百醜千拙草

何とかやっています

Silent Fukushima

2021-08-10 | Weblog
二ヶ月後の締め切りに研究費申請を出そうと思ってしばらく前からいろいろ考えてます。ウケのよい研究費申請には、いくつかの条件を満たす必要があり、それが非常に困難です。主題のタイムリーさ、扱う分子や現象の目新しさ、アイデアの斬新さ、自分の研究バックグラウンドとの合っていること、実現可能性が高いこと、などなど、これらを満たすような申請を書くのは困難です。今回のアイデアは、ある薬剤が小児難病の治療に最近認可されたというニュースから思いついたのですけど、もともと抗がん剤として開発されたこの薬剤の開発の歴史は古く、初めて臨床認可されたという以外はタイムリーさにかけること(ただしウチの分野ではほとんど研究されていない)、それから対象疾患も目新しいものをターゲットにしていないので、そこが最大の弱点です。普通に思いつくようなアイデアなのになぜか誰もやっていないというのが不気味で、何か大きな見落としがあるのではないかと情報を漁っています。また、中心仮説のアイデアが陳腐というのは致命的なので、そこに一ひねり必要なのですが、そのひねりが荒唐無稽でない程度に斬新でありながら、理論的、データ的に強い裏付けがあることが必要であるのが難しい点です。ま、研究費申請は「夜店の射的」に等しいと言いますから、軽い気持ちでやるのがいいのでしょうけど。

というわけで、愚痴以外に書くことがないので、週末に見たドキュメンタリー、アヤ ドメーニック(日本・スイス)監督の"Silent Fukushima"をリンクします。映画の雰囲気と題名から想像するに、レイチェル カーソンの古典的環境汚染告発本、「沈黙の春 (Silent Spring) 」が監督の念頭にあったのではないでしょうか。ゴーストタウンとなった福島の街の静けさ、この現在進行中の問題を隠蔽したい政府の積極的な沈黙、マスコミも含めた当事者以外人々の忘却による消極的な沈黙、Silenceには複数の含意がありますけど、その静けさの下に隠れているのは、複数の種類の恐怖です。



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