高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

もくじ

2016-12-03 19:18:13 | 最近の論文など
プロフィール

お知らせ
 ● 12月21日にDarwin Roomで「玉川上水の生きもの調べ」の話をします。


最近の動きnew!

 ● 11月15日に講義した玉川上水の調査の内容をブログにアップしました。また講義の動画はこちらです。

私の著書
最近の論文
最終講義
退職記念文集「つながり」
唱歌「故郷」をめぐる議論


研究概要
 研究1.1 シカの食性関係
 研究1.2 シカと植物
 研究1.3 シカの個体群学
 研究1.4 シカの生態・保全
 研究2 調査法など
 研究3.1 その他の動物(有蹄類)
  その他の動物(食肉目)
  その他の動物(有蹄類、霊長目、齧歯目、翼手目)
  その他の動物(哺乳類以外)
 研究3.2 その他の動物(海外)
 研究4 アファンの森の生物調べ
 研究5 モンゴル(制作中)
 研究6 野生動物と人間の関係

業績
 論文リスト
 書籍リスト
 総説リスト
 書評リスト
 意見リスト

エッセー
 どちらを向いているか:小保方事件を思う
 皇居のタヌキの糞と陛下 new!

2015年の記録
2014年の記録
2013年の記録
2012年の記録 6-12月
2012年の記録 1-5月
2011年の記録
コメント (2)
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最近の動き

2016-12-01 01:23:34 | 最近の動き

2016.12.5
アファンの森に調査に行きました。林の木々にはすでに葉がなくなっていました。順調にタヌキの糞が集まりましたが、その脇に立派なクマのものもありました。カメラにも写っていました。


2016.10.28

2016.12.4
NHKの視点・論点で話した「タヌキと日本人」がアーカイブにアップされました。

2016.12.3
麻布大学いのちの博物館でフクロウの食性分析作業をしました。学生にとっても、八ヶ岳自然クラブの人にとっても、楽しく充実した体験になったようです。


分析をする参加者

お礼に手作りの感謝状を贈りました(ただし高槻の個人的なもの)



最後に記念撮影

2016.12.2
「さくらサイエンス」プロジェクトという獣医学系のアジアの若手研究者の研修活動があり、麻布大学が中心となっています。今回は日本獣医生命科学大学で研修している韓国、台湾、タイの研究者が麻布大学いのちの博物館に来館したので、私が解説しました。





2016.12.1
早稲田大学エクステンションセンターで「野生動物の言い分」と題して講義をしました。

2016.11.29
かわさき市民アカデミーで「シカ問題を考える」と題して講義をしました。

2016.11.27
桐生市にある自然観察の森に招かれてシカの講義と野外観察、それに野生動物の糞分析の実習をしました。ここでもシカが増え始めたそうです。シカとテンの糞分析の手ほどきをしました。



2016.11.26
麻布大学いのちの博物館でフクロウの巣材からネズミの骨を取り出す作業の2回目をおこないました。


分析する八ヶ岳自然クラブのお二人


取り出した骨. 主要な骨の紙資料の上にシャーレをおいて、取り出した骨を集めた。

2016.11.25
日本山岳会で、「シカ研究者がみた最近の日本の山」という講演をしました。
NHKテレビの「視点・論点」で「タヌキと日本人」という話をしました。

2116.11.24
早稲田大学エクステンションセンターでおこなわれている「生命(いのち)のにぎわいを探る」のシリーズを担当し、「唱歌「ふるさと」の生態学−ウサギはどこへ行った?」という話をしました。

2016.11.23
山梨県の乙女高原では毎年勤労感謝の日に市民が集まって草刈りをしています。私もこの数年参加させてもらっており、今年も行きました。草刈り機や手鎌でススキを刈り取り、それをブルーシートにのせて引っ張ってゴミ収集車にのせて別の場所にもっていきます。老弱男女260人が集まり、作業が終わったらおいしい豚汁をいただきました。





2016.11.21
明治神宮に行きました。タヌキの糞探しをするために林に入る許可をもらっています。夏から毎月来ていますが、タメフンがみつからず、サンプルが集まらないでいました。どうやらタヌキが疥癬という病気で少なくなってしまったらしいのです。かなり歩きましたが、獣道がみつからず「いないなあ」と思っていました。ただ、前回のときに、人はいかないところなのにマヨネーズの容器とか、お菓子の袋などが多くあるところがあり、タヌキが使っていそうな場所が見つかっていました。そこに、ついにタメフン場がみつかったのです。ごく新しい糞はギンナンばかりが入っていますが、少し古いものは黒褐色で、一部には鳥の羽毛が入っているものなどがみつかり、今後分析します。これまでがんばって探してきた甲斐がありました。


タヌキの糞を拾う

2016.11.20
相模原市立博物館で「学びの収穫祭」があり、おもに地元の生徒、学生、市民、大学人などが発表をする活動がおこなわれていますが、そこで話をするように要請されました。そこで「東京西部のテンとタヌキの食性」について話をしてきました。なかなか活発なようでした。

2016.11.19
博物館で「フクロウの食性分析」をおこないました。学生9人と八ヶ岳自然クラブの人2人が参加し、ネズミの骨の勉強をしながら、小骨を取り出しました。


分析をする


八ヶ岳自然クラブが提供くださった写真パネルと標本箱に並べたネズミの骨。パネルはネズミをとらえる瞬間のフクロウなどすばらしい写真があります。ネズミの骨はかつて同じ八ヶ岳のフクロウの食性分析をしたときに作った標本です。

2016.11.18
かわさき市民アカデミーで「森林管理と生物のつながり」と題して講義をしました。

2016.11.15
武蔵野美術大学で玉川上水で調べてきたことの報告をしました。その内容はこちら



2016.11.13
明治大学で今年のモンゴルでの調査報告会議があり、群落調査の報告をしました。



2016.11.7
宮城県東松島でニコルさんたちが子供たちのために「復興の森」を準備しています。来春開校する「森の学校」に隣接する森で、アファンの森を参考にしています。今年から動植物の基礎資料をとるためにときどき行っています。ツリーハウスというおもしろい家があり、子供がよろこびそうです。木を整理して明るい林を作っていますが、その材木を取り出すために岩手県のウマが来ていました。


ツリーハウス


材木を出すためにきているウマ

2016.11.6
玉川上水の観察会をしました。少しポカポカのとても気持ちのよい日で、参加者が少なく、近い距離でゆっくりと自然の観察や調査ができました。果実の季節になったのでその生態学的解説をしたあとスケッチをしました。さすがに美大生だけあってうまいものです。




木暮さんのスケッチ


清原さんのスケッチ


高槻のスケッチ


観察した果実

2016.10.29
兵庫の養父(やぶ)というところの有志にお招きいただいて、シカについて講演をしてきました。兵庫県はシカが増えて年間4万頭以上を駆除してもうまくいっていないそうです。私も少し山をみせてもらいましたが、アセビやイワヒメワラビなどが目立ち、下生えは貧弱になっていました。京都からおりて少し、と思っていたのですが、時間的にはそこから福知山まで、福知山からまた養父までととても長く、えらく奥まったところだなあという感じでした。地図で見るともう鳥取に近いくらいでした。実際、警官は私の育った米子あたりとまったく同じという感じでなつかしく思いました。熱心な議論があり、同じロッジに泊まった方もおられて、くつろいで話ができました。

2016.10.22-23
大学祭なので、博物館も来館者が増えます。学生に展示の勉強をしてもらい、解説をしてもらっています。展示だけと、解説つきでは全然違うようで、好評です。600人ほどの来館があったようです。あしたも続きます。



アンケート記入

2016.10.20
いのちの博物館にかわいい来館者がありました。近所の幼稚園さんが30人ほどきてくれたのです。どのくらいわかるのか見当がつきませんでしたが、私は「子供こそホンモノを見分ける目をもっている」と信じていますから、本物を展示している我が博物館の標本をみて、きっとゾウの大きさやキリンの背の高さや天井の高さなどをそれなりに感じとってくれたと思いました。


2016.10.19
毎月行っている明治神宮に行ってきました。タヌキのタメフン場を探すのが目的ですが、まだ見つかっていません。糞はひとつだけみつかったのですが、タメフンはだめです。タヌキが疥癬病で死んだと言われています。かなり歩いていますが、「気配」が感じられません。獣道もほとんどなく、やはりほとんどいないようですが、粘りつよく続けるつもりです。

 

2016.10.15
津田塾大学にはタヌキがすんでいますが、そこでいくつかの調査をしています。タメフン場がみつかっているのですが、これまで一箇所だけでした。そこで、人数を集めてローラー作戦で探すことにして、ついにもう1箇所見つけました。成果によろこんでパチリ!



