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ブラジルのスピノサウルス類の再検討とスピノサウルス類の頭蓋の進化(下)



Copyright 2017 Sales and Schultz

論文の復元頭骨図は、イリタトルと比べてアンガトゥラマの方が少し大きいことを表している。オクサライアは時代も後であり、アフリカのスピノサウルス亜科と近縁と考えているので、スピノサウルスの復元頭骨に当てはめるとこうなるのかもしれない。

円錐形の歯、細長い吻、後退した外鼻孔など、スピノサウルス類の多くの頭蓋と歯の特徴は半水生の生活と関連している。また歯や骨の同位体組成の分析や組織学的解析からも、スピノサウルス類は半水生や水生の動物と近いことがわかっている。しかし、同位体組成のデータは、スピノサウルス類の中でも、より陸生に近いものとより水生に近いものがいたことを示している。またスコミムスとスピノサウルスのネオタイプの肢の骨の組織切片からも、水中環境への適応の程度に差があったことが示されている。

このようなスピノサウルス類の中での生態の多様性が、外鼻孔の状態とも関連していると思われる。スピノサウルス類の中で、外鼻孔の位置と大きさはさまざまである。外鼻孔が小さいことは嗅覚の重要性が低いことを示し、外鼻孔が大きいことは嗅覚の重要性が高いことを示すと考えられる。外鼻孔が最も小さい“スピノサウルス”ではまた、外鼻孔が最も後方に移動している。外鼻孔が後方にあることは、嗅覚刺激の収集に向いていない。またもう一つの観点として、外鼻孔と嗅球の間のスペースには鼻腔があり、間接的に嗅上皮の表面積を反映している。種々のスピノサウルス類の頭骨を比較すると、外鼻孔の位置が前方にあるほど鼻腔が大きく、嗅上皮の表面積が大きいことになるわけである。

魚食性の捕食者とくに半水生の四肢動物にとって、嗅覚は主要な感覚ではない。これらの動物にとって、嗅覚以外の感覚が重要である。ワニ類は吻部に機械受容器をそなえており、これで水の動きを感知する。鳥類と翼竜類では主に視覚が重要である。“スピノサウルス”の吻には内部が連絡した多数の孔があり、ワニ類と同じような機械受容感覚を用いていたと考えられる。“スピノサウルス”は嗅覚よりも機械受容感覚により大きく依存し、イリタトルやバリオニクス亜科ではより嗅覚に依存していた可能性がある。

面白いことに化石記録にはそれを支持するものがある。バリオニクスの腹腔からは半ば消化されかけた魚のウロコとともに、鳥脚類の幼体の骨が見つかっている。またスコミムスの下顎の力学的特性から、スコミムスは小型の陸生動物をも捕食できただろうと示唆されている。さらにアラリペ盆地の翼竜の頸椎にスピノサウルス類の歯冠が埋まっていたことから、この地域のスピノサウルス類が魚以外の獲物を捕食したことが示されている。一方、“スピノサウルス”の歯槽の位置にはOnchopristisとされる魚の脊椎骨の一部が見つかっている。これは間接的な証拠であるとしても、“スピノサウルス”の吻の形態とともに魚類が主な獲物であったことを示唆している。
 つまり現在得られている証拠は、バリオニクス亜科とアラリペ盆地のスピノサウルス亜科(イリタトルなど)が陸生動物をも捕食したことを示しており、そのためには嗅覚が重要である。一方“スピノサウルス”が魚類など水生動物を捕食するためには、視覚や機械受容感覚が重要だったと考えられる。


個人的に一番感心したのは、あきらめてはいけないということである。
 イリタトルの歯列が同定されていないことは、「盲点」だったのだろう。既に記載され、再記載された標本であっても、アイデア一つで、つまり新しい観点や解釈があれば、新しいデータを得ることができ、論文が書ける。系統解析もやり直すことができる。そこが素晴らしい。
 また外鼻孔が保存されたスピノサウルス類は4種しかいないが、外鼻孔周囲の骨の位置関係はそれぞれ異なっているのが面白い。
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ブラジルのスピノサウルス類の再検討とスピノサウルス類の頭蓋の進化 (中)



