笛吹き朗人のブログ

器楽は苦手でしたがサラリーマンを終えた65歳から篠笛を習っています。篠笛を中心に日々のリタイア生活を紹介します。

前田康博先生のご逝去を悼む

2016-01-25 22:10:56 | 日記
昨年は、私の人生でも、数少ない「残念な年」でした。

7月には、会社入社以来の親友で、夫婦で付き合いをしてきたN君が「すい臓が」んで先立たれました。

更に、今日、大学時代の恩師、前田康博先生が昨年亡くなられていたことを奥様からの寒中見舞いで知りました。

私が、卒業後はマスコミを希望して大学に入り、2年間の教養課程(その間も、専門科目は少しは取っていたが)を終えて、
運動部も辞めて、本格的に勉強に打ち込み始めた時に、先生に出会いました。

出会いは、必修科目の「政治学原論」の授業を取ったことからです。
第1章「政治的対立は、人間的対立である」と書かれた姿が今も目に浮かびます。

それまでは、潰しの利く法律科目を中心に取って卒業する積りでしたが、前田先生の授業をとってから、全く考えが変わり
政治学を中心にし、卒業後も政治学関係の本を中心に読んで来ました。

それは、前田先生の授業内容の論理的組み立て、緻密さ、博識、情熱に圧倒されたからです。
まさに、「大学に行って良かったことは前田先生にお会いできたことだ」という気持ちです。

先生も、当時はまだ30代半ばで、講師でした。
昭和37年の国家学会雑誌に「政治的理性批判・序説」を寄せて、一躍、学会の注目を浴びる存在となっていました。

必修科目のため、同級生も必ず取っているのですが、丁寧な板書にも関わらず、中身が理解しにくいと、授業をエスケープする
人も多い中、私にとっては「これが大学の学問だ」という気持ちで、たまらない楽しみになりました。

当然、ゼミも前田先生のゼミに入れてもらいました。
ホッブスの「リバイアサン」などの大著を毎週数十ページ読んでレポートするのは、大変でしたが、懐かしい思い出です。


そのころ、岩波の「思想」に今なお評価の高い「弁証法とイロニー」や「政治と非政治」を書かれ、多くの政治学者に衝撃を与えました。

卒業してからも、お手紙(先生は、もっぱらハガキ)のやり取りとたまに同期のS君と3人で寿司やすき焼きを摘みながら
話を伺いました。
その時も、最近の世界の政治学や文化人類学などなどを踏まえたお話で、いつも、啓発されました。

論文は沢山書かれているのに、単行本は「政治の弁証」など翻訳だけなので、「先生、単行本を出してください」というと、
「何時か、教科書を書いておきたいね」と言われていましたが、叶いませんでした。

1昨年、「先生、知り合いの書店から全集を出しませんか?」と話したら、乗り気の様でしたが、「今は、忙しくて」と言うことで
それも立ち消えになりました。

多くの方が、先生の論文の全体を纏めて読んでみたいと思っていると思います。
混迷した今日の政治状況に、必ずや根本的な刺激を与えるものといます。

岩波書店さんの決断に期待した。

ご冥福を祈ります。



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