「あっ、小夏。幼馴染み」「あっ」紹介されて軽く頭を下げる晴太。「夜中にミシンやられたら眠れないでしょ?」「平気よ」静恵が答えると「平気よっ!」調子に乗った小夏が静恵を真似て言った。「うちのアパートじゃ、作業できないもーんっ」小夏は劇団の児童向け? らしい公演チラシを取り出し、記載された『衣装』の項に乗った自分の名を指差した。「え? 衣装さん?」少し興味を持つ晴太。「デザイナーになるって会津から出て来たんだよ」チラシを手に少し呆れた風な練。「まだ」「まだ人間の服、作ったこと無いけどねっ」「デザイナーなんて捨てる程いるからなぁ」大学芋を食べ続ける晴太。「知り合いいるの? 紹介してっ!」「お前、そうやってすぐ人についてゆくから、変なのに捕まって泣きべそかくんだよ」練にすら心配される小夏。
「あの時はまだ東京出てきたばっかりだったからぁっ」「お前助けたせいで、俺は人とはぐれて」「んん? 誰と?」「ごちそうさま!」練は大学芋を一つ取って縁側から腰を上げた。「あっ、待って! 私も出るぅ~っ!」慌てて作り終えてはいたらさい衣装を手に、家の奥に小走りで入ってゆく小夏。一人残されが構わず大学芋を食べ続ける晴太。「なんにも無い庭だったのよ」「え? 練君が育てたの?」「そうよ」少し驚く晴太。「寂しい人を見ると、ほっとけないのね。あの子は」晴太は、静恵にそう言われていた。
練が静恵の家と自分のアパートの近くの坂道を下りながら、大学芋をハンカチで包んでいると、後ろから身支度を整えた小夏が走って来て「あはっ」笑って練の背中に飛び付いておぶさってきた。「重ぇって」「最近爺ちゃんさ電話したぁ? うちの母ちゃん見に行ったらさぁ、お風呂壊れてたってよぉ。爺ちゃん、30分歩いて風呂さ行ってんだってぇ。1回帰った方がいいんじゃねぇの?」背負われたまま少し誘うように言う小夏。
3に続く
「あの時はまだ東京出てきたばっかりだったからぁっ」「お前助けたせいで、俺は人とはぐれて」「んん? 誰と?」「ごちそうさま!」練は大学芋を一つ取って縁側から腰を上げた。「あっ、待って! 私も出るぅ~っ!」慌てて作り終えてはいたらさい衣装を手に、家の奥に小走りで入ってゆく小夏。一人残されが構わず大学芋を食べ続ける晴太。「なんにも無い庭だったのよ」「え? 練君が育てたの?」「そうよ」少し驚く晴太。「寂しい人を見ると、ほっとけないのね。あの子は」晴太は、静恵にそう言われていた。
練が静恵の家と自分のアパートの近くの坂道を下りながら、大学芋をハンカチで包んでいると、後ろから身支度を整えた小夏が走って来て「あはっ」笑って練の背中に飛び付いておぶさってきた。「重ぇって」「最近爺ちゃんさ電話したぁ? うちの母ちゃん見に行ったらさぁ、お風呂壊れてたってよぉ。爺ちゃん、30分歩いて風呂さ行ってんだってぇ。1回帰った方がいいんじゃねぇの?」背負われたまま少し誘うように言う小夏。
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