道路で寝ていたシマヘビ
未だ体が温まっていないので近寄っても逃げない
自然豊かで風光明媚・・・と、言うと聞こえは良いが、蛇でも熊でも泥棒でも痴漢でも、大概のモノが出て来る、たんなる田舎であります。
熊は出るなぁ~・・・先週は特に良く出たね。
と、言うよりも、今時郷に出て来ちまうのは子グマなんですけどね・・・多分。
県内でクマの捕獲、目撃相次ぐ
上記は山形の新聞ですけど、宮城でも昨日の新聞に、アッチコッチで熊が出てるから注意しろって出てました。
しかし、ホントに、まさかと思う場所に出てるんで、クマッタもんです。
子グマは2年目で母熊から離れるんですけど、それが今頃と言われている訳で、良く事情を知らない子グマがノコノコと出てくるんじゃないかと思う訳ですけど・・・多分。
で、一昨年、ブナの実が大豊作だったんで、昨年生まれた子グマが今年親離れで大量にうろついていると言うのが減じようではなかろうかと思う訳です・・・多分。
熊と出合ったら、速攻で後ろを向いて全力で走ると面白いですよ・・・熊は間違いなく追いかけて来て後から襲われますので最悪の事態に陥る事請け合いです。
ンじゃぁ熊と出合ったらドーすれば良いか? いろんな人がいろんな事を宣いますが、決めては無い訳です。
なので、出合っちまったら、取り敢えずご挨拶等申し上げるのが良いとおっさんは思います・・・いや、これホントです。
熊と出会したら、静かな声で「なにもしねぇ、なにもしねぇから、こっちゃくんなょ」と、話しかけるのであります。
その場合、自分の所番地や姓名等を名乗ると効果的かどうかは解りませんが、話しかけながら後ずさりをするのが良いとされている訳です。
しかし、おっさんの経験から行くと・・・今まで熊と出会して、全部が全部、熊の方がしまったぁ~と言う感じで走って逃げて行く訳で、熊も相手を見るのかもしれません。
おっさんの経験でもう一つあるんですが、登山用のステッキやストックを握っている時には、熊は確実に手にしているモノが何か、値踏みと言いますか、危険度を測っている節が有ります。
で、その手のモノを持っている時には熊は手ぶらの時よりも驚き度が増して居るんじゃないかと思うんですが・・・多分。
で、蛇の恩返しの件なんですが・・・本日、道路で体温を上げるのにとぐろを巻いていたシマヘビが居たんですけど、それがカラスに狙われていた訳です・・・いや、カラスはシマヘビとか喰いますからね。
空高く持ち上げて叩き落として死んだら喰うんです・・・多分。
で、喰われちゃ可哀想とは思わないんでドーでも良いんですけど、あんましキレイにとぐろを巻いていたもんで、これは一つ記念写真を、と、撮っていたらカラスが邪魔されたと思って飛び去っちまった訳です。
で、蛇は結果的に助かっちまって、そこで蛇の恩返しが始まる予定なのであります。
蛇の恩返し
陽射しは強いんだけど、まぁ~だ風は冷たくて、日陰に居たシマヘビは寒くて動きが悪くなっちまって難儀したんだと。
真っ昼間に外に出たらカラスだのトンビだの人間だの猫だのと、そりゃぁ恐ろしいのがあちこちから沸いて出るのは知っていたんだけれども、シマヘビも体を温めない事には身動きが取れないんで背に腹は変えらんネェと言ってアスファルトの道路でとぐろ巻いたんだと。
いい塩梅に温まってそろそろ草むらに帰んべぇと思ったら、カラスの野郎めが舞い降りて来て、ツンコツンコと歩み寄って来てくちばしで突いたもんだ。
いやぁ~まだ十分には暖まり切っていないんでカラスと喧嘩しても負けっちまうべしなぁ~。
かと言って食われっちまうのも嫌だしなぁ・・・困っちまったぞぃ、と、シマヘビは頭を抱えていたと。
そこへ、ナンだか風采の上がらない変なおっさんがやって来てカバンからカメラば取り出して写真撮り始めたもんだ。
