡した。
     5に続く

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