goo

2022 新宿ミネラルフェア


今年も住友ビル三角広場ですが、業者リストを見るとなんと!!フランスのEldonia とイタリアのZoicがあるではないですか。期待が高まる、高まる。
 昼食も忘れて、基本的にこの2社のブースに入り浸っていたわけですが。ありますよ色々な物が。


エルドニアではルゴプスが帽子をかぶっている。


白亜紀前期アルジェリアのアフロヴェナトルもどき、14万円。時代からするとこれはアフロヴェナトルではないことになるが、だからこそ貴重か。


店頭のラジャサウルス頭骨55万円。3Dプリンターで縮小模型にしてくれたら絶対買うけど。


ランフォケファルス全身骨格、56万円。これが自宅にあると相当見栄えがしますね。手の指あたりが非常に繊細ですばらしい。


パレオサイエンスの店頭は例年通りですが、アンフィのティラノ対トリケラは特注品で、姿勢保持のため針金が通してあるそうです。ウェブ上の品とは違うそうです。私はテラトフォネウスを買いました。





パレオの近くにあるが、エルドニアのGrallatorという足跡化石とともに、復元骨格があります。こうして少しでも過去のフェアの雰囲気を醸し出してくれると、嬉しいですね。この復元骨格は、実際はコエロフィシスだと聞いたが、微妙に違うような。手は完全に3本指で、第2指がこんなに長いのはどうもコンプソグナトゥスに似ているような?まあ、Grallatorはこういう姿なんでしょう。三畳紀末からジュラ紀初期かもしれないそうです。



一方Zoicの目玉は、三畳紀のマダガスカルのシーラカンス類と両生類のようです。一見ワニか何かのような、両生類 Wantzosaurus の全身化石はネガポジありで博物館レベルの逸品。また頭骨だけなら、迷歯類?のネガポジの物が何種類もあった。頭蓋表面の文様がきれいに残っていて歯もある。その他、ニジェールやモロッコなどの恐竜、翼竜、海生爬虫類の歯関係はいつも通り。カルカロドントサウルスの尾椎、ステゴサウルスの尾椎もある。


エルドニアに戻るとすごいものがあった。白亜紀末のモロッコのアベリサウルス類チェナニサウルスの前上顎骨歯25万円。さすがに買えなかったが、安ければ買ったな。


テーチスというお店に、掘り出し物があり、今回のお宝はこれです。
モロッコのケムケムのアベリサウルス類の上顎骨。歯槽には4つくらい歯が保存されていて、萌出していない置換歯は完全のように見える。歯間板が癒合しているのがわかる。


外側面はアベリサウルス類特有の彫刻sculptureがすばらしい。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

サウロルニトレステス



サウロルニトレステスは、後期白亜紀カンパニアン(Dinosaur Park Formation)に北アメリカ(アルバータ、モンタナ)に生息した中型のドロマエオサウルス類で、Sues (1978) によって記載された。ホロタイプは30弱の骨からなる部分骨格で、その後も4回ほど部分骨格が見つかっていたが、頭骨についてはホロタイプの前頭骨や外翼状骨以外にはほとんど情報が得られなかった。2014年にアルバータ州のDinosaur Provincial Park で、ホロタイプの発見場所から1 km以内の地点から、頭骨を含む関節状態のほとんど完全な全身骨格化石が発見された。まずこの頭骨についてCurrie and Evans (2019) で記載されている。

新しく発見されたUALVP 55700は、尾椎の後端といくつかの前肢、後肢の指骨を除いて、ほとんど完全な全身骨格である。頭胴長は91 cm で、尾を含めた全長は2 m弱と推定されている。この体格はヴェロキラプトルとほぼ同じであるが、頭骨の顔の部分はヴェロキラプトルよりも短く、丈が高く、幅が広い。またヴェロキラプトルは後肢の長さが15%短いという。

他のドロマエオサウルス類と異なるサウロルニトレステスの特徴は、比較的短い頭骨(頭骨/大腿骨の比が1.0より小さい);maxillary fenestra の位置が前眼窩窩の背側縁に近い;鼻骨と涙骨に前眼窩窩と通じる内腔がある;2番目の前上顎骨歯が大きく、舌側面が扁平で、唇側と舌側の両方に縦の稜や溝がある、などである。

外鼻孔の後端は、歯のある腹側縁における前上顎骨と上顎骨の縫合線よりわずかに後方にある。これはアトロキラプトルと同様である。バンビラプトル、デイノニクス、リンへラプトル、ツァーガン、ヴェロキラプトルのような他のドロマエオサウルス類では、外鼻孔の後端はもっと後方にある。

サウロルニトレステスでは、前眼窩窩の前端が上顎骨の4番目の歯槽の上にある。バンビラプトルでは3番目の歯槽の上にある。アケロラプトルとツァーガンでは5番目の歯槽の上にあり、ヴェロキラプトルでは4番目と5番目の間にある。