2016.10.10-11
アファンの森に行きました。10日は卒業生の望月さんが来てくれました。


もう秋のよそおいで、花はほとんどなく、いくつか実がなっていました。


 セットしていたカメラにツキノワグマが写っていました。


2016.10.9
毎月の玉川上水観察会で集まりましたが、雨のため中止とし、よい機会なのでこれまでのこと、これからのことについて話しあいました。

2016.10.2
千葉県館山の猟友会に招かれて講演をしてきました。館山にはまだシカは少ないようですが、イノシシが多くていろいろ問題になっているそうです。私が書いた「シカ問題を考える」を読んだ方が、「ハンターがただシカやイノシシを殺すことを目的とするような感じになってきていてよくない。先生の本には動植物を大切にする心があるので、それを伝えてほしい」ということでした。また、動物や植物のことだけでなく、農山村の人のこと、社会のことも考えないといけないことを書いたのですが、そのことにも共感してもらえたようです。
 館山は房総半島が下向きの瓶の口のように突き出したあたりで、ヤシの木などがあって暖かい土地であることをうかがわせました。久々に晴れたので、帰路のバスからみた夕焼けが実にきれいでした。

2016.10.1
麻布大学いのちの博物館で企画展示「動物の目」を始めるため、本日展示準備をしました。動物の目の構造などの解説をし、治療法などについて、動物病院の印牧先生にご指導いただいて、完成しました。サルとラクダの視野の違いをアクリル板を使って表現しました。



眼圧計やエリザベス・カラーのイラストを描きました。

 

 



2016.9.18
乙女高原は今シーズン柵で囲われました。そして驚くほど植物が回復し、ワレモコウ、アキノキリンソウ、マツムシソウ、オミナエシなどが増えました。やはりシカの影響が強かったことが証明されたことになります。私たちはその柵の中でこれまでおこなってきた草刈りをしました。柵をつくって植物がシカから守られたからこそ、刈り取りがどういう影響を与えるかを示すことができると考えたからです。今日はあいにく小雨でしたが、刈り取りも、去年調べてマーキングしていた固定枠の群落調査も終えることができました。

 

2016.9.11
恒例の玉川上水観察会をしました。先月は夏休みで武蔵美の学生さんがいなかったのですが、今回は後期の授業がはじまって大学にもどってきたので多めでした。午前中に野草観察ゾーンで訪花昆虫の記録をとりました。秋の花が咲いていたので、シラヤマギク、センニンソウ、ツルボ、アキカラマツなどの花の前に立ってもらい、訪れる昆虫を記録してもらいました。午後は朝鮮大のほうで植生調査をしました。




訪花昆虫を記録する


「そっちはどうだった?」

カリガネソウがちょうど花の旬で、まっていたらクマバチがきました。背中にたくさん花粉をつけていましたが、観察していると体重が重すぎて、雄しべがハチの背中をたたくということはなく、ハチがおしべの上にのりかかるという感じでした。
 
カリガネソウとクマバチ


ツルフジバカマ

2016.9.9
「らでぃっしゅぼーや」という会社に頼まれて「森から海へ」と題してお話をしてきました。東京オペラシティなどという行ったことにないところだし、聞く人もビジネスの世界の人なので場違いな感じがしていましたが、「それなりに通じる」どころか、オーガニック製品の物流に関心のある人たちなので、私のいう「生き物のつながり」の大切さは十分に理解してもらえたと感じました。私は海もことは知らないのですが、「動物を守りたい君へ」を書いたとき、サケのことを勉強したので、その話を紹介しました。アラスカのトンガス国立公園で、サケの成分が木の中にあるこたがわかってきました。クマが食べて森で糞をするからです。それは新発見ですが、アイヌが川の源流を「川のおわるところ」、河口を「川のはじまり」というのは、サケの立場になれるからで、サケが生態系に重要な働きをしていることを知っていたのだと思います。それがおもしろかったと感じた人が多かったようです。

2016.9.4
乙女高原に行きました。半年前の冬に草原が柵で囲われました。柵の中にはいると、マツムシソウ、ワレモコウ、アキノキリンソウ、タチフウロなどこれまであまりなかったり、あっても少ししかなかった虫媒花(昆虫に受粉してもらう花)が増えていました。驚きました。マルハナバチがたくさん花に来ていました。


オミナエシとマツムシソウ


マツムシソウ


カワラナデシコ


ツリガネニンジン


ハナイカリ


ヒメトラノオ

2016.9.1
森林インストラクター東京会というところに招かれて東京ドームの近くで「森林と動物」と題して講演をしました。40人あまりの森林に関心のある方が集まって熱心に聞いてもらいました。シカと植物の話が主体でしたが、2時間もあったので、タヌキやそのほかの野生動物の話をしました。シカと植物のところではスライドで植物の写真を出して名前を聞いたのですが、さすがによくご存知の方が多く、会場がもりあがりました。動物についてもいろいろと質問があり、楽しい時間をすごすことができました。

2016.8.23
日本・アジア青少年サイエンス交流事業によって来日したアジアの若手研究者・院生が来館しました。国は中国、韓国、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、インドのほか、一人ながらモンゴル、カンボジア、ラオス、ミャンマー、シンガポール、フィリピン、インドネシア、ブルネイの人もあり、文字通りアジアを広くカバーしていました。私が展示解説をし、病理学などは黄教授の補足説明がありました。ロードキル展、プラスチネーション、ゾウとハムスターの対比、歴史などが印象に残ったようです。博物館が国際交流に役立てるのはすばらしいことだと思いました。



2016.8.1-8.15
モンゴルで調査をしてきました。アイラグ(馬乳酒)プロジェクトの下での群落調査を担当しました。私事ながら、今年は結婚40周年でもあり、私も現役を退いたことなどを考えて、カミさん同行を実現しました。研究チームで同じところに宿泊しての毎日だったので、皆さんからもよくしてもらい、楽しい滞在となりました。調査の記録係もしてもらい、私自身も助かりました。



2016.8.5
「動物のくらし」を作る過程について「週刊読書人」に書いた記事が紹介されました。



2016.7.27
今日までの3日間、麻布大学いのちの博物館で夏休みこども教室をおこないました。小学4年から6年生までが対象でした。まだ幼さの残る子もいるし、6年生には中学生みたいな子もいて、成長のいちじるしい年齢なのだと思いました。話をしていて、自分のことばが、輝く瞳を通してこどもの心に入っていくような不思議な感覚をもちました。
 終わって仕事をしていると
「先生、田口さんという方がご挨拶をしたいということです」
「田口さん?」
とくに思い当たるフシはない。誰かなと思っていると
「去年、先生に骨のことを教わったということで・・・」
「あ、田口くん?」
 実は去年、私が「このは」という雑誌に骨の解説を書いたとき、お母さんを通じて小学生から質問が来ました。20くらいの質問があり、自分でよく考えたよい質問でした。私はすべての質問に詳しめの返事を書きました。
 しばらくしてその少年(田口くんという名前でした)からはがきが届き、骨のことを調べて夏休みの作品を提出したら、なんとそれが文部科学大臣賞をもらったということで「高槻先生、ありがとうございました」と結んでありました。田口くんがふつうの子と違うのは、ころんで頭を強打して病院に連れて行かれたときに、「僕の頭が壊れなかったのはどうしてだろう」と考え、その答えを求めて、骨のことをいろいろ調べたということです。その疑問をお母さんが私に伝えてくれたというわけです。
 その田口くんが夏やすみこども教室に来ていたのです。そのときにもらったはがきに写真がついていましたが、そのときとはずいぶん成長し、メガネをかけていたので、気づきませんでした。
 私は田口くんに返事を書くときに、あることを思い出していました。中学2年生のときに、蝶の食草について、蝶の種分化と食草の種分化に対応関係があるのではないかと考え、そのことを私の愛読書であった「日本原色蝶類図鑑」の監修者である九州大学の白水隆先生に手紙に書いたのです。いなかの中学生に大学の先生が返事をくれるかどうかまったくわかりませんでしたが、しばらくして返事が来たのです。読みやすい字で「君はとてもおもしろいことに気づきました」という意味のことが書いてありました。その感激は私の中にずっと残っていました。私はそのときに科学者に対するあこがれのような気持ちを抱きました。
 自分の少年時代と重なるような気持ちもあり、不思議でうれしい出会いとなりました。


