一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

シリーズ「麓から登ろう!」④経ヶ岳 ……有明海から大村湾へ……

2011年05月04日 | 海抜0mから登る経ヶ岳・単独行
シリーズ4回目にして、佐賀県最高峰・経ヶ岳(1076m)に挑むことになった。
何度も登っている山だが、長崎県側の黒木からがほとんど。
佐賀県側からは数えるほどしか登っていない。
シリーズ「麓から登ろう!」は一応、佐賀県の山にこだわっているので、
佐賀県側から登ることにする。
中山キャンプ場の登山口も、
平谷登山口も、
麓とは言えない。
やはり海の近くから登り始めないと意味がないだろう。
〈どうせなら、海抜0メートルから登ろうか……〉
と考えた。
〈でも、有明海からの往復ではつまらない。いっそのこと経ヶ岳を経て、大村湾まで歩いて行くというのはどうだろう〉
と構想はふくらむ。
単独なので、車は使えない。
電車利用を検討する。
調べてみると、JR肥前山口駅5時2分発の電車があることが分かった。
これに乗ると、多良駅に5時34分に着く。
有明海から大村湾へとなると、10時間前後はみておかないといけないだろう。
早朝の出発は、必須条件だ。
大村湾に着いた後は、JR大村駅から電車で帰ることができる。
これで、有明海から大村湾への経ヶ岳横断歩行が可能になった。


配偶者に車で送ってもらい、肥前山口駅に到着。
5時2分発の始発電車に乗る。
5時34分に多良駅に到着。
もうかなり明るくなっていた。


ザックを担いでいたので、駅員さんから、
「ここから登るんですか?」
と訊かれる。
「ええ、海まで行って、海抜0メートルから登ろうと思ってます」
と返事をすると、多良山系に関するパンフレットを差し出しながら、
「頑張って下さいね」
と、言って頂く。
5:38
多良駅を出発。
海に向かう。


有明海は陽が昇ったばかりであった。
美しい!


潮が引いていたので、堤防の先まで歩いて行く。


海水に靴を浸す。


6:00
いよいよ、出発だ。


町はまだ眠っている。


先は長い。


焦らずに行こう。


多良山系の山々はまだ遥か彼方。
レンゲ畑が美しい。


アザミが咲き始めている。


少しずつ傾斜がきつくなってくる。


7:16
多良山系の山々が少しだけ近づいてきたような気がする。


単独行者にとって、影は唯一の同伴者。


車で通ったことのある道でも、歩いてみると色々な発見がある。
実際、車で走っただけでは、何も分からないのだ。
匂いも、音も、頬をなでる風も、美味しい空気も、なんにも感じられない。
五感の内、嗅覚も聴覚も触覚も味覚も、車だと感じられないのだ。
視覚だってあやしいものだ。
飛び去っていく風景は、実際の風景とはかなり違う。
歩いてみて初めて分かることがたくさんある。


中央の特徴のある山は、笹岳。


8:14
多良山系を周回する林道を横切る。


杉の植林帯が伐採されていて、明るい雰囲気が漂う。


8:33
中山キャンプ場に到着。
ここでしばし休憩。


8:43
出発。


黄砂を心配していたが、青空が広がっている。


杉の植林帯が伐採された跡地には、広葉樹が植樹されているようだ。


ヤマルリソウが咲いていた。


ここから右に入って行く。


9:20
中山越に到着。
経ヶ岳へ向けて出発。


最初は気持ちの好い登山道だが、


やがて急登になり、喘ぐ。


10:01
経ヶ岳山頂に到着。
有明海から約4時間かかった。


多良山系の山岳美。


郡岳から続く稜線も美しい。
縦走した日が懐かしい。


10:14
下山開始。
つげ尾に向けて出発。


10:30
つげ尾を通過。


登山者とすれ違い、振り向く。
新緑がまぶしい。


オウギカズラがたくさん咲いている。


ハナイカダを発見。
嬉しい。


11:29
黒木登山口に到着。
駐車場は満車。
路肩にも駐めてある。
スゴイ!


経ヶ岳を仰ぎ見る。
いつ見てもカッコイイ!


黒木の里では田に水が引かれていた。
田植えも間近になってきた。


ゆっくりの下り坂。
快適に歩いて行く。


12:34
「かりィカフェ藁」の前を通過。
カレーを食べたかったけど、時間がないので、また今度ね。


萱瀬ダムから見た多良山系の山々。
美しい!


国道444号線は、「しあわせ街道」。


この辺りは車の交通量が多く、注意しながら歩いた。


バス停を撮りながら歩く。
地名が面白い。



道路沿いにある河原で休憩。
おにぎりを食べる。


川で釣りをしていた中年男性のグループ。
笑い声が絶えず、とても楽しそうだった。


14:10
後ろから来た車が止まり、話しかけられる。
見ると、そよかぜさんと、軟弱さんと、ミッセルさんであった。
もうビックリ!
そよかぜさん達も経ヶ岳に登ってきたとのこと。
「何してるの?」
と訊かれたので、
「有明海から大村湾まで歩いてます」
と答える。
「頑張って!」と皆さんからエールをもらう。
走り去る車をパチリ。


大村の市街地が近くなってきた。


この突き当たりを左折。


長崎空港を目指して歩き続ける。


34号線を横切り、まっすぐ進む。


この突き当たりも左折。


海が見えてきた。


15:37
大村湾に到着。
有明海からここまで約9時間半。
多良駅からだと約10時間。
やっと着いた。
嬉しい~


大村湾の海水に靴を浸す。
有明海から大村湾への歩き旅が終わった。


さて、JR大村駅まではどうしようか?
当初、タクシーを利用しようと計画していたが、
せっかくここまで歩いてきたのだから、最後まで歩こうと考え直す。
15:55
大村駅に向けて出発。


まっすぐな道。
これがキツイ。
なかなか着かない。


16:35
やっと、大村駅に到着。
これで、正真正銘、旅が完結した。
多良駅から大村駅まで11時間の旅であった。


この後、電車で早岐駅まで行き、
乗り換えて、肥前山口駅で下車。
18:25
配偶者の車にピックアップされ、帰宅した。
今度の旅は、舗装道路歩きが長く、徒歩日本縦断をした時のことを何度も思い出した。
山歩きも好きだけど、
町歩きも大好きなので、
今回の旅はとても楽しかった。

さて、次はどの山に(麓から)登ろうか……

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