独断偏見妄言録 China's Threat

中国は人類の命運を左右する21世紀最大の不安定要因

相互確証破壊 MAD

2006年12月08日 15時29分52秒 | 中国
MAD (Mutually Assured Destruction) は相互確証破壊と訳されている。
米ソ冷戦時代の戦略概念で、一方が核ミサイルを発射すれば、他方が「自動的」に報復のための核ミサイルを発射する、というもの。この「自動的」という部分が重要で、大統領が不在だったり、決断を逡巡したりして対応が遅れる恐れがない。双方がこの概念を共有することにより核兵器の使用をためらわせることができた。

先制核攻撃を受けて陸上のサイロが壊滅した場合に備え、弾道ミサイル原潜がある。攻撃を受けたあとの反撃手段・第二次攻撃手段として、MADを確実にする意味合いがある。

かって、オホーツク海はソ連原潜の聖域だった。カムチャッカ半島と千島列島が城壁のように取り囲んで米国原潜の侵入を阻止することができ、ソ連の戦略的生命線の一翼を担っていたのだ。それを知ってか知らずか、日本政府は城壁に大穴を開けることになる北方4島返還を要求し続けた。知った上での要求だったのであれば見上げたものだが。
河野太郎衆議院議員は、最近、中露領土紛争が折半という形で決着したことにならって、北方領土も2島と4島の折半である「3島返還」という妥協案を示した。これに対してロシア側は直ちに反論し、中露領土問題と北方領土問題は次元の違う話と切り捨てた。この事実から推測すると、日本の政治家も官僚もロシア(そしてソ連)の軍事的立場を全く理解していなかったと見るのが正しいようだ。

さて、そのMADだが、冷戦とともに消え去った概念かというと、どうもそうではなく、現在も脈々と生き続けているらしい。

米国のベストセラー作家 Nelson DeMille の最新作 "Wild Fire" が大きな話題となっている。米国の都市がテロリストの大量破壊兵器により攻撃された場合、「自動的」にイスラム諸国に核報復を行う "Wild Fire" と呼ばれる米国政府の計画が存在する、という話が小説の背景となっている。MADのイスラム版だ。テロリストの出身国にかかわらず、北アフリカからアジアにかけての100以上の主要都市が核報復の対象となり、10億人のイスラム教徒(ムスリム)の大部分を殲滅するというものだ。
むろん単なる小説だから "Wild Fire" が実在するということではない。だが、実在するとしても不思議ではない、と思わせるところが凄いのだろう。ひょっとすると、米国政府の意を受けてムスリムへの警告として書かれた小説かもしれない。MADは双方における同一概念の共有が前提となる。その役割を担っていると見ることもできるだろう。

話は変わるが、「クライン孝子の日記」を読んでいて、■2006/12/07 (木) 日本人が自らの手で祖国を守る気概と決意(3) 北朝鮮がアメリカに対して「相互確証破壊」能力を持つのはかなり将来のこととなろうが、チャイナは近々アメリカに対して「相互確証破壊」能力を持つに至ると見られている。その事態が到来すれば、アメリカは自国が壊滅的な破壊を受ける危険を冒してまで、日本に「核の傘」を差掛け続けてくれるのか?甚だ疑問である。 という記述を発見した。

全くその通りだ。MADの中国版は日本と無縁ではない。私がこのブログを始めた理由はまさに「中国発の第三次世界大戦の可能性」を危惧するからに他ならない。

先に述べたように「双方がこの概念を共有する」ことがMADの前提だが、実はもう一つ、もっと根本的な前提がある。それは、双方が「死への健全な恐怖心」を共有することだ。それがなければMADは戦争の抑止力にならない。
はたして中国の指導者は「死への健全な恐怖心」を共有してくれるのだろうか。毛沢東は何百万人の国民が餓死しようと、核戦争が起ころうと、自分さえ無事ならどうなってもかまわないと思っていた、とされている。
現指導部は毛沢東の思想を受け継いで、核戦争により「…人口の半分以上が死に絶えてもまた再生できるが、もし党が無くなれば、すべてがなくなり、永遠になくなるのだ!」と叫んでいるという報道がある。
中国の指導者に「死への健全な恐怖心」を共有してもらうためには、核戦争が起きれば、死ぬのは13億人の半分ではなく、99%だと思わせることが必要なようだ。


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