 

田口くんと。右は2015年2月の田口くん

2016.7.26-
 麻布大学いのちの博物館で「夏休みこども教室」としてシカとタヌキ(アライグマ)の頭骨の観察体験をしてもらうことになりました。私が解説をし、学生2人にも展示場の解説とアシスタントをしてもらうことになりました。実際の骨に触る機会はなかなかありませんから、それだけで得難い体験だったろうと思います。少し緊張気味にふれていました。私は子供の自由な絵が好きなので「自由に描いていいよ」といったのですが、小学生の場合、ある程度のガイドをしないと、何をどうしてよいかわからないのかもしれず、むずかしいものだと思いました。大学での体験がなんらかの形で子供たちの心に残ってくれたらよいなと思います。

骨のスケッチをする子供たち(公開の了解をもらっています)


2016.7/18-19
 C.W.ニコルさんが中心になって宮城県の東松島につくっている「森の学校」は校舎が木造であるだけでなく、森に隣接しています。その森は「復興の森」とよばれています。その森の生き物の調査をしていますが、今回は計画されている道路の影響を調べるための群落調査でした。森の一角には「ツリーハウス」があり、大人には「妙な家」にみえますが、訪れた子供は大喜びするそうです。



2016.7.17
 私が麻布大学に移った年に入学した学年とは特別に中がよくて、卒業後も交流があります。昨年はモンゴルに同行しました。ことし4月に玉川上水の散歩をし楽しい1日を過ごしましたが、違う季節もいいねということになり、7月17日に散歩しました。ちょっといい感じのレストランで昼食をとり、玉川上水に行って、のんびりと歩き、植物を観察したり、雑談をしたりと、楽しく過ごしました。そのあと、鷹の台近くの喫茶店で昔話などをしました。

 


説明をする私(宗兼さん撮影)

2016.6.21
日の出町の谷戸沢廃棄物処分場跡地では、ゴミを埋めて土をかぶせたあと、一部はサッカー場、一部は動植物がもどってくる場所にしています。私は生物調査のお手伝いをしてきましたが、6月21日にオオムラサキの観察会があり、あわせて講演をすることになりました。当日は天気がよくなかったのですが、多くの人が訪れ、熱心にきいておられました。その後、オオムラサキの放蝶会があり、みなさんうれしそうでした。


飼育され、羽化したてのオオムラサキ


ケースに入ったオオムラサキをみる参加者

2015.6.19
乙女高原に昨年、巨大な柵がつくられ、シカの影響を排除することになりました。これまで私たちは「シカが増えたために花咲き乱れていた草原がススキ原になった」という声を検証するために、ススキ群落を違う時期に刈り取るなどの実験と、虫媒花の刈り取りなどを組み合わせてそれが事実であろうと言えるようになりました。柵ができたので、もう食べられることもないし、観光目的のシカ排除は実現したので、実験はもうしなくてもよいようなものですが、私はその「観光」はただ景色をみて楽しむだけでなく、動植物の関係を学ぶという要素をもってもらいたいと思います。そのために、柵の中でさらに刈り取り実験をすることで、刈り取りをするとススキ原がこうなるということを示すことも重要だと思いました。そこで、6月19日にこれまでどおり刈り取りをしてもらいました。


刈り取り実験を手伝ってもらいました。


仕事がおわって一休み

2016.6.13
お伝えした「視点・論点」で「日本の山とシカ問題」の放映が6月14日早朝4:20となりました。13:50にeテレで再放送があります。お時間がありましたら、録画してみていただければありがたいです。


2016.6.8
NHKに「視点・論点」という地味な番組があり、見たことがあるような、ないような、なのですが、そこから「日本の山とシカ問題」と題して話してくれとオファーがあり、収録がありました。なんと「化粧」をされました(みんなしてるのかなあ、とてもそうは見えない人もいるけど・・・)。そのとき「これ長いので切りますね」、何のことかと思ったら私は父からの遺伝で眉毛に長ーいのがときどき生えます。ふつうの人は切ったりするんでしょうが、私は鏡なぞ見ないので気付きませんでした。「は、はい、お願いします」と苦笑い。あの番組をみているとなんとなくわかるのですが、目の前の画面に手元においた原稿が写っているんですね。1ページを読み終わると次のものに変えるのですが、手元は見えないようになっています。長さはけっこう適当だと思っていたのですが、3000字くらいといわれ、そうして、そのまま読みました。9分30秒くらいが理想で、多少早くても遅くてもいいです、と言われていましたが、時間モニターを見る余裕などなく、終わってからみたら、なんと9分32秒でした。それから、初めと終わりにお辞儀をするのですが、私の前にいる人がそのタイミングでお辞儀をするのに合わせてしなさいと言われたので、そのようにしました。あれを横から見ていたらお互いがお辞儀をするのでおかしかろうと思いました。14日放送ということでしたが、なんと夜中の4時台で、だれがこんな時間にみるだろうと思います。再放送がeテレビで、これはまともな時間のようですが、あまり見ないチャンネルです。

2016.6.1
御嶽山で「御嶽山でシカ問題を知る」という講義をし、その後現地観察会をしました。御嶽山はレンゲショウマが有名でそれをめあてに訪れる人も多いのですが、ここにも西のほうから広がってきたシカがすむようになって、レンゲショウマも食べられてはたいへんと柵で囲ったそうです。シカのことを勉強したいということで企画されたようですが、熱心な質問があり、有意義な会になりました。


御嶽山での観察会を終えて

2016.5.20
このたび玉川大学出版部から「動物のくらし」という本がでました。これは「玉川百科 こども博物誌」というシリーズの1冊で、その最初のものとして出版されました。A4版で厚さ2cmくらいのハードカバーです。旧友の浅野文彦さんのすばらしいイラストで、これまで日本のこの種の本ではないできばえになったと思います。小学校低学年向けということで本作りの面ではむずかしさもありましたが、内容は充実しており、大人が読んでも楽しめるものになりました。関心のある方はぜひ一度ご覧になってください。


出版案内

少し紹介します。ここをクリック

2016.5.15
玉川上水で観察会をしました。


(棚橋早苗さん撮影)

2016.4.25
麻布大学いのちの博物館に渕野辺高校の2年生が訪問し、見学しました。私が概論を解説し、その後、展示をみてもらいました。



2016.4.18
武蔵野美術大学で「玉川上水を探検する」というシリーズの「玉川上水のタヌキを調べる」という講演をしました。会場には地元の市民の方も大勢参加されました。玉川上水で調べたタヌキのこと、私たちにとってタヌキとはどういう存在なのかという話をしました。



2016.4.10
玉川上水の4月の観察会をしました。



2016.4.9
卒業生4人が玉川上水を訪問してくれて、いっしょに散策しました。とても楽しい時間でした。



2016.3.26
国立市の公民館で「動物の言い分」という講演をしました。

2016.3.21
武蔵野美術大学の仲間と玉川上水の観察会をしました。アマナ、バイモ、ミミガタテンナンショウなどがあり、皆さん熱心に観察していました。








2016.3.19
下北沢のB&Bという本やさんでタヌキのトークショーをしました。20人くらいでしょうか、お客さんが来ていました。自分からいうのもなんですが、タヌキのウンチの話を有料で聞きにくる人なんかいるのかなと思っていましたが、いました。世の中、いろいろな人がいるものです。司会の嶋さんという人が上手に流れを作ってくださったので、2時間近くいろいろな話ができました。頼まれてタヌキの糞をアクリスケースに入れて持参、皆さんに回覧しました(これも思えば不思議なことです)。それからタヌキ、アナグマ、シカ、ニホンザルの頭骨と、シカのいろいろな骨も紹介し、さわってもらったりしました。全体になごやかで、楽しい雰囲気で、質問もありました。

