羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

アルスラーン戦記 5

2015-05-13 20:36:10 | 日記
「奴は元々パルスの将だ。信頼を得ているとは思えん。我々の勝負時は、カーラーンが突出して動いた時だ」ナルサスは先程摘まんだ駒に色違いの駒を当てた。「奴を捕らえれば戦力を削れる上に、裏の事情を知ることができる」「カーラーンが来るまで待っていろと言うのか?」「大局の為に感情を抑えることが重要だ」場合によって国を捨てていたナルサスとダリューンでは、その感情が違っていた。
「疲れたでしょう」ギーヴは水路で、手を引いていた王妃らしき者を振り返った。「無理しない方がいい」黙っていた王妃らしき者は驚いて顔を上げた。「王妃様の振る舞いをするだけでも大変なのだから」その者はギーヴの手を振りほどいた。「なぜわかったのです?」「匂いで、アンタと王妃様では肌の匂いが違う。同じ香水を使っても。アンタが身代わりになって、その間に嘘つきの王妃様を逃がす。そういう段取りだろ? 身分の高い人とはそういう者だ。他人は自分の為に奉仕し、犠牲になるのは当然と思っている。いい気なもんさ」
「王妃様を誹謗するのは許しませんぞ!」身代わりの女は怒った。「王妃様や宰相様の御考えがどうであろうと、私は自分の役目を果たすだけのこと!」「そういうのを、奴隷根性って言うのさ」「ならば、これ以上、私を連れては行けぬと?」「俺が引き受けたのは王妃の護衛だ。王妃に化けた官女の護衛じゃあ」と言い終わらぬ内に、官女は短剣を抜き、ギーヴに切り掛かってきた!「おっとぉ、まあ待て」半笑いで対応するギーヴ。「それでもお主はぁ、そこそこの美人だから、送り届けてやらんでも」官女は減らず口のギーヴに金的蹴りを放った!「おふぅッ」体勢を崩すギーヴ。官女は水路の先へ一人で駆けて行ってしまった。
一人で駆けた官女は狭い水路を抜け、大きな水路へ出た。「はぁ、はぁ」呼吸を整える官女だったが、
     6へ続く

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