トシの読書日記

読書備忘録

九月四日という駅

2007-09-30 14:45:43 | あ行の作家
大崎善生「九月の四分の一」読了

「報われざるエリシオのために」
「ケンジントンに捧げる花束」
「悲しくて翼もなくて」
「九月の四分の一」の四篇から成る短編集。

どれもこれもけれん味がないというか、まっすぐ胸に飛び込んでくる感じで、町田康みたいな不純な小説ばっかり読んでる者としてはけっこう衝撃的でした(笑)

どれもいいです。よくできてます。でもね、まっすぐすぎるというか、へそ曲がりの自分としてはもうちょっとひねってほしいかなと。もちろん、こういう小説、決してきらいではないですがね。

一番よかったのは「ケンジントンに捧げる花束」かな。素直に泣けます(笑)
最後の「九月の四分の一」もなかなかでした。ほかの作品もそうなんだけど、現在の自分がいて、過去を振り返りながらそれを今にオーバーラップさせる手法を多用していて、それが物語の「こく」になってるんですねぇ。

「九月の四分の一」と思っていたものは実は「九月四日」という意味で、彼女の置手紙の最後にあった「九月四日で会いましょう」の本当の意味を13年後に気づく迂闊さ・・・。そして13年後の九月四日に「九月四日駅」で彼女を待つ・・・。
せつない話です。でもこのラスト、ほんとドキドキします。

石田衣良の解説がなかなかよかったです。


閑話休題

先日、映画「めがね」を見てきました。「かもめ食堂」とほぼ同じスタッフ、キャストということで「かもめファン」としては見るしかないでしょう(笑)

感想はといいますと・・・いいんです。なかなかいいんですが、ちょっとなんだかなぁって感じかな。伝えたい空気はすごくよくわかるし、伝わってくるんですが、なんというか、わざとらしさがそこここに散りばめられてまして、それがちょっとはなにつく感じです。
もうちょっと素直になったら?と荻上さんに申し上げたいです。
「あんたみたいなひねくれものに言われたくない!」って返されそうですが(笑)