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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

心配をかけて、褒められて 小森

2015-03-07 21:12:25 | つながり
小森 康之

 今年度を以て退官されることになっておられる高槻先生との思い出を書く機会を頂き、どんな内容で書いていくか、久々の執筆で上手く書けるか不安もあった。今回は研究室生活の中で先生に心配をかけたことを省みつつ、数は少ないものの頂いた評価について思い出して過去を振り返りたい。
 研究室に所属してから卒論完成まで、私はスロースターターな性格が災いして、おそらく事あるごとに先生を心配させていたと思っている。他の同級生たちとは違って、3年生開始の時点では卒業研究のテーマが定まっておらず、春から秋の中頃までアファンの森でカエルを探しつつ課題を模索していた。結局、テーマはシンプルにカエルの食性と決まったのが秋の終わり頃であり、その間どうなるものかと思ったのは、おそらく私だけでなく先生も随分と気になされていたことと思う。翌年、調査シーズンが到来して気合を込めて調査に赴くも、予定していたカエルの胃内容物がどういうわけか採取できず、研究が頓挫しかけた時もまた心配をかけて申し訳なかった覚えがある。幸い7月に入る頃に活路を見出したから良かったものの、調査中に電話をかけて調子を訊ねて来られたあたり、うまくいっているのか気にしていたことと存じる。
 調査も佳境に差し掛かったころ、記念にと爬虫両棲類学会にポスター発表することを決めたはいいが、ポスターの作成に着手したのがなんと大会1週間前。内容なんて1カ月も前に分析し終えていたことをまとめるだけなのに、急ピッチで作業に取り掛からなければならなかった。この時高槻先生は怒ることもなく根気よく私のポスター作りに向きあって頂き、大会2日前に無事完成するにいたった。
 調査が終わりなんとかデータが集まったのも束の間、今度は分析に手間取り何度も食性プログレスに再提出を繰り返す羽目になった。元々要領が悪く、自分の中で物事を理解するのに最低でも4回は同じことをしないと吸収できない性質もあって、思うように作業が進まず、同級生たちから大幅に遅れていた気がする。集めたデータを解析し終えたのが1月の初め頃。就活が難航していたとはいえ、我ながら遅すぎる進展具合に、先生に対する不甲斐なさも人一倍であった。
 このように散々高槻先生には手間をかけさせた思い出が私にとって印象深くはあるが、一方で研究室生活の中で先生から褒めて頂いたこともまた忘れがたい記憶となって生きている。研究室の機関誌オブザベーションでの投稿の際、2回ほど「とても良く書けていました」と評価をしてもらい、特に4年の12月に投稿した時には、わざわざ全体メールで私の文章を紹介して「小森君ありがとう」と締めくくられているのを見て、正直かなり照れながら年末を終えたものであった。確かに小学生の頃より作文は得意であったし、オブザベーションの原稿は題材が決まればノリノリで楽しく書いていた覚えがある。その上でここまで良き評価を頂いたので嬉しさもひとしおだった。
 また、先述したように卒論執筆時相当四苦八苦して進展が遅かったのだが、なんとか結果を書き終えたらその後はサクサク進み、「ダークホースのような追い抜き」などと揶揄されたこともあった。私としてはそこまで大したことはないと思ったものだが、それまで手を焼かせたこともあり意外な評価に少なからず驚いたこともまた事実であった。
 そして迎えた卒論発表会。研究発表が終わった後に先生から頂いたコメント「彼はカエルだけでなく、様々な生き物について精通していました。そんな彼だからこそ出来た研究だったと思います。」は、これ以上ない褒め言葉であった。私は幼い時より本などを目にしながら様々な動物のことを知り、広く浅く知識を得ていたが、人生の中でそれが活かされたことは殆どなかった。そんな私にとってこのコメントは単純な性格ながらいたく感動を与えた。
 大学を卒業して研究室を去った今、私は猛禽類や多くの動物の飼育をしつつ来場者に紹介する仕事に就いている。訳があって一人きりで動物を扱う羽目になり、勉強や努力不足な感じは否めないが、研究室生活で得た反省点を以てより良い仕事をこなせるように少しずつ取り組んでいる。特に一番の欠点であるスロースターターな性格は、仕事全般において大きな障害となるので、辛い作業から逃げないようにすることが肝心だと学んだ。ただ考えるだけだと限界はあるが、やりながら考えれば出来ないことは滅多にないということも調査や先生の叱咤激励から得た私なりの教訓であり、どうにか仕事を乗り切っている。技術や知識不足は、持ち前の動物に対する好奇心や読書力を更に伸ばして挑んでいきたいと思う。
 改めまして高槻先生、在学中散々手間をかけさせてすみませんでした。そして私にとって最大限の賛辞を頂き、ありがとうございました。先生から頂いたお褒めの言葉を励みにして、社会の中で力強く活躍できるようにがんばりますので、退官後もいつまでも明朗かつ活発であり続けて下さい。
(2014年 麻布大学卒業)

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