前眼窩窓は大体三角形で、長さよりも高さが大きい。一方、リンへラプトル、ツァーガン、ヴェロキラプトル、デイノニクス、ドロマエオサウルスでは高さよりも長さが大きい。バンビラプトルとシノルニトサウルスでは、ほぼ同じか高さが大きい。

サウロルニトレステスの特徴としてmaxillary fenestraの位置が背側にあることを挙げているが、これを表現するのに、maxillary fenestraの腹側縁から上顎骨の腹側縁までの距離/ 最も大きい歯冠の高さ、という比率を用いている。この数値はサウロルニトレステスでは2.33 で、アトロキラプトルの2.2と近いが、ほとんどのドロマエオサウルス類よりも大きいという。この数値はバンビラプトル、デイノニクス、ドロマエオサウルス、リンへラプトル、ツァーガンでは1.5–1.8である。ヴェロキラプトルでは1.5 以下という。
眼窩の輪郭は左右両側ともゆがんでいるが、おそらく円形に近く、長さと高さがほぼ等しいと思われる。下側頭窓は縦に長く、いくらかくびれている。

右の鼻骨の後方部分は外れて背側に回転しているため、腹側面が一部見えている。この鼻骨の後端の腹側面には、3つの含気孔があって内部に通じている。これは他のどのドロマエオサウルス類でも報告されていない。ヴェロキラプトル、ツァーガン、バンビラプトルではこの部分が保存されているが、鼻骨は非常に薄く含気孔があるようにはみえない。デイノニクスの鼻骨には含気孔があるが、背外側面にあるので別のものである。
 また前眼窩窩の後背方部分をなす涙骨の前方突起にも、いくつかの含気孔があり涙骨の内部に通じている。

前上顎骨に4個、上顎骨に11~12個、歯骨に15個の歯槽がある。前上顎骨の4本の歯のうち1番目は最も小さく、2番目が最も大きく、3番、4番と小さくなる。2番目の前上顎骨歯は歯冠の高さ、歯槽の前後長とも1番目の1.5倍あり、舌側面が扁平になっている。舌側面には3本の顕著な稜があり、それらは前半部に偏っている。唇側面にはかすかな5本の稜がある。稜と稜の間には縦溝fluteがある。この特徴的な形態は、過去にアルバータで発見されていたZapsalis abradens という歯化石と一致することから、Zapsalis はサウロルニトレステスの2番目の前上顎骨歯であることがわかった。

前頭骨は、サウロルニトレステスでは比較的よく見つかっている骨である。前頭骨の前端の鼻骨との関節面には複雑に入り組んだinterdigitating多数の突起がある。眼窩の間の広く平坦な領域と、上側頭窩supratemporal fossa の間には、強いS字状のカーブがある。これはサウロルニトレステス亜科とヴェロキラプトル亜科にみられる特徴で、ドロマエオサウルスではもっとかすかでS字状ではない。またこのカーブに沿って後眼窩骨との関節面の内側に、小さな窪みdepression がある。これもサウロルニトレステス亜科とヴェロキラプトル亜科にみられるもので、ドロマエオサウルスにはない。


参考文献
Currie, P. J., and D. C. Evans. 2019. Cranial anatomy of new specimens of Saurornitholestes langstoni (Dinosauria, Theropoda, Dromaeosauridae) from the Dinosaur Park Formation (Campanian) of Alberta. The Anatomical Record 04715:1–25.(オンラインが2019, 紙が2020)Anat Rec, 303:691–715, 2020.
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

エウドロマエオサウリアの系統進化の新しい仮説 (3)





アルバータの研究者の興味の中心は、サウロルニトレステスの全身化石で盛り上がっているところの、サウロルニトレステス亜科にあるだろう。そこでサウロルニトレステス亜科とはどんなものか、その一端でも垣間見たい。細かい骨学的特徴は、専門の研究者にしかわからないのだと、思考停止してしまうのはあまりにもったいないことである。今回、一番面白かったのは、上顎骨だけでも系統関係の大体の傾向が読み取れることである。

上顎骨の周辺の構造をみると、まず前眼窩窓antorbital fenestra がある。前眼窩窓の周りには、前眼窩窩antorbital fossa がある。前眼窩窓は貫通した穴をさすが、前眼窩窩は浅くくぼんだ骨の部分をさし、涙骨や頰骨にもある。

上顎骨の前眼窩窩には、2つの穴がある。後方にあるmaxillary fenestra と前方にあるpromaxillary fenestra である。promaxillary fenestra は前眼窩窩の前縁に隠れていて側面からは見えないこともある。

エウドロマエオサウリアでは、maxillary fenestraが、前眼窩窩の中でもさらに浅くくぼんだ部分の中にある。この副次的なくぼみを、maxillary fossa という。ここではこれに注目する。

ヴェロキラプトル亜科では、maxillary fossa が広く後方に向かって開いている(赤い矢印)。ツァーガンではmaxillary fenestraが前方に移動しているが、 maxillary fossaの方向はヴェロキラプトルと同じである。

モンゴル産のドロマエオサウルス類でもアキロバトルでは、 maxillary fossaが後背方を向いている。北米のデイノニクスでも後背方に向かって開いている。ヴェロキラプトルなどと比べると狭くなっているが、閉じてはいない。

サウロルニトレステスやバンビラプトルでは、この maxillary fossaが後背方で閉じて、新しい含気性のくぼみを形成する(青い矢頭)。そのためmaxillary fenestraの中に2つ穴があるように見える。後背方の新しい穴は、maxillary fenestraとは独立したくぼみである。アケロラプトルとアトロキラプトルでもそうなっている。

このmaxillary fossa の状態は、各クレードの共有派生形質に含まれている。広く後方に開いたmaxillary fossaはヴェロキラプトル亜科の共有派生形質であり、閉じて含気性のくぼみを形成することはサウロルニトレステス亜科の共有派生形質である。



うちのバンビラプトルでも確かに確認できる。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

エウドロマエオサウリアの系統進化の新しい仮説 (2)



リンへラプトルは、ヴェロキラプトルと同等以上に美しい全身骨格化石である。
 リンへラプトルとツァーガンの問題については、過去の記事に取り上げた。Turner et al.(2012) によって、リンへラプトルはツァーガンのシノニムであるとされたところまでである。その後、Xu et al. (2015) はさらに詳細に観察して反論している。

Xu et al. (2015) は、リンへラプトルとツァーガンの間で61の異なる形質と22の共有する形質をあげている。特に61個のうち1-8は、他のドロマエオサウルス類にはみられないリンへラプトルの固有形質であり、リンへラプトルはツァーガンとは区別できる有効な属・種であると結論している。
 リンへラプトルではMaxillary fenestraが大きく、外鼻孔と同じくらいの長さである。ツァーガンや他のドロマエオサウルス類では外鼻孔より小さい。
 リンへラプトルでは鼻骨の前上顎骨突起が長く伸びて外鼻孔の前端に達している。ツァーガンや他の獣脚類ではもっと短く、外鼻孔の中央付近で終わっている。
 リンへラプトルでは涙骨の背側面に、いくつかの前方に開いた孔がある。これも他のドロマエオサウルス類にはない特徴で、ツァーガンやヴェロキラプトルにはこの孔はない。
 リンへラプトルではMaxillary fenestraの前縁が前眼窩窩の前縁と接している。ツァーガンではMaxillary fenestraは前方にあるが、前眼窩窩の前縁とは少し離れている。
 リンへラプトルでは後眼窩骨の頬骨突起と前頭骨突起の間に、はっきりした凹型のカーブがある。この点でリンへラプトルはヴェロキラプトルとは似ているが、ツァーガンなどとは似ていない。
 という調子で61個列挙している。上記は写真を見てわかりやすいものである。

ただ、これらの中にはあまりに細かすぎて個体変異や保存状態の違いを拾ってしまうのではないかというものもあった。また異なる形質がいくつあり、同じ形質がいくつあるといわれても、それがドロマエオサウルス類全体の中でどの程度のものなのか、他の研究者がどうみているか、がわからなかったので、これまで記事にはしなかった。
 最新のPowers et al. (2022)では、リンへラプトルとツァーガンはほとんどの形質が一致しており、異なる形質は3つのみであることから、Turner et al.(2012) の見解を支持するとしている。同種と断定しているわけではないが極めて似ている標本とみている。アメリカ自然史博物館だけでなくアルバータの研究者もそのように見ているということである。(ただしそれが正しいのかどうかはわからない。)またヴェロキラプトルが多系群になっている件も含めて、ヴェロキラプトル亜科の分類については再検討の研究が進行中とある。リンへラプトルとツァーガンについては同属別種とか、折り合いをつけて平和に解決してほしいものである。

Powers et al. (2022) は、当時のモンゴルの環境が乾燥気候であったことから、ヴェロキラプトル亜科の細長い顎は、大型動物よりも豊富な小型の哺乳類やトカゲなど、小型の獲物を捕食するのに特化したものと考えている。大型の獲物に対応したパワーよりも、小型の獲物をすばやく捕らえることを重視したということである。ただし有名な格闘化石のようにプロトケラトプスを襲った可能性もあるので、骨格だけから生態を推定するのは難しいともいっている。

まだつづく

参考文献
Xu, X., M. Pittman, C. Sullivan, J. N. Choiniere, Q.-W. Tan, J.M. Clark, M. A. Norell, and S. Wang. 2015. The taxonomic status of the Late Cretaceous dromaeosaurid Linheraptor exquisitus and its implications for dromaeosaurid systematics. Vertebrata PalAsiatica 53:29–62.
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )