平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

夫を思う歌

2008-05-24 13:11:33 | 短歌・詩
『白桜集(与謝野晶子)』より三首

世を去りて三十五日この家にわれと在りしは五十日前まで
平らかに今三年ほど十年ほど二十年ほどもいまさましかば
青空のもとに楓ひろがりて君亡き夏の初まれるかな

私の好きな歌(10)

2008-05-20 22:42:58 | 短歌・詩
かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ

『死か芸術か』(大一)所収。牧水は恋と旅と酒の歌でこよなく愛踊される。ふつふつと湧きあがる思いがそのまま三十一音の歌となって、作者の孤独な心をあめつちの間に舞わせ、読者をも招き寄せた。それにしても、牧水歌集を読んでいると、彼の酒の歌が早くから老成していたことに今さらながら驚く。二十代半ばすぎでもうこんな歌があり、また「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」があった。みな晩酌好みの歌だ。(大岡信:折々のうた、岩波新書)