Sales and Schultz (2017)によるスピノサウルス類の系統解析

イリタトルとアンガトゥラマの関係について、著者らはかなり字数を割いて考察している。イリタトルとアンガトゥラマは、吻以外の頭骨と吻の先端部であり、同じ地層(アラリペ盆地のRomualdo Formation)から発見されたことから、同一種あるいは、ひょっとすると同一個体とさえ考えられたことがある。今回イリタトルの上顎歯列が同定されたことで、最も前方の歯はm3と考えられた。アンガトゥラマの最後の歯もm3なので、この2つの標本はギリギリ重複しており、少なくとも同一個体でないことはわかる。しかし同一種の可能性はあり、そこはまだわからないという。重複しているm3を解析した結果、同種か別種かについて何か情報が得られたのかと期待したが、そこまではわからないようである。おそらくどちらもほとんど同じ形態をしていて、同種とも別種とも言えないのだろう。
 またアンガトゥラマの前上顎骨はバリオニクスと同じくらいの大きさなので、ホロタイプの復元頭骨はイリタトルよりも大きいだろうといっている。ホロタイプ自体はそうかもしれないが、種としては成長段階の違いや個体差もありうるし、これだけでは結論できないだろう。

系統解析は、Carrano et al. のテタヌラ類のデータに、今回ブラジル産スピノサウルス類から得られた新しいデータを含めて解析している。頭蓋と歯の情報に注目するため、頭骨がないイクチオヴェナトルやシギルマッササウルスは除外している。まず、すべてのスピノサウルス類を用いて解析すると、スピノサウルス科の部分は、すべてのスピノサウルス類がポリトミー(多分岐)をなしてしまった(図)。
 次に前上顎骨が保存されたスピノサウルス類を用いて、つまりイリタトルを除外して解析すると、バリオニクス、スコミムス、クリスタトゥサウルスと”スピノサウルス亜科”のクレードがポリトミーをなし、スピノサウルス亜科の中ではアンガトゥラマ、オクサライアが”スピノサウルス”に対して順次外群をなした。さらに、外鼻孔が保存されたスピノサウルス類を用いて、つまりアンガトゥラマ、オクサライアを除いて解析すると、バリオニクス、スコミムスと”スピノサウルス亜科”がポリトミーとなり、”スピノサウルス亜科”にイリタトルと”スピノサウルス”が含まれた。

前述のようにスピノサウルス科はバリオニクス亜科とスピノサウルス亜科に分けられてきた。バリオニクス亜科は、細かい鋸歯のある、よりカーブした歯冠をもち、前上顎骨の歯隙がはっきりしない。一方スピノサウルス亜科は、鋸歯がないまっすぐな円錐形の歯冠をもち、前上顎骨の一部にはっきりした歯隙がある。また外鼻孔の位置はバリオニクス亜科の方がスピノサウルス亜科よりも前方にある。さらに上顎骨の歯の数が、バリオニクス亜科ではスピノサウルス亜科の2倍近くある。
 著者らの2番目と3番目の解析結果では、バリオニクス亜科のメンバーが単系のクレードをなさなかった。実際、多くのバリオニクス亜科の特徴は、原始的な獣脚類の状態と派生的なスピノサウルス亜科の状態の中間段階に相当するものである。例えばスピノサウルス類の鋸歯の進化史を考えれば、獣脚類は最初、大きな鋸歯を持っていたが、次にバリオニクス亜科のような細かい鋸歯となり、ついにはスピノサウルス亜科のように鋸歯を失ったと考えられる。将来、バリオニクス亜科のメンバーはクレードであるスピノサウルス亜科に対して順次外群をなすようになるかもしれない。つまり多系群となるかもしれない。これは、非鳥型獣脚類全体のように原始形質をもつグループにはよくあることである。

