高槻成紀のホームページ

研究を紹介します。

もくじ

2016-05-22 20:24:27 | もくじ
プロフィール

2015年4月よりの活動
最近の動きnew!
私の著書(工事中)new!
最終講義
退職記念文集「つながり」
唱歌「故郷」をめぐる議論


最近の論文など
研究概要
 研究1.1 シカの食性関係
 研究1.2 シカと植物
 研究1.3 シカの個体群学
 研究1.4 シカの生態・保全
 研究2 調査法など
 研究3.1 その他の動物(国内)(制作中)
 研究3.2 その他の動物(海外)(制作中)
 研究4 アファンの森の生物調べ(制作中)
 研究5 モンゴル(制作中)
 研究6 野生動物と人間の関係

業績
 論文リスト
 書籍リスト
 総説リスト
 書評リスト
 意見リスト

エッセー
 どちらを向いているか:小保方事件を思う

2013年の記録
2012年の記録 6−12月
2012年の記録 1−5月
2011年の記録
コメント (3)
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プロフィール

2016-05-01 20:25:36 | プロフィール
高槻成紀(たかつきせいき)

1978年東北大学大学院理学研究科修了、理学博士。東北大学助手、東京大学助教授(1994-2007)、教授(2007)、麻布大学教授(2007-2015)を歴任。専攻は野生動物保全生態学。ニホンジカの生態学研究を長く続け、シカと植物群落の関係を解明してきた。カモシカ、ツキノワグマ、ヒグマなどにも取り組み、最近では里山の動物、都市緑地の動物なども調べている、一方、スリランカのアジアゾウ、モンゴルのモウコガゼル、タヒ(野生馬)、モンゴル草原の生物多様性などの研究も進めている。著書に「北に生きるシカたち」(どうぶつ社)、「歯から読みとるシカの一生」(岩波書店)、「野生動物と共存できるか」「動物を守りたい君へ」(岩波ジュニア新書)、「シカの生態誌」(東大出版会)、「唱歌「ふるさと」の生態学(ヤマケイ新書)」などがある。


このブログで研究のことを少しずつ紹介していきます。
ブログの内容は以下のとおりで、右下にある「カテゴリー」に対応します。
研究の概要:おもに時間経過的に内容を紹介します。
研究内容の紹介:動物の種類や地域に分けて内容を説明します。
教育:大学における教育や展示などを紹介します。
業績:論文、単行本、報告などカテゴリーごとにリストします。
エッセー


2014年1月1日
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2015年4月より

2016-05-01 20:24:51 | 最終講義
 2015年3月で麻布大学獣医学部教授を退任しました。4月からはひきつづき麻布大学において「麻布大学いのちの博物館」運営のお手伝いをしています。またC.W.ニコルのアファンの森財団の「生きものしらべ室」でアファンの森の動植物の調査と教育活動をします。
 時間がとれるようになったので、執筆活動、自然観察に時間を使いたいと思います。講演、野外動植物観察の指導など声をかけていただければご協力します。
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「動物のくらし」

2016-04-01 20:26:42 | 私の著作
私の気に入ったページを紹介します。


私は全巻のなかでこの絵が一番すばらしいと思います。ちょっと怖いくらいリアリティがあります。


これは私が担当したシカの項の最後で、雪の中でやせたシカのようすが無彩色の中にみごとに描かれています。


シジュウカラの巣のようすですが、描写の技術としても最高レベルにあると思います。






タヌキについてはその生活の一年を、その特性とともに紹介しましたが、果実を食べ、種子散布を¥の役割をしていることを説明しました。


ひとつひねりました。タヌキの本にタヌキのないページを作りました。足跡だけを描くことで想像力をかきたてる効果を狙いました。


これはモグラから見た(モグラは目が見えないのですが)地上の世界の想像図です。




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最近の動き

2016-04-01 20:26:10 | 最近の動き

2016.5.20
このたび玉川大学出版部から「動物のくらし」という本がでました。これは「玉川百科 こども博物誌」というシリーズの1冊で、その最初のものとして出版されました。A4版で厚さ2cmくらいのハードカバーです。旧友の浅野文彦さんのすばらしいイラストで、これまで日本のこの種の本ではないできばえになったと思います。小学校低学年向けということで本作りの面ではむずかしさもありましたが、内容は充実しており、大人が読んでも楽しめるものになりました。関心のある方はぜひ一度ご覧になってください。


出版案内

少し紹介します。ここをクリック

2016.5.15
玉川上水で観察会をしました。


(棚橋早苗さん撮影)

2016.4.25
麻布大学いのちの博物館に渕野辺高校の2年生が訪問し、見学しました。私が概論を解説し、その後、展示をみてもらいました。



2016.4.18
武蔵野美術大学で「玉川上水を探検する」というシリーズの「玉川上水のタヌキを調べる」という講演をしました。会場には地元の市民の方も大勢参加されました。玉川上水で調べたタヌキのこと、私たちにとってタヌキとはどういう存在なのかという話をしました。



2016.4.10
玉川上水の4月の観察会をしました。



2016.4.9
卒業生4人が玉川上水を訪問してくれて、いっしょに散策しました。とても楽しい時間でした。



2016.3.26
国立市の公民館で「動物の言い分」という講演をしました。

2016.3.21
武蔵野美術大学の仲間と玉川上水の観察会をしました。アマナ、バイモ、ミミガタテンナンショウなどがあり、皆さん熱心に観察していました。








2016.3.19
下北沢のB&Bという本やさんでタヌキのトークショーをしました。20人くらいでしょうか、お客さんが来ていました。自分からいうのもなんですが、タヌキのウンチの話を有料で聞きにくる人なんかいるのかなと思っていましたが、いました。世の中、いろいろな人がいるものです。司会の嶋さんという人が上手に流れを作ってくださったので、2時間近くいろいろな話ができました。頼まれてタヌキの糞をアクリスケースに入れて持参、皆さんに回覧しました(これも思えば不思議なことです)。それからタヌキ、アナグマ、シカ、ニホンザルの頭骨と、シカのいろいろな骨も紹介し、さわってもらったりしました。全体になごやかで、楽しい雰囲気で、質問もありました。

2016.3.12

今朝の朝日新聞の「be」(赤版)の「ののちゃんのDo科学」は動物の骨粗鬆症のことが取り上げられています。この記事の取材を受けて、情報や写真を提供しました。博物館の標本が役立ってうれしかったです。



2016.3.2
「タヌキ学入門」関連で仙台の河北新報が記事を書いてくれました。私のところにタヌキの糞を送ってくれている平泉さんが取材を受けました。



2016.2.22
3月19日に下北沢の本屋さんでタヌキのお話をすることになりました。

本屋でのトーク・イベント


2016.2.11
10日の深夜、TBSラジオ「荻上チキ・セッション22」のゲストとして「タヌキ学入門」の話をしました。事前にリクエスト曲を3つと聞いていたので、竹内まりやの「元気を出して」、エリッククラプトンの「Tears in Heaven」、それに小田和正の「風のように」をあげました。ところが、話がもりあがって、最後に楽しみにしていた小田の曲は紹介されず、残念でした。でも知らないことをするというのはおもしろいもので、楽しみました。
YouTubeにアップされているので、YouTubeを出して「タヌキ学入門」とすると聞けます。

2016.1.15
かわさき市民アカデミーで「シカ問題を考える」と題して同名の新書の解説をしました。

2015.12.28
朝日新聞の夕刊に「となりの野生動物」(ベレ出版)がとりあげられました。



また「シカ問題を考える」(ヤマケイ新書)はアマゾンの「環境問題」ジャンルで入り上げ一位になったそうです。



2015.12.25以下の本が1月6日に出版されます。
たぬき学入門−かちかち山から3.11まで』2016, 誠文堂新光社


 タヌキのポンタといえば愛らしいキャラクターですが、「かちかち山」に出てくるタヌキはおばあさんを騙した上に鍋にしておじいさんに食べさせるというひどいことをする動物と描かれています。この違いは何を意味しているのでしょうか。いずれにしてもタヌキはわれわれになじみの深い動物で、里山だけでなく大都会にでも生きています。私たちはタヌキの食性や種子散布について調べ、タヌキのおもしろさに気づきました。玉川上水という都市緑地での群落利用や東京近郊での交通事故の実態も調べましたし、東日本大震災で津波で全滅したはずの仙台の海岸に2年後にはもどってきたことの意味も考えました。こうした体験を通じて、タヌキと私たちがこれからどういう関係を築いていけばよいのかを考えてみました。この本を読むと分類学、形態学、生態学、動物と植物の関係、保全生態学などが学べるように工夫しました。

以下もくじです。
序章
1章 タヌキの基礎知識
2章 タヌキのイメージを考える
3章 タヌキの生態学
4章 東日本大震災とタヌキ
5章 タヌキと私たち
タヌキのQ & A

さらに興味のある人へ、以下は本文の最後の部分です。

 タヌキに関する情報をまとめてみて、タヌキという動物の存在は、我々日本人にとってなかなか大きいものだということことが改めて確認できた。同時にタヌキが時代、時代で違う動物になってきたこともわかった。もちろん動物学的な意味でのタヌキは不変であり、変わったのは我々のほうだ。憎き害獣とみた時代もあれば、人を化かすあやしい動物をみた時代もあり、平和な現代はかわいい動物とみるようになった。その意味で動物に抱くイメージそのものが、人間社会を投影しているといえる。
 タヌキの持ついくつかの性質があるから、現代の都市でも生息が可能になっている。トキやコウノトリの復活に一喜一憂し、ゴリラやホッキョクグマなどの絶滅を心配する私たちは、一方でタヌキを珍しくもないありふれた動物だとみなし、その将来のことを思うこともない。だが、私はそういう姿勢が、あれだけいたメダカを絶滅危惧種に追いやり、気づいたら雑木林がなくしてきたのだと思う。
 本書でながめてきたように、タヌキは実におもしろく、またすぐれた動物でもある。私は植物にしても動物にしても、貴重だから守るのではなく、ありふれたもの、身近なものの存在意義を考えて大切にするということのほうがよほど大切だと思う。それは災害があって初めて平凡な日常のありがたみがわかることと似ている。今ありふれていると思われているタヌキも決して安泰ということではない。その未来は我々がいかなる社会を作ろうとしているかにかかっている。私がこの本を書きながら到達した思いは、私たちはタヌキの生活を思いやる程度にはゆとりを持ちたいということであった。

2015.12.15
川崎市のかわさき市民アカデミーで「唱歌フルサトの生態学」という講義をしてきました。受講者は私より年配の人が過半数なので、がんこおやじの話が通じやすくてよかったです。一番反応があったのは、「1日どのくらい水をつかていると思いますか?」という質問をしたときでした。「5リットルくらい?」というのからはじまって、「飲むだけじゃないですよ」というと、「50リットル」という声。「実は世界平均が50リットル」といったら、「じゃあ100リットル」という声。「なんと320リットルなんですよ」というと「エーッ!!」というどよめき。「私はがんこおやじだから、ペットボトルの水は買いません。ああいう水商売にだまされてはいけません。」私は実際専門家に質問して確認しましたが、今の東京の水道水はペットボトルとまったく遜色のない水質だそうです。浄水技術が飛躍的によくなったのだそうです。そう説明してから、「日本は水が豊かな国なんですから、フランスの水を買うなどという馬鹿なことはやめましょう」というと、頷く人が多かったです。ギターを持参して、最後にみなさんと合唱しました。


2015.12.7
「シカ問題を考える− バランスを崩した自然の行方」(ヤマケイ新書)が出版されます。


http://www.yamakei.co.jp/products/2814510090.html

 最近、シカが増えており、野生動物管理あるいは自然の保全シーンでも重大な問題になっています。本書ではシカが増えると何が起きるのか、その何が問題なのか、そもそもシカはなぜ増えたのかといった問題を広い読者層に知ってもらうために書きました。そのために動物学的、植物学的、生態学的に重要な項目をできるだけ具体的に解説しました。シカの増加の背景には温暖化、森林伐採、オオカミの絶滅、ハンターの減少などさまざまな要因が考えられていますが、そのどれもシカの増加とはタイムラグがあり、うまく説明できません。こういう解析を通して、私は農山村の人口減少による土地管理など農業形態の変容がキーポイントになることに気づきました。そしてシカ問題の解決はこのことの解決なしにはありえないことを指摘しました。

2015.11.29
静岡にある日本平動物園に招かれて動物の話をしました。この動物園で「動物園博士」になった子供を含む人にお話をしてほしいということででかけました。自分の子供の頃のことをふくめ、動物に関心をもちつづけることの大切さを話しました。


2015.11.21

「となりの野生動物」が出版されました。9種の動物を紹介します。動物の解説をしながら、その動物に対して我々がもっているイメージがどこから来ているのかを考えるという試みをしました。



その上で、動物の言い分を語らせました。たとえば、アライグマ
「おれっちはペットじゃないからさ、イヌやネコみたいに人間にべったりはしないわけよ。そうだろ?野生動物ってのはそういうもんさ。いつまでも尻尾をふれっていわれても、そいつはできないね。そしたらさ、「もう、いらない」だと。ひどいもんだぜ、手放すってわけ。・・・。おれっちは、目の前にある環境でせいいっぱい生きるしかないんだ。遠慮なんかしていらんない。遠慮しろって言うくらいなら、はじめから日本なんかに連れてくるなってんだ。そうだろ?連れて来といて、増えちゃいかんとは道理が通らないだろうよ。こういうのを、なんだろ、ジゴウジトクとかいうんじゃないの?日本語、よくわかんないけどさ。」

あるいはサルは
「・・・人がおいしいものは俺たちにだっておいしいさ。だけど、人は、俺たちだけじゃなく、動物と見ればなんでも捕まえて、殺したりする。野獣とか猛獣とかいうけど、野蛮なのはどっちだい。・・・昔は絶対農家の周りには行かなかったけど、最近じゃあ、それもできるようになった。なんせ、人がぐっと少なくなったもの。それにたまに見かけても、じいさんかばあさんだ。ダッシュすればどうってことない、カボチャのひとつくらいはくすねて来らぁ。あんまり悪気はないんだけどさ、ばあさんだったら、ちょっと唸ってやりゃあ、怖がってビビるから、そのスキに逃げればなんってことないのよ。・・・でも言っとくけど、俺たちの性格が変わったわけでもなんでもないぜ。おいしいものがあれば探して、できるだけたくさん食べる。できるだけそうするってのは動物ならみんなやってることさ。ようするに人間のほうのワキが甘くなったってことよ。・・・」

