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素人啓蒙の難しさ

2017-05-01 13:05:47 | 日記
  1979年の事である。浅い付き合いだが、当時の僕が付き合っていた中年の全生園元患者の一人が体調を崩して、全生園内の病院に入院した。当時、全生園にも時々行っていた一人が「体をコントロールすれば病気は大体避けられる。在宅身障者たちは自分のコントロール方法を知っている。でも、施設の人は医者任せだから、コントロールはせず、病気になる」。当時の僕もうなずいたのを覚えています。


  それから2年たち、宮古島のハンセン氏病療養所の医者の話も聞いてきた人たちから「(元患者は)内臓が極めて弱い。神経痛も多いなど、神経もやられている。少数だが、脳がやられている例もある。ライ菌と、それを殺す強い薬の両方が内臓などをボロボロにする事が多いら」。

  何分、ハンセン氏病の菌は死滅しても、内臓と神経系統は弱まったままだから、元患者たちの体は極めて弱いとか。そう言えば、僕と付き合っていた伊藤まつさんも、風邪を引くと本当に大病みたいにもなりました。体力は極めて弱かった。内臓が弱ると、体力も落ちるわけですね。

  話は戻りますが、内臓の問題など、菌が死滅した後の元患者の医学的な問題は医者から僕も、その人も聞いていないから、そのような事を思ったわけですね。更には、施設身障者も、在宅身障者もほんの少ししか知らなかったわけだし。施設身障者でも自分で健康のコントロールができる人もいれば、在宅身障者でも医者任せの人もいると思います。そのような言い方とか、想いはおかしいわけですね。

  医者から元患者の詳しい事を聞いた人たちに限って、ハンセン氏病の啓蒙活動はしていません。そうでしょう。「菌は死滅していますよ」だけでは済まないから。それだけを広めれば、「ならば、健全者と同じだ。働け」と思う人たちも出てくるわけだから。でも、元患者は歩けて、手が動く人たちでも、体力が非常に弱くて、何もできない。新たな偏見を作るわけです。また、「ライ菌と強い薬が内臓を痛めるメカニズム」は医者でなければ説明は不可能でしょう。医学の基礎知識もない人たちが仮に医者から聞いても、理解できない人も多いと思います。素人が啓蒙活動するとして、医者の論文をそのまま紹介する事に限られます。それなら、その医者の名で紹介すべきだし、請け売りみたいな事ばかりしていると、その人は自分の意見も持てなくなり、自滅していきます。恐ろしいです。強いて言えば、医者に市民が啓蒙活動を促す事ですね。また、元患者自身も医学基礎知識が欠落しているから、どれだけハンセン氏病元患者の問題を訴えられるのか。体力の問題抜きには語れないから。

  冒頭に述べた人はその後はハンセン氏病問題の啓蒙活動はしなかったし、今の僕も親しかった伊藤まつさん関係に絞った事を話しています。それで良いと思います。強いて言うならば、ハンセン氏病問題に限らず、日本の医者たちは医学の世界に内向きで、社会啓蒙が足りない気がします。それもハンセン氏病の人権解放が遅れた理由の一つでしょう。