小学生の頃の練が早足で堤防の上を歩いてゆく。同じ年頃の子供達はキャッチボール等して遊んでいたが見向きもしない子供の練。冷たい海風に吹かれながら、練は真っ直ぐ歩いて行った。祖父、健二の畑に来た子供の練はランドセルを投げ出し、畑仕事をする健二の元へ駆けて行った。「坊主、畑に来るんじゃねぇ。おめぇは勉強すんだ」黙って手伝い出した練に健二は手を止めて言った。健二を見詰め返す子供の練。「勝手にすろ」健二が折れると、子供の練は手伝いに戻った。「おめぇは親がいねぇ、だから土触って生きろ。よく寝て、よく食べて、よく働くんだ。よっ。山がお前を守ってくれるべ。お前はここで生きるんだ。さすけねえ、さすけねえべ」作業しながら話し、作業が一段落するとまた畑の向こうに聳える会津の山を見ながら健二は話し、子供のを傍に引き寄せ勇気づけた。子供の練は山を見ていた。それは練の『夢』だった。眠りながら、練はまた泣いていた。目覚めた練は泣いていたことに驚きもせず、体を起こした。隣では晴太が布団も枕も奪って眠りこけていた。
同じ朝、静恵の家では静恵が大学芋を作っていた。「あ、うわぁっ、練の大好物!」洋裁道具や材料を抱えて台所の前を通り掛かった小夏が嬉しそうに入ってきて一つ摘まんだ。「あっ、熱っ」口に入れる小夏。「熱いよ?」「んーふぅっ」美味しかったらしい小夏に静恵も微笑んだ。晴太を連れた練が、静恵の家の庭の花に水をやっていた。「練君毎朝水やり来てんの? 親戚?」「いや、ここの婆ちゃん一人暮らしだから」「ふーん」ポケットに手を入れて庭を見ている晴太。「朝から甘いけど」縁側に大学芋を持った静恵が来た。「大学芋だ」「頂きます!」縁側に座って大学芋に手をつける二人。「あっ、あっ、ああーっ!」小夏も洋裁道具や材料を抱えて小走りに縁側に来たが抱えていた材料を廊下に落として慌てていた。
2に続く
同じ朝、静恵の家では静恵が大学芋を作っていた。「あ、うわぁっ、練の大好物!」洋裁道具や材料を抱えて台所の前を通り掛かった小夏が嬉しそうに入ってきて一つ摘まんだ。「あっ、熱っ」口に入れる小夏。「熱いよ?」「んーふぅっ」美味しかったらしい小夏に静恵も微笑んだ。晴太を連れた練が、静恵の家の庭の花に水をやっていた。「練君毎朝水やり来てんの? 親戚?」「いや、ここの婆ちゃん一人暮らしだから」「ふーん」ポケットに手を入れて庭を見ている晴太。「朝から甘いけど」縁側に大学芋を持った静恵が来た。「大学芋だ」「頂きます!」縁側に座って大学芋に手をつける二人。「あっ、あっ、ああーっ!」小夏も洋裁道具や材料を抱えて小走りに縁側に来たが抱えていた材料を廊下に落として慌てていた。
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