この2つはちょっとガラが悪い。東北のクマさんは
「おらたちは体がデケえから、腹が減る。とくに秋は冬眠さそなえて腹がへってしょうがねえ。んだからドングリのなる林さ行って食えるだけ食う・・・うまい。・・・悪い奴がいて、おらたちを蜂蜜でおびき寄せて檻でつかまえることを考えた。おらたちは蜂蜜には目がねえから、だめだ。蜂蜜の匂いがしたらフラフラと檻さ入ってしまう・・・困る。昔は里山さ人がいっぱいいて、怖くて行けなかったんだと。んだども、今はあまり人がいねえし、藪がたくさんあるし、カキの実やカボチャなどが残されてっから、ついつい里山さ行くことになっちまうだ。とくに山さドングリのなんねえ年は、しかたなしに里さ降りる。そうすっと、無理もねえが、人は大騒ぎをするのさ。山狩りをしておらたちを撃つ・・・困る。」

おもしろいもので、そのつもりになって書くと、ことばが出てくるんですね。ま、そういう動物の側からみたら、人間ってなんとも理不尽なんじゃない?という本です。文章も楽しみましたが、イラストも楽しみました。


 こういうマジな図も


こういうユルいのもあります。



ご一読いただければ幸いです。ベレ出版です。







2015.9.29
「動物のいのちを考える」が出版されました。いまどき珍しい地味ともいえる表紙で、気に入っています。ぜひ手にしてみてください。下記の案内をみて注文いただくと、多少便宜をはかってくれるようです。



2015.8.1
文一出版から「シカの脅威と森の未来」という本が出ました。編集を手伝いました。シカの影響が日本列島を覆っていますが、私が研究を始めた40年前は予想もできないことでした。今では各地で深刻化し、植物研究者が調査地の継続に危機感を持つまでになりました。各地でさまざまな研究おおこなわれるようになり、柵を作って内外の植物を比較することもおこなわれています。そうした状況で、関係者がいま日本の森がシカによってどうなっているかをまとめて知ってもらいたいという思いでできたのがこの本です。私は編集をするとともに、「シカ学事始め」「シカという動物」「植物への影響」という3節と、前迫ゆりさんとの共著で「「シカ柵の有効性と限界」を書きました。前迫さんが「あとがき」に私のことをとりあげて「きびしい添削もされたが」と書いておられます。私にそのつもりはないのですが、学生でも大先生でも、腑に落ちないことは直言するようにしています。私は大学院生の頃に、のちにいっしょに英語のニホンジカの本を編集することになったD. R. McCulloughさんに論文原稿を読んでもらったことがあります。それは「真っ赤」になって返ってきました。日本では「けっこうな原稿でございます」と当たり障りのないことをいうほうが「礼儀正しい」とされますが、科学する精神からすればまちがっているといわなければなりません。そのとき以来、私はできるだけよいものにするために必要であれば、そうした「深謀遠慮」は捨てて、直言するようにしています。普段の私を知る人は当惑するようですが、気心が知れ、真意が理解されれば誤解はとけるものです。前迫さんは「あとがき」で、そのことばに続けて書いています。「それはこのテーマを真剣に考えておられるゆえんでもあると理解した」。ちょっと香辛料がききすぎたかもしれません。
 内容でいえば、北海道から屋久島まで、各地での実情が記述され、力作が多く、読み応えがあります。植物研究者が書いているというのもユニークです。興味のある方はご一読ください。




2015.7.13
「たくさんのふしぎ」というシリーズがあり、わがやの娘たちが小学生のとき読んでいたので、ときどき目にしていました。良心的な出版物だと感心していました。2年くらい前に、シカと植物のことで書いてほしいという話をもらい、シバとシカについて書きました。福音館はずいぶん時間をかけて本を作るようで、絵描きさんと編集の人が金華山まででかけたり、何度もなんども修正をしたりして、ようやくこの9月に出ることになりました。表紙は印象的なシカの顔、中ではわたしが「登場」します。何がわかったかというより、そうしてわかったかの過程を書いたような感じです。子供がお世話になったことへのお礼のような気持ちもあるし、昔から考えていた子供に生き物のことを伝える本を書きたいということが実現したよろこびもあります。2015.7.5
「シカの脅威と森の未来」という本の準備をしています。副題は「シカ柵による植生保全の有効性と限界」となっており、北海道から屋久島まで、全国各地で植生調査をしている研究者に執筆してもらい、前迫ゆりさんと私が編集しました。たぶん今月中に出ると思います。

2015.6.6 オオカミのシンポジウムがあり、聴きに行きました。アメリカ(イエローストーン)とドイツでの再導入成功例が紹介されました。主催者である日本オオカミ協会の発表では、日本でのオオカミの再導入についてのアンケート調査は10年くらいまえは「再導入したほうがよい」という意見は1割くらいだったのに、今では6割を超えるほどになったそうです。その「意識」の内容はどういうものなのか、たとえばシカが増えすぎて起きている問題解決のために必要だというのか、もともといたのだからもどしてやるのが責務だというのか、オオカミという魅力ある動物がいたほうがよいというのか、そのあたりは知りたいところです。会場からの自由な発言を受けると収拾がつかなくなるとの判断からか、それが許されませんでした。また会長の丸山先生は「日本の研究者は呼びたくない」とのことでした。その意図もわかりかねましたが、それでは明るい展望はもてないのではないかと思いました。


2015.6.4 神奈川県環境審議委員会

2115.6.1-2 アファンの森で調査と会議。この春卒業して白川郷で働いている望月さんがわざわざ来てくれて、楽しくアファンの餅を歩きました。

5月30日 今日は、東京都公園協会の「緑と水の市民カレッジ」で講演をしてきました。日比谷公園にある「カレッジ」で「保全生態学で読み解く唱歌<ふるさと>ーウサギはどこへいったのかー」という講座名でした。25人くらいの受講者がきておられました。私としては「ふるさと」の内容を実感を持って感じられた70歳以上の人を想定していたのですが、50歳を境にそれ以上と以下が半々くらいでした。「ふるさと」の何番が好きですかという質問には1番が半分くらい、次は3番で、2番は2、3人でした。内容はヤマケイ新書の内容をわかりやすくスライドで説明しましたが、時間が足りない感じでした。ウサギを見たことがあるという人が11人もおられて驚きました。実はもっとご高齢の方が集まって、私が話すというより、私のほうから昔の東京や、ひとりひとりの「ふるさと」のことを聞きたいと思っていたのですが、それは叶わず、もしそういう機会があれば、ぜひそうしたいと思いました。
 少しためらいがあったのですが、ギターを持参して、最後に皆さんといっしょに合唱しました。「恥ずかしがって歌ってくれないかも」というオーガナイザーの心配をよそに、皆さん楽しそうに歌ってくださいました。

2015.5.30 日比谷公園で「緑と水の市民カレッジ」があり、保全生態学で読み解く唱歌「ふるさと」ーウサギはどこへいったのかー」というテーマで講演をしました。

2015.5.24 明治大学でモンゴルの馬乳酒についての研究打ち合わせ会議がありました。
2015.5.21 日文教という出版社で私と樹木医の石井誠司さんの対談をしました。

2015.5.15-17 山梨県早川でシカの影響調査をし、研究室の親睦旅行に合流しました。

2015.4.30-5-4 金華山で調査をしました。

2015.4.26 「唱歌ふるさとの生態学」の書評(池内紀氏)が毎日新聞の「今週の本棚」欄にのりました。

2014.4.26 高尾の白山神社に植物の調査に行きました。

2015.4.24 アファンの森に調査に行きました。アズマイチゲやキクザキイチリンソウが溢れるように咲いていました。

2015.4.19 アースデーのニコルさんのサイトで対談しました。

2015.4.15 帝京科学大学で講義をしました。

2015.3.24 宮城県の牡鹿半島のシカの会議に出席しました。

2015.3.23 福島県でアドバイザー会議があり、イノシシの胃内容物分析の結果を報告しました。

2015.3.21 大正大学でアファン友の会があり、講演しました。

2015.3.17 アファンの森財団で今年度の調査報告会があり、岩田翠さんと望月亜佑子さんが発表しました。

2015.3.7 最終講義をおこないました。

2015.2.14 前田禎三先生を偲ぶ会に参列しました。前田先生とは鳥取県米子が同郷で、親しくしていただきました。

2015.2.1 乙女高原フォーラムで「シカが植物群落におよぼす影響:草原への影響は複雑」を講演しました。

2015.1.24 人の動物の関係学会関西支部主催の例会「野生動物から家畜への道」で発表しました。

2014.12.12
『唱歌「ふるさと」の生態学』の読後感想を紹介したいと思いますので、お寄せください。内容を「動植物」、「里山」、「社会」、「歌」、「その他」の5つに分けて紹介します。なお、場合によって一部省略することをご容赦ください。

2014.11.1
唱歌「ふるさと」の生態学〜ウサギはなぜいなくなったのか?>がヤマケイ新書として出版されることになりました。この本は、国民的な愛唱歌である「ふるさと」に「ウサギ追いしかの山」という歌詞があるのに、実際にウサギを見たことのある人がほとんどいない不思議をとりあげ、それが日本の里山の変貌によるものであることを生態学的視点から解き明かします。同じ視点で「小鮒釣りしかの川」から日本の水の問題、「山は青き」から日本の森林や林業の問題も解き明かします。こうした考察から、過去半世紀に起きた日本の社会の変貌とその意味を考えます。12月12日の発刊予定です。



あとがきより
 これまで私は生物学の本を書いてきたが、この本はそれだけではなく、音楽や社会のことにまで言及した。私はもちろん生き物は好きだが、歌や絵や子供も好きだ。ただ、生き物以外のことは私の私的な別物だと思ってきたが、本書の執筆の過程で、そうしたことが融け合うように反応するのを体験した。

 本書の出版が私の大学人としての最後の年に当たったというのも思えば不思議な気がする。私が退官の年まで無事に研究を続けることができたのは、ようやく独り立ちした頃から暖かく見守っていただいた東北大学時代の故飯泉茂先生、故菊地多賀夫先生、その後、東京大学、麻布大学で出会った多くの研究仲間、同僚のおかげであることを改めて思い、感謝でいっぱいである。学生諸君とは調査に分析に苦楽を分かち合うことができ、幸せな研究生活を過ごすことができた。そして私が少年の頃にもった生物学者になりたいという夢を支えてくれた両親、半生をともに歩んでくれた妻、知子、そして我が家に光とぬくもりをもたらしてくれた娘や孫たちにもお礼を言いたい。


2014.7.16
アファンの森の調査
 すっかり夏の装いで、間伐林もこんなに緑が濃くなりました。


ヒヨドリバナはとくにチョウに人気の鼻で、この日もヒョウモンチョウ類がたくさん旧蜜に来ていました。


 クルマバナは前にもみたことがありましたが、これほどまとまった群落は初めて見ました。これにもミドリヒョウモンが来ていました。


2014.6.25-26
伊豆半島でシカの影響調査
 各地でシカが増えて植生に強い影響を出しています。その程度を評価するためにいろいろ工夫されていますが、あまりに専門的で論文にはなってもふつうの人には採用しにくいものばかりです。今求められているのは、広い範囲でたくさんの調査がおこなわれることで、そのためには植物をある程度知っている人であれば可能な簡便な方法を確立することです。そういう考えでこれまでの経験を活かして8項目をチェックすればよいマニュアルを作ってみました。それをいくつかの場所で適用して、「行けそうだ」というところまで来たので、今年の夏はそのことを実証することに決めました。
 それで伊豆半島の天城山を中心に調査に行きました。天城山では、最初たいしたことないと思っていたのですが、道路を登るにつれ、はっきりとシカの影響がわかるようになり、ある高さを超えると、林の下はなめられたように植物が少なくなり、林縁にはシカの食べない植物だけが目立つようになりました。それどころか真っ昼間なのに道路脇でシカが草を食べている姿さえみました。


天城の万三郎と呼ばれる山の途中まで登りましたが、生えているのはアセビとコアジサイくらいでした。


そのほか土肥峠、達磨山、戸田峠などを経由し、修善寺を通って熱海のほうに抜けました。


人工林の多さにも驚きました。マニュアルに改良点もわかりました。

2014.6.7
文一総合出版という出版社があり、生物系の本を出しています。同好の人であれば「ハンドブック」シリーズの出版社といえばおわかりかと思います。そこが「このは」という雑誌を出しています。なかなか内容のある雑誌で着に入っています。
 この「このは」が骨の特集号を出すことになり、相談をもちかけられました。麻布大学には動物の骨の標本はたくさんあるので、撮影協力をし、解説文を書きました。カメラマンと編集者が来て、多少の荷物をもっていましたが、二人で運べる程度のものでした。標本室で撮影をはじめましたが、三脚にカメラをつけたのはいいんですが、白い骨だから黒いバックがよいと思いました。壁は灰色で、よくないので、暗幕をもってきていると思ったのですが、出て来たのは幅1mあまり、長さ2mくらいの黒布です。ネコの標本ならまにあいそうですが、ウシやウマもあるのでどうするのかと思っていたら、頭の部分の背後の布をおいてそこを写し、それから肩、腹、尻と動かして行きます。あとでゲラが送ってきたのをみたら、見事に合成されて真っ黒なバックに馬の骨がありました。
 それができて送ってきましたが、なかなかの出来でした。骨についてさまざまな記事があり、これまでにない本になったと思います。骨のことを知らない人、1200円です。内容は3000円くらいはあるので、ぜひ進化の産物としての骨の魅力を味わってみてください。






アファンの森に隣接する国有林でスギを間伐するようになりましたが、間伐材を出すのを重機を使わないでウマで搬出しています。岩手県からわざわざウマに来てもらっています。たくましいウマでした。この「馬搬」がいかに合理的で、森林にやさしいかを教えてもらいました。

間伐林は明るくなり、いろいろな植物が出てきましたが、たとえばこれはヤマブドウです。こういう動物に食べて運んでもらうベリーをつける植物が出て来るのに注目しています。

暗くて何も生えていないようにみえる人工林の土の中にはこういう動物散布の種子が眠っているのです。実際、タヌキのため糞場で観察すると、ミズキの実生がみられました。

動物たちが森林の動態に一役買っていることが垣間見えてきました。

2014.4.26
アファンの森の春の調査に行きました。以前、群落ごとに花と訪花昆虫の関係がどう違うかというテーマで調べたことがありますが、2011年の秋にとなりの国有林の人工林が間伐されたので、そこもルートに入れて調べることにしました。そのルートを決めて、初めてのデータとりをしました。

カタクリの群落があり、ちょうど見頃でした。

生き物好きの学生二人なので、鳥やヘビやトカゲをみつけて大喜びしていました。
 

2014.3.21
高尾にある多摩森林科学園はときどき行っていましたが、とても立派な林があるので、ここで調査をしたいと思うようになりました。それで新しく研究室に入った学生を誘って下見に行きました。立派なスダジイの木があったので、その前で記念撮影しました。



2014.3.13
アファンの森で、一年間の調査報告会がありました。植物、クモ、水生動物、鳥類などの報告に続けて、麻布大学の3年生の岩田さんが種子散布者としてのタヌキのこと、望月さんが人工林の間伐効果のことを話しました。それから4年生の小森君がカエルの微生息地選択、食性の話をしました。カエルの糞を調べたこと、その顕微鏡写真に聞く人から歓声が上がっていました。それから萩原さんがリスとネズミによるクルミの散布の話、笹尾さんがテンナンショウの受粉者の話をしてくれました。ニコルさんは発表内容も発表のしかたもすばらしかったと絶賛してくれました。



2014.3.9
アファン会員の集いがあり、ニコルさんと川崎さん、高槻がアファンの森の生き物について話をしました。川崎さんは私たちがアファンの森で調査をする前からおおに鳥類の調査をしてこれらたので、フクロウの餌について私たちが調べたことも紹介しました。そのほか糞虫などの働き、いまの4年生が調べているテンナンショウ、リスとクルミ、カエルの食性なども紹介しました。

2014.2.28-3.3
金華山でシカの調査をして来ました。



2014.1.26
乙女高原フォーラムがあり、テンの糞分析をしている足立高行さんのお話をきき、そのあとに研究室の加古菜甫子さんが卒論の内容を話してくれました。

2014.1.25
「Synapse」という科学を一般に広めようという活動をしているグループに招かれて、岩波ジュニア新書「動物を守りたい君へ」を呼んで来た人に集まってもらって、質問に答えるという集まりがありました。たいへんに知的刺激に満ちた集まりでした。
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私の著作

2015-12-10 22:28:06 | 私の著作

「動物のくらし」玉川大学出版部, 2016.5.20
「玉川百科 こども博物誌」というシリーズの1冊で、その最初のものとして出版されました。旧友の浅野文彦さんのすばらしいイラストで、これまで日本のこの種の本ではないできばえになったと思います。小学校低学年向けということで本作りの面ではむずかしさもありましたが、内容は充実しており、大人が読んでも楽しめるものになりました。関心のある方はぜひ一度ご覧になってください。


出版案内

少し紹介します。ここをクリック

たぬき学入門−かちかち山から3.11まで』2016, 誠文堂新光社


 タヌキのポンタといえば愛らしいキャラクターですが、「かちかち山」に出てくるタヌキはおばあさんを騙した上に鍋にしておじいさんに食べさせるというひどいことをする動物と描かれています。この違いは何を意味しているのでしょうか。いずれにしてもタヌキはわれわれになじみの深い動物で、里山だけでなく大都会にでも生きています。私たちはタヌキの食性や種子散布について調べ、タヌキのおもしろさに気づきました。玉川上水という都市緑地での群落利用や東京近郊での交通事故の実態も調べましたし、東日本大震災で津波で全滅したはずの仙台の海岸に2年後にはもどってきたことの意味も考えました。こうした体験を通じて、タヌキと私たちがこれからどういう関係を築いていけばよいのかを考えてみました。この本を読むと分類学、形態学、生態学、動物と植物の関係、保全生態学などが学べるように工夫しました。

以下もくじです。
序章
1章 タヌキの基礎知識
2章 タヌキのイメージを考える
3章 タヌキの生態学
4章 東日本大震災とタヌキ
5章 タヌキと私たち
タヌキのQ & A

以下は本文の最後の部分です。

タヌキに関する情報をまとめてみて、タヌキという動物の存在は、我々日本人にとってなかなか大きいものだということことが改めて確認できた。同時にタヌキが時代、時代で違う動物になってきたこともわかった。もちろん動物学的な意味でのタヌキは不変であり、変わったのは我々のほうだ。憎き害獣とみた時代もあれば、人を化かすあやしい動物をみた時代もあり、平和な現代はかわいい動物とみるようになった。その意味で動物に抱くイメージそのものが、人間社会を投影しているといえる。
 タヌキの持ついくつかの性質があるから、現代の都市でも生息が可能になっている。トキやコウノトリの復活に一喜一憂し、ゴリラやホッキョクグマなどの絶滅を心配する私たちは、一方でタヌキを珍しくもないありふれた動物だとみなし、その将来のことを思うこともない。だが、私はそういう姿勢が、あれだけいたメダカを絶滅危惧種に追いやり、気づいたら雑木林がなくしてきたのだと思う。
 本書でながめてきたように、タヌキは実におもしろく、またすぐれた動物でもある。私は植物にしても動物にしても、貴重だから守るのではなく、ありふれたもの、身近なものの存在意義を考えて大切にするということのほうがよほど大切だと思う。それは災害があって初めて平凡な日常のありがたみがわかることと似ている。今ありふれていると思われているタヌキも決して安泰ということではない。その未来は我々がいかなる社会を作ろうとしているかにかかっている。私がこの本を書きながら到達した思いは、私たちはタヌキの生活を思いやる程度にはゆとりを持ちたいということであった。

感想

シカ問題を考える』2015, ヤマケイ新書, 山と渓谷社


 最近、シカが増えており、野生動物管理あるいは自然の保全シーンでも重大な問題になっています。本書ではシカが増えると何が起きるのか、その何が問題なのか、そもそもシカはなぜ増えたのかといった問題を広い読者層に知ってもらうために書きました。そのために動物学的、植物学的、生態学的に重要な項目をできるだけ具体的に解説しました。シカの増加の背景には温暖化、森林伐採、オオカミの絶滅、ハンターの減少などさまざまな要因が考えられていますが、そのどれもシカの増加とはタイムラグがあり、うまく説明できません。こういう解析を通して、私は農山村の人口減少による土地管理など農業形態の変容がキーポイントになることに気づきました。そしてシカ問題の解決はこのことの解決なしにはありえないことを指摘しました。

感想


となりの野生動物』2015、ベレ出版

この本は少し挑戦的なことをしました。野生動物の解説を書いてほしいという申し出があったのですが、ただそれだけでは物足りないと思ったので、動物に対して我々がどういうイメージをもっているか、それはどこから来るのか、それが実像を見る目を曇らせてはいないかということを書きました。そして最後で動物たちの言い分を語らせることにしました。

朝日新聞 2015年12月28日 夕刊


感想

たくさんのふしぎ 食べられて生きる草の話』2015、福音館

「子供に動植物のすばらしさを伝えたい」という長年の思いの具体的な作品ができたと思っています。画家さんが実際に金華山まで行って取材をしてくれて感激しました。「子供だまし」という言葉は大嫌いです。子供のほうが透明な眼差しをもっているし、おもしろくなければ読んでくれないに違いない、子供だからこそ真剣に書かなければいけないと自分に言い聞かせながら書きました。
感想

『シカの脅威と森の未来―シカ柵による植生保全の有効性と限界』前迫ゆり・高槻成紀(編) 2015、文一出版

専門書です。充実した執筆陣による力作になりました。
感想

『唱歌「ふるさと」の生態学』2014、山と渓谷社

読後感想

ホネホネ博物館(このは特集)2014、文一出版

表紙のサキ(サルの1種)を含め、麻布大学の標本がたくさん採用されました。

『動物を守りたい君へ』2013, 岩波ジュニア新書

世に動物好きはたくさんいます。子供はだいたい動物が好きで、中学生くらいになると、「守ってあげたい」と思うようになる子もいます。それは交通事故にあった犬だったりします。そのことと、たとえばホッキョクグマを守ることとはどう違うのか。あるいはタヌキならどうか。そういうことを考えてもらおうと書きました。『野生動物と共存できるか』の姉妹編的なところがありますが、野生動物に限らず、ペットや家畜の命についても書きました。
感想

『北に生きるシカたち』(復刻版)2013、丸善出版

この本は1992年の私の処女作の復刻版です。初版はすぐに売れたのですが、出版のどうぶつ者は増刷してくれませんでした。当時は今のようにシカ問題が深刻だと思われていませんでした。「あの本が欲しい」という声をよく聴きましたが、私の手元にも余分がなくなってしまい、申し訳なく思っていたので、復刻されうれしかったです。この本は調査で明らかにしたことだけでなく、調査の過程で何を考えたかや、野外調査の息遣いが伝わるように書きました。

『野生動物と共存できるか』2006、岩波ジュニア新書

この時点で一番若い世代に書いた本で、たくさんの生態学的な事象を紹介しながら、個々の動物をみるだけでなく、環境や生き物のつながりを守ることのたいせつさを書きました。思いがけないことに、その年の「もっとも入試によく出題された本」に(養老孟司を抜いて!)選ばれました。そして、光栄なことに中学2年の国語の教科書2つに採用されました。
感想
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タヌキ学 感想

2015-10-05 21:13:10 | 私の著作
Book Hunting

『タヌキ学入門 - かちかち山から3.11まで 身近な野生動物の意外な素顔』高槻成紀

帰り道、住宅街の物陰から、ひょいとネコが出てくる。だが、ネコにしては歩き方がおかしい。しっぽも太い。なんだ、タヌキじゃないか。という程度には、タヌキに化かされたことはある。こんなふうに身近にいるといえば、タヌキは身近にいる。しかし詳しいことは、ほとんど知らない。いや、知っていることなど皆無に等しい。ここはひとつタヌキ学に入門とくか?

そして、タヌキといえば、キツネである。内山節の『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』は、べらぼうに面白かったので、タヌキも同じように面白いことを期待する(安直)。なお、2月10日に荻上チキのラジオ番組「Session-22」に著者の高槻が出てた。音声はこのリンク先から聞ける。かなり渋い声してる。

里山はもちろん、東京23区のほとんどで生息が確認されている一方、その生態はほとんど知られていないタヌキ。

どこにすんでなにを食べているのか、どうして化かすと思われたのかなどの基礎知識から、津波後の仙台湾にヒトより早く戻ってきた話など、野生動物の専門家がひとつひとつわかりやすく解説。

タヌキへの親しみと敬意を与えてくれる一冊
投稿者 dynee 投稿日 2016/1/8

生態学を専門とする筆者ではあるが、本の内容は人間から見たタヌキの文化的イメージなどにも触れており、タヌキを網羅した内容となっている。3.11後のタヌキの糞の組成を調べた記述は非常に興味深く、彼らの逞しさに改めて驚嘆するばかりである。また添えられたイラストも非常に愛らしく、まさにタヌキ学入門の名を冠するに相応しい入門書である。

深夜放送
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シカ問題を考える 感想

2015-10-05 09:50:47 | 私の著作
now and then

シカ問題、つまりニホンジカが増えすぎ、日本のあちこちで被害が出ている問題のことなのですが、前から関心があるので、関連した本をこれまで何冊か読んできました。
しかし、著者の高槻先生が冒頭で書かれている通り、どちらかというと研究発表的な難しいものばかりでした。そんな中で、長年シカと植物の関係を研究されてきた高槻先生が、一般の読者向けに書いた新書です。
シカの被害…と言うと、農作物への被害を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際はもっとグローバルに森林・山地の植物への被害が深刻になっています。
急増するシカの話で真っ先に出てくるのは、今や石巻市内ということになった金華山のシカの話。現在あの小さな島に400頭のシカがおり、これはかなりの高密度なのだそうです。そのため、慢性的なエサ不足で、島の植生にも大きな影響を与えています。
農作物への被害はわかりやすいですが、森林の植物への影響は、都市部に住んでいる私たちには日頃目にすることがないだけに、日本全国そんなことになっているとはと思うほどのもの。先生は「森を食べ尽くす」とまで書かれています。植物に影響が出ると、森に住む他の昆虫や動植物にも影響が広がるというわけです。
後半は、なぜこれほどまでにシカが増えてしまったのか、原因と思われることを1つ1つ考察していくのですが、諸説あるもののズバリの正解は浮かんできません。それは複合的な要素もあるからですが、最終的には日本の農村社会の崩壊が招いたことなのではという結論に達しています。


趣 深 山

『シカ問題を考える』高槻成紀著 山と溪谷社 2015年12月25日初版

著者は動物生態学、保全生態学を専攻してきたが、今日のシカ急増の背景を動物生態学から説明しよう試みたが、どの要因でも十分に説明できない。

1 森林伐採による食料の増加
2 牧場の存在
3 地球温暖化による暖冬
4 狩猟圧の低下
5 オオカミの絶滅

そして 著者の手には余る大きな課題として
6 農山村の変化
に 大きな要因があるのではないかと論じている。

「かつての農山村は人がたくさんいて、密猟を含む野生動物の頭数抑制や徹底した草刈りが行われたから、草食獣にとっての食糧は乏しく、身を隠すところもない、近づきたくても 近づけない場所であった。」


実際 かつての山村は人が溢れて 活気があった。
きれいに手入れされた田畑は動物の入るスキがなかった。
しかし いまでは 山村では 人口が減少し 耕作放棄地 廃屋 人手の入らない里山、山林が いたるところにも 野生動物が闊歩している。

シカ問題解決に向けての 取り組みも 本書のなかで 紹介されているが 著者の動物生態学の立場だけでは どうにもならない 山村の活性化の課題を提起している。


http://blog.goo.ne.jp/shumiyama/e/9eaa1c31ba8a75cfc83b7f1a192db497

16.1.28
【書評】●高槻成紀著『シカ問題を考える』●
     〜バランスを崩した自然の行方〜 ヤマケイ新書

 乙女高原でお世話になっている高槻さんがまた,本を出されました。すごいペースです。
 高槻さんの本は、このメールマガジンでも何回か紹介しました。
 メルマ319号で紹介した『唱歌「ふるさと」の生態学』
  http://fruits.jp/~otomefc/maga319.html
(ヤマケイ新書)もそうだったのですが、今回のこの本も、このテーマで書くとしたらた高槻さんが一番ふさわしく、しかも、書くことが一番求められているの
は「今」だよなと心から思える本です。

 この本は,今,日本中で問題となっているシカの急増に伴う自然保護問題を解説した一般の人向けの本です。今,シカ問題を知らない人のほうが少ないと思います
が、シカが増えることによって、そこの自然にどんな影響があるのか、その影響をどのようにして「見とる」のか、そもそもシカとはどんな動物なのか・・・など、シ
カ問題に対峙するための基本的な知識と、向き合うさいの立ち位置や考え方の方向性を示唆してくれる本です。
 たとえば、シカが増えるということは、その土地の土も問題を抱えてしまうし、花だけでなく虫にまで影響が及ぶし、森林の更新にも影を落としてしまいます。ま
た、シカの増加が害になる動植物ばかりかと思えば,シカがたくさんいた方が生存に有利に働く動植物もいます。具体的に、どんなことが起きているか想像がつきます
か?

 この本には高槻さんと麻布大学野生動物学研究室の皆さんが乙女高原で行ってきた調査観察の成果も書かれています。見慣れた写真も出てきますよ。私たち乙女高
原ファンにとっては、それもこの本の魅力のひとつです。

 シカが急増した「背景」には何があるのか?も考察しています。森林伐採による食糧の増加? 牧場の存在? 地球温暖化による暖冬? 狩猟圧の低下? オオカミ
の絶滅? それぞれについて疑わしい点、それだと断定すると出てくる矛盾点について分析し、最終的には農山村での暮らしのあり方の変化であると言っています。

 シカ問題は、乙女高原でも顕在化し,最近,シカ柵を作ってもらったばかりです。多くの人でシカ問題を考え,そのよりよい解決方法を探っていくためにも、ぜひご一
読をお勧めします。

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16.1/1
『シカ問題を考える』高槻成紀著 山と溪谷社 2015年12月25日初版

著者は動物生態学、保全生態学を専攻してきたが、今日のシカ急増の背景を動物生態学から説明しよう試みたが、どの要因でも十分に説明できない。

1 森林伐採による食料の増加
2 牧場の存在
3 地球温暖化による暖冬
4 狩猟圧の低下
5 オオカミの絶滅

そして 著者の手には余る大きな課題として
6 農山村の変化
に 大きな要因があるのではないかと論じている。

「かつての農山村は人がたくさんいて、密猟を含む野生動物の頭数抑制や徹底した草刈りが行われたから、草食獣にとっての食糧は乏しく、身を隠すところもない、近づきたくても 近づけない場所であった。」


実際 かつての山村は人が溢れて 活気があった。
きれいに手入れされた田畑は動物の入るスキがなかった。
しかし いまでは 山村では 人口が減少し 耕作放棄地 廃屋 人手の入らない里山、山林が いたるところにも 野生動物が闊歩している。

シカ問題解決に向けての取り組みも本書のなかで紹介されているが、著者の動物生態学の立場だけではどうにもならない山村の活性化の課題を提起している。

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となりの野生動物

2015-10-04 22:46:04 | 私の著作
いちおし!楽しいもの調査隊
2016年01月17日
今日の一冊は、高槻成紀著「となりの野生動物」
です。

 東京23区にも生息するタヌキ、
すみかを追われたウサギやカヤネズミ、
人が持ち込んだアライグマ、
人里に出没したり、田畑に被害を与えたりするクマやサル、シカ。
 
 野生動物は、私たち人間にとって身近な「隣人」です。

 私たちはその隣人のことをどこまで知っているでしょうか。

 野生動物の生態から人間との関係性まで、
「動物目線」で野生動物を見続けてきた著者が伝える、
野生動物について考えるキッカケになる一冊です。

 高槻さんは、元東京大学教授で動物生態学、保全生態学を研究していました。
でも、小難しいところはちっともなくて、
軽妙洒脱な筆致で、気軽に読める本になっています。
1章ごとに各動物が取り上げられていて、
昔話に出て来るイメージから人間がその動物をどうしてそう捉えてきたのか、
など、面白い語り口に引き付けられます。

 理系の学者先生の書く本は、
論文を書くクセが抜けないせいか、
だいたい一般人には読み辛いものですが、

この本は、エッセイのようで非常に読みやすいです。
それでいて長年、フィールドワークをしてきた高槻さんの経験が
随所にちらっと、しかし控えめに出て来て、
なかなか深い読み物でもあります。

各章が独立しているので、
好きな章から読むことが出来るのもいいですね。

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カヤネズミのかわいさは異常。露出が少ないだけで有名になれば、かわいい動物特権で本気で保護してもらえるはず。著者はネズミがもってきた負のイメージを背負っていると考えているようだけど、新しい世代ならネズミ自体との接触機会が少ないので、あまり抵抗がないはず。
 そしてハムスターのたぐいは愛玩されているのである。
 茅場がカヤネズミのために保全されれば、ノウサギも保護されて、ノウサギが増えればオオワシの個体数にもいい影響があるかもしれない。もしかしたら、トキよりもカヤネズミの保護は連鎖効果が大きい?

 となりの野生動物はタヌキのしっぽに縞はない。縞があるのはアライグマである。など人が抱きがちな身近なはずの動物への勘違いに触れた本。なぜそんな勘違いが起きたのか、歴史的な経緯から考えている。
 最初に勉強になることは少ないと書いていたが、100kgを超える大型動物で冬眠するのはクマだけであり、大型で冬眠するのは恒温動物として矛盾しているという指摘がとても面白かった。
 さいきんは暖冬によって冬眠しないクマがちらほら観察されるようになっているが、彼らの生理にとってはどうなのかなぁ。

 野生動物に対する著者の考え方には頷けるところも首を傾げるところもある。都会の人を「動物を良く知らないため、感情的に保護を求める」集団とみているが、もっとも厄介なのは「ともかく攻撃的になっていれば、一段レベルの高い自分だと思いこめる」人々なのではないか。
 彼らは彼らで対象への理解を深めることをせずに場当たり的な殺戮で問題解決から遠ざかっていく恐れが強い。

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2015.2.14

暮らし・環境・人との関わり、というタイトルから、人為も含めた生き物の生態、の話だと思っていたら、冒頭のタヌキがいきなりカチカチ山とかタヌキおやじとか、そういうイメージの話からでびっくりする。どうもタヌキは間抜けというイメージが付いている。
この導入部は、ムズカシクないよ、というアピールだろうか。タヌキは狸と書くように里の生き物で、今も東京23区すべてにすんでいるという。高速道路での死亡動物も一番はタヌキだ。
著者は、自動車は公共の整備による道路で発展してきたのに自動車会社はロードキルを減らすためにその利潤を還元したりしない、と責める。
それでもなおタヌキは人里ちかくに暮らしている。タヌキなんていなくても困らない、という人が多いだろうけど、みんなだいすき「環境」問題は、そういうのも含まれるんじゃないだろうか。

続いてウサギ。これもイメージから。学校でウサギを飼うのは情操教育の一環、のようだけど、もともとは日清・日露戦争での兵員の防寒のため、ノウサギが穫られて激減したので、軍部が学校でウサギを飼え、と文部省を動かしたのだそうだ。

イノシシ。シシとは肉をさし、イノシシとは本来「猪の肉」らしい。十二支では亥(い)、の一文字だが、やはり獣としては「イ」だけでよいようだ。見た目やイメージとは違い、人里に斥候を送ったり、1メートルの障害物も飛び越え、60kgの重いものも持ち上げるというスーパーな動物。

アライグマ。外来種だが野生化している。アライグマはタヌキ以上に環境適応力がありそうだ。著者はここでもペットの放逐と、そしてその後に起こる生態系の混乱への無理解に怒る。

こういう感じで9種の動物が紹介される。それぞれイメージからはいる導入部は、社会が動物にイメージを持つ、ということ自体がおもしろそうだと思ったからだ、というおよそ自然科学者らしくはない理由からだった。
最後に、逆に動物からみた人間のイメージが語られている。
「人口が3倍にもなって、世界中から食べ物を買って、エネルギーを輸入して、都市に集中し、地方で人口が減って、僕たちが増えたらけしからんという。わからないことだらけだ。」これはシカの言い分の抜粋。ベタだがそのとおりだ。けれど、この問題も林業家にとっては大きい問題でも、都市生活者にとってはあまり関心が持てない。
無関心はすなわち無知であり、無知は誤解を生んで決断を誤る。シカ以外の里山動物もみな田畑を荒らしたりするから生産者は困る。だが都市生活者は生産そのものに対しても無関心から決断を誤るループにあるかもしれない。

この動物はこう思われているけど、本当はこうなんです、なんていうだけの話ではない。やっぱり「暮らし・環境・人との関わり」だった。
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野生動物と共存できるか 感想

2015-10-03 22:08:37 | 私の著作
共存は難しい
投稿者 志村真幸 トップ1000レビュアーVINE メンバー 投稿日 2015/9/22
 著者は保全生態学の研究者。
 岩波ジュニア新書で、中高生向けにわかりやすく書かれている。
 著者は日本でシカ、サル、クマを対象としているほか、モンゴルでモウコガゼル、スリランカでゾウなども研究しているらしい。モンゴルの茫漠たる草原で動物たちを追いかけた体験談なども盛り込まれており、おもしろい。
 人間の生活と、野生動物との衝突に関する現状がいろいろと挙げてあり、一部については解決例も示されている。基本的には人間側に立ち、しかし、動物への対処も可能なかぎり手厚くというスタンスだ。科学的な態度を徹底している点が特徴。
 野生動物との共存はかなり困難なようだが、それでも可能性はあると思った。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++
2014/11/28 23:17
 以前読んだ、同じ著者の「動物を守りたい君へ」がとても良かったのでこちらも子供に読み聞かせしました。同じように良書でした。こちらの方が焦点が絞れているとも言えます。
 とても良いのは総合的だということです。基本的には生き物の話であるわけですが生態学ということで、社会科的な視点が必要になっています。たとえば、スリランカやモンゴルの暮らし、そこの人々の考え方や、ほんの少しだけれど歴史も。この本を読むと、多面的なものの見方をしなければいけないとか、人は社会全体で間違った通念を持ってしまうことがあるといった、とても大切なことが生き物という親しみやすい具体例を通して学べます。「かわいい!」とか「かわいそう!」とか表面的な衝動で終わってはいけなくて、詳しく検討して意見・行動すべきである、ということは知性に本質的なことだと思うんです。
 難易度が、親が適度に解説を加えながら小学生に読んでやるのにちょうどよいです。中学生なら自分で読むのにいいでしょう。
 「ラクダはラクダだが、ホルゴルはラクダではない。」

大人が読んでも手ごたえあり
投稿者 chairo 投稿日 2014/2/14
子供向けに簡単には書いてありますが
そうだそうだと納得することが多く、大人が読んでも
十分にいろいろ考えさせられる本でした

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
2014/03/07 14:54
保全生態学入門のサブタイトルどおり理解しやすく目的を達成できた。
第1章の生物が消えていくの中で、農業基盤整備事業を農業基本整備事業と書き違えたり、暗渠排水の説明が咀嚼不十分からか間違っていて気になった。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
2013/07/27 14:21
生物の保全には生態の保全が必要、つまりその生物を取り巻く環境の保全こそが重要。
そこで力を発揮するのが、「保全生態学」。
本書はこの保全生態学の基本について丁寧に書かれてます。

今どんな問題が起きているか、絶滅とは、保全生態学とは、その実践とは、生物に対する価値観とは…
そういったテーマごとに多くの具体例で話をしてくれるので、とてもわかりやすい。

設定されてる読者層が中学生くらい(たぶん)のジュニア新書らしいつくり。
語りかける文体なので、非常にとっつきやすいです。

ただこの「ジュニア新書」、侮るなかれ。
読んだことのある人はわかると思うけど、「どこが『ジュニア』だ」と感じさせるしっかりした内容の本が多い。
本書もそのひとつ。

ウニや貝を食べて漁業被害をもたらすラッコを駆除したら漁獲高が減った。
サケの遡上による海・川・山のつながり。
オオカミをめぐる自然観・動物観の変化。

こういう内容はそれなりに知識を得てきた大人でも知らない、おもしろくて興味深いことだと思う。
大人にこそオススメ。

本書には、筆者の野生動物への愛と尊敬が満ちている。
「どうにかこの想いを知ってもらいたい」という熱のあるいい本。

筆者は動物を好きになってもらいたいと言う。
それは「かわいいから好き」だというのではなく、理解してほしいということ。
人間にとってどんな生物であるかは関係ない、その存在自体に価値があるし尊ぶべきだ、というわけですな。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++
2012/10/16 22:59
野生動物とわたしたち人間とのつながりについて、とても分かりやすく書かれていた。日本のみならず、世界の野生動物や植物についても、興味関心を広げていきたいと思った。

ジュニア本と侮るなかれ!生物多様性入門に最適
投稿者 maimai 投稿日 2011/1/30
生物多様性については、いまだに個人や企業として何をすれば良いのかよく分からないし、十分な理解がないままに「何をすればいいのか?」という答えを出すことに急いだり、アクションリストに先走ってしまう雰囲気になんとなく抵抗感がありました。

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2012/08/23 21:02
ジュニア新書ということで子供むけに書かれた内容。
しかし生態学を知らない大人が読むにもわかりやすくてよくまとまった内容だった。
子供向けなのに「科学的な知見から」ということを徹底していたところがよかった。

私は大学である程度生物学を勉強したので、「生態学全般」に関してこの本を読むことで新たに発見したことは多くなかったけれど、恥ずかしながら個々の事象については新たに知ったことが多かった。
子供たちにこの本の内容を知ってほしいのはもちろんだが、ジュニアと言わず様々な人が読む価値があると思った。

アイヌの人々の考え方と保全生態学の考え方に通じるものがある、という記述に共感した。『カムイ・ユーカラ』(山本多助)を今度読もうと思った。

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2012/06/23 14:12
子供が読んだので語ろうと読む。自分の小学校時代に子供だけで山に冒険しに入りニホンカモシカを見た時は感動した(実は小学校にもシカが時々出没するほど田舎だった。熊に遭遇しなかった事が幸い)。小中で好きだった人の父親はハンターだったな…などと懐古。以降は本からの引用です//飼育動物と野生動物。メダカ。農業基本整備事業…田んぼに大きな変化。外来生物。農業被害、ラッコ、ウニ、昆布、漁獲高減。生息地の破壊。1900年は20億未満。世界中の島々…ヤギ…捕鯨のため。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++
2011/04/16 12:46
是非ともこどもたちに読んでほしい一冊。
ペットと野生の生き物の違いは何?恐竜の絶滅とアマミノクロウサギの絶滅はどうちがう?同じ野生生物なのにトキは守って、シカを駆除するのはなぜ?
オオカミは欧米では悪者、日本では神様として扱われるのはどうして?
これらの答えは簡単ではありませんし、ひとつではないかもしれません。野生生物に触れ合う機会が激減し、ほとんと隔離状態ともいえる現代のこどもたちといっしょに考えながら読みたい本です。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++
2010/12/19 14:32
この前に読んだ「捕食者なき世界」ウィリアム・ソウルゼエンバーグ著
や、「沈黙の春」レイチェル・カードン著の読破メモも書けていないけど
先にこっちをやっつける。

本書は
人間と野生動物とがどのようにしたら共存できるか!というノウハウ本ではなく
野生動物との共存を例に
1)動植物のつながりあいの重要性
2)単純なメディアから情報だけで信用せずに深く考える力
3)価値観や文化や生活習慣の違いの認識
を、判りやすく伝えている。

2010.12.12
生物多様性については、いまだに個人や企業として何をすれば良いのかよく分からないし、十分な理解がないままに「何をすればいいのか?」という答えを出すことに急いだり、アクションリストに先走ってしまう雰囲気になんとなく抵抗感がありました。

そんなモヤモヤしたなか、本書は、「そもそも何が問題なのだろう?」と自問自答させられるような、本質的な問いを投げかけてくれます。

動物は好きだけど、ペットと野生動物は全く違う。
何故そもそも野生動物は絶滅しているのか。
保全にとって大切なのはどういうバランスなのか。
そもそも人間優越、自然支配、自分たちの当たり前を見直す必要はないだろうか。
本当の豊かさとは。

ジュニア向けの本なので非常に分かりやすく、また著者のとても熱い思いが伝わってくる良書です。子供のころこんな本を早く読んでおけば良かったなぁ。としみじみ思いました。

f087022の日記
2010-06-26
 20世紀、特に後半になって野生動物に関する問題が多くなっている。生息地や個体数減少のような問題であるが、その大半は人間が原因である。この本はそのような時代において、人と動物との付き合いを示す一冊である。全体的に話し言葉でつづられているため、とても読みやすい本である。

 まず第一章では野生動物に関する問題をメダカ、ツキノワグマ、サル、シカ、ヤギ、マングース、ラッコを例に解説している。

例えばツキノワグマとサルでは農業被害や人に危害を加えることが問題になっている。この問題の原因は生息地が少なくなっていることや、食べ物が少なくなっていることが挙げられる。しかしそれらの原因のほとんどは人間が関係している。奥山の伐採であったり、山の恵みを過剰に採取したりしているのだ。このような問題を考えるうえで重要なことは安易に目先の結論に飛びつくのではなく、事実を確認し、長い期間、広い視野をもつことである。

第二章では「絶滅」について書かれている。

はじめに、イギリス、北アメリカでの出来事を紹介している。イギリスやアメリカでは現在は動物愛護や自然保護の精神が根付いており、大きな国立公園などを設置している。しかし、時代をさかのぼるとその精神は、多くの動物の犠牲の上になりたっていることがわかる。イギリスでは産業革命以降、森を切り開いたことでヒグマやオオカミなどが絶滅。アメリカでは食料、羽毛のためにリョコウバトが絶滅し、バイソンは娯楽のための射撃に利用され、激減した。これ以外にも多くの動物を絶滅させている。絶滅は自然界ではごく普通におきる現象であり、とても長い期間での出来事である。しかし近年の絶滅は人間が原因であり、かつてないスピードで起こっている。

絶滅した種の特徴を考えることで、これ以上の悲劇を引き起こさないヒントを得ることができる。ジャイアントパンダやガンジスカワイルカは生息地が限られる。何らかの理由で生息地の環境が変化すれば絶滅してしまう種だ。またスペシャリストと言って、特定の食べ物しか食べない種がいる。これらの種は食物に融通が利かないため、人間による環境変化が起きた場合に絶滅する危険性がある。スペシャリストの反対の言葉はジェネラリストと言われる。一方で生物学的な特徴ではなく、人間による利用ができる種も絶滅の危険がある。天然資源と考えられ、スポーツ狩猟に利用され激減する。また人口問題で食料、住居が必要になり動物たちの生息地を奪ってしまっている。

野生動物絶滅に対する深刻さに気付き、世界各地で保護運動が展開されている。絶滅が危惧されているジャイアントパンダ、タヒ、アホウドリを保護する運動を紹介している。これらの動物の減少した理由は生息地の減少であったり、乱獲であったり、人間が原因である。ここでは、保護に携わった人々の努力が記されている。保護するために研究が重ねられ、生息地を確保し、繁殖させる。これらには長い期間が必要で、失敗はつきものである。国同士の国際的な協力や、多くの人の協力が必要であることがよくわかる。

第三章では生態学、保全生態学の考え方やそれを通じた生物のつながりを解説している。まず分類学、生理学、遺伝学などを総合し保全生物学が生まれた。そのなかで生態学は生物と環境、生物個体同士、種間の関係などを研究対象にしており、保全にはとても重要な学問である。保全生物学の中で特に生態学に重きを置く学問が保全生態学である。保全生態学の考え方で、キーストーン種、アンブレラ種、フラッグシップ種、コリドーがある。キーストーン種を金華山のシカを例に解説している。キーストーン種というのはその生態系で最も影響の強い種を言う。またアンブレラ種の解説するためにコウノトリが例になっている。コウノトリを守ることで、関係する小動物、植物が守られる。フラッグシップ種はその名の通り、旗のように目立つ種である。パンダが例になっている。パンダは生物学的にも特徴があるのだが、世界的に人気があるということで特別である。その人気を利用することも大切なことだ。この言葉は保全生態学というより、保全のための言葉である。コリドーは回廊という意味である。人間によって森が減少し、小さな森がとびとびに存在するようになる。範囲の狭い森林では生息できなくなる種が出てきてしまう。広い範囲の森を再生することは困難であるが、狭い範囲では可能であるかもしれない。ということで小さな森をつなげようという考え方が生まれた。それがコリドーである。

次は生物同士のつながりをオオカミ、サケを中心にして解説している。まずオオカミはヘラジカと森林との関係である。オオカミが減れば、ヘラジカが増え、森林が荒れる。その逆もある。自然界の微妙なバランスが存在し、それは時間的にも場所的にも存在する。サケはクマやタカとの関係が記されている。遡上してきたサケをクマなどが食べ、山で糞をすることで栄養が山に運ばれる。その栄養は森林に吸収され、健全性が保たれるのだ。

生物同士が複雑な関係を持つことが分かる。保護する対象のみを考えるのではなく、もっと広い環境を守ること、微妙なバランスを保つことが大切である。

第四章では筆者の研究に関する体験が書かれている。

まずは岩手県五葉山一帯で起きているシカの食害に関する体験である。シカが増え、山に食べ物が無くなると人里に下りてきて、農作物を食べてしまう。筆者はシカが増えすぎていることを収集したデータから示し、シカを減らす提言をした。そして行政と地元ハンターと共同し、農林業被害を減らすことに成功した。このプロジェクトは筆者にとって初めての経験であり、研究成果を対策に生かしたいと思う経験であったそうだ。

このほかに、モンゴルにおけるモウコガゼルの研究や、鳥の渡りに関する研究が記されている。これらは研究者の実際がよくわかるように書かれている。網を張って対象を捕獲したり、地味な作業はつきもののようだ。動物には国境がないが、人間にはあり、それらの相互協力がなければ研究は成り立たない。また行動範囲が広いため、調査器具の進歩が研究に大きな影響を与えることもよくわかる。

第五章ではクマ、サル、シカ、ヤギを例にしてどういう取り組みが必要なのかを解説している。クマやサルは山が荒れ、農山村が衰えて農林業被害につながっている。シカも同様であるが加えて自然林に影響を与えている。ヤギは人間が持ち込んだ外来種であり、その被害が広がっている例であった。それぞれ違った性質の問題を抱えている。違った性質を見極めるためにはそれぞれに綿密な調査を行い、必要なデータを集めることで、科学的な判断をとることができる。これらの問題はメジャーになりつつあるが、里山の動物のようにありふれたものの保全は遅れている。

第六章では人と動物との関わりを通じて、その国の人を理解しなければならないという筆者の考えが述べられている。ここではモンゴル、スリランカでの体験が書かれている。モンゴルでは家畜との関係、スリランカではゾウとの関係が例に挙がっている。この章では同じ人間でも環境が変われば、生活習慣が違い、その違いによって自然環境や野生動物に対する考えが異なることがよくわかる。国によって、人によって様々な価値観を持っている。その例をオオカミ、アイヌ民話を例に書いている。

生物保全に必要なことは、本当に動植物を好きになること。動植物をよく知り、理解することである。また自分にとって当たり前なことが、実は違うかもしれないと常に疑うことで、様々な価値観を理解することである。

野生動物の価値として、「薬や食料になる可能性がある」とか、「美しいものを見て感動できる」とか、人間にとって役立つから価値があるとする人がいる。しかし、いま地球上の生命のほとんどが人間より先に生まれ、互いに微妙なバランスをとりながら生きてきたのだ。そのこと自体がかけがえのないことであり、価値があるのだ。動物が地球に存在している価値は、人間の存在には関係がなく、人間も動物も同じ価値であると認めることが必要である。だが人間は特異な存在であることは理解しなければならない。特異ということは知能が発達し、あまりにも大きな力を持ち、人口が増加し、資源を使いすぎているということである。だからこそ立場を正しく評価し、野生動物の立場を考慮して、いかに生きるかを考えていかなければならない。

本書で筆者はさまざまな野生動物の問題を紹介している。そのなかには筆者の経験した出来事が多く含まれている。実体験が交えられていることで、現実味があり、研究者の苦難などがよくわかる。問題に対する研究後の対策では行政などとのやり取りもあり、交際的な協力の必要性もわかる。動物のことだけでなく、その土地の特徴などの描写もあり、関わった地元民とのやり取りもある。そういった人間との関わりから、価値観の違いがあることがわかる。価値観の違いが異なる環境から成立した生活習慣や異なる宗教などが関連していることも書かれている。岩波ジュニア新書であるから、やさしい言葉で書かれているが宗教の価値観などにも言及し、生物保全にはさまざまな分野を知っておくことが必要であることがよくわかるだろう。保全生態学の考え方もわかり、生物の関わろうとする子どもにはとても参考になる本であると思う。また全く関係のない人でも生態学についての考えや、野生動物に関する問題についてよくわかるだろう

【釋知恵子 2006/12/22】
 とにかく読みやすく、わかりやすい。野生動物の現状と問題に人間の営みがどんなに関係しているのか、それを解決するために何を考えて行動しないといけないのか、実例が随所に織り込まれ、著者の考えるところがよくわかる。特にいいなと思ったのは6章。暮らす環境の違いで野生動物に対する考え方もいろいろあるんだから、自分の価値観が全てと思わず疑ってみようというところ。スリランカの人が、バナナをゾウに食べられて被害が大変でも、「ゾウを殺すなんてとんでもない、ただどこか遠くに行ってほしいだけだ」と答えたという例とともにストレートに伝わってきた。

【六車恭子 2007/02/23】
 人里に出没するツキノワグマ、農作物を食べるサル、国立公園の貴重な植物を食いつくすニホンジカ・・・、いま野生動物たちに何が起こっているのか。ここ数十年の人々の暮らしの変容が背景にあるという。かって北アメリカで起こったリョコウバトやバイソン、インド洋のモーリシャス島のドードー、イギリスのヒグマ、オオカミ、そして日本のオオカミ、これらは生物の進化の過程で起こった絶滅ではない。彼らの生息地の森林が切り開かれ人的要因で滅ぼされたのだ。その滅びの途上にある野生動物は枚挙にいとまがない。保全生態学の見地から人知を結集して危機を脱した野生たちもいるのだ。真に豊かである意味を野生動物との関わりで探ろうとする好著。何を知り何をしなければならないかを見極める、保全生態学の果たす役割は大きい。

【和田岳 2006/12/04】
 著者は、もともとシカの研究者。海外では、モウコガゼルやアジアゾウの研究や保護活動に関わってきた。そんな著者が、動物好きの子どもに向けて、哺乳類をおもな題材に、保全生態学を、そして、人と野生動物との付き合い方について書いた本。
 野生動物と言いながら、出てくる大部分が中型〜大型の哺乳類。というのは、少し片寄ってる気もする。でも、出てくる動物になじみやすいという意味では、大型哺乳類を中心にするには間違ってないかもしれない。近年、日本で問題になっているクマ、サル、シカの問題についての、著者なりの考え方も示される。
 この本を読んで、少しでも多くの人が、野生動物との付き合い方について多少でも考えてみて欲しい。という意味でお薦めの本。ただ、全体的に牧歌的というか、現実のきれいな側面しか紹介していない感が強いのが、少し気になるところ。子ども向けだから?

【西村寿雄 2006/08/05】
 この本は〈ジュニア新書〉とはいうものの、子どもたちがすっと手にする体裁の本ではないかもしれない。しかし、今の人間にとってかけがえのない自然観について切々と説いている。わたしたち大人が手ほどきをしてでも、ぜひ生徒たちに伝えたい本である。
 最終頁に著者は〈野生動物の価値〉について問いかけている。〈いま地球上にいる生命は、おたがいにつながりを保ちながら生きている。そのこと自体かけがえのない価値をもっている」と語りかけている。〈保全生態学〉という新しい学問分野から、今の野生動物の実態と研究過程が紹介されていく。シカやクマ、サル問題を考える材料を提供してくれている。

ヲチ後感想文

ウニやアワビを食害するので、ラッコを駆除した。
漁獲高は上がるかに思われたが、逆に下がってきた。
なぜか。
ウニが増えすぎて、ジャイアントケルプを食べ尽くしてしまい、ウニやアワビはもちろん、その他の海中の生き物の生活の場が失われてしまったから。

クマの話、ニホンザルの話、オオカミとシカの話などでよく聞く話なんだけど「自然環境を守る」ことの難しさを研究者の立場で著したもの。

豊かさの基準を少し変える必要があるんですよね。
便利であること=豊かさではないってことで。
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動物を守りたい君へ 感想

2015-10-03 20:21:27 | 私の著作
ブックログ
http://onezserver.appspot.com/booklog.jp/item/1/4005007554

「動物を守ることの意味を考えてもらいたい」
投稿者 synodos 投稿日 2014/9/26
野生動物の研究をしている高槻成紀さん(麻布大学獣医学部教授)が、「困っている動物を守ってあげたい」と思う人に「動物を守ることの意味を考えてもらいたい」と思って書いた一冊。人間の愛情を押し付けないで、ペットと付き合うために考えなくちゃいけないこと。人間が生きるために飼育し食べる家畜のためにできること。そして絶滅しかけている、あるいは繁殖しすぎている野生動物と人間との間にある問題を解決するために持っていたい「リンク」という発想。人の歴史の中で、長く深い関係を築いてきた動物たちと、これからも一緒に地球で暮らして行くために思い出したい、つながりについて考えさせてくれる一冊。

kanai0010さんのレビュー 2014年6月15日
野性動物との関わり、ペットとの関わり、家畜との関わり、共生について、そして東日本大震災のこと…。今まで言葉では「動物全体」「地球環境」「持続可能な」といいながらも、ついつい木をみて森をみず、動物個々の事象(例えば絶滅危惧種だったり、ペットの殺処分やや家畜の問題だったり、それぞれその時々自分の興味あるトピックで)となりがちだった自分というものにということに改めて気づかされました。
ジュニア文庫だけあって分かりやすく、語りかけるような言葉ですーっと胸に響きました。
子どもにも、おとなにも、一読をお勧めしたい一冊です。

読書感想文にピッタリです。
投稿者 いちご 投稿日 2015/4/21
読みやすく、分りやすい良い本です。
中学生の読書感想文用に購入しましたが、書きやすかったようです。

読書感想文
投稿者 momiji 投稿日 2015/10/19
中学生の子供の読書感想文用です。とても良い本で、内容は偏っていないので、安心できました。オトナの私が読んでもとても面白く感じました。

みとくみさんのレビュー 2014年4月23日
これは珍しく?学生から教えてもらった本。とても勉強熱心な女子学生が高校生の頃、この本に出会うことで視野が広がり、自分の本当にやりたいことに気付くきっかけとなったという。本書の内容を聞いていると、視点を変えることで見えるものや世界は変わってきて、善悪というのは一義的に決めつけられないというような内容だと話していた(ちゃんと理解できていたらうれしい)。私も読むと学びが多そうなので、本棚に入れておく。

理科や社会の断片的な知識がつながる
tcryuさんのレビュー 2014年3月23日
 この本で、我が家では初めての試みとして、うちの小学生中学年の子供たちに中高生向けのジュニア新書を読み聞かせしてみました。そうしたところ結果的に我ながら素晴らしいと思える教育的効果があげられたので、今後もこのような本を探してぜひまた読み聞かせに使ってみたい、と思うまでの良書でした。
 本書の何がそんなに良かったかというと、まず話題が子供たちにとってわかりやすいところから始まっているということです。子供たちも「動物を大切にしたい」という気持ちは当然持っています。さらに植物の受粉や動物の生態の話などは、授業でも断片的に少しずつ習っていることなので、全然わからない話ではありません。それで本書の良いところは、それらの断片的な理科や社会の知識が、筆者の実体験や具体的な地名によって肉付けされ、深められ、つなげられていくことです。理科の別の単元で習ったことがつなげられたり、理科で習ったことと社会で習ったことがつながったり、本書を読むとまるで社会科見学に行ったかのような効果があります。動物を大切にするという身近でわかりやすい話が、東北大震災、福島やチェルノブイリの原子力発電所の事故や、高度経済成長期の環境破壊までいつのまにかひろがっていくので、無理なくそこまで興味を持続することができます。東北大震災に関連して「ナラの木」の詩も良かったです。その詩が本書に全編転載されていなかったのはやむを得ないことでしょうが残念だと思いましたが、すぐにウェブ検索して見つけることができました。地方版の訳も見つけられたし、盛岡版の朗読をyoutubeで見つけることもできました。動物からは脱線とはなりましたが、方言に触れる機会ともなりました。
 画像を検索して見せたりクイズを交えたりなんかして、「ちょっとコレ楽しくてためになる授業になっちゃってんじゃないの」と自己満足までしてしまいました。子供たちの感想も「動物や自然の間にリンクがあるというのがよくわかった。アイヌの人たちが昔から地球は人間だけのものでないことを知っていたというのに感心した」など読書感想文のお手本みたいな感想を述べていました。お勧めです。
いいね!

candraさんのレビュー 2015年2月3日
いわゆる果実にはベリーとナッツがある。キャンディーはベリーに似ている(赤くて丸い)、という指摘が面白かった。

こ げ つさんのレビュー 2014年1月9日
これは良著です,ペットも含め動物と向き合うとはどういうことかということを,岩波ジュニア新書ということもあり大変わかりやすく書かれている。
海の恵みを鮭が森に運ぶ,というのには大変驚いた。

空のように、海のように
http://papi4883.exblog.jp/20956510

易しい言葉で語るのは難しい。
子供の伸びしろは果てしない、大人が断定してしまってそこで切らない注意が必要だ。
だからと言って大人が教えていかなければならないものもある。易しい言葉で伝えることの難しさがそこにある。

「私の住んでいる地球は人間だけのものではない。」という考えがこの本を貫いている。
トキやコウノトリは当時でも大都市だった江戸の空を飛んでいた。
今は日本原産のそのトリは絶滅して同じDNAを持つ外国産のトリが手厚い保護を受けて、佐渡や兵庫で放鳥され初めている。
トキが絶滅したのはよく言われる化学肥料や害虫駆除剤、乱開発だけが原因ではない。
大正時代に農民達が猟銃をもつようになって食料としてきたことが一番大きな原因になっているという。

シカやクマやイノシシやサルの害が問題になっているがオオカミが絶滅した以外に多くの原因があり人災であることをこの本は伝える。

なぜ動物を守らなければいけないのか、生物多様性が持続可能な世界をつくるというのが一般的な解答だが、著者は易しい言葉でそれを語る。「地球は人間だけのものではない」というのがベストアンサーだ。

著者は原発について厳しく語る。原発被災は人間ばかりでなく多くの動物達をも巻き込んだ。放置され飢え死にしたペット、殺処分された家畜達。動物達の犠牲はあまりにも理不尽だ。植物を含めて生き物達もおそらく何十年も被爆の重荷を負う。

その教訓になぜ学ばないのか。政権は原発再稼働に動いている。「地球は自分たちだけのもの」という勝手な思い込みがそこにある。動物と共に生きることが人間らしく生きることではないだろうか。

戦争や環境破壊、飢餓や伝染病等人類は大きな課題を抱えている。
「動物を守ること」、それは大人たちが易しい言葉で子供達に教えなければならない一番大切なことではないか、著者の声が心に響く。

科学読物研究会
http://www.kagakuyomimono.com/hon/8sekitsui/mamoritaikimihe/mamoritaikimihe.html

著者は動物生態学の研究者です。動物が好きで、けがをしていたり困っている動物を助けたいと考える子どもたちは多いでしょう。動物を守るということはどういうことかを、「ペット」「家畜」「野生動物」の3つに分けて具体的にわかりやすく書かれています。
ペットのいる生活の魅力はもちろんですが、ペット産業の隆盛の裏で売れ残った子犬が殺処分されたり 飼い主に捨てられて毎年20万匹以上のイヌやネコが安楽死させられていることもあえて書かれています。アライグマのような外来種のペットが逃げ出したり、捨てられて野生化して、在来種の動植物を食い荒らす問題も指摘されています。
 家畜は人間が生きるために飼育して食べる動物ですが、暗くて狭い部屋に閉じ込められ病気にならないよう薬を打たれて、時期がくれば処理される一生を送る動物に生命倫理という点で疑問だといっています。私たち消費者は 家畜の命をいただいているわけで、その動物が生き物として生きている間できるだけ健康でいられるように、と意識することはとても大切なことだと思います。
 野生動物を研究している著者は、動物の持つ特徴だけでなく、生き物のつながりや環境との関係を知ることが大切だと例をあげて紹介しています。人間と森とフクロウと森のネズミ、草原のネズミの複雑な関係や、モンゴルの絶滅種タヒ(野生馬)の復活が詳しい調査研究のもとに書かれています。アメリカのイエローストーン国立公園では、オオカミは1932年撲滅されましたが、オオカミに食べられていたシカが増えすぎて食害が増え、若い木や草がなくなり土砂崩れや洪水が起き、川も変化してビーバーが消えたそうです。そこでまたオオカミを放したらビーバーも戻ったそうです。このことからも生き物は様々なことでつながっているのがわかります。もちろん人間もそのつながりの一部です。世界は人間のためだけではないということ、地球上のいろんなつながりの中で人間も動植物も生きているのだから、動物を守るということは地球を守ることだという著者に私は心から共感しました。原発事故の半径20キロ以内の野生動物や家畜やペットのことも書かれています。この著者の『野生動物と共存できるか 保全生態学入門』(2006年岩波ジュニア新書)も合わせて読むと、いっそう野生動物のことがわかるでしょう。                 

Moeko Matsuda
自分のことを、感情的過ぎるのかな、と思うことがある。人間の利害と関係なく生きている動物達のことを思う時だ。私は動物が好きだし、子どもの頃から身近に彼らが生活が普通だったが、今でも「動物を飼う」いう表現には違和感を覚える。血統書にしか興味を持たない人々や、ペットショップに行くことを楽しめる人間のことを、心底軽蔑してきた。この本を読んで、そんな自分の感情的な部分と向き合うことができたように思う。優しい気持ちだけでは何も出来ない。私もちゃんと考えるから君も考えて欲しい。そんな切なる祈りがこもった本。

pugyu
怪我をした野生動物を治療することは動物を守ることになるのか。そんな切り口から、動物と環境の関係について分かりやすく説明してくれます。マルハナバチとサクラソウの関係は、絶妙なバランスで生き物が暮らしていることがよくわかりました。気温だけでなく雪の深さも重要なのだと。人間は閉じられた空間で生きているわけではない、自然を管理できるわけではない、ましてや自然は人間のためにあるわけではない。アイヌの教えをちゃんと知りたくなった。

れいか
比較的面白かった♪「つながり」の大切さを改めて感じる。様々な事情を知れた。シデムシとかの実験楽しそう。花の綺麗さはもともと人間のためじゃなく、残すため。大切な源を確認させてくれる

摩天楼
リンクの大切さをとても強調されているが、このことについて、動物保護にある程度関心があっても知らない人は少なくないだろう。この著者のように、広い視野を持ち、柔軟な思考のできる人が増えることが、動物保護には不可欠であろう。

かける
この本にはペット、家畜、野生動物と人間の付き合いかたについて考えてさせられるような内容がかかれている。特に野生動物はリンクを考えていかなければいけないのだと思った。

白花豆
ハチ公は忠誠心から渋谷駅に通ったのではなく、日課から軌道修正できなかっただけなど、実も蓋もない真実を暴くが、人間の感情や都合に合わせてペットや家畜、野生動物を扱うことに注意を促し、本当に動物や環境を守るための提言をする。糞虫の課題に取り組んだ学生に「池田さんも森の話を聞く耳を持てたのだな」と調査対象だけではなく、環境、存在、他の昆虫や植物とのリンクまで含めた研究をこのように表現する。好感のもてる先生。また大震災と原発事故後のペットや家畜、野生動物たちにも言及。人間の愚かしさを再認識した。
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シカの脅威

2015-10-03 19:48:47 | 私の著作
http://d.hatena.ne.jp/yoshitomushi/20151005/1444003395
まるはなのみのみ

2015-10-05
【書評】シカの脅威と森の未来―シカ柵による植生保全の有効性と限界Add Star
読書 | 09:03

私はシカ柵が嫌いだ。今年はシカ柵により痛ましい事故もおきたが、それ以上に、囲い込みによる自然と人間との乖離間が半端なく、人間の生きるゾーンと(シカを含めた)自然環境ゾーンと区別されているようで嫌なのだ。最近は道路へのシカの飛び出し防止柵がいたるところに張り巡らされていて道路から森林に入るにも一苦労だったり、河川伝いに人家周辺にシカが入り込まないように河川沿いにシカ柵が張り巡らされていて河川内に降りるにも柵を潜れそうなところを探さなければならなかったりと、たいへんな思いをさせられることも多い。本書で扱われているシカ柵は、植生の保全目的のものが多いので設置は仕方ないところであるが、本当ならないほうが良い。それはこの本の中のどの著者も同じように考えているようだ。

本書を読み、勉強になったことが2つあった。1つは単にシカ柵を設置しても植生の成立過程や性質により、基の植生が成立するとは限らない点。もう1つは、シカの移動経路として大規模林道等が使われており、その法面緑化がシカの移動期の主要な餌場となっていて、そのような開発行為がシカの増えすぎを助長している可能性がある点。後者は何となくそうかな、と感じていただけに、やっぱりそうだったのかとすごく納得させられた。

地域ごとの今まさに動いている著者らの報告はとても勉強になる。お勧め本。

余談だけど、ショッキングな写真も多かったが、加藤真「生命は細部に宿りたまう――ミクロハビタットの小宇宙」に出ていた写真が、1987年と2003年の全く同じ構図で対比されていたので、こちらの方が思いっきり殴られたようにインパクトが強かった。
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食べられて生きる草の話

2015-10-03 12:28:02 | 私の著作
2015年10月 2日

たくさんのふしぎ2015年10月号「食べられて生きる草の話」は金華山のシカのお話!

タイトルだけではよくわからなかったのですが、中を開いてみますと、牡鹿半島の先端にある金華山(石巻市)に住むニホンジカとノシバ(野芝→日本に昔からある芝)のお話でした!
近年は、あちこちの森林でシカによる食害が広がっている話を聞きます。もちろん金華山でもそうなのですが、ノシバにとってはそのシカが大きな味方になっているのです。

40年ほど前は、ススキ原だった金華山が、徐々に増えてきたシカによって食べられていくうちに、今はノシバの芝生になっていきました。シバはシカにモリモリ食べられることに強いのです。芝は芝刈りをすることによって他の雑草などが生えにくくなるのですが、シカが芝刈り機のような役割を果たしているのですね。

しかも…です。ノシバの種は、一度シカに食べてもらって糞となって出てきたほうが、発芽率が高いとか。どうしてなのかは読んでいただくとして、まさにシカと共生しているような植物ですねぇ。金華山の芝は日本のノシバであることは知っていまして、観光地なので芝生を貼っているものだとばかり思っていました。あれは言わばシカが作り出した風景だったのですね。

著者の高槻先生は、植物にとって迷惑なシカも、芝は食べられても平気…逆に助かっているという、動物と植物の関係が見えてきて「自然の話」が見えてきたとありました。私も目を開かれたような気がして、子供向けの本ながら最後はちょっと感動しました。

シカの脅威と森の未来―シカ柵による植生保全の有効性と限界
前迫 ゆり 文一総合出版 2015-08-03

植生学的な観点からみたシカの害とシカ柵の調査研究をまとめたもの。金華山にもシカ柵があり、「たくさんのふしぎ」の中にも出てきます。思っていた以上にシカの食害が全国に広がっているということがわかります。そしてシカ柵にはもちろん限界もあるということも。
シカが若い木や森の下草を食べ尽くしてしまうことは「驚異」ではあるのですが、かつてシカが日本各地で激減したのは、人間が狩猟によって捕りすぎ(おそらく食べた)たからですし、森林面積がどんどん減っているのも、ほとんど人間の仕業。そうでなくても、江戸時代後期には、人間が増えすぎて、燃料にするために木を伐っていたので、日本各地の里山は丸裸だったそうです。シカを食べるオオカミを絶滅させたのも人間ですし。

日本の森に昔から住んでいるシカを、森林から排除してしまうのも「自然」ではありません。芝のようにシカからの恩恵を受けている植物もあります。何が「自然」かということなのでしょうね。