2016.3.12

今朝の朝日新聞の「be」(赤版)の「ののちゃんのDo科学」は動物の骨粗鬆症のことが取り上げられています。この記事の取材を受けて、情報や写真を提供しました。博物館の標本が役立ってうれしかったです。



2016.3.2
「タヌキ学入門」関連で仙台の河北新報が記事を書いてくれました。私のところにタヌキの糞を送ってくれている平泉さんが取材を受けました。



2016.2.22
3月19日に下北沢の本屋さんでタヌキのお話をすることになりました。

本屋でのトーク・イベント


2016.2.11
10日の深夜、TBSラジオ「荻上チキ・セッション22」のゲストとして「タヌキ学入門」の話をしました。事前にリクエスト曲を3つと聞いていたので、竹内まりやの「元気を出して」、エリッククラプトンの「Tears in Heaven」、それに小田和正の「風のように」をあげました。ところが、話がもりあがって、最後に楽しみにしていた小田の曲は紹介されず、残念でした。でも知らないことをするというのはおもしろいもので、楽しみました。
YouTubeにアップされているので、YouTubeを出して「タヌキ学入門」とすると聞けます。

2016.1.15
かわさき市民アカデミーで「シカ問題を考える」と題して同名の新書の解説をしました。
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フクロウの食性分析

2016-11-01 11:16:02 | その他
麻布大学いのちの博物館でおこなう「フクロウの巣残存物の分析」作業に参加する人のために説明を書いておきます。

 八ヶ岳では、地元の自然愛好家のグループ(八ヶ岳自然クラブ)がフクロウの巣箱かけをして、営巣、巣立ち確認のデータをとっておられます。フクロウはネズミ食に特化した猛禽ですが、ある人がその巣に残された小骨を集めてネズミの下顎から識別をしました。その人はその後その調査をしなくなったので、八ヶ岳自然クラブは巣材は捨てたそうです。それはもったいないということで翌年からは麻布大学動物応用科学科の野生動物学研究室でそれをもらいうけて分析することにしました。鈴木大地くんという皆さんの先輩が卒論を書き、「牧場の近くではハタネズミが多いが、森林になるにつれて減少する」ことを明らかにし、これは国際的な雑誌の論文になりました。


八ヶ岳の牧場からフクロウ巣の距離と残存物に占めるハタネズミの割合.牧場に近いほどハタネズミの割合が高い.Suzuki et al. 2013 より。論文を希望される方は高槻にご連絡ください。takatuki@azabu-u.ac.jp

この経緯などは「動物を守りたい君へ」(岩波ジュニア新書)に書いたのでよんでください。その後は落合さんがひきついで分析を続けてきましたが、彼女は今年の春で修士を修了しました。八ヶ岳自然クラブはその後も分析を期待しており、今年度は麻布大学いのちの博物館で分析することになりました。そこでミュゼットを含む麻布大学の学生に共同作業をお呼びかけています。

 作業は巣の残存物をフルイを使って大きな破片を除き、残りのものからネズミの骨をピンセットで取り出すというものです。これは教育的にもたいへん効果の大きいもので、数年前に高校生を対象におこなったことがあります。分析したことの意味を考えると、たいへん奥行きのあることがわかります。このときのことは麻布大学雑誌に記録をしたほか、一般に向けて紹介しました。
 こうして取り出した骨は標本箱に配列し、博物館の資料として保管します。


フクロウの巣から検出されたネズミの骨の標本

 そのために、ネズミの骨の勉強をしてもらい、識別能力をつけます。さまざまな骨が検出されるので、勉強になりますが、分析に使うのは下顎で、これは分析能力のすぐれた落合さんに確認してもらいます。

 八ヶ岳自然クラブから6つの材料が届いているので、2つを3回にわけて作業します。日程は下記のポスターをみてください。1日2つを2班に分けておこないます。2時間くらいですむと思います。


報告 11月19日に第1回目の分析をし、順調に進めることができました。
学生9人と八ヶ岳自然クラブの人2人が参加し、ネズミの骨の勉強をしながら、小骨を取り出しました。


分析をする学生


八ヶ岳自然クラブが提供くださった写真パネルと標本箱に並べたネズミの骨。パネルはネズミをとらえる瞬間のフクロウなどすばらしい写真があります。ネズミの骨はかつて同じ八ヶ岳のフクロウの食性分析をしたときに作った標本です。

八ヶ岳自然クラブの田中様からのお便り
高槻先生
 3回にわたって行われたフクロウ巣材分析のワークショップ、高槻先生にはいろいろとご配慮をいただき本当にありがとうございました。八ヶ岳自然クラブとして3回の催しで延べ10名の者が参加させていただいたことになりますが、参加者全員が非常に満足したとの感想を述べて帰りました。
 私たち”高齢者グループ”にとっは、若いはつらつとした学生さんたちとの交流は何十年前の学生生活に返ったような楽しい時間でした。そして、”現代っ子”の皆さんが、あのような一見ジミな作業に黙々と真面目に取り組まれている姿を見て、現代若者像の別の側面を見たような嬉しい体験でした。
 分析素材の前処理、ワークショップ運営の立案・準備、等々、高槻先生は大変なことだったろうとお察ししますが、お陰さまで私たちは貴重な体験をさせていただきました。改めまして心からお礼申し上げます。
また、気持ち良く共同作業をしていただいた学生さんたちにも感謝申し上げます。どうぞよろしくお伝え下さい。

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その他の骨

2016-11-01 08:16:53 | その他
ネズミの骨の主要なものです



肩甲骨、尺骨(左)と上腕骨(右)

  
寛骨、大腿骨、脛骨
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作業手順

2016-11-01 05:33:22 | その他
サンプルは6個ある。

1)分析するサンプルを決める。
2)フクロウの巣箱は底にチップを入れてあるので、ふるいを使うなどしてこれを取り除く。
3) 残りの細かな残存物を容器にとりだし、そこから小骨、羽毛をピンセットで取り出して、シャーレに入れる。
4) シャーレは「頭骨」「下顎」「寛骨」「四肢骨」「その他」くらいに分け、取り出したものをそれぞれのシャーレに入れる。
5) 取り出したらチャック袋にサンプル番号、骨の部位などを書いて納める。
6) このチャック袋を大きいチャック袋に納める。
7) このとき、標本の骨と見比べてどこの骨かなどを確認すると勉強になる。

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ネズミの下顎

2016-11-01 01:45:43 | その他
ネズミの頭部は下の図のようになっていますが、フクロウは飲み込んで分解しますから、頭部と下顎は別々になってでてきます。頭部は割れていますが、下顎はだいたいそのままでてきます。


     ネズミの頭部

下の写真はフクロウの巣の中から取り出したネズミの下顎です。実際にはこれ以外の骨もたくさんでてきます。



おもに出てくるのはアカネズミの仲間とハタネズミの仲間です。アカネズミの仲間は森林にすむので「森ネズミ」と呼ぶことにします。いっぽう、ハタネズミの仲間は草原にすみますから、八ヶ岳では牧場によくいます。歯をみるとその違いがよくわかります。森ネズミのほうはヒトの歯とも共通な歯根をもっていますが、ハタネズミのほうはダンボールのような「壁」が上から下まで続く特殊なものです。これは歯の摩滅に対する適応と考えられています。アカネズミは果実や動物質など栄養価が高く、消化率のよい食物を探して食べますが、ハタネズミは草の葉や地下茎など硬い食物を食べ、腸も長く、盲腸が発達するなど、粗食に耐えることができます。歯はそういうことを反映しています。
 このことから下顎があれば、ネズミの種類を判別できるのです。

