羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

アルスラーン戦記 4

2015-05-13 20:36:21 | 日記
見込んでのことじゃが、一つ頼まれてくれんか?」フスラブはむしろにこやかに頼んできた。ギーヴはフスラブの後ろに不自然に掛かった幕に目をやった。(幕の後ろに剣と甲冑の気配、面倒だな)「正当な理由と報酬、それと成功の可能性が有ればお引き受けします」こちらもにこやかに、ギーヴは答えた。「理由はパルス王国の存続、ひとえにその為じゃ。報酬は存分につかわそう、お主には秘密の通路を通り、王妃様を城外の安全な場所へお連れしてもらいたいのだ」フスラブとギーヴは作り笑いは止めていた。
夜、ルシタニア軍が城壁に無数の火矢を撃ち込む等する中、ギーヴは顔を隠した王妃らしき者を王宮の地下水路から逃そうとしていた。「足元が滑ります、お気をつけ下さい」王妃らしき者は答えない。ギーヴはランプを手に進んだ。(王も居らぬ、王妃も居らぬで、何が王都だ。しかもエクバターナ百万の民を捨て置くとは、やれやれ、どこぞにまともな王は居らぬのか)ギーヴは胸中で皮肉に呟いた。
アルスラーンは件の洞穴で剣を抜き、刀身に自分の顔を映していた。ダリューンもうんざりし始めていた。「いつまでここに留まっているつもりだ?」「お前にも戦術の講義が必要か?」ナルサスはいなした。「いかにお前が優れた兵でも、単騎でルシタニア軍に勝つこと等できぬ」「エクバターナの兵と合流できれば」「無理だな」ナルサスは盤上遊戯の駒を触り出した。「敵は奴隷とルシタニア軍、合わせて数十万人。城内に残った兵だけでは数が少な過ぎる。みすみす殿下を危険に晒すつもりか? しかし、軍に勝つことはできずとも、将を討つことはできる」駒の中から一つ摘まんで見せるナルサス。「今、我々が相手取るべきはカーラーンだ。今のところ奴はエクバターナの攻城に掛かり切りだ。だがその後は、必ず殿下を狙って動く。それも比較的少数で」「なぜわかる?」
     5に続く

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