本当は人間が増えすぎることが一番不自然なのかもしれないですね。「絶滅危惧種」という言葉を聞くたびに、人間の身勝手さも少し感じます。

読んで、人間ももう少し謙虚になって、自分たちも「動物」であることを思い出したほうが良いのではないかと思いました。

『食べられて生きる草の話』(「たくさんのふしぎ」2015年10月)
高槻成紀/文 福音館書店

 著者が長年,宮城県にある金華山で観察したシカとシバ草の関係をまとめた記録がもとになっている。まずは,金華山の地形紹介から入る。金華山は,10km2ほどの島に500頭ものシカが棲んでいるというかなり高密度のシカの
生息域となっている。次に,著者が調査に入った1975年頃の様子が描かれている。シカの頭数もうんと少なく,地面をほとんど覆っていたのは…シバではなくススキだった。背丈も大きいススキが島の地面を覆っていた。ところが1985年ではススキはどんどん背が低くなり,1990年にはススキは影を潜め,シバ草が面積を広げるようになった。ここで,著者は疑問を持つ。ススキと同時にシバ草もシカに食べられているのに,どうしてシバ草は増えているのか。このことをつきとめるために,著者は大学構内でシバを植え,10cm四方の中だけをハサミで刈り取りシバの生育を見たり,ススキも刈り取ってススキの生育も見る。3年後には見事な結果が出る。ススキはほとんど生育せず,刈り取ったシバ草は青々と茂っていた。植物界では知られていることなのだが,シバは地下茎を持っていて刈られたらまた芽を出す習性なのだ。金華山では,シカが日光を遮るススキを食べ,シバ刈りの役目も果たしていたというわけである。ここで,さらに著者は「シバ草の種はそんなに飛散する構造ではないのに,どうしてこんなに広がるのか」と疑問を持つ。著者は,さらにシカの役割を考えて実証していく。さて,シカはシバ草を食べる(刈る)と同時に,どんな役目をしていたのでしょうか。「40年前には聞こえなかった自然の話が今ははっきり聞こえます。」と著者は結びに書いている。別書でこの著者の『唱歌「ふるさと」の生態学』(山と渓谷社)もなかなか楽しい本である。                  

遠い日
2015年9月17日:おーちゃんママ
「食べられて生きる草の話」高槻成紀・文/菊谷詩子・絵 宮城県金華山のシカとそのシカが食べる芝との関係の研究を40年にわたって続けてきた高槻さん。シカに食べられることで、消滅するのではなく逆に増えていく芝の謎をわかりやすい実験を含めて解説する。シカと芝の絶妙なバランスがおもしろい。環境というものの応用能力、自然の意思ともいうべき変化が興味深かった。

40年たって聞こえてきた自然の話
投稿者 りあーな 投稿日 2015/12/29
シカとその餌となる植物の関係を、日本各地で40年以上にわたって研究してきた高槻成紀さんの想いがつまった絵本です。著者の研究の出発点となった宮城県の金華山島での40年にわたるシカと植物の研究をとおして、ようやく聞こえてきた自然の話。
「いま、この鹿山の景色をみると、40年前には聞こえなかった自然の話がはっきりと聞こえます。」
この挿話は、ソロモンの王が指輪をはめると動物の話が聞こえたことを引いて、自然をよく観察し、必要なら実験をすると「自然の話が聞こえてくる」という、著者がもっとも伝えたかったこと。とてもいい絵本です。

絵はとても気に入りました
投稿者 Cosyo 投稿日 2015/12/8
絵本のような内容だとは思わずに購入。うちの高学年には向かなかったようです。新聞コーナーをもっと充実させて読みやすい形になればよいかも。
毎月購入はしません。
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「ふるさと」の生態学書評

2015-04-20 22:43:37 | 最近の動き
本日4月26日の毎日新聞に「唱歌ふるさとの生態学」の書評が掲載されました。



2015年7月 4日

【この1冊】『唱歌「ふるさと」の生態学』日本の里山風景はなぜ失われたのか

著者・高槻 成紀
ヤマケイ新書、定価800円+税

 小学唱歌「故郷(ふるさと)」が世に出たのは1914年(大正3年)。それから、ちょうど1世紀後。「故郷」に盛られた歌詞から、現代日本がいかに遠い所に来てしまったかを生態学者が読み解く、興味深い1冊が出た。

 「故郷」は「兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川」で始まるが、現代人の大部分は山でウサギを見たこともなければ、川でフナを釣った経験もない。どちらも姿を消してしまった。それを「都市開発が進んだため」などと簡単に片づけるだけでは、コトの本質を見誤る。本書はそれを丹念に分析している。

 著者は、「故郷」で歌われた風景は、日本の農村が何百年にわたって整備してきた里山のたたずまいであり、自然と調和した生活の場だったと規定。しかし、戦後の高度成長期を経て、過疎化などで調和が崩れ、ウサギの代わりにイノシシ、シカ、クマが里山に姿を現すようになった。具体的には本書を読んでもらえば、その理由がよくわかる。「もっと豊かに」「もっと便利に」と生活水準の向上を追い求めた日本人は、それを達成した代わりに、「故郷」が描いた自然を失った。

 見方を変えれば、もはや帰れないとわかっていながら、今なお多くの人々が愛唱する「故郷」という唱歌の不思議な魅力は、今後も失われることはないに違いない。東日本大震災後、被災者らによって繰り返し歌われたことは、まだ記憶に新しい。“お手軽新書”が幅を利かせている昨今、マレにみる良書。 (のり)


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最近の論文など

2015-04-04 14:31:05 | 最近の論文など
2015年
小森 康之・高槻 成紀 , 2015. new!
アファンの森におけるカエル3種の微生息地選択と食性比較.
爬虫両棲類学会報 2015(1) : 15-20.

 この論文はアファンの森にいる数種のカエルのうち、数の多いアマガエル、ヤマアカガエル、トチガエルの3種をとりあげ、どこにいたか、何を食べていたかを比較したものです。カエルの食べ物を調べた研究はかなりあるのですが、ほとんどは田んぼのカエルです。田んぼというのはきわめて単純な環境です。またここの種についてはかなりの分析例があるのですが、同じ場所に複数いるカエルの比較をしたものはごく限られています。そういうわけで、林も、草地も、池もあるアファンの森ではどうなっているかを調べてみました。担当した小森君は両生類、爬虫類が大好きで、アファンの森に言ってはカエルをみつけて、どこにいたかを記録し、捕まえて「強制嘔吐法」という方法で、要するに喉を刺激するとカエルは胃を出す!ことを利用したテクニックがあるので、それで調べることを試みました。ところがアファンのカエルはすべて胃がカラでした。それでしかたなく一晩飼育して、糞を回収しました。糞が出るのだから胃にないはずはないのですが、クマがいて危険なので、夜の捕獲は禁じました。カエルは夜食べて昼には内容物が腸まで移動していたものと思われます。糞からどのくらいわかるか心配でしたが、3種の違いをいうということについてはそれを指摘するサンプルを得ることができました。
 どこにいたか?についてはアマガエルは草や枝の上が多く、ヤマアカガエルは林の地面、ツチガエルは池の近くだけにいました。なんとなく私たちがもつイメージを裏付けるものでした。食べ物もこれを反映していて、アマは甲虫など草や枝にいるもの、アカはミミズやカマドウマなど地上にいるものがよく出てきました。ただし、ツチはとくに水辺にいるものはでてきませんでした。
 田んぼのように畦と田しかない物理的にも単純な場所と、森林では立体構造、生えている植物、そこにすむ小動物もはるかに複雑です。しかもアファンには池もあれば、草地もあります。そこでカエルは違う場所にいて、違うものを食べることで資源分割をしていると思われることを支持するデータがとれました。
 小森君は東京の都心で生まれ育ったのですが、生き物が好きで、飼育もずいぶんした(現在も)ようです。それだけに、アファンの森の生き物の豊富さに感激したようです。がんばってよい卒論を書いてくれたので、それが学術雑誌に掲載され、うれしく思いました。




Yamada, H.and S. Takatsuki. 2015.
Effects of deer grazing on vegetation and ground-dwelling insects in a larch forest in Okutama, western Tokyo
International Journal of Forest Research, Vol. 2015, ID 687506, 9 pages
この論文は山田穂高君の修士論文をもとにしたもので、奥多摩に作られたシカ排除柵の内外を比較したものです。通常は植物への影響を調べるのですが、この研究では植物の変化が土壌の動きにおよぼす影響と、地上にすむ昆虫への波及効果も調べました。植物がなくなって減る昆虫がいたと同時に、糞虫や死体を分解するシデムシの仲間は柵の外で多いという結果が得られました。こうしてシカがいることが植物の変化を解して物理環境にもそこにすむ昆虫にも多様な影響をおよぼすことを示すことができました。


2014年

Florent Rivals, Seiki Takatsuki, Rosa Maria Albert, and Laia Maci�. 2014.
Bamboo feeding and tooth wear of three sika deer (Cervus nippon) populations from northern Japan.
Journal of Mammalogy, 95:1043-1053.
Rivalsさんはフランス人でいまスペインの古生物学研究所にいます。大量死に興味があるらしく、私たちの1984年の金華山シカ大量死の論文を読んで私に連絡をくれ、標本を調べさせてほしいということで昨年麻布大学に来ました。ニホンジカにとってはササが重要であること、金華山は特殊でササを食いつくし、今はシバに依存的であることを話し、その流れで論文を書きました。Rivalsさんの手法はシリコンで臼歯の表面を写し取り、それから雄型をとって電顕で表面の摩耗を読み取るというものです。イネ科の葉には珪酸体というガラス質の小さな細胞があり、これが歯の表面をこすったり、けずったりするのですが、その珪酸体が植物の種によって形や大きさが違うため、表面の形が違うというわけです。金華山のシバを食べるときは、土壌鉱物が雨で歯につく機会が大きく、それが歯を大きくけずることがわかりました。

高槻成紀. 2014.
「カヤネズミの本―カヤネズミ博士のフィールドワーク報告―」畠佐代子, 世界思想社, 2014
哺乳類科学, 54:

畠佐代子さんがすばらしい本を出しました。カヤネズミは黒江さんや奥津君と論文を書いたことがあり、H25年卒業の山尾さんと食性を調べたこともあったので、とても興味をもって読みました。カヤネズミのことが、畠さんの組織する「カヤネット」によって多数の仲間によってあきらかにされたこと、その研究活動のスタイルそのものについても言及しました。

Kuroe, M., S. Ohori, S. Takatsuki and T. Miyashita. 2007. Nest-site selection by the harvest mouse Micromys minutus in seasonally changing environments. Acta Theriologica, 52: 355-360.

Okutsu, K., S, Takatsuki and R. Ishiwaka. 2012. Food composition of the harvest mouse (Micromys minutus) in a western suburb of Tokyo, Japan, with reference to frugivory and insectivory Mammal Study, 37: 155-158.

高槻成紀、久保薗昌彦、南正人 (2014)
横浜市で捕獲されたアライグマの食性分析例
保全生態学研究, 19: 87-93

 この論文は横浜市で有害鳥獣駆除で捕獲されたアライグマの腸内容物を分析したものです。アライグマはその名前のイメージから水辺で食物を食べると考えられ、水生動物に影響があると言われて来ました。そのような場所もあるかもしれませんが、実際、分析した例はほとんどないことがわかりました。私たちが調べてみましたが、114ものサンプルを分析しても、水生動物は頻度でも5%以下、占有率では1%以下にすぎませんでした。多かったのは果実や哺乳類などでした。なにごとも実際に分析してみなければいけません。そうすれば、予想を裏付けることもありますが、意外なことがわかることもあります。初めから思い込みで決めるけることは差し控えなければいけません。


「このは」8号、骨特集

 文一総合出版という出版社があり、生物系の本を出しています。同好の人であれば「ハンドブック」シリーズの出版社といえばおわかりかと思います。そこが「このは」という雑誌を出しています。なかなか内容のある雑誌で気に入っています。
 この「このは」が骨の特集号を出すことになり、相談をもちかけられました。麻布大学には動物の骨の標本はたくさんあるので、撮影協力をし、解説文を書きました。カメラマンと編集者が来て、多少の荷物をもっていましたが、二人で運べる程度のものでした。標本室で撮影をはじめましたが、三脚にカメラをつけたのはいいんですが、白い骨だから黒いバックがよいと思いました。壁は灰色で、よくないので、暗幕をもってきていると思ったのですが、出て来たのは幅1mあまり、長さ2mくらいの黒布です。ネコの標本ならまにあいそうですが、ウシやウマもあるのでどうするのかと思っていたら、頭の部分の背後の布をおいてそこを写し、それから肩、腹、尻と動かして行きます。あとでゲラが送ってきたのをみたら、見事に合成されて真っ黒なバックに馬の骨がありました。
 その「このは」ができて送ってきましたが、なかなかの出来でした。骨についてさまざまな記事があり、これまでにない本になったと思います。骨のことを知らない人、1200円です。内容は3000円くらいはあるので、ぜひ進化の産物としての骨の魅力を味わってみてください。


 

「捕食者なき世界」ウィリアム・ソウルゼンバーグ著、野中香方子訳、高槻成紀解説
2010年に単行本として出たものがわりあいによく読まれたらしく、文庫本化されました。こういう本が一般の読者に受け入れられるというのは意外感があります。内容はけっこう難解で、私などからするともっとすっきりと書いたほうがよいのにと思うところがたくさんあります。しかしサイエンスライターの取材力はすごいもので、アルド・レオポルドの位置づけなどはとても興味深いものです。



Tsuji, Y., Y. Yasumoto and S. Takatsuki. 2014. Multi-annual variation in the diet composition and frugivory of the Japanese marten (Martes melampus) in western Tokyo, central Japan.
Acta Theriologica, 59: 479-483.