 
左 アカネズミの下顎、 右 ハタネズミの下顎


左 アカネズミの歯、 右 ハタネズミの歯

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フクロウ実習

2016-11-01 01:25:14 | その他




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落合さんによる分析

2016-11-01 01:25:10 | その他
これは八ヶ岳自然クラブの写真展で、分析内容を紹介してほしいという依頼があり、それに応えて作成したものです。



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皇居のタヌキの糞と陛下

2016-10-01 21:20:38 | 私の著作
2016.10.8

 明仁天皇陛下を筆頭著者とする皇居のタヌキの食性に関する論文(英文)が公表された。このことが報じられてから、複数の人から「タヌキの食性を調べるってどういう意味があるんですか」とか「新種発見とか絶滅危惧種ならわかるんですが、タヌキって珍しくないんじゃないですか」といった質問をもらった。それは私自身に対する質問でもあるような気がした。多くの人が興味を持ちながら、学術論文であるからと敬遠して目にすることがないのは残念なことだ。そこで、タヌキの食性を調べてきた者として解説と感想を記してみたい。
 タヌキの食性、つまり「何を食べているか」を調べることはタヌキに関する生物学のひとつの項目である。分類学、形態学、生物地理学、行動学など、それぞれの分野についてタヌキで調べる価値がある。食性解明は、生物学の類型でいえば生態学の項目のひとつといる。調べた結果、「タヌキには果実が重要で、冬には哺乳類、夏には昆虫も増える」などの事実が明らかになる。食性解明には、そういう動物学的な情報のひとつを提供するという意味があり、それを目的に調べられてきた。これは遡ればギリシア時代からの博物学の延長線上にある。
 生態学が発達してくると、生態学の目的である「生物と環境との関係」についての理解が深まってきた。個別の生き物の生活史を解明するだけでなく、その生き物が生態系の中で果たしている機能や担っている役割を解明するという視点が生まれてきた。植物は光合成をする生産者で、その葉を食べる草食動物がおり、その草食動物を食べる肉食動物がいるとみられるようになった。そういう視点に立てば、それぞれの階層内のバッタとシカは、葉を食べるという同じ役割をしているとか、フクロウとキツネはネズミを食べるという同じ役割をしているという見方がなされるようになった。これはイギリスのエルトンが提案したアイデアで、そのように見ると生き物は鎖でつながっているように見えるので「食物連鎖」と名付けられた。重要なのは個々の種の情報でなく、生態系の構造と機能をとらえるようになったということである。
 そのように考えると、「タヌキの食性」を調べることにも、図鑑的な知識をひとつ加えるという研究もあれば、タヌキが生態系の中でどういう役割を担っているのかという視点に立つものまでさまざまである。私たちも「タヌキの食性」を糞を集めて分析したが、興味はタヌキの種子散布という役割の解明にあったので、糞から検出される種子に注目し、識別するだけでなく、数も調べ、さらには実験的にソーセージの中にプラスチックのマーカーを入れて、タヌキの移動距離を解明するなどの工夫もした。
 つまり、同じ「タヌキの食性」という課題でも目的意識によって相当違うものになるということである。その意味で、今回公表された皇居のタヌキの論文が、どういう目的で研究されたかを紹介したい。
 論文の導入部である序ではまず、タヌキは日本列島にすむ中型の食肉目で、東京では1950年代までは捕獲されるほどいたが、1970年代の都市化によって減少したことが書かれている。それに続いて、しかし最近は都内でも回復し、1990年代後半の調査では皇居に定着していることが確認されたとある。こうして日本列島レベルから東京、千代田区への絞り込みがおこなわれている。
 これに続いて、タヌキは決まった場所でトイレのように「タメフン」をすること、2006年から翌年にかけて調査をして皇居のタヌキの食性が明らかになったことが書かれている。ただし、1年きりの調査であり、年次変動については調べてないということが添えられている。実際、ツキノワグマやニホンザルでは年によって果実の豊作、凶作があって、それに応じてクマたサルの食性が大きな年次変動をすることが知られている。これが皇居のタヌキではどうであろうかというのが解明すべき課題であるとする。
 この論文の序は、科学論文としての一般的な形を踏み、過不足なく書かれていると思う。しかし、私にはもう少し聞きたいことがある。それは、天皇陛下が皇居で調査をされたことに触れて欲しかったということである。日本中で、あるいは世界中で、自分のすむ場所の生き物のことが知りたくてコツコツと調べている人がいる。それはもちろん学問の世界に科学的に調べた情報を提供するという意味をもつが、同時に「自分のすむこの土地にあるもの、いるもののことを知りたい」という人間ならだれでも抱く好奇心に発したものであり、陛下の場合はそれが皇居でされたということなのだと思う。
 陛下はハゼの分類学者でもあり、動物がお好きなのだと思う。その陛下が皇居内にタヌキがいて、タメフンを調べれば食べ物がわかると知られたときに、「これを調べてみたい」と思われたと察する。私は論文全体を読んで、行間からそのことを感じた。
 この論文を読んで、私にとって印象的だったことがいくつかある。まず糞から検出された種子が種または属まで識別され、その数が58にもおよんでいることである。これは一箇所での結果だから、これまでの研究と比べて破格の値である。識別は植物分類学者の門田裕一氏が担当したようで、私も個人的に知っているが、植物の知識は桁外れの人だ。専門家なのだから当然といえば当然だが、糞から検出される微細な種子を同定するのはたいへんなことである。
 さて、この分析でどういうことがわかったかというと、皇居のタヌキの食性においては森林に生える植物の果実が重要だということである。出現頻度の高かったのはムクノキ、クサイチゴ、エノキ、クワ属、イヌビワなどクサイチゴを除けば高木あるいは亜高木である。クサイチゴはキイチゴの仲間でも明るい場所に生えるモミジイチゴやニガイチゴと違って暗い林に生える。このうちムクノキ、エノキなどは何ヶ月にもわたって出現するが、クサイチゴ、クワ属などは短期間にしか出現しなかった。
 東京郊外の里山的環境のタヌキの食性ではヒサカキやジャノヒゲのように森林の内部に生える植物の果実も重要だが、明るい場所に生えるヤマグワやサルナシなどの果実もよく利用される。これに対して、皇居のタヌキの食性では森林の樹木や低木が主体を占めていた。このことが皇居のタヌキの食性の最大の特徴だと思われる。ただし、このことは2008年の論文でも指摘されていた。
 この論文で重要なのは5年間調べてもタヌキの食性にあまり違いがなかったことが明らかになったことである。私たちは長野県黒姫のアファンの森や仙台の海岸のタヌキの糞を3年ほど調べているが、年によってかなりの違いがある。そもそもタヌキの食性は場所によっても、季節によっても、年によっても大きく違い、その柔軟性こそがタヌキの特性といえる。東京のような大都市の中にでも生き延びていること自体が、タヌキが状況に応じて臨機応変に生活様式を変えることができることを反映している。そのタヌキの食性が5年間安定していたことの意味はどういうことであろうか。
 私は皇居には行ったことがないが、写真集などをみると鬱蒼とした森林があるようである。明治神宮には何度か行ったが、高いクスノキやカシ類が覆う鬱蒼とした林なので、皇居の林もそれに近いのだと思う。タヌキは里山によくいる動物だが、里山の林は雑木林や人工林である。人工林は暗くてタヌキの食べ物になるようなものもあまりないが、雑木林は食べられる実のなる低木やつる植物も多く、昆虫なども豊富である。また雑木林は季節によって大きく様相が変化し、生える植物や昆虫なども変化し、年によっても大きく変化する。タヌキはそういう環境で生き延びてきた動物なのである。「狸」という字は日本でタヌキを指す漢字だが、文字通り「けものへんに里」、その特性をよくとらえている。
 ところが皇居では5年間、基本的にはムクノキ、エノキ、タブノキなどの森林の植物の種子が毎年同じように出続けた。これはタヌキの食性としてはユニークなことといってよい。この事実から、この論文ではタヌキの食性の安定性は、皇居の森林が安定した食物供給ができるからだと締めくくっている。つまり、タヌキの食性解明を目的にしているが、その結果を生息地との関係性において捉え、動物の生活が環境の影響を受けることを、皇居の森のもつ特徴との関連で示したものとなっている。
 ところで、私が感銘を受けたのは、論文の最後に添えられた付表である。そこには縦に植物の名前、横に糞を採集した日付がずらりとならび、一番下に「同定不能」としてその種子数もあげてある。これが書いてあるおかげで、全体で何個の種子が出て、そのうちどれだけが識別できたかがわかる。それは「要するに何がわかったか」には現れて来ないことだが、同じ研究をしている我々には、いわば論文の質をうかがう重要な情報となる。それに、この表には回収をしなかった日はグレーにしてある。結果に関する情報としては、回収日だけで十分なのだから、回収しなかった日が明示されるのはあまりないことだ。それを全部示すことで、5年間にどれだけの日数に採集しなかったかが一目でわかる。これを見て、実際に糞の採集をした私は、残りのこれほど多くの日に採集されたのかと圧倒されるような思いを抱いた。この表を掲載したのは共同研究者の意向なのか陛下の意向なのか測りかねるが、私には陛下の誠実なお人柄が反映されているように思えた。

