一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

シリーズ「麓から登ろう!」⑤作礼山 ……相知駅から厳木駅へ……

2011年05月15日 | シリーズ「麓から登ろう!」
シリーズ第5弾は、作礼山(887.1m)。
この山も山頂近くまで車道が延びている山で、
麓から登る人は皆無に近い。
山と溪谷社のガイドブックでさえ、
旧版では麓からの道を紹介していたのに、
新版では9合目の駐車場からの道しか紹介していない。
その影響か、今年4月に刊行された『九州百名山地図帳』では、作礼山は九州百名山のリストから外されている。
だからといって、私としては別段なんの感慨もない。
リストから外されてかえって良かったのではないかとさえ思っている。
作礼山に登った人のHPやブログを見てみると、
県内の登山者はともかく、
県外からの登山者は、九州百名山だから登りに来たという人が多かった。
ノルマ達成の為である。
9合目の駐車場からか、
栗ノ木登山口から登る人がほとんどで、
本当に登りたくて登りに来たという人は少ないように思えた。
九州百名山のリストから外されたことで、
そういったノルマ達成の為に登りに来る登山者が減ることが予想されるし、
そのことは作礼山にとってはかえって好ましいことのように思われるのである。

作礼山にはもう何度も登っているが、
登る度にその良さがじわじわと染み入るように感じられてきて、
登る度に好きになっていく山である。
作礼山には、もうすでに一度(2009年07月05日)麓から登っている。
さて、今回は、どんなルートで登ろうか。
いろいろ考えた結果、
相知駅から出発し、
見帰りの滝を経て、作礼山に登頂。
厳木駅に下りてくるルートに決める。
相知方面からは、白木木場経由のルートがあるが、
それより大回りして、道標もないマイナールートで登ることにしよう。


今日は、夕方ちかくから用事があるので、遅くとも午後3時までには帰宅したい。
そうなると、やはり早朝から歩き出さなければならない。
午前6時、相知駅を出発。




彼方に作礼山が見える。


先日行われた八幡岳の自然観察会に参加したとき、
相知から参加された年配の方から、
「さくれいざん」ではなく、地元では昔から「さらいやま」「さらいだけ」と言われていたということを聞いた。
「作礼」を「さらい」と読むのだという。
なぜ「さくれいざん」などという山名にしたのか理解できないと仰っていた。
相知町に相知交流文化センター文化ホール「サライ」という施設があるが、
この「サライ」は「作礼」からきたものであろう。
『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』のテーマソングとして使用されている曲名も「サライ」というが、日本テレビによると、曲のテーマは「心のふるさと」であり、「サライ」という曲名はペルシア語から来ていて、直訳は「宿(または家)」。
「砂漠の中のオアシス」という意味も込められていて、「宿(または家)」や「砂漠の中のオアシス」が、曲のテーマ「心のふるさと」に近いから「サライ」という曲名になったとか。
「さくれい」より「さらい」の方が音の響きも好いし、
「サライ」という言葉には普遍性があるように思う。
私としても、断然「さらいやま」「さらいだけ」支持である。

この相知方面から見る作礼山がもっとも美しいと言われている。


6:08
小松酒造の前を通過。


ここで造られる焼酎「おおち」は本当に旨い。
(写真は2010年12月09日に撮影したもの)


ここから右折すると白木木場登山口の方へ通じている。
標識も「作礼山→」となっているが、今回は直進。
見帰りの滝へ向かう。


こういう里の風景が大好きだ。


川沿いの道を登って行く。
見帰りの滝が近くなってきた。


7:01
相知駅を出発して約1時間。
見帰りの滝に到着。


帽子を手で押さえておかなければならないほど、滝の風圧は凄かった。


来た道を少し戻り、右折。
急坂を登って行く。



粒の大きな野いちごがたくさんあり、食べながら歩く。
美味しい。


見上げても……


足許を見ても……花。
この季節、ただ山を歩くだけでもいろんな歓びがある。


7:50
伊岐佐ダムに到着。


ダムを挟むように両側に道があるが、
ここを渡って行った方が近道なので、こちらを選択。


左手にダム湖を見ながら通過。


ダム湖を過ぎると、右手に川を見ながら登って行く。


この右手の川の渓谷美に酔う。
これほど美しい溪谷はそうないと思う。


大きな岩の裂け目から木が2本生えていた。
なんだか凄い風景。


8:21
いずみ橋を通過。


今度は川を左に見ながら歩く。


8:32
この分岐を右折。


右折するとすぐに橋がある。
橋には「てらばし」と書かれてあった。


これは地図に載っていなかった分岐。
左へ向かう。
右は行き止まりのようになっていた。




9:02
この分岐は右へ。
右の標識に「屋敷林道」と書かれてある。


凹凸の激しい道になってきた。


9:15
この分岐は左へ。


この辺りから道は荒れ気味となる。


9:22
林道は行き止まりとなる。


その先にかすかな踏み跡がある。


赤テープとGPSを頼りに進む。


杉の植林帯を抜けると、トゲのある植物群が待ち構えている。


トゲに引っ掻かれながら歩いていると、タニギキョウを発見。
束の間の安らぎ。


再びトゲと格闘しながら道なき道を登って行く。


もうすぐだ。


9:52
9合目駐車場と作礼山山頂を結ぶ登山道に出る。
写真左から上がってきた。


藪こぎに近い感じで登ってきたので、この美しい登山道にホッとする。


池を見ながら山頂へ。


10:08
ツツジが満開の作礼山東峰に到着。
相知駅を出発して約4時間。
作礼山は4時間かけて登るに価する山であることを再認識した。


やや霞んではいたが、素晴らしい眺め。


八幡岳と女山(船山)。


作礼山から見る天山も素敵だ。
こんな風景を見ながら早めのランチ。


10:38
作礼山西峰に到着。
ここでも遠望を楽しむ。


10:50
下山開始。


木漏れ日の美しい道を下って行く。


11:07
展望岩を通過。


11:22
作礼山神社の鳥居が見えてきた。


11:43
栗ノ木登山口を通過。
車はなく、今日はこちらからの登山者はいなかったようだ。


茶畑や、水田、
飛行機雲や、緑に呑まれかけている廃屋などを見ながら、
軽快に下って行く。



こういう里の風景を見ているだけで心が和んでくる。


12:57
道の駅「厳木」の佐用姫の像が見えてきた。
ゴールは近い。


13:20
厳木駅に到着。
相知駅から厳木駅への約7時間の旅が終わった。
シリーズも5回目ということで、あまり疲れはなかった。
楽しく、気持ちよく歩くことができた。
今日歩いたルートは素晴らしいものであったし、益々作礼山が好きになった。


この厳木駅は、竹中直人監督作品『東京日和』のロケ地となった場所である。
赤レンガ造りの給水塔と、


駅から見える佐賀方面へのカーブ(二人の別れを象徴している)を
竹中直人監督が気に入り、映画のラストシーンの舞台に選んだとか。
こうして見ていると、
ホームに佇んでいた中山美穂の美しい姿がいまも脳裏によみがえる。


それは、今日出逢った花のように……

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