この論文は東京西部の盆堀というところのテンの食べ物を糞分析で調べたもので、ミソは異なる年代を比較したことです。テンの食性そのものを調べた論文はけっこうあり、日本でもいくつかありますが、ほとんどは1年間を調べて季節変化を出したものです。しかし、果実依存型の動物の場合、結実の年次変動があり、1年だけで決めつけるのは危険です。辻さんはニホンザルでこのことを指摘し、粘り強く経年変化を調べています。H25年度の4年生安本が分析をし、辻さんが10年ほど前に分析したものと比較しました。思ったほどの違いはありませんでしたが、それでも果実の違いはたしかにあり、90年代にはサルナシが少なかったのですが、2000年代には多くなり、おそらくそれに連動して哺乳類や鳥類への依存度が小さくなりました。

2013年
Takahashi, Kazuhiro, Akira Uehara, and Seiki Takatsuki. 2013
Plant height inside and outside of a deer-proof fence in the Otome Highland, Yamanashi, central Japan.Vegetation Science, 30: 127-131

この論文はこの春に卒業した高橋君の卒論です。乙女高原ではシカの増加によってススキが増えて、「きれいな花」が減ったといわれています。きれいな花とは大型の虫媒花で、キンバイソウ、クガイソウ、ヤナギランなどです。そこで乙女高原ファンクラブが作った柵を使ってこのことを実証することにしました。ところが、実は高橋君は植物の名前をあまり知らなかったので(ほかの学生もそうですが)、主要な植物を選んでマーキングをし、それの草丈を毎月測定してもらうことにしました。名前がわからないということもありますが、個体を識別して測定すると、データが確実だということがあります。ランダムに調べると、個体差がありますから、どうしても「違うとなったけどたまたま測定した個体による」「同じとなったけど、本当は違うのではないか」ということがあります。その点、マーキングしておけば、先月の値と今月の値は確実に違うことが自信をもっていえます。そういうわけで定期的に調べたら、ほとんどのものは柵の中で高くなりました。ただし2種だけ違いのないものがありました。ひとつはススキでイネ科は成長点が地表にあり、刈り取られても内側から新しい茎が出て来るので、刈り取りに強いので、説明ができます。もうひとつはヨツバヒヨドリで、これはシカが好まないからです。このほかにもハンゴンソウ、マルバダケブキが代表的なシカが食べない植物ですが、この柵の近くにはありませんでした。本当は群落レベルでの種組成比較などのほうが大切なのですが、手始めとしてはよいデータが出たと思います。


Vegetation Science より許可を得て掲載

Takahashi, Kazuhiro , Akira Uehara and Seiki Takatsuki
Food habits of sika deer at Otome Highland, Yamanashi, with reference to Sasa nipponica.
Mammal Study, 38: 231-234.
この論文は高橋和弘君が乙女高原のシカの食性を糞分析法で明らかにしたもので、次の2点が評価されました。これまでのシカの食性論文の多くは季節変化を4季節で表現してきましたが、この論文ではほぼ毎月の月変化を示しました。また、その結果、冬を中心としてミヤコザサに依存的な季節と、ササに依存しない季節とに2分されることを示しました。このことは乙女高原が森林伐採によって草原となり、その後も刈り取りで草原が維持されていることを反映しています。もし森林だけであれば、岩手県五葉山や栃木県日光などのように一年中ミヤコザサに依存的なはずです。この論文では糞分析に加えて、ササの採食率も測定しました。


SUZUKI, T., A. HIGUCHI, I. SAITO, S. TAKATSUKI
FOOD HABITS OF THE URAL OWL (STRIX URALENSIS) DURING THE NESTLING PERIOD IN CENTRAL JAPAN.
Journal of Raptor Research, in press
この論文は鈴木大志君の卒業論文がもとになっています。八ヶ岳にかけられた20ほどのフクロウの巣に残されたネズミの骨を分析したところ、草原性のハタネズミと森林性のアカネズミ系の骨が出て来ましたが、その比率は巣の位置と牧場との距離に比例して、牧場に近いほどハタネズミが多いという結果でした。このことは森林伐採によってネズミの生息が変わり、それがフクロウの食性に影響するということを示唆します。実際に八ヶ岳の牧場でネズミの捕獲調査をしたら、牧場ではハタネズミだけが、ミズナラ林ではおもにアカネズミが捕獲されました。日本のフクロウはユーラシア北部にヨーロッパまで分布していますが、大陸ではおもにハタネズミを食べています。日本のフクロウは密生した森林でアカネズミ食に特化したもののようです。論文の査読者とのやりとりでよい勉強をさせてもらいました。


Takatsuki, S. and M. Sato. 2013.
“Biomass index” for the steppe plants of northern Mongolia
Mammal Study, 38: 131-133
この論文はモンゴル北部の森林ステップ地帯の植物を被度と高さの積で表現したバイオマス指数と実際の地上部現存量との対応を示したもので、これを使えば被度と高さを測定すればおよそのバイオマスを推定できることを示したものです。ミソは植物の形によって指数と重量の関係が違うので、それを生育型で類型したことで、同じ生育型なら相関が強いことがわかりました。


Fragmentation of the Habitat of Wild Ungulates by Anthropogenic Barriers in Mongolia.
Takehiko Y., Badamjav Lhagvasuren, Atsushi Tsunekawa, Masato Shinoda, Seiki Takatsuki, Bayarbaatar Buuveibaatar, Buyanaa Chimeddorj
PLoS ONE 8(2): e56995. doi:10.1371/journal.pone.0056995
 この論文はモンゴルのモウコガゼルとモウコノロバにGPS発信器をつけて動きを調べたところ、鉄道の東西で捕獲して放したにもかかわらず、一頭も鉄道を越えたことがなかったことから、こういう移動性の大きい動物の保全にとって鉄道のような障壁が障害になっていることを示したものです。いまモンゴルでは露天堀りで鉱山開発が進みつつあり、鉄道建設も予定されているので、こうした配慮が必要だと提言しています。Plos Oneという新しい形式の論文ですが、査読者の名前ものるようで、有名なFesta-Bianchetが読んでくれたようです。



2012年

高槻成紀・立脇隆文. 2012. 雑食性哺乳類の食性分析のためのポイント枠法の評価:中型食肉目の事例. 哺乳類科学, 52: 167-177.
 この論文は動物の食性分析法としてのポイント枠法の有用性をアピールしたもので、実は学生実習のデータです。タヌキとハクビシンの夏と冬の胃内容物をポイント枠法で分析すると、どのくらいの時間がかかるか、カウントするにつれて食物内容が増えていくが、どのくらいで十分といえるのか、食物ごとの出現頻度と占有率はどういう関係にあるか、ポイント枠法は食物の面積を表現する方法だが、その数字と重量はどういう関係にあるかなどを調べました。その結果、時間は重量法の3分の1くらいですむこと、200カウントすればほぼ満足がいくカテゴリー暴露ができること、組成も信頼性があること、「おいしいがなかなかない食物」と「どこにでもあるがおいしくない食物」の関係が頻度と占有率のグラフから明瞭に表現できることなどがわかりました。
 この方法が普及してほしいものです。分析した胃内容物は交通事故で死んだ動物から得たもので、よい論文を書くことで私たちなりに追悼の意味をもたせました。

Kakinuma, K. and S. Takatsuki. 2012.
Applying local knowledge to rangeland management in northern Mongolia: do 'narrow plants' reflect the carrying capacity of the land?
Pastoralism: Research, Policy and Practice, 2012, 2:23
この論文はモンゴル北部のボルガン地方で、過放牧にみえる草原が実はそうでもないということを示したものです。この地方はモンゴルとしては降水量があるので、山の北部には森林があるほどです。ですから草の伸びもよいのですが、家畜になめるように食べられて芝生のようになっています。その優占種はスゲの仲間です。共同研究者の柿沼薫さんは、牧民に聞き込みをして「ここはよい草地ですか?」と質問をしたところ、よい、悪いという返事があり、よいところには「ナリン・ウブスが生えているから」というのです。ナリンは細い、ウブスは草です。このことは双子葉草本は回復力がないが、小型のイネ科やカヤアツリグサ科は再生力があることを知っているということです。柿沼さんは実験的に柵を作って一夏おいてみたところ、中では草丈が高くなりましたが、この柵を移動させることで、家畜のお腹にはいってしまたはずの植物量を推定したのです。そうしたらみかけよりずっと生産量が多いことがわかりました。私たちはモンゴルの牧民が信じている知識を、科学的に検証し、正しいものはその理由を示したいと思っています。そして多くのことにはそれなりの理由があることがわかってきました。牧民の「知恵」としては理由がわからないままに信じていて説明ができないこともありますが、長いあいだに経験的に言い伝えられてきたことが多いと思うのです。そういうことを示すことのできた論文になりました。

Jiang, Z., S. Takatsuki, M. Kitahara, and M. Sugita. 2012.
Designs to reduce the effect of body heat on temperature sensor in board house of GPS radio collar.
Mammal Study
, 37: 165-171.
この論文は野生動物保護管理事務所のジャン(姜兆文)さんがGPS発信器の機能について野生動物の動きを調べる前に予備調査をして得た知見を記述したものです。

Okutsu, K., S, Takatsuki and R. Ishiwaka. 2012.
Food composition of the harvest mouse (Micromys minutus) in a western suburb of Tokyo, Japan, with reference to frugivory and insectivory.
Mammal Study
, 37: 155-158.
この論文は奥津憲人君の卒業論文の一部で、カヤネズミの食性を量的に評価したはじめての論文となりました。東京西部に日ノ出町という町があり、そこに廃棄物処分場跡地があります。要するにゴミ捨て場です。そこに土をかぶせてスポーツグランドにしたほか、一部に動植物の回復値を作りました。ススキ群落が回復し、ノウサギやカヤネズミが戻って来ました。カヤネズミは体重が10gもないほど小さなネズミで、独特の球状の巣を作ります。そこに残された糞を顕微鏡で分析したのですが、分析する前に次のようなことを予測していました。体が小さいということは体重あたりの体表面積が広いということですから、代謝量が多く、良質な食物を食べなければならないはずです。でもススキ群落はほとんどがススキでできていて硬い繊維でてきています。カヤネズミが食べられるようなものではありません。そうするとカヤネズミとしてはススキ群落にいる昆虫とか、生育する虫媒花の花や蜜のような栄養価の高いものを選んで食べている可能性が大きいはずです。実際に調べてみると確かに昆虫の体の一部や、なんと花粉が見つかったのです。ただし、カヤネズミの生活を撹乱してはいけないので、糞は繁殖の終わった12月に採集しました。したがって夏から秋までの蓄積をみたことになります。実際には季節変化があったはずで、これは今後の課題となりました。

Minami, M., N. Oonishi, N, Higuchi, A. Okada and S. Takatsuki. 2012.
Costs of parturition and rearing in female sika deer (Cervus nippon).
Zoological Science, 29: 147-150.
この論文は金華山で長年シカの観察をしてきた南さんたちのグループがとってきたデータと合同でおこなってきた体重などの計測を総合的に解析したもので、メスが出産育児をすることの負担がいかに大きいかを示しました。金華山のメスジカは妊娠率が低いことは知られていました。<以下未完>

Kojo, N., N. Higuchi, M. Minami, N. Ohnishi, A. Okada, S. Takatsukiand H. B. Tamate. 2012. Correlation between genetic diversity and neonatal weight of sika deer (Cervus nippon) fawns.
Mammal Study, 37: 11-19.

Kobayashi, K. and S. Takatsuki.2012.
A comparison of food habits of two sympatric ruminants of Mt. Yatsugatake, central Japan: sika deer and Japanese serow
Acta Theriologica, 57: 343-349.
この論文は私の長年の懸案を解決したものです。私はシカの食性を調べて来ましたが、機会があってカモシカの食性も調べたことがあります。明らかにカモシカのほうが常緑樹の葉や果実などをよく食べているという確信があったのですが、いずれもシカがいない場所のカモシカだったので、その違いはカモシカの食性ではなく、場所の違いを反映しているだけかもしれないということを反証できないでいました。同じ東北地方で比較したこともありますが、シカは岩手、カモシカは山形でした。5年前に八ヶ岳で調査するようになり、そこにはシカもカモシカもいることがわかりました。それで小林謙斗君といっしょに糞分析をしました。予想が見事にあたり、シカはササをおもに食べていましたが、カモシカは常緑黄葉順などをよく食べていました。また糞の粒径もカモシカが小さいほうに偏っていました。このことにはシカとカモシカの進化が関係しており、消化生理学的な説明も可能です。

Tsuji, Y. and S. Takatsuki. 2012.
Interannual variation in nut abundance is related to agonistic interactions of foraging female Japanese macaques (Macaca fuscata).
International Journal of Primatology, 31,DOI 10.1007/s10764-012-9589-0
辻大和さんは大学の3年生のときから金華山のサルの食性を軸にした研究を継続しています。たいへんな努力家で、よいデータをたくさんとってくれました。中でもこの研究は力作で、サルの食性を長年継続調査するとともに、結実状態、その栄養分析、個体識別したサルの順位を総合的に調べて、豊作の年には群れ全員が良質な栄養を十分にとれることを示しました。それも重要ですが、今日昨年に起きたことの発見が重要でした。ブナが凶作でカヤが豊作の年の冬にはサルがカヤの木に集中するのですが、そのとき社会的に優位なサルがカヤの木を独占したのです。カヤの木はあまり大きくないため独り占めが可能なのです。劣位なサルは栄養が悪くなって妊娠しませんでした。つまり凶作年には全体に繁殖率が悪くなるのではなく、劣位なサルだけがつらい状況になるということです。これを示すにはたくさんのデータを何年も継続しなければならず、文字通りの力作となりました。

ジャヤワルダナ,J,・高槻成紀. 2012
スリランカのゾウの状況と孤児支援
ズー・エクスプレス, No.605 - 2012年09月14日
スリランカの友人のジャヤワルダナさんはゾウの研究をし、著作もありますが、仕事はお茶の生産です。最近はゾウを通じて自然教育をしていますが、その活動のひとつとして、ゾウに親を殺された孤児の学費の支援をしています。そのことを紹介した論文です。

高槻成紀. 2012.
シカと高山.
私たちの自然, 2012(1/2):24-27.
シカが増えて分布を拡大してかなり時間が経ちました。われわれ研究者が予測していたよりもはるかにすごい勢いで増え、今や高山帯にまで達しています。私はライチョウの保全を考える集会で自分の考えを述べましたが、それを聞いていた編集者からこの雑誌に書くように求められました。20世紀中葉のアメリカの生態学者シェルフォードのバイオームという概念で考えた場合、ニホンジカと高山植物とはミスマッチである可能性が大きく、警戒と対策が必要であることを指摘しました。

高槻成紀. 2012.
オオカミを見る目
「新しい国語1」, 東京書籍
私は2006年に「ヤシ動物と共存できるか」という岩波ジュニア新書を書きました。その本はよく読まれていま5刷で、いまどき珍しいことだろうです。中学校の国語の入試問題によく引用されるのですが、今回国語の教科書に載ることになりました。たいへん光栄なことです。編集の方の説明では、文章の構造を学ばせるのに適した文章だということでした。自分ではあまり構造を意識したつもりはなく、わかりやすく書くためにはどういう順序で書けばよいかを「本能的に」考えただけなのですが。

高槻成紀, 2012.
食物連鎖を教える
理科教室, 2012(6): 36-41.
いま初等教育の現場はたいへんです。先生に貸される課題がたいへん多く、また社会からのきびしい批判からしてはいけないことだらけです。そうした中で理科で生き物のことを教えることがいかにたいへんかは想像できます。とくに生態系について教科書で概念を説明するだけでは生徒に興味を持たせるのはむずかしいと思います。そのためにどうすればよいかを考えて書きました。

高槻成紀. 2012
おもしろいと思うことをやればいい:菊池さんから教えてもらったこと
「ねこさんに教えてもらったこと菊池多賀夫博士追悼文集」
東北大学の先輩であり、上司でもあった菊池多賀夫先生が急逝され、同志が追悼文集を作りました。私は菊池さんに大きな影響を受けました。そのことを想い出とともに書きました。

高槻成紀. 2012
小さな会誌に書かれた菊池さんの文章
「ねこさんに教えてもらったこと菊池多賀夫博士追悼文集」
私は大学院生のときに市民活動として「仙台自然に親しむ会」の運営をお手伝いしており、「ばっけ」という文集を編集していました。それはガリ版刷りという今の学生はまったく知らない手書きの方法で作ったものでした。菊池さんはこれに何編かの文章を寄せてくださいました。それを書架にみつけたので文集に採録してもらいました。名文です。

高槻成紀. 2012. 幸せな男たち
Ouroboros, 16(3)
ブータンシボリアゲハという幻の蝶が発見されたという話題について、かつての「昆虫少年」がその思いを書きました。

高槻成紀. 2012
生態学者が都市に住む
都市問題
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