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日本の「グリーンバード」、パリへ飛ぶ

2016年12月11日 | 日本

「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに誕生したプロジェクト「グリーンバード」。原宿・表参道から始まった「ゴミ拾いボランティア」のNPOである。

 

14年前に表参道の清掃を手掛けた商店街の「欅会(けやきかい)」が母体となって、現在では、国内に70ヶ所のボランティアチームがある。

 

この「グリーンバード」、「花の都」といわれたパリが、「ゴミの都パリ」という切ない現実に出会って、9年前にパリチームを日本人の手で立ち上げたのだ。

 

当時のパリはデパートの周辺であっても、ゴミが舞っているというような状態で、地下鉄のエスカレーターの上にはゴミが運ばれた状態で溜まっていました。横断歩道には犬の糞が落ちているという有り様で、パリ市民は吸い殻を道にポイ捨てするのは当たり前と考えていたのです。

 

当初はパリ在住の日本人が数人で街を清掃し始めました。パリっ子の反応は「驚きだね、いったい彼らはなぜ、こんなことをしているんだい?」と聞いたのです。

 

フランスでは仕事の分担がはっきりしていて、街を清掃する人は、そのために仕事を持っていて、市民たちが清掃するものではないと思っているのです。公の場は税金できれいにするべきだとパリっ子は考えていました。

 

しかし、パリでは早朝にプロの清掃人が街をきれいにしても、昼になるとゴミが溢れだすという状況だったのです。

 

パリチームのボランティア活動は月に一度、場所を選んで街の清掃を行っていました。

パリをきれいにする日本人は、地元メディアに称賛を持って伝えられ、その清掃活動に共感したフランス人が活動に参加、今やフランス人を巻き込んだ一大イベントになったのです。

 

「なぜパリを清掃するのか?」と地元メディアに聞かれたパリチームのリーダー稲井佳子さんは、「もともと、このコンセプトは日本から持ってきたもので、そのアイデアをそのままパリで使っている」と答えたのです。

 

そもそもこの活動の目的は清掃そのものではなく、清掃を通してポイ捨てや、環境への意識を高めることが目標なのです。

 

そのコンセプトのきっかけは、日本のシャンゼリゼ通りと呼ばれている原宿・表参道。その街を悩ませ続けたゴミ問題だったのです。今から20数年前に始まったケヤキ並木のライトアップは多くの客とともに、多くのゴミをもたらしたのです。

 

ゴミ問題を何とかしなければと立ち上がったのが、表参道の商店組合「欅会(けやきかい)」の青年部。当時、商店組合としては清掃を外部業者へ週2回委託していた。しかし、来訪者が増えると週2回の清掃では、とても間に合わない状態でした。

 

それで「僕らも清掃をやろう」ということで、青年部が立ち上がったのです。最初は数人で業者の清掃を補うつもりで、週2回清掃していましたが、ゴミの量は減りませんでした。

 

そこで、ゴミを拾うだけでは駄目だと気付き、捨てる人を減らすことを考えはじめたのです。当時は、ポイ捨てがたくさんあった時代で、「捨てていくことはカッコよくない」というメッセイジを広げることにしました。

 

ここの青年部には、センスのよい広告マンがいれば、デザイナーもいました。方針を決めれば打つ手も早い。このとき、清掃活動の名称を「グリーンバード」としたのです。ゴミ問題は環境問題でもあるし、”幸せの青い鳥“みたいで、カッコいいと考えて名付けたのでした。

 

そして、ユニホームとポストカードをつくり、カッコいいキャラクターも考えて、Tシャツもつくったのでした。そのTシャツを着て清掃中に、活動のコンセプトを記したポストカードを通行人に配ったのです。

 

ポストカードには、「ゴミを分別できないエリートより、ゴミを分別できるプータローに明るい未来を感じます」と書かれていた。「私はゴミをポイ捨てしません。ぜったいに・・・・・できるかぎり」など、押しつけがましくなく、説教臭くもなく、明るく、ゆる~いチームであることをPRしたのです。

 

ゴミ拾い活動に加わるのも休むのも参加者の自由で、そのようなゆる~い活動を続けていると、不思議なもので、あるウエアー会社からグリンバードのTシャツの提供を受けたリ、CDショップ大手の会社から軍手を提供してもらったりと支援の輪が広がったのです。

 

続々と賛同者が増えるなか、すごい美人とかカッコいい人も勧誘して参加してもらいました。

歌舞伎町のホストたちも賛同し、この活動に参加し、ゴミ拾いはカッコいいなと思ってもらったのです。

 

そして、「結局、誰がゴミを捨てているんだ」ということを街のなかで見ていたら、「コンビニの前でヤンキー座りしている兄ちゃん」がいると分かったのです。この人たちが拾う側になったら、ゴミを捨てる側が減るし、拾う側も増えるので、一気に問題が解決するのではと考えたのです。

 

それで、ヤンキー兄ちゃんにも話をして、賛同を得て活動に参加してもらいました。実際に下北沢のチームリーダーはヤンキー兄ちゃんで、その当時はポイ捨てが悪いという感覚がなかったと言ったのでした。しかし、今はポイ捨てした以上の量のゴミを拾っていると語ったのです。

 

このように清掃活動に共感した人びとが、うちの街でもやりたいという声が多く上がり、賛同者を増やし、今は全国70ヶ所に広がったのでした。

 

話しはパリでの活動に戻ります。

段々とフランス人の参加者が増えていって、例えば、最近では参加者64人中、9割がフランス人だったのです。清掃に参加した彼らは、「気持ちいい時間だった」「社会の役に立つし、人との関わり合いも楽しかった」「素晴らしい取り組みです。また、次回も参加したい」というような前向きな感想ばかりでした。

 

清掃が終れば、全員で記念撮影をします。自由参加ですから、一期一会、その日しか会えないグッドラックもあるのです。

 

この清掃活動について、日本からパリに取材にきたメディアが、参加したフランス人女性たちに聞きました。「日本の団体がこのような活動を持ち込んで、迷惑ではなかったですか?」と言えば、すかさず、彼女たちは、「反対よ!私たちにとって日本はお手本よ。それを学んで実践したいのです。あなたがた日本人がお手本を見せてくれました。フランス人がそれを見習うのは当然です」、「私たちフランス人も同じことができ、参加できると証明してくれたのです」と言ったのです。

 

そして、参加者は口をそろえて、「日本人はお手本」と言うのです。

地元メディアは、「自分の街は自分たちで清掃する。日本にはこのような文化があり、9年前にフランスに“輸入”されました」と報じたのです。

 

思えば私たち日本人は身の回りや自分たちが使う場所は、自らの手できれいにするということを小さいときから教わって、実践してきました。日本人にとっての“当たり前”がパリの人に行動するきっかけを与えたのでした。

 

日本の若者がはじめた、軽くて、ゆる~いプロジェクトだけれども、私たち日本の文化に根ざした活動は確実に、今、世界を変えはじめているのです。

 

*このお話は、今年9月4日放送のフジテレビ系「Mr.サンデー」の特集でO.Aされたものです。

 

---owari---

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