 以上が私の解釈を添えながらの論文の紹介である。これを読んで私が感じたことはすでにいくつか書いたが、この論文から直接読み取れる生物学的成果を離れて、もう少し書いてみたいことがある。
 皇居はもともと江戸城であり、明治の近代化によって日本の首都になった東京に天皇家がお住みになることになり、そのお住まいとしてここが選ばれた。東京の街は関東大震災や太平洋戦争の大空襲で壊滅的な被害を受けた。しかし、その度に不死鳥のように蘇った。もっとも蘇ったというのは人の目から見たことで、戦後の復興は、失われた家屋の再建や、バラックをビルに建て替えることであると同時に、森林や田畑を宅地やビル街に変えることでもあった。それは人口を増やし、住民の生活の利便性をあげることだったが、野生動物にとっては住処を奪われることだった。シカやイノシシは江戸時代の末にはいなくなったと思われるが、キツネは戦後もかなり後までいたし、イノシシも郊外にはいたはずである。しかし1964年のオリンピックのあと、キツネはいなくなり、ひとりタヌキだけが生き延びた(もっとも最近ではハクビシンやアライグマもすむようになったが、これらは外来種である)。そう考えると、タヌキは東京の発展の中で例外的に生き延びた日本の野生動物ということができるだろう。その末裔が幾多の歴史的出来事を見てきた皇居に生き延びているということがこの研究の背景にある。
 皇居の森という東京に残された貴重な森林の価値を考えて研究者が調査をするというのはありえることで、実際、皇居の動植物の調査がおこなわれた。これにより皇居にタヌキが生活していることが確認され、そのことがこの研究の契機となったようだ。私は、ここで重要なのは「皇居の住人」である天皇陛下が調査地の提供をされただけではなく、自らが主体となって調査をされたことにあると思う。お忙しいご公務、とくに東日本大震災のあとは、ご高齢を顧みず被災者を励ます活動をされながらのことなのだから、タヌキの調査は誰かに任せてもよかったはずであるが、そうはなさらなかった。しかもバードウォッチングなど、よくある自然愛好者のするような調査ではなく、タヌキの糞を採集して分析するという、ふつうの人なら敬遠するような調査を進んでおこなわれたのである。私にはそれがどのくらい大変なことなのか、想像すらできない。たくさんのタヌキの糞を採集して分析した者としていえば、強烈な匂いのする糞を拾うのも、水洗するのも、とても忍耐力と根気のいることである。それはやった者でなければわからない。私のように並外れて動植物が好きで、大学をリタイアして時間のある者でさえ、ときにうんざりし、ときに「明日でもいいか」と棚上げにしがちな作業である。それだけに、これをお忙しい日々の中で5年間も継続された陛下に、大いなる敬意と、強い共感を覚えないではいられない。世界にはいろいろなロイヤルファミリーがあり、能力や人徳で慈善事業活動をする人や、才能があって芸術やスポーツに長けた人もおられるに違いない。生物学に詳しい人がおられることはイギリス王室などの伝統として知られている。しかし自らが野生動物の糞を拾って顕微鏡を覗く人はいないに違いない。
 冒頭にふれたように、生物学は素朴な博物誌の時代を経て、厳密な実証性と高度な機器を使う精緻なものになった。また論理性の展開により、個々の種を見るのではなく大きい系を把握する視点ももたらされた。しかし、どのように形を変えてもその根源にあるのは対象を知りたいという好奇心にあることは変わることはない。とくに自分が住む場所の地形や鉱物や動植物を知りたいというのはわれわれの本能的な欲求ではないだろうか。しかし、そのことを私たちは現実の生活の中で置き忘れがちである。そのことを、天皇陛下は皇居のタヌキの糞を分析するという直球勝負で遂行された。
 共著であるこの論文の執筆過程を私は知らないが、かなりの部分を専門家がお手伝いしたことは想像される。しかし筆頭著者として最終的な責任は陛下が持たれるわけであり、最終原稿を読まれて、これは書かない、これを追加してほしいと言われることはあったに違いない。科学論文としてできあがった序に何の不足もないが、願わくば、この研究をどういうお気持ちで始められ、続けられたかを聞けたらどんなにかすばらしいことだろうと思った。
 冒頭にこの論文の価値や意義を問う声があることを書いた。それはひとつには「役に立つ研究」という価値観から発せられるものであろう。あるいは類稀れなものは価値があるが、ありふれたものは価値が小さいという発想によるものであろう。だが、タヌキの糞分析はそのどちらでもない。狭い意味で世の中に役に立つわけではないし、珍しいものでもない。これを調べさせたのは、素朴な知的好奇心そのものである。同じことをしている私は、タヌキを含むすべての命には等しく価値があり、それぞれが懸命に生きていることから感じる、敬意に似た思いがある。そういう考えからすれば、珍しいものは大切にするが、ありふれたものは顧みないという姿勢に批判的な気持ちがある。陛下にそういうお気持ちがあったかどうかは知る由もないが、私には、陛下もすべての生物に対する等しい価値を見出されているように思える。
 この論文について考えてきた。天皇陛下にとっては、原生自然の貴重な生物を研究されることも可能であろうが、そうではなく、日本列島にありふれたタヌキを選ばれた。それは生き物に対する博愛的な姿勢によるものであろう。そしてそれを正確に長期的に分析するという科学的姿勢で遂行され、論文を完成された。翻って、今の日本社会は経済を最優先し、効率こそが重要であるとし、しばしば利己的になり、自分に有利なものを優先し、そうでないものを軽んずる。この論文はすべての点でこれらとは対極的なものである。もし、そのことの意味を考え、この社会の在り方について立ち止まって考える契機になるとすれば、これほど「役に立つ」ことはないだろう。私にはこの論文には、そういう広く、深い意味があるように思える。
 さらに付け加えれば、私はどうしても裕仁昭和天皇のことを思ってしまう。裕仁天皇も生き物がお好きだった。しかし昭和という時代はこの国が戦争に突き進んだ時代であり、裕仁天皇がタヌキの糞をお調べになることを許さない時代だった。そのことを思えば、人の運命を思わずにはいられない。明仁陛下は類いまれな純粋さで自分の求める生き物への好奇心を持ち続けられ、ご高齢になられても、なおそれを実行された。それは明仁陛下であるからこそ成し得たことであるに違いないが、しかし、平和な70余年がなければ、実現されなかったことでもあると思う。この論文に接して、そういうことも思った。


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プロフィール

2016-05-01 20:25:36 | プロフィール
高槻成紀(たかつきせいき)