いや、遠巻きに眺めていたカラスを「シッシッ」と追っ飛ばしてくれたもんでそれは有り難いと思ったんだけんど・・・この野郎もドーせ鎌首押さえ込んでオラとこ取っ捕まえるンダベなぁ~と、覚悟ば決めたっけ、風采のあがないおっさんは写真ば撮ったら「おいこらシマヘビぃ~道路の真ん中で寝てたら車に轢かれるし、カラスだの猫に捕られっちまうから、さっさと草むらさ帰れぇ~」と宣って行っちまったんだと。
シマヘビは優しいおっさんの気持ちに驚いて「おっさん、おっさん、助けてくれてありがとうなぃ、今度お礼ばさせて貰うから、それはきっと約束すっから、楽しみに待っていてけさいん」と言葉ぁ掛けたと。
すると、シマヘビの声を聞いたおっさんは「あぃあぃ、そんな良い話しが有るもんだら楽しみにしてっからなぃ・・・ンだぁ、おっさんは独り者のヤモメだもんで、シマヘビぃ~お前さんがもしも化けられるんなら、メンコイ女子(おなご)に化けておら家さ来てくれっちゃやぁ~」と言ったんだと。
したらばシマヘビは「お易い御用でがんすぅ~したらばおっさん、メンコイ女子が尋ねて行くんで、楽しみにしていてくれろっちゃ」と、言って草むらにシュルシュルっと消えて行ったと。
あれから随分と日が流れ、おっさんはシマヘビの約束などとっくに忘れていた夏の夜のこと、村の外れのおっさんのあばら屋に尋ねる人影があったんだと。
「もしもし、もしもし、おっさん、開けてくんねぇかょぉ~、もしもし、モシモシ、おっさんよぉ~」と、娘っ子の声がしたんだと。
ありゃぁ~こんな夜に、こんなあばら屋のおっさんの所に娘っ子の声って、はぁ~狸の馬鹿野郎、出やがったかぁ~、と、こん棒ば持って戸口さ立って心張り棒ば外して戸を開けたと。
ありゃ、ありゃりゃりゃぁ~・・・なんとしたメンコイ娘さんだごだぁ~、と、おっさんは口をぽかーんと開いたまま突っ立っちまったと。
「おっさん、おっさん、約束だもんで、オラ、やって来ましたっけ、家さ入れてけさいん」と、娘っ子は言ったと。
おっさんは気が動転しちまって何がナンだか解らなくなっちまったんだけれども、取り敢えず「まず、まんず汚ねぇ家だ減とも、まず入って茶でも啜ってくんなぃ」と娘ば迎え入れたと。
「おっさん、オラ、あの時助けて貰ったシマヘビでがんすが、随分修行してやっとこさ人間の女子に化ける術ば会得しました」「ンだもんで、約束通りこうしておっさんの元にやって来たのでがんすが、この家さ置いてけられっぺがぁ?」と、尋ねたと。
「なぁーんもだぁ~、こんなあばら屋で良ければ、オメさえ良ければおっさんに異存なんぞあるはずもねぇ」と言って娘を歓迎したと。
ンだげっとも、おっさんは、アレはホントはシマへビなんだべぇ~・・・どったなもんだがなぁ~・・・女子の姿してはいっけども、どったなもんなんだべなぁ~と、気に掛かるのは否めなかった。
「おっさん、夜も更けたんでそろそろ床とっかと思うんだげっとも、もしもおっさんが良がったら床は一つで如何でやんすか?」と、娘は訊いたと。
「あっ、んだな、寒いしなっ、布団一つで良かんべな」と、夏の暑い夜なのに少ししどろもどろに答えて顔は真っ赤になってたと。
二人してあんまし上等でない布団に潜り込んで行灯の灯を落とすと、娘っ子が「おっさん、オラの身体は夏でも冷やっこいがら触ってみせぇ」と、手を取って自分の胸に持って来たと。
ありゃぁ~・・・なんとも冷やっこくて、さらさらして気持ちの良い肌触りだごだぁ~、堪んねぇなぃこりゃぁ~、と、思うとおっさんの心臓は早鐘のようにトッキントッキン鳴っちまったと。
すると娘っ子は「おっさん、もしもオラが嫌いでねければ、夜伽させて頂きてぇと思いますけんども、なじょでやんすか?」と訊いたと。
「いや、夜伽ったってオメ・・・いや、そんな処、あっ、オメ・・・」
続く