今回得られた分岐パターンや頭蓋・歯の特徴の再解釈から、ある程度の進化のシナリオが予想される。獣脚類の前上顎骨の原始状態は、歯が5本以下であった。スピノサウルス科に進化する段階で、歯の数が7本に増加し、terminal rosette が形成された。その後スピノサウルス亜科の前上顎歯列には顕著な歯隙が現れた。おそらく原始状態ではスピノサウルス類の前上顎骨には、バリオニクス亜科とアンガトゥラマにあるような背側正中のとさかがあった。この特徴はその後、スピノサウルス亜科の中のある時点で失われたと考えられる。実際にアンガトゥラマはオクサライアと”スピノサウルス”よりも基盤的であり、オクサライアはどの形質についてもアフリカのスピノサウルス亜科と似ている。

上顎骨歯の大きさの変化パターンがバリオニクス亜科とスピノサウルス亜科で共通していることから、上顎歯列は前方の歯(m1からm4)については、スピノサウルス科の中で相同であると考えられる。しかしバリオニクス亜科の上顎骨歯はスピノサウルス亜科よりも数が多いことから、スピノサウルス類の進化史の中でいくつかの歯は失われたと思われる。つまりm4より後方の歯の相同性は疑わしい。Dal Sasso et al. (2005) は、スピノサウルス亜科では通常、上顎骨歯の間隔が1個の歯槽の大きさと同じくらいであり、このパターンはm4の直後から始まるといっている。つまりこの部分の歯は1個おきに失われた可能性がある。スコミムスの上顎骨歯は22本あり、m4より後方で1個おきに失われたとすれば13本と予測される。”スピノサウルス”MSNM V4047の上顎骨歯は12本あり、イリタトルでは11本である。微妙に一致しないが、”スピノサウルス”とイリタトルでは最後の上顎骨歯が前眼窩窓の前端のレベルにあるのに対して、スコミムスではもっと後方まで延びているという。よってスピノサウルス亜科の歯の減少においては、m4より後方で1個おきに失われたことに加えて、最も後方の歯が失われたことも関与しているかもしれない。

従来の考えと異なり、スピノサウルス科の中で外鼻孔がより前方にあることは、バリオニクス亜科とスピノサウルス亜科のうちのイリタトルに共通している。これらのスピノサウルス類では前上顎骨、上顎骨、鼻骨が外鼻孔を取り囲んでいる。スピノサウルス亜科で外鼻孔がもっと後方に移動する際には、次第に前上顎骨の関与は必要なくなり、ついには”スピノサウルス”のような状態に至ったと思われる。またスピノサウルス科の進化過程では、外鼻孔の大きさが小さくなる傾向がある。この点についてイリタトルは、バリオニクス亜科と”スピノサウルス”の中間の状態を示している。

全般に、アラリペ盆地のスピノサウルス類(イリタトルとアンガトゥラマ)の頭骨は、バリオニクス亜科とアフリカのスピノサウルス亜科の中間的な形質をもっている。一方オクサライアは、よりアフリカのスピノサウルス亜科に近縁である。アンガトゥラマとオクサライアについては、分岐図のように順次外群をなしていると思われる。つまりスピノサウルス亜科は、従来考えられていたよりも形態学的に多様であることがわかってきた。


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ブラジルのスピノサウルス類の再検討とスピノサウルス類の頭蓋の進化 (上)



スピノサウルス類の外鼻孔の位置の比較
Copyright 2017 Sales and Schultz

ブラジルのスピノサウルス類といえば、イリタトル、アンガトゥラマ、オクサライアで、これらはいずれも頭骨の一部である。その他に未命名の多数の歯や胴体の骨がある。これらは既に記載あるいは再記載されているが、特に頭骨については、まだ考察すべき点が残っていることがわかってきた。そこでSales and Schultz (2017) はイリタトル、アンガトゥラマ、オクサライアの標本を再検討し、新しい解釈を加えて頭蓋と歯の形質について新知見を得た。そしてそれに基づいて、スピノサウルス類全体の系統進化についても修正を加えている。

伝統的にはスピノサウルス科Spinosauridaeは、主に頭蓋や歯の形質に基づいて、バリオニクス亜科Baryonychinae(バリオニクス、スコミムス)とスピノサウルス亜科Spinosaurinae(スピノサウルス、イリタトル)に分けられてきた(→スコミムスの記事)。バリオニクス亜科では、まだ歯が微妙にカーブしていて鋸歯があるが、スピノサウルス亜科では真っすぐな円錐形で鋸歯がない。またバリオニクス亜科では外鼻孔の位置が比較的前方にあるが、スピノサウルス亜科ではもっと後方(眼窩の近く)に移動している、という話であった。
 今回著者らは、イリタトルの外鼻孔の位置は従来考えられていたよりも前方であり、バリオニクスやスコミムスに近いことを見出した。またいくつかの頭蓋・歯の特徴に関しては、ブラジルのスピノサウルス類はバリオニクス亜科とスピノサウルス亜科の中間の状態であることがわかった。系統解析の結果、バリオニクス亜科は単系でなく多系群である可能性もあるという。

そんなことをいわれても、イリタトルの頭骨は1996年に記載され、2002年に再記載されている。新しい頭骨が見つかったわけではない。なぜ今頃になって外鼻孔の位置が変わったりするのだろうか。

イリタトルの標本は詳細に記載および再記載されてきたが、頭蓋と歯の特徴について、これまで注目されていなかったことがある。イリタトルはスピノサウルス類の頭骨の中でも、最も多くの歯が本来の位置に保存されている標本である。しかし、吻の前端(前上顎骨と上顎骨の前端部)が欠けているため、Martill et al.(1996) も Sues et al.(2002) も、保存された上顎骨歯の正確な位置を同定していなかった。つまりこれらが歯列の中で何番目と何番目の歯か、ということである。
 歯の大きさをみると、左の上顎骨で1番目(保存された最も前方)の歯は2番目に大きく、次の2番目の歯が最も大きい。その後方の7本の歯は徐々に小さくなっている。
 上顎歯列が保存されているスピノサウルス類の標本では、最も大きい歯は3番目(m3)と4番目(m4) である。そしてm1 からm4までは大きくなり、 m4が一番大きく、その後は徐々に小さくなる傾向がある。この傾向はバリオニクス亜科のバリオニクス、スコミムスにも、スピノサウルス亜科のMSNM V4047(いわゆるDal Sassoの“スピノサウルス”)にも当てはまる。今のところイリタトルだけが異なるという理由はない。イリタトルの左の上顎骨にみられる状態はこのパターンと一致するので、保存された1番目と2番目の歯はm3 とm4であると考えられる。そうするとイリタトルの上顎骨には全部で11本の歯があることになる。Sues et al.(2002) も「少なくとも11本」といっているが、根拠を示していない。また、この数は“スピノサウルス” MSNM V4047の12本とほとんど同じである。

イリタトルの上顎歯列が同定されたことにより、その外鼻孔の位置についての解釈が変わってくる。Dal Sasso et al. (2005) は、外鼻孔が上顎歯列の中央部分にあると考えていた。つまり欠けている吻がもう少し長いと思っていたわけである。しかしイリタトルでは、外鼻孔の前端がm3とm4の間あたりにある。これは、バリオニクス(m2 とm3の間)やスコミムス(m3 とm4の間)と似た位置である。一方、“スピノサウルス” MSNM V4047では外鼻孔の前端がずっと後方のm9あたりにある。

イリタトルと“スピノサウルス”のもう一つの違いは、外鼻孔を取り囲む骨の位置関係である。イリタトルでは、前上顎骨が外鼻孔の腹側縁の前方部分に少し面している。それ以外の部分は鼻骨と上顎骨に囲まれている。“スピノサウルス”では、前上顎骨は完全に外鼻孔から離れている。バリオニクスとスコミムスでは、前上顎骨が外鼻孔の前縁に大きく面しているが、この2種の間では上顎骨の寄与が異なっている。バリオニクスでは、上顎骨が保存された腹側縁の後半部分をなす。スコミムスでは、上顎骨は腹側縁に少ししか面しておらず、前上顎骨と鼻骨の上顎骨突起に挟まれている。Dal Sasso et al. (2005) は、前上顎骨が外鼻孔から排除されていることをスピノサウルスの固有形質と考えた。スピノサウルス類の中でも、“スピノサウルス”は前上顎骨、上顎骨、鼻骨が1点で交わる点でユニークである。

外鼻孔の大きさにも重要な違いがある。イリタトルの外鼻孔は、絶対的にも相対的にも、バリオニクスやスコミムスよりも小さい。一方で、イリタトルの方が頭骨がはるかに小さいにもかかわらず、イリタトルの外鼻孔は“スピノサウルス”よりも絶対的に大きい。

確かに、m4の位置を合わせて並べた図を見ると、イリタトルはスピノサウルスとは全然違うことがわかる。むしろ、なぜこれまでスピノサウルスと同列に考えられていたのかが不思議である。鋸歯がないなどスピノサウルス亜科ということで、漠然と後方よりと思われていたのだろうか。


アンガトゥラマは吻の先端部しか見つかっていないので、イリタトルと比較できない。アンガトゥラマの前上顎骨は、最初の記載では1)吻が強く側扁していて、前上顎骨歯pm6の位置で最も細い、2)左右の幅がより広がっていない、3)背側正中にとさかが発達している、点で他のスピノサウルス類と区別されるとされていた。今回の改訂された特徴では3)だけが形を変えて残っている。バリオニクス、スコミムス、クリスタトゥサウルスの前上顎骨にも背側正中の縁があるので、このような構造自体はアンガトゥラマに限られたものではない。しかしアンガトゥラマでは、確かにとさかが顕著に発達しており、もっと重要なことは、とさかがバリオニクス亜科のものよりも前方に伸びていることである。

アンガトゥラマの吻部が左右に扁平であることについては、最初は死後の変形ではなく本来の形状と考えられた。Terminal rosetteと呼ばれる前上顎骨の拡がりが、他のスピノサウルス類ほど拡がっていないようにみえる。しかし、他のスピノサウルス類と比較して全体に幅が狭いとは考えられるものの、アンガトゥラマのホロタイプの側扁の程度は、元々の形状を反映していないかもしれないという。例えば前上顎骨の腹側縁は左右とも保存されておらず、いくつかの歯は側面が削れて断面がみえている。その分はrosetteの幅が狭くなっている。また、アンガトゥラマは他のスピノサウルス類と同様に二次口蓋を示すが、口蓋の左半分は右側よりも幅が狭いことから、ある程度の死後の圧縮はあったと考えられる。


参考文献
Sales MAF, Schultz CL (2017) Spinosaur taxonomy and evolution of craniodental features: Evidence from Brazil. PLoS ONE 12(11): e0187070.
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このブログの功罪



10年もブログをやっていると、自分の活動はどういう意味があるのだろうかと少しは考えるようになる。
 このサイトは何の役に立つのか、は思いつく。夜中に突然、トルボサウルス・タンネリとトルボサウルス・グルネイの違いは何か、知りたくなった時に役立つ。ゲニオデクテスがなぜケラトサウルス科なのかもわかる。要するに、世の中のほとんどの人にとって、全くどうでもいいことがたくさん書いてある。希少価値である。

心配なのは「罪」の方で、このブログはもしかすると、青少年に悪影響を与えたのではないかと危惧している。
 ブログ開設まもない頃には、「どんな資料を参考にしているのですか?」と訊かれたものである。昔、金子隆一氏の著書に「一次資料である論文を読んでいない者とは話をする気がしない。」という趣旨の文言があったが、そうはいってもアマチュア恐竜ファンには、なかなか敷居が高いものとされていたはずだ。それが、昨今では恐竜ファンのレベルが向上したのか、学術論文こそが本当の情報源である、ということが、マニアまではいかない恐竜ファンの間にも浸透してきた様子がうかがえる。もちろん昔からマニアックな人は学術論文を取り寄せていたが、ネット社会になって技術的に容易になった。原著論文の写真や骨格図を見るアマチュア恐竜ファンの数は増加したと思うし、論文に限らずアマチュアが入手できる情報のクオリティも上昇した。

 ただし多数の恐竜の論文を読めば、サイエンスライターのような文章や本が書ける、というものではない。情報収集は必要条件ではあっても十分条件ではない。ましてや研究者のレベルに近づいた、などと錯覚するのは全くの勘違いである。例えばこのサイトの「バラウル」の記事は、具体的にどの形質がドロマエオサウルス類とアヴィアラエのどちらに近いか、一部を抜粋して紹介してある。骨学的記述が列挙してあるように見えて、これだけで辟易してしまう読者もおられるだろう。しかし、Andrea Cauが扱っている情報量はこんなものではない。少なくとも10倍以上はあるだろう。またこの研究はBrusatteのモノグラフをふまえて否定的なデータを提示する性格の仕事なので、過去の複数の引用文献を相当程度、勉強し論点を整理しなければならない。どの分野でも、研究者が論文をまとめるために必要な作業は、部外者の想像を超えたものであるはずだ。
 つまり自戒を込めていえば、多少の論文や総説を読みこなしたからと言って、わかったような気になってはいけないということである。

英語力などの制約はあるにしても、誰でも論文のPDFを入手し、一応は読めるような世の中になったとすれば(もちろん一般の恐竜ファンが皆そういうことをするわけではないが)、このサイトの恐竜情報に対する立場も多少は変わってくるだろう。以前からそうではあるが、重要な恐竜のニュースでもナショジオなどのメディアで十分紹介されているような場合、ここで取り上げる意味は薄いと考える。それよりも、自分の興味に従って独自のテーマを追究する方が性格に合っている。
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PAPO社アクロカントサウルス





PAPO社の恐竜は全般的にモンスター感が強く、例えば「バリオニクスをモチーフにした怪獣」みたいになっていることがある。
 これは、頭骨の形はわりと良いですね。全身の体形も、後肢が長すぎない点は良い(Reborは後肢が長すぎ、足が大きすぎる)。背中の神経棘の上にトゲが付いているが、仙椎の上だけはトゲがない。微妙にコンカヴェナトルを意識しているのか。PAPO社らしくウロコの造形などは優れている。
 体の模様の色彩は、カタログ写真では青とオレンジのような印象だったが、届いてみるとほとんど黒に近い暗緑色と橙褐色のような感じである。非常に彩度を抑えた渋い色でよかった。
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ティラノサウルス小物入れ



Kigumiのティラノサウルス小物入れ。たぶん2年くらい前に買ったので、既に話題になったのかもしれないが、連休に部屋の片付けをするついでに組み立てた。

こういうものを設計する人は尊敬できますね。3次元形状を平面で近似してパーツに分けるところから始まるのかしら。プロのデザイナーにとっては大した手間ではないのか?いや、かなりの思い入れがないとできない作業だろう。
 上顎骨の曲面、前眼窩窩の凹み具合、maxillary fenestra、涙骨の形、後眼窩骨の形、上側頭窓、B字形の下側頭窓、下顎の曲面など、よくできている。上顎と下顎の前方には神経血管孔が描いてあるという凝りよう。最後は後眼窩骨をはめて完成するのも面白い。画竜点睛というが、最後に眼窩の形が決まると、下眼窩突起で縁取られた目の表情が現れるわけである。
 組み立てながら琴線に触れるところがあって、楽しめる商品であった。
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地震被害



 今朝の震度4で、カタンという音がした。嫌な予感の通り、オルニトレステスの頭骨が倒れて、歯が折れていたので修復した。もともと片側の下顎が歪んでいるため不安定だった。
 耐震粘着シートを持っているが、棚に固定してしまうと、気軽に手にとって見られなくなるのが困る。写真では伝わらないが、なかなかお気に入りの品なので。
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恐竜バースデイカード



輸入文具の店で見つけた、金色メタリック感がおしゃれな恐竜バースデイカード。角や爪など角質の部分にゴールドをあしらってあるようだ。また恐竜の輪郭は型押しで浮き彫りになっている。
 まさかのケラトサウルスも気に入った。アームカンパニーとあり、オランダ製。
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