1949年鳥取県出身。1978年東北大学大学院理学研究科修了、理学博士。東北大学助手、東京大学助教授(1994-2007)、教授(2007)、麻布大学教授(2007-2015)を歴任。現在は麻布大学いのちの博物館上席学芸員。専攻は野生動物保全生態学。ニホンジカの生態学研究を長く続け、シカと植物群落の関係を解明してきた。最近では里山の動物、都市緑地の動物なども調べている、一方、スリランカのアジアゾウ、モンゴルのモウコガゼル、タヒ(野生馬)、モンゴル草原の生物多様性などの研究もした。著書に「北に生きるシカたち」(どうぶつ社)、「野生動物と共存できるか」「動物を守りたい君へ」(岩波ジュニア新書)、「シカの生態誌」(東大出版会)、「唱歌「ふるさと」の生態学(ヤマケイ新書)」、「タヌキ学入門」などがある。


このブログで研究のことを少しずつ紹介していきます。
ブログの内容は以下のとおりで、右下にある「カテゴリー」に対応します。
研究の概要:おもに時間経過的に内容を紹介します。
研究内容の紹介:動物の種類や地域に分けて内容を説明します。
業績:論文、単行本、報告などカテゴリーごとにリストします。


2016年1月1日
コメント (14)
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2015年4月より

2016-05-01 20:24:51 | 最終講義
 2015年3月で麻布大学獣医学部教授を退任しました。4月からはひきつづき麻布大学において「麻布大学いのちの博物館」運営のお手伝いをしています。またC.W.ニコルのアファンの森財団の「生きものしらべ室」でアファンの森の動植物の調査と教育活動をします。
 時間がとれるようになったので、執筆活動、自然観察に時間を使いたいと思います。講演、野外動植物観察の指導など声をかけていただければご協力します。
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「動物のくらし」

2016-04-01 20:26:42 | 私の著作
私の気に入ったページを紹介します。


私は全巻のなかでこの絵が一番すばらしいと思います。ちょっと怖いくらいリアリティがあります。


これは私が担当したシカの項の最後で、雪の中でやせたシカのようすが無彩色の中にみごとに描かれています。


シジュウカラの巣のようすですが、描写の技術としても最高レベルにあると思います。






タヌキについてはその生活の一年を、その特性とともに紹介しましたが、果実を食べ、種子散布を¥の役割をしていることを説明しました。


ひとつひねりました。タヌキの本にタヌキのないページを作りました。足跡だけを描くことで想像力をかきたてる効果を狙いました。


これはモグラから見た(モグラは目が見えないのですが)地上の世界の想像図です




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研究6 野生動物と人間の関係(制作中)

2016-01-01 08:20:52 | 研究3 野生動物の人間の関係
人間活動のあおりをうけて減少し、絶滅に瀕している動物がいるかと思えば、増えすぎて農林業に被害を及ぼして問題を起こしている動物、また外来種が日本の生態系に悪影響をおよぼすなど、人間と野生動物とのあいだにさまざまな問題がある。こうした問題にも取り組んでいる。

ロードキル

 麻布大学は都心と山地の中間に位置し、市街地と緑地が混じり合った状態にある。こういう場所は野生動物の自動車事故(ロードキル)が多い。清掃局に回収される動物を調べたらタヌキがもっとも多く、ハクビシン、アナグマなどがこれに次いだ。緑地の程度、事故数、町田市における過去の事故死の数と分布などをもとに、ロードキルの発生パターンを類推した(立脇隆文との共同研究)。

里山の生物多様性

 麻布大学の近くに図師・小野路歴史環境保全地域があり、よい里山環境が残されている。ここでいくつかの調査をおこなっている。
 ことなる4つの群落をとりあげて、自動撮影カメラによる哺乳類の生息状況と、昆虫落下トラップ(プラスチックコップを地面に埋め、底に餌を入れたもの)による地上徘徊性甲虫群集を比較した。哺乳類は群落による違いが小さかったが、甲虫(ゴミムシやオサムシ)は群落ごとに大きく異なった。このことは里山に配置するさまざまな群落のもつ意味が動物によってもつ違い、群落と動物の複合の単位制がスケールによって違うことを示している(伊澤整、倉田直幸との共同研究)。

里山にすむ2種のカエルの食性比較

 町田里山は丘陵地にあり、尾根から斜面には雑木林があり、谷戸には田圃がある。ここには数種のカエルがすんでいるが、水田にはトウキョウダルマガエルが、畦から林縁にかけてはヤマアカガエルが多い。その食性を調べたところ、生息地を反映して、トウキョウダルマガエルは水環境の小動物を、ヤマアカガエルは林にいる土壌生物を食べるという違いがあったが、全体としては共通性が大きかった。畦などの昆虫や小動物が豊富な場所の食物が重要であることがわった(八木愛との共同研究)。

玉川上水の哺乳類

 玉川上水は江戸時代に江戸の水資源確保のために作られた運河であるが、水道の普及によって一時水が流れなくなった。現在は羽村から小平までに水が復活し、それ以降は少量の水が流れている。市街地に細いながら連続した緑地があることが哺乳類の生息を可能にしている可能性がある。そこで自動撮影カメラで調べたところ、タヌキとハクビシンが生息していることがわかった。ただし予測していた「西高東低」傾向はなかった。これは西側ほど上水沿いの下草刈りをするが、小平以下では薮が多いためと考えられた。しかし上水沿いは周囲の孤立緑地よりは豊富であった。このことは緑地の連続性が哺乳類の生息に需要であることを示唆する(多田美咲との共同研究)。

神奈川県のサルの群落選択:加害群と自然群の比較
 神奈川県の宮ヶ瀬湖のあたりに住むサルのうち農地に依存的な「加害群」と依存的でない「自然群」を電波発信器による位置特定により群落選択の季節変化をみたところ、加害群はたしかに農地をよく利用し、自然群は落葉広葉樹をよく利用した。自然群からの「変化」を「本来のサルの生活を捻じ曲げたもの」と考え解析した。(海老原寛との共同研究)
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研究5 モンゴル(製作中)

2016-01-01 07:20:35 | 研究2 モンゴル
モウコガゼルの季節移動

 モウコガゼルはかつてはモンゴル全体から中国西部にかけて広く分布していたが、現在では狩猟のためにほぼモンゴルだけに限定され、モンゴル内でも東部などに残っているだけになった。このガゼルは数百頭もの大群をなして突然表れたり消えたりすることが知られていたが、その移動ルートは不明であった。そこでガゼルを生け捕りにして電波発信器をつけ、衛星で捕捉する方法で移動ルートを解明した。夏と冬で300キロもの距離を移動することがわかった。またロシアと中国を結ぶ鉄道によって移動が阻まれていることもわかった(伊藤健彦らとの共同研究)。論文95, 97, 102, 119

モウコガゼルの食性

 モウコガゼルは体重30キロほどの小型有蹄類であり、移動性が大きい。生息地は典型的なイネ科草原であるが、ガゼルはそのサイズからして、典型的なグレーザーではありえない。その中でできるかぎり良質な双子葉草本を食べていた(姜との共同研究)。論文62, 81, 82。ガゼルは家畜と草原を共有する場合もある。家畜にはウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジなどがいるが、体の大きさや消化生理からすると、その食性をガゼルと比較すると、ウマは大きく違い、ウシはやや似ており、ヤギ、ヒツジは似ていると予測された。実際に砂漠、乾燥草原、典型草原で比較してみると、ガゼルはどこでもニラの仲間と双子葉草本をよく食べ、安定していたが、ウマとウシは場所の植物を反映して違いが大きかった。ヤギ、ヒツジは牧夫が管理するために場所ごとの植物を反映しておらず、ガゼルとの共通性が大きかった。(カンポスアルセイス、吉原佑との共同研究)論文90, 125

タヒ(野生馬)とアカシカの資源利用比較

 タヒはモウコノウマとも呼ばれ、1960年代にモンゴルで絶滅した。しかしヨーロッパの動物園にいた個体が1990年代にモンゴルに「里帰り」した。フスタイ国立公園では順調に個体数が回復しているが、その反面アカシカと資源の利用で問題がある可能性が生じて来た。そこでタヒとアカシカの資源利用を比較したところ、タヒは草原をアカシカは森林をよく利用すること、食物としてはタヒはほとんどイネ科を、アカシカはイネ科のほかに双子葉草本をかなり利用することがわかった。ただしこれは春と夏の結果であり、それ以外の季節は今後分析する予定である。(大津綾乃との共同研究)

オオカミとキツネ類の食性比較

 フスタイ国立公園にはオオカミ、キツネ類(アカギツネ、コサックギツネ)、アナグマ、オオヤマネコなどの肉食獣がいて「肉食ギルド」を形成している。このうちオオカミとキツネ類の食性を糞分析によって解明した。オオカミは一年中哺乳類を中心に食べており、キツネ類は夏は昆虫、秋は果実、冬は果実と哺乳類をおもに食べていた。食べられていた哺乳類は、オオカミではヤギ、ヒツジを中心に中大型が多かったが、キツネ類では齧歯類が多かった。(藤本彩乃との共同研究)

シベリアマーモットによる生態系エンジニアリングと間接効果

 モンゴルではマーモットが食用とされてきたが、最近減少したため禁猟となっている。禁猟の目的は資源確保にあるが、私たちは生物多様性の観点から保全が必要だと考えた。マーモッとは地下のトンネルに暮らすため、出入り口にマウンドを作る。マウンドはイネ科草原に異質性をもたらし、そこにはしばしば双子葉草本が多くなる。こういう現象を「生態系エンジニアリング」という。その多くの植物は虫媒花であり、ハチ、アブ、チョウなどが引きつけられてくる。こうして単調なイネ科草原に異質で生物多様性の高い「ホットスポット」が作られていることがわかった。(佐藤雅俊との共同研究)


「ナリン」の意義の生態学的説明

 モンゴル草原は家畜が放牧されてきたという意味で自然草原ではなく半自然草原といえる。しかし植物を品種改良するなどはしておらず、「持続的利用」をしてきた。その放牧はゲルを移動させて季節的に場所をかえる「遊牧」であるが、放牧圧が強くなると草丈が低くなる。こういう場所のイネ科を「ナリン・ウブス」(細い草)といい、牧民はこういう草原をよい状態だと評価する。「ナリン」を調べてみるとバイオマスが小さいが季節を通じての生産量は多く、またタンパク質含有率も高く、一見して「貧弱」にみえるが、家畜の牧養力は高いことが示され、牧民の経験的評価には生態学的な妥当性があることが示された。(柿沼薫との共同研究)論文108

遊牧の意義の生態学的説明

 モンゴルでは1990年代の耐性変化後市場経済が導入され、人口増加、家畜頭数増加、定着化が進んでいる。その結果、遊牧が不活発となり、草原が荒廃する傾向がある。遊牧を土地利用効率の低い「遅れた」農業形態だとする見解があるが、私たちは遊牧のもつプラスの意義を科学的に示したいと考えている。そこでヤギとヒツジを一群は定着的に、一群は遊牧させて、体重変化を調べたところ、ヤギでは一年目では違いがなかったが、翌年、定着群は軽くなった。ヒツジでは実験開始の初冬から定着群が大幅に軽くなり、翌年も軽いままであった。したがって遊牧は家畜の体重を増加させるのに有効であることが示された。(森永由紀との共同研究)

過放牧が送粉系におよぼす影響

 放牧の定着化が草原の劣化を起こしているが、これは畜産生産力の低下という意味で懸念されている。しかし私たちはこれを生物多様性の劣化という視点から調べてみた。モンゴル北部のブルガンで、放牧圧に応じて軽牧区、中牧区、重牧区を選び、群落と訪花昆虫を調べたところ、軽牧では花の種類、数、昆虫の数が多く、複雑な花形の「スペシャリスト」花が多かったが、中牧では現象し、重牧ではきわめて貧弱になった。また重牧では皿状のさまざまな昆虫が訪問できる「ジェネラリスト」花しか生育していなかった。このように定着にともなう群落変化は草地生産だけでなく、生育する植物の多様性を貧化させ、昆虫との結びつきを分断するという意味で問題であることを指摘した。(吉原、佐藤との共同研究)論文126

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研究2 調査法など

2016-01-01 04:19:31 | 研究2 調査法
研究にとって技術や方法はきわめて重要です。直接使う方法について点検したり、改良したりしています。

調査法など
食性分析にはポイント枠法が便利
 動物の食性分析にはいろいろな方法があるが、量的評価には体積、重量などが用いられてきた。しかし精度や所要時間でいえばポイント枠法が一番すぐれていることをヒグマの例で示した。
Sato, Y., T. Mano and S. Takatsuki. 2000.
Applicability of the point-frame method for quantitative evaluation of bear diet.
Wildlife Society Bulletin, 28: 311-316.

ポイント法と頻度法
 サンプルが多数ある場合はポイント法でも頻度法でも重要なポイントは読み取れる。ポイント法は頻度にも使え、時間がかからない利点があり、頻度法では量的評価に問題がある。大量のサンプルがあれば、両方の情報から安定的に重要である食物、頻度は高いが労的には少ない食物、一時期にしか出ないがその時期には量的にも多く食べられる食物などの傾向が読み取れる。
Takatsuki, S., M. Hirasawa and E. Kanda. 2007.
A comparison of the point-frame method with the frequency method in fecal analysis of an omnivorous mammal, the raccoon dog. Mammal Study, 32: 1-5.

バイオマス指数の検討
 植物量は刈り取って重さを測定するのが最も正確であるが、非破壊的に継続調査する場合や、重量ほど正確でなくてもよく、大量のプロットを調査する場合などは簡便な方法が必要となる。そこで被度と高さの積によって「バイオマス指数」を求め、重量との関係を調べたところ、ほぼ満足にいく精度で推定できることがわかった。
Takatsuki, S. and M. Sato. 2013.
Biomass index for the steppe plants of northern Mongolia.
Mammal Study, 38: 131-133.
金華山でシカの食性を定量的に評価したくて、糞分析を採用することにしましたが、そのためにシカに既知量の飼料を与えて糞を分析する実験をしました。
Takatsuki, S. 1978. Precision of fecal analysis: a feeding experiment with penned sika deer. Journal of Mammalogical Society of Japan, 7: 167-180.

糞分析も胃内容物分析もポイント枠法という方法を採用しますが、これは食物の投影面積を評価するものです。ヒグマの胃内容物でこの方法の確認をしました(佐藤らとの共同研究)。
Sato, Y., T. Mano and S. Takatsuki. 2000. Applicability of the point-frame method for quantitative evaluation of bear diet. Wildlife Society Bulletin, 28: 311-316.

タヌキの糞分析の結果、頻度法とポイント枠法の関係について検討しました(神田らとの共同研究)。
Takatsuki, S., M. Hirasawa and E. Kanda. 2007. A comparison of the point-frame method with the frequency method in fecal analysis of an omnivorous mammal, the raccoon dog. Mammal Study, 32: 1-5.

日本の中型食肉目の食性分析は頻度法が使われてきたのですが、頻度法による評価は問題があります。このことを総説しました。
高槻成紀. 2011. ポイント枠法の評価:コメント 哺乳類科学,51: 297-303.

タヌキとハクビシンの胃内容物分析について、カウント数、カテゴリー暴露数、組成を知るための十分数、所要時間などについて検討し、200ポイントを数えれば十分であることを示しました(立脇との共同研究)。
高槻成紀1・立脇隆文. 2012. 雑食性哺乳類の食性分析のためのポイント枠法の評価:中型食肉目の事例. 哺乳類科学, 印刷中

シカの頭数を知ることは重要ですが、「動くもの」の数を知るのはむずかしいことです。そのため、間接法として糞粒あるいは糞塊数を数える方法が工夫されています。その基礎として、仙台の八木山動物園で飼育下のシカで1日あたりの排糞数、回数を調べました。同時にカモシカとの比較をしました。この結果はその後の糞塊調査によく引用されます(鹿股らとの共同研究)。
高槻成紀・鹿股幸喜・鈴木和男.1981.ニホンジカとニホンカモシカの排糞量・回数. 日本生態学会誌,31:435-439.

金華山では密度がわかっているので、それと糞粒密度がよい対応をすることを示しました。
高槻成紀.1991. シカ密度既知の場所における糞粒法の適用例-ハビタット利用推定法の可能性-. 哺乳類科学